
日本語には同音異字・異字同訓が多く、とりわけ読みが同じ「する」の3語「擦る・磨る・擂る」は混同されがちです。本記事では「擦る 磨る 擂る」の違いや意味、語源、類義語・対義語、言い換え、使い方、 例文を調べている方に向け、3語の意味差・成立背景(語源)・使い分け・英語表現・頻出の例文を体系的にまとめました。まずは全体像を押さえ、その後に意味の深掘り、実用のコツ、誤用対策へと進みます。
この記事を読んでわかること
- 「擦る」「磨る」「擂る」の定義と違い(一目でわかる表つき)
- 各語の語源・字義から導く正しい使い分け
- 英語での対応表現の違い(rub / polish / grind など)
- 会話・ビジネスメールで役立つ高頻度例文&言い換え・注意点
目次
擦ると磨ると擂るの違い
結論:擦ると磨ると擂るの意味の違い
3語はすべて「こすって変化を起こす」点で共通しますが、目的・結果・道具が異なります。
| 語 | 核となる意味 | 結果・ゴール | 典型的な対象・道具 | 英語の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 擦る | 物体同士をこすり合わせて摩擦を起こす | 摩擦・摩耗・傷・発火などが生じる | 手、布、マッチ棒 など | rub / scrape |
| 磨る | 表面をこすって滑らかにする・すり減らす | 表面仕上げ、磨耗、平滑化 | 硯と墨、研磨材、靴底 など | polish / wear down / abrade |
| 擂る | すりこぎ等で押しつぶすように細かくする | 粉末化・ペースト化・香り出し | すり鉢・おろし器・すりこぎ | grind / crush / grate |
字源的にも、「擦」は手でこすり合わせる意(扌+察)、「磨」は石で磨く意(石+麻)、「擂」はすり潰す・たたく意を含む字形です。漢字ペディア「擦」・「磨」・「擂」参照。
擦ると磨ると擂るの使い分けの違い
実務的には次の三分法で判断すると誤りにくくなります。
- 摩擦させたいだけなら → 擦る(手を擦る/マッチを擦る)
- 表面を整えたい・減らしたいなら → 磨る(墨を磨る/靴底が磨り減る)
- 素材を細かくしたいなら → 擂る(ゴマを擂る/大根を擂りおろす)
擦ると磨ると擂るの英語表現の違い
英訳でも目的によって動詞が分かれます。
メールや技術文書では次の対応が便利です。
- 擦る:rub(こする)/scrape(こすり落とす)
- 磨る:polish(磨いて仕上げる)/wear down, abrade(磨耗させる)
- 擂る:grind(挽く・すり潰す)/crush(押し潰す)/grate(おろす)
擦るの意味
擦るとは?意味や定義
擦るは、物体同士をこすり合わせて摩擦を生じさせる基本義です。
実際の国語辞典でも「物の表面に他の物をつけようとして、軽くこする」などの語釈が確認できます(Kotobank『デジタル大辞泉』「擦る」)。
擦るはどんな時に使用する?
- 寒くて手を擦る(摩擦熱で温める)
- マッチを擦ると着火する
- 転んで膝を擦りむく(こすれて皮膚が傷つく)
- 袖口が擦り切れる(長期の摩擦で布が薄くなる)
- 汚れを布で擦って落とす
擦るの語源は?
字源は扌(手)+「察」で、手でこすり合わせる意を表すとされます(漢字ペディア「擦」)。
擦るの類義語と対義語は?
| 区分 | 語 | ニュアンス |
|---|---|---|
| 類義語 | こする/こすりつける/摩擦する | 摩擦そのものを表す |
| 対義語 | 撫でる | 軽くさする(摩擦は弱い) |
| 使い分け注意 | 磨る | 表面仕上げ・磨耗は「磨る」へ |
| 使い分け注意 | 擂る | 食材等を細かくするなら「擂る」へ |
磨るの意味
磨るとは何か?
磨るは、対象の表面をこすって滑らかにする/すり減らす動作を指します。
「磨」の字は石でこすって整える意が基層にあり(漢字ペディア「磨」)、実用では表面仕上げや磨耗を述べる場面で使われます。
磨るを使うシチュエーションは?
- 墨を磨る(硯で固形墨をこすって墨を作る)
- 靴底が磨り減る(摩耗)
- 神経を磨り減らす(比喩)
- 金属面を磨って光沢を出す(研磨)
磨るの言葉の由来は?
「磨」は石+麻から成る形声。
字義として「みがく・とぐ・(すり)へる」を含みます(漢字ペディア「磨」)。
磨るの類語・同義語や対義語
- 類語:磨く/研ぐ/研磨する/すり減る
- 対義語:粗くする/未研磨のままにする
擂るの意味
擂るの意味を解説
擂るは、すりこぎ・すり鉢・おろし器などで押しつぶすように細かくすること。
調理・薬剤・素材加工で頻出します(字義に「する・すりつぶす」を含む:漢字ペディア「擂」、関連語として「擂盆(すりばち)」)。
擂るはどんな時に使用する?
- ゴマを擂る(香りを立てるために粉状に)
- 大根を擂りおろす(おろし金で細片化)
- 薬草を擂る(粉砕・有効成分を取り出す)
- 山芋・里芋を擂ってとろみを出す
擂るの語源・由来は?
