
日本語には、同じ読み「あずかる」でありながら、漢字が異なり、意味も使い方も変わる語として、与る(あずかる)と預かる(あずかる)があります。本記事では、「与る」と「預かる」の意味と違いを明確にし、語源、類義語、対義語、言い換え、例文、英語表記まで多角的に掘り下げて、「与る」と「預かる」の正しい使い方を解説します。
この記事を読んでわかること
- 「与る」と「預かる」の意味と語源の違い
- 両者の正しい使い分けと英語表現
- 「与る」「預かる」それぞれの類義語・対義語・言い換え表現
- 頻出の例文と、言い換え・間違いやすいポイント
与ると預かるの違い
結論:与ると預かるの意味の違い
まず結論を言うと、 「預かる」は物品・人・責任などを一時的に引き受けて保管・管理する意味合いが強く、 「与る」はある事柄に関与する/恩恵を受けるという意味合いを持ちます。
| 語 | 意味の中心 | 典型的な使い方 |
|---|---|---|
| 預かる | 引き受けて保管・管理・任される | 荷物を預かる、子どもを預かる、留守を預かる |
| 与る | 関与する/恩恵・好意を受ける | お招きに与る、事業に与る、恩恵に与る |
この違いを意識せずに用いると、誤用・意味が通じにくい文章につながります。
与ると預かるの使い分けの違い
使い分けのポイントを整理します。以下の視点が役立ちます。
- 対象が「物・人・任務」で「管理・保管」の意味なら「預かる」
- 対象が「ある場面・恩恵・関与」の意味なら「与る」
- 書き表しとして、「与る」はひらがな「あずかる」で書かれることが多い(常用漢字表に「与る」の読み「あずかる」が明示されていないため)
たとえば「荷物をあずかる」と書きたい場面で「与る」を使ってしまうと、「荷物を関与する・恩恵を受ける」という意味になってしまい、誤解を招きます。
与ると預かるの英語表現の違い
英語に訳すときも違いが出ます。以下が代表的な対応です。
| 語 | 英語訳(ニュアンス) |
|---|---|
| 預かる | to look after / to take charge of / to keep in custody |
| 与る | to be involved in / to participate in / to receive a favour or benefit |
例:He took charge of the documents → 書類を預かった。/He was involved in the project → そのプロジェクトに与った。という使い方が当てはまります。
預かるの意味
預かるとは?意味や定義
「預かる」とは、頼まれて人の物・身柄・任務などを引き受けて、その保管・世話・管理をすることを指します。
また、「勝負や争いごとの間に入って処理を任される」「発表などを差し控える(保留する)」という意味も含まれます。
預かるはどんな時に使用する?
主として以下のような状況です
- 荷物・金銭など物理的な物を一時的に預かる場面
- 子ども・施設・書類など人や任務を引き受けて管理・世話をする場面
- 会議の議事録や辞表を「預かる」(結論をすぐ出さず保留する)場面
「特定人物の留守を預かる」「貴重品を預かる」といった慣用句もあります。
預かるの語源は?
漢字「預」は「あらかじめ」「前もって」「手元におく」という意味を持っており、そこから「預ける・預かる」の意味になったという説があります。
また、日本語「あずかる(預かる/与る)」という動詞が古語「あづかる」から派生したという記録もあります。
預かるの類義語と対義語は?
類義語・対義語を以下に整理します。
| 語 | 意味 | 関係語 |
|---|---|---|
| 保管する | 物を安全に保つ | 類義語 |
| 引き受ける | 責任・任務を受ける | 類義語 |
| 任せる | 他者に処理を委ねる | 言い換え可能 |
| 返す・戻す | 預けたものを元の所有者に戻す | 対義語に近い概念 |
与るの意味
与るとは何か?
「与る」は、物事にかかわりをもつ・関係する、あるいは主に目上からの好意・恩恵として受けることを意味します。
古語「あづかる」の自動詞的用法がこの「与る」に当たります。
与るを使うシチュエーションは?
