
「筆者」と「著者」と「作者」、どれも“書いた人”を指す言葉に見えるのに、文章を書く場面や読書感想文、レポート、論文、コラム、小説などで使い分けようとすると意外と迷います。
たとえば「筆者はこう述べている」と書くべきか、「著者の主張」と書くべきか。あるいは作品紹介で「作者」と言っていいのか、相手への敬意として「書き手」や「作家」と言い換えるべきか。さらに、筆者が一人称として使えるのか、著者名の扱いはどうするのか、英語表現ではwriterとauthorとcreatorのどれが近いのか……疑問が連鎖しやすいテーマです。
この記事では、筆者・著者・作者の意味の違いを軸に、使い分けのコツ、語源、類義語と対義語、言い換え、英語表現、そしてすぐ使える例文までを一気に整理します。読み終えるころには、場面に合わせて迷わず言葉を選べるようになります。
- 筆者・著者・作者の意味の違いと整理の仕方
- 文章・書籍・作品ジャンル別の使い分けのコツ
- 語源や類義語・言い換え、英語表現までの対応関係
- すぐ真似できる例文と間違いやすいポイント
目次
筆者と著者と作者の違い
最初に、読者がいちばん迷いやすい「結局どれを使えばいいの?」を最短で解決します。筆者・著者・作者は似ていますが、“何を書いた人か”と“どの媒体で語っているか”で、最適解が変わります。
結論:筆者と著者と作者の意味の違い
結論から言うと、私は次の3点で整理すると迷いが激減すると考えています。
| 呼び方 | 意味の中心 | よく出る場面 | ニュアンス |
|---|---|---|---|
| 筆者 | その文章を書いている人(書いた人) | 論説、コラム、解説文、レポート | 文章内での“語り手”に寄る |
| 著者 | 書物(著作)を書き著した人 | 書籍、学術書、実用書、ノンフィクション | 出版物の“著作権者”に寄る |
| 作者 | 作品を作った人(創作物の作り手) | 小説、漫画、脚本、絵画、音楽など | 創作・芸術性が強い |
- 文章を“今この文脈で書いている人”に焦点を当てるなら「筆者」
- 書籍としての“著作物”に焦点を当てるなら「著者」
- 創作物としての“作品”に焦点を当てるなら「作者」
同じ人を指していても、話題の中心が「文章」なのか「書籍」なのか「作品」なのかで、呼び方が自然に変わります。ここが分かると、以降の使い分けが一気に楽になります。
筆者と著者と作者の使い分けの違い
使い分けのコツは、“読者がどの成果物を見ているか”です。私は次のように考えると実務でほぼ迷いません。
1. レポート・論文・コラムなど「文章」を読むとき
文章の中で「この文章を書いている人」を指すときは「筆者」が最もしっくりきます。特に、論説やコラムのように主張や解釈が含まれる文章では「筆者の意見」「筆者は〜と述べる」が自然です。
2. 本を「書籍」として扱うとき
参考文献、書誌情報、書店の紹介など、出版物としての本を話題にするなら「著者」が安定です。「著者名」「著者略歴」「著者の他の著作」のように、書籍の属性として扱いやすい言葉です。
3. 小説・漫画・脚本など「作品」を語るとき
物語や創作としての性格が強いものは「作者」を選ぶと、読み手に意図が伝わります。さらに絵画・彫刻・楽曲など、文章以外の芸術分野に広げる場合も「作者」が便利です。
- 同じ小説でも、書籍の体裁(奥付や書誌)を説明するなら「著者」
- 作品世界や表現意図を語るなら「作者」
- 文章中で「この文章を書いている私は〜」と述べるなら「筆者」
つまり「どれが正しいか」というより、焦点の置き方で最適な言葉が変わるという感覚を持つと、文章が一段と読みやすく整います。
筆者と著者と作者の英語表現の違い
英語にすると、対応関係はおおむね次のように整理できます。ただし英語は文脈依存が強いので、厳密に一対一対応しない点は押さえてください。
| 日本語 | 近い英語 | ニュアンス | 例 |
|---|---|---|---|
| 筆者 | writer | 書き手(文章を書く人) | the writer argues that ... |
| 著者 | author | 著作(本)の著者、権威づけ | the author of this book |
| 作者 | creator / author | 創作物の作り手(媒体が広い) | the creator of the series |
学術文脈ではauthorがよく使われます。一方、作品の“作り手”を広く指すならcreatorが便利です。日本語の「作者」は表現領域が広いので、英語でもcreatorを当てるとズレが小さくなります。
筆者の意味
ここからは、それぞれの言葉を単体で深掘りします。まずは「筆者」から。レポートや解説文で頻出する一方で、一人称としての扱いが絡むため誤用も起きやすい語です。
筆者とは?意味や定義
筆者は、基本的に「その文章を書いている人」「その文章を書いた人」を指します。私の感覚では、文章内での“語り手”を指す呼び名という位置づけが最も分かりやすいです。
たとえば評論文の読解で「筆者の主張を述べよ」と問われるのは、「文章を書いた人の考えを文章から読み取れ」という意味です。ここで「著者の主張」としても通じる場合はありますが、読解問題では“本文の語り手”に寄せた「筆者」の方が定番です。
筆者はどんな時に使用する?