「擂」は扌(手)に「雷」を配して、打ちこする・すり潰すイメージを帯びると解されます(漢字ペディア「擂」)。
擂るの類義語と対義語は?
| 区分 | 語 | ニュアンス |
|---|---|---|
| 類義語 | すり潰す/粉砕する/挽く/おろす | 物質を細かくする |
| 対義語 | 切る・刻む(粗加工)/潰さない | 粉末化・ペースト化しない処理 |
擦るの正しい使い方を詳しく
擦るの例文5選
- 寒さに震えながら両手を擦って温めた。
- 彼は火を点けようとマッチを擦った。
- 転倒して膝を擦りむき、消毒した。
- 長年の着用で袖口が擦り切れてしまった。
- 染みを落とそうと布で壁を擦る。
擦るの言い換え可能なフレーズ
- こする/こすり合わせる
- 摩擦をかける
- こすり付ける
- 摩耗させる
擦るの正しい使い方のポイント
- 本質は「摩擦」。発火・傷・摩耗などの結果を伴いやすい。
- 軽接触を表す「撫でる」とは目的が異なる。
- 比喩(世間擦れ/財産を擦る=使い果たす など)も文脈で判断。
擦るの間違いやすい表現
- 「ゴマを擦る」→誤用。正しくは「ゴマを擂る」。
- 「墨を擦る」→誤用。正しくは「墨を磨る」。
磨るを正しく使うために
磨るの例文5選
- 書道の授業で固形墨を磨って濃さを調整した。
- ランニングで靴底が磨り減り、買い替えた。
- 締切続きで神経を磨り減らしている。
- 金属板のバリを磨って表面を均す。
- 机の角が長年で磨り減って丸くなった。
磨るを言い換えてみると
- 磨く/研ぐ/研磨する
- すり減らす/磨耗させる
磨るを正しく使う方法
- 仕上げ・表面整形・磨耗の場面に限定する。
- 「押し潰す」ほどの強い加工は含まない(その場合は擂る)。
- 物理・比喩の双方で用いられるが、結果像(滑らか/減る)を明示すると読み手に伝わる。
磨るの間違った使い方
- 料理で「ゴマを磨る」→誤用。正しくは擂る。
- 擦過傷を述べて「膝を磨る」→誤用。摩擦傷は擦る。
擂るの正しい使い方を解説
擂るの例文5選
- 香りを立てるため、直前にゴマを擂る。
- おろし金で大根を擂りおろし、薬味にする。
- 漢方薬を調合する前に生薬を擂って粉末にした。
- 味噌をすり鉢で擂ってなめらかにする。
- 山芋を擂ってとろろをつくる。
擂るを別の言葉で言い換えると
- すり潰す/粉砕する/挽く
- (おろし金で)おろす/すり下ろす
擂るを正しく使うポイント
- 道具(すり鉢・すりこぎ・おろし器)を伴う場面が中心。
- 目標は粉末化・ペースト化。粒度・粘度を意識して記述すると伝わる。
- 磨る(表面仕上げ)や擦る(単なる摩擦)と区別する。
擂るを誤使用しやすい表現
- 「壁の汚れを擂る」→誤用。汚れ落としは擦る。
- 「靴底が擂り減る」→誤用。摩耗は磨り減る。
- 「墨を擂る」→多くは磨る(硯でこすって墨汁を作る)。
用法早見表(迷ったらここを見る)
| 言いたいこと | 正しい語 | 例 | 英語の目安 |
|---|---|---|---|
| 摩擦・発火・摩耗の原因となる「こする」 | 擦る | マッチを擦る/手を擦る | rub / scrape |
| 表面を整えたり、すり減らしたりする | 磨る | 墨を磨る/靴底が磨り減る | polish / wear down / abrade |
| 細かく粉砕・ペースト化する | 擂る | ゴマを擂る/大根を擂りおろす | grind / crush / grate |
よくある質問(FAQ)
Q1:「擦る」「磨る」「擂る」はすべて「する」と読むの?
A1:はい、すべて「する」と読みます。ただし意味は異なり、擦る=摩擦、磨る=仕上げ・磨耗、擂る=すり潰しです(字義は擦/磨/擂を参照)。
Q2:「ゴマを擦る」と「ゴマを擂る」はどちらが正しい?
A2:「ゴマを擂る」が正しいです。細かくする(粉砕・ペースト化)の目的だからです。
Q3:「墨を磨る」と「墨を擦る」では?
A3:「墨を磨る」が一般的です。硯上でこすって墨を作る行為は表面を削って溶出させる=磨るの領域です。
Q4:「擦り傷」と「磨り減る」の違いは?
A4:「擦り傷」は一度の摩擦でできた傷、「磨り減る」は繰り返しの摩擦により徐々に減ることです。
Q5:比喩表現ではどう使い分ける?
A5:「神経を磨り減らす」のように消耗を表すなら磨る、お金を一気に失う俗語的表現は「(賭けで)金を擦る」など、文脈に応じて選びます(語義はKotobank「擦る」参照)。
まとめ:擦ると磨ると擂るの違いと意味・使い方の例文
- 擦る=摩擦を起こす「こする」。火起こし・汚れ落とし・擦過傷など。
- 磨る=表面を整える/すり減らす。墨・研磨・比喩の消耗。
- 擂る=すり潰して細かくする。調理・粉砕・香り出し。
迷ったら「目的」を問うのが近道です。「摩擦なら擦る」、「仕上げ・磨耗なら磨る」、「粉砕なら擂る」、この三分法で、語感にぶれない日本語運用ができます。
参考文献・引用