典型場面を挙げると
- 「この企画に与って(かかわって)おります」=関与していることを述べる場面
- 「ご招待に与り光栄です」=目上から招いてもらった恩恵を受ける場面
- 「その恩恵に与る」=利益・好意を受ける場面
つまり、主体が受け手であり、「何かを与えられた」「何かに関わらせてもらった」というニュアンスが含まれます。
与るの言葉の由来は?
「与る」の語源としては、漢字「与(與)」が「助け合う」「関わり合う」という意味合いを元に、日本語で「あずかる」と読まれ、関係・関与・恩恵を受けるという意味に発展したとされます。
また、「預かる」と同語源であるという辞書解説もあります。
与るの類語・同義語や対義語
こちらも整理しておきましょう。
| 語 | 意味 | 種類 |
|---|---|---|
| 関与する | ある事柄にかかわる | 類義語 |
| 参画する | プロジェクトなどに加わる | 類義語 |
| 恩恵を受ける | 好意・利益を受ける | 類義語 |
| 関わらない/関知しない | かかわりがない・受けていない | 対義語に近い概念 |
預かるの正しい使い方を詳しく
預かるの例文5選
- 「お荷物をこちらでお預かりいたします。」
- 「子どもを午後まで預かってもらえますか?」
- 「私は彼の留守を預かることになった。」
- 「この契約書はしばらく私が預かっておく。」
- 「重要書類を責任を持って預かる。」
預かるの言い換え可能なフレーズ
- 「保管する」→例:書類を保管します。
- 「引き受ける」→例:仕事を引き受けました。
- 「任せる」→例:この件は君に任せる。
- 「受け取る」→例:荷物を受け取りました。
預かるの正しい使い方のポイント
- 物・人・任務など「預かる」対象が明確であること。
- 「預かる」は責任・管理・保管というニュアンスが伴うこと。
- 引き受けた後の扱いや結果にも配慮して使われる言葉であること。
- 誤用しやすい「恩恵を預かる」「関与を預かる」は、「与る」にすべき場合が多い。
預かるの間違いやすい表現
- ✖「お招きに預かる」 → 正しくは「お招きに与る」。
- ✖「その企画に預かっております」 → 正しくは「その企画に与っております」。
- ✖「恩恵を預かった」 → 正しくは「恩恵に与った」。
与るを正しく使うために
与るの例文5選
- 「今回のプロジェクト成功には、彼のアイデアが与って力があった。」
- 「ご招待に与り、誠に光栄に存じます。」
- 「この機会に与り、感謝の意を表します。」
- 「新たな事業に与って世界規模の展開が可能になった。」
- 「その恩恵に与る者として責任を感じている。」
与るを言い換えてみると
- 「関与する」→例:その政策に関与しております。
- 「参加する」→例:プロジェクトに参加させていただきました。
- 「恩恵を受ける」→例:皆様のご支援に恩恵を受ける次第です。
与るを正しく使う方法
- 対象が「恩恵・好意・参加・関与」であることを確認する。
- 主体が「受ける側」であることを意識する。自分が受ける・かかわる立場。
- 格式・改まった文脈(ビジネス文書・改まった挨拶)で用いられることが多い。
- 日常会話では少し堅く感じられるため、使う場面を選ぶ。
与るの間違った使い方
- ✖「荷物に与る」→管理・保管を意味するなら「預かる」。
- ✖「会議の議事を与る」→「会議に与る(=参加・関与する)」なら可。議事の管理なら「預かる」。
- ✖「子どもを与って面倒を見る」→面倒を見るなら「預かる」。
まとめ:与ると預かるの違いと意味・使い方の例文
この記事では、「与る」と「預かる」という、読みが同じ「あずかる」という言葉の、意味・語源・使い方・英語訳・言い換え・例文まで、丁寧に整理しました。
改めて確認すると
- 「預かる」=物・人・任務を引き受けて保管・管理する。責任をともなう。
- 「与る」=物事に関与する、恩恵を受ける、受ける立場で何かにかかわる。
日々のビジネス文書・上司・先輩・改まった場面で使用する際には、ぜひこの使い分けを意識してください。正しい日本語の使い方が、文章の信頼感・専門性を高め「意味・語源・使い方がしっかり整理された記事」として評価されやすくなります。