筆者は、次のような場面で使うと自然です。
- 評論、論説、コラム、エッセイなどで、文章の主張や意見を説明するとき
- 国語の問題や要約で「筆者の意図」「筆者の主張」を述べるとき
- レポート・論文で、自分を指して形式的に述べたいとき(分野や指導方針による)
- 学術論文では分野・投稿規定によって一人称の扱いが異なるため、所属先や学会・ジャーナルの指示に従うのが安全
とくに提出物では、担当教員やガイドラインによって「私」を許容する場合もあれば、「筆者」や「本稿」を推奨する場合もあります。最終的な判断は指導者や規定に従ってください。
筆者の語源は?
筆者の「筆」は、もともと“筆で書く”という行為そのものを象徴します。そこから転じて「文章を書く人」を意味するようになりました。書く行為に強く結びついた言葉なので、媒体は書籍に限らず、新聞・雑誌・Web記事でも使いやすいのが特徴です。
現代では筆以外で書くのが普通ですが、「筆」という字が残っているのは、言葉が生まれた当時の文化的背景を引きずっているためです。
筆者の類義語と対義語は?
筆者の類義語は、「書き手」「執筆者」「ライター」などが代表的です。文脈によっては「起草者」「記述者」も近くなります。
- 類義語:書き手、執筆者、ライター、記述者
- 対義語(実用上の対置):読者、受け手、読解者
厳密な辞書的「対義語」が固定であるというより、文章のやりとりの中で「書く側」と「読む側」を対にして捉えるのが実用的です。
著者の意味
次は「著者」です。参考文献や書籍紹介など、きちんとした文章ほど登場頻度が高い一方で、「作者」との境界がぶれやすい語でもあります。ここでは、“著作(書物)として扱うかどうか”を軸に整理します。
著者とは何か?
著者は、書物や著作物を書き著した人を指します。私が文章指導でよく伝えるのは、著者は“本の属性としての書き手”ということです。奥付の「著者」、書誌情報の「著者名」など、書籍とセットで機能します。
そのため、レポートや論文で文献を引用するときは「著者」が最も無難です。「筆者」でも通じることはありますが、学術的な書き方では「著者」「著者ら」「第一著者」などの言い方が定着しています。
著者を使うシチュエーションは?
著者が活躍するのは、主に次のような場面です。
- 書籍・論文・記事などを文献として紹介する
- 参考文献リストや注釈で人物を特定する
- プロフィール欄や出版情報で「著者略歴」を示す
「著者」は、読み手に対して“この情報は著作物に基づく”という枠組みを作れるので、文章全体がきちんと締まります。
著者の言葉の由来は?
著者の「著」は、「あらわす」「書き記して世に出す」というニュアンスを持ちます。単に書くだけでなく、形ある著作としてまとめて示す印象が強い字です。そこに「者」がつくことで、「書き著して世に示す人」=著者となります。
この由来を知っておくと、コラムの書き手をむやみに「著者」と呼ぶより、書籍やまとまった著作を前提に使う方がしっくりくる理由が腑に落ちます。
著者の類語・同義語や対義語
著者の類語は「作者」「執筆者」「書き手」などが挙がりますが、文献としての硬さを保つなら「著者」が便利です。
- 類語・同義語:作者(文脈次第)、執筆者、書き手、作家
- 対義語(実用上の対置):読者、購読者
- 署名や自分で書く行為の言葉と混同しやすい人は、関連用語も一緒に整理すると理解が深まる
- 自分で書く・自分の本に関する語の違いは、別記事で詳しく整理している
より周辺語まで整理したい場合は、次の記事も参考になります。
作者の意味
最後は「作者」です。作品紹介や創作物の話題で便利ですが、学術文脈や実用書の説明で使うと、ニュアンスがズレることがあります。ここでは、“作品(創作・芸術)”という軸で捉えてください。
作者の意味を解説
作者は、作品を作った人を指します。文章作品(小説、詩、脚本、漫画原作など)にも使えますし、絵画・彫刻・写真・映像・音楽など、文章以外の分野にも広く使えるのが強みです。
同じ「本」を題材にしていても、学術書や実用書なら「著者」が自然で、小説や物語作品なら「作者」が自然、という感覚を持つと迷いません。
作者はどんな時に使用する?
作者は、次のような場面で使うと伝わりやすいです。
- 小説・漫画・脚本・戯曲など、創作作品の作り手を示す
- 絵画・彫刻・写真・映画など、芸術作品の作り手を示す
- 学校教材で「この物語の作者の意図」を問う(作品読解の文脈)
一方で、研究書やビジネス書などで「作者」と書くと、創作っぽさが立ちすぎることがあります。迷ったら「著者」に倒すと安全です。
作者の語源・由来は?
作者の「作」は「つくる」「こしらえる」を表します。そこに「者」がついて、「作る人」=作者です。字面の通り、創作・制作のニュアンスが中心にあります。
そのため、文章であっても“作品”と呼びたくなる領域、つまり物語性や表現性が強いものに相性が良いと私は整理しています。
作者の類義語と対義語は?
作者の類義語は「創作者」「制作者」「作り手」「クリエイター」など。分野によって「画家」「作曲家」「脚本家」など職業名に寄せるのも自然です。
- 類義語:創作者、制作者、作り手、クリエイター、作家
- 対義語(実用上の対置):鑑賞者、観客、読者
なお「作者」と「作家」は似ていますが、「作家」は職業・肩書きとしての響きが強く、作者は“その作品の作り手”という指示に強い、と覚えると使い分けしやすくなります。
筆者の正しい使い方を詳しく
ここからは、実際に文章で使うためのパートです。まずは「筆者」。読解・要約・レポートで頻出するからこそ、型を覚えるのが近道です。
筆者の例文5選
- 本文で筆者は、社会制度の変化が個人の価値観に影響すると述べている
- 筆者の主張は、短期的な効率より長期的な信頼を重視すべきだという点にある
- この段落では筆者が具体例を挙げて、前段の結論を補強している
- 筆者は反対意見に触れたうえで、自説の根拠を提示している
- 筆者の意図を踏まえると、題名は皮肉を含む表現だと読み取れる
ポイントは、筆者を“人名”ではなく、文章の中の話者として扱うことです。
筆者の言い換え可能なフレーズ
筆者を繰り返しすぎると単調になるので、文脈に応じて言い換えるのも有効です。
- この文章では〜
- 本文では〜
- 書き手は〜
- 執筆者は〜
- ここで述べられているのは〜
- 読解問題や要約なら「本文では〜」の言い換えが特に使いやすい
- 評論・コラム紹介なら「書き手」「執筆者」も自然
筆者の正しい使い方のポイント
私が文章添削でよく見るのは、「筆者」と書きつつ、内容が“著者(人物)そのものの経歴紹介”になってしまうケースです。筆者はあくまで本文の論理・主張に結びつけるのが基本です。
- 「筆者の主張」=本文から要約できる内容にする
- 「筆者は〜と述べる」=本文中の根拠(段落・接続)と対応させる
- 「筆者の意図」=表現技法や構成(対比、例示、反論処理)とセットで説明する
筆者の間違いやすい表現
よくある誤りは次の2つです。
- 「著者はこう考える」と同じ感覚で、文章内の一人称として「著者」を使ってしまう
- “筆者=作者”と混同して、創作作品の紹介で常に筆者を使ってしまう
- 本文の一人称としては「筆者」は使われやすいが、「著者」や「作者」を一人称にするのは不自然になりやすい
著者を正しく使うために
次は「著者」です。文献紹介や引用、読書メモなど、きちんとした文章で信頼感を作れる言葉なので、型を押さえておくと文章が整います。
著者の例文5選
- 本書の著者は、実務経験に基づいて制度の課題を整理している
- 引用箇所は著者の定義に従い、用語の範囲を限定する
- 著者は第3章で反証可能性について詳しく論じている
- このテーマについては、同じ著者の別著作も参照すると理解が深まる
- 著者略歴を読むと、主張の背景となる問題意識が見えてくる
著者を言い換えてみると
著者は硬めの表現なので、媒体やトーンに合わせて言い換えも可能です。
- 書き手
- 執筆者
- (本の場合)書いた人
- (学術の場合)研究者
ただし、参考文献の文脈では「著者」が最も誤解が少ないため、私は原則として「著者」を推します。
著者を正しく使う方法
著者を使うときは、対象が“著作(書物)”であることを文脈で明確にすると読み手が迷いません。
- 「この本の著者」
- 「論文の著者」
- 「著者名・発行年・出版社」
- 「著者」とセットで「著作」「著書」「自著」が登場しやすい
- 周辺語の違いまで押さえると、言葉選びがさらに精密になる
著者の間違った使い方
誤用で多いのは、「作者」との置き換えです。たとえばビジネス書や研究書で「作者の主張」と書くと、創作的な響きが混ざってしまい、文章のトーンがブレます。
また、本文中の一人称として「著者は〜と考える」を自分の文章で使うのも不自然になりやすい表現です。自分自身を指すなら「筆者」や「本稿」を用いる方が安定します(ただし分野・規定によります)。
作者の正しい使い方を解説
最後は「作者」です。作品紹介・感想・考察でよく使いますが、著者との境界が曖昧なままだと文章がふわつきます。ここでは、創作性・芸術性を判断軸にします。
作者の例文5選
- 作者は序盤で伏線を張り、終盤で回収する構成を選んでいる
- この作品の作者が描きたかったのは、孤独と再生の物語だろう
- 作者の視点が一人称に固定されているため、読者は主観的な世界を追体験する
- 作者の表現は簡潔だが、行間に感情がにじむ
- 作者不明の作品だが、様式から時代背景を推定できる
作者を別の言葉で言い換えると
作品分野によっては、作者よりも具体的な言い方の方が伝わりやすいことがあります。
- 創作者
- 制作者
- 作り手
- クリエイター
- (分野別)脚本家、漫画家、画家、作曲家
とくに記事やレビューでは「作り手」と言うと柔らかく、相手への敬意も出しやすい印象です。
作者を正しく使うポイント
作者を使うなら、私は“作品”という語と相性を揃えるのがコツだと考えています。「作品」「表現」「物語」「演出」など、創作側の語彙と合わせると文脈が自然につながります。
- 作品の作者
- 作者の表現意図
- 作者の演出・構成
逆に「統計」「制度」「実証」など、学術・実務寄りの語彙と並べるときは、「著者」に寄せた方が文章が締まります。
作者と誤使用しやすい表現
誤使用で多いのは次の2つです。
- 研究書・実用書の書き手を「作者」と呼んでしまう(著者の方が自然なことが多い)
- 評論文の読解で「作者の主張」と書いてしまう(筆者が定番)
- 迷ったら「筆者=文章」「著者=書物」「作者=作品」の3軸に戻ると判断しやすい
まとめ:筆者と著者と作者の違いと意味・使い方の例文
最後に、今回の要点をもう一度整理します。筆者・著者・作者は似ていますが、焦点を「文章」「書物」「作品」のどこに置くかで最適な言葉が変わります。
- 筆者:その文章の書き手。読解・要約・論説やコラムで「筆者の主張」が定番
- 著者:書籍・論文など著作物の書き手。参考文献や書誌情報で最も安定
- 作者:作品の作り手。小説・漫画・脚本・芸術作品など創作領域で自然
英語表現は、筆者はwriter、著者はauthor、作者はcreator(文脈によりauthor)を当てるとズレが小さくなります。
- 文章やレポートの書き方は分野・学校・媒体のルールに左右される
- 迷ったときは、提出先や出版社、公式の投稿規定・ガイドラインを確認するのが最も確実
本記事の内容は一般的な目安として整理したものです。最終的な表記は、授業の指示、学会・出版社の規定、公式ガイドラインなどをご確認ください。必要に応じて、指導教員や編集者など専門家に相談することをおすすめします。

