
ビジネスメールやお知らせ文で「本日をもって終了いたします」と書こうとしたとき、「持って」と「以って」のどちらが正しいのか迷ったことはないでしょうか。持ってと以っての違いや意味がはっきりしないまま、なんとなく雰囲気で書いている方も少なくありません。
とくに、「をもっての意味が知りたい」「持ってと以っての違いや使い分けを知りたい」「持ってと以っての例文や英語表現を確認したい」「そもそもの語源や類義語・対義語、言い換え表現も整理したい」と感じて検索している方が多いはずです。
この記事では、持ってと以っての違いと意味を軸に、日常会話からビジネス文書までの使い方を丁寧に解説しつつ、語源や類義語・対義語、言い換え、英語表現、実際に使える例文までを一気に整理していきます。読み終えていただく頃には、「どちらを選べばよいか」で迷う時間がぐっと減り、自信を持って日本語を書けるようになるはずです。
- 持ってと以っての意味とニュアンスの違いが分かる
- 持ってと以っての正しい使い分けとビジネスでの注意点がつかめる
- 語源・類義語・対義語・英語表現・言い換えを通じて表現の幅を広げられる
- 具体的な例文を通じて今日から迷わず使える実践的な書き方を身につけられる
持ってと以っての違い
まずは全体像として、持ってと以ってがそれぞれどんな意味を担っているのか、そしてどんな場面で使い分けるべきなのかを整理します。ここを押さえておくと、以降の詳しい解説や例文がさらに理解しやすくなります。
結論:持ってと以っての意味の違い
結論から言うと、「持って」は物や性質・状態を所有したり携えたりしていることを表し、「以って」は手段・理由・期限・強調などを示す、やや格式ばった表現です。
もう少し整理すると、次のようなイメージになります。
- 持って:かばんを持っている/資格を持っている → 「持つ」という動作・状態
- 以って:これを以って通知とする/三月三一日を以って閉店する → 手段・根拠・区切り
- 共通点:どちらも語源的には「もちて(持ちて)」から生まれた言葉
意味の軸さえ押さえておけば、漢字で迷ったときも「これは所有の話か、手段・理由・期限の話か」を判断基準にしやすくなります。
持ってと以っての使い分けの違い
実際の文章で迷いやすいのは、「どちらでも読めてしまうけれど、どちらが適切か」というケースです。代表的な考え方は次の通りです。
- 所有・携帯・保持をイメージするとき → 「持って」
- 通知・宣言・期限・手段・理由を示すとき → 「以って」
たとえば、次のように使い分けます。
- 「かばんを持って出かける」…物を手にしているイメージなので「持って」
- 「本日を以って閉店いたします」…「今日という日を区切りとする」意味なので「以って」
- 「書面を以って通知いたします」…通知する手段を示しているので「以って」
- 「高い意識を持って取り組む」…意識という性質を備えているので「持って」
ビジネスや公的な文書では、特に「〇月〇日をもって」「書面をもって」「これをもって」といった決まり文句が多く、この場合はほぼ「以って」を使うと考えてよいでしょう。
持ってと以っての英語表現の違い
英語に置き換えてみると、持ってと以っての役割の違いがさらに分かりやすくなります。
| 日本語 | 役割 | 主な英語表現のイメージ |
|---|---|---|
| 持って | 所有・携帯・保持 | have / hold / with |
| 以って | 手段・理由・期限・宣言 | by / with / using / as of / hereby |
例えば、「かばんを持って行く」は “go with a bag” や “take a bag with you” のイメージ、「本日を以って閉店する」は “We will close the store as of today.” のように表現できます。
持っての意味
ここからは、それぞれの言葉を少し掘り下げていきます。まずは、私たちが日常的によく使う「持って」から整理しましょう。
持ってとは?意味や定義
「持って」は、動詞「持つ」の連用形「持ち」に接続助詞「て」が付いた形で、「手に取る」「所有する」「身につけている」といった意味を表します。
物理的な「物」に対して使うこともあれば、「知識」「資格」「考え方」「気持ち」といった抽象的なものに対して使うこともできます。
- かばんを持って歩く
- 資格を持っている
- 責任感を持って仕事をする
- 将来に不安を持っている
このように、「あるものを自分の側に備えている」という広いイメージを持っておくと、様々な場面で応用しやすくなります。
持ってはどんな時に使用する?
「持って」を使う典型的な状況は、大きく次の三つに分けられます。
- 手にしている・運んでいる物を表すとき
- 性質・能力・資格・立場など、抽象的な「所有」を表すとき
- 感情や問題など、目に見えない状態を抱えていることを表すとき
具体的には、以下のような文脈でよく使います。
- 「書類を持ってご来社ください」…物を携帯する
- 「彼は三つの資格を持っている」…能力・資格の所有
- 「プロとしての自覚を持って行動してください」…意識・自覚の所有
- 「彼女は悩みを持っているようだ」…悩みという状態を抱えている
日常会話では、ほぼ「所有・保持」に関わる場面と考えて問題ありません。逆に、通知・宣言・期限・手段といった話になってきたら、「以って」を検討すべきサインです。
持っての語源は?
「持って」の語源は非常に素直で、動詞「持つ」の連用形「持ち」に接続助詞「て」がついた「持ちて(もちて)」という形が変化したものです。
もともとは「手に持って」という、きわめて具体的な動作を表していましたが、やがて「持っている状態」や「備えている性質」など、より抽象的な意味合いへと広がっていきました。
この「もちて」という形は、後で出てくる「以って(以て)」の語源とも深く結びついています。二つの言葉は、同じ古い形から枝分かれして、現代では役割を分担しているイメージです。
持っての類義語と対義語は?
「持って」の類義語・近い表現としては、次のようなものが考えられます。
- 所有して(いる)
- 保有して(いる)
- 備えて(いる)
- 携えて(いる)
- 手にして(いる)
一方、対義語としては、「持っていない」状態を表す言い方が中心になります。
- 失って(いる)
- 手放して(いる)
- 欠いて(いる)
- 持たずに(いる)
文章表現として言い換えるときは、「ニュアンスは保ちつつ、よりフォーマルか・カジュアルか」という観点で選ぶと良いでしょう。ビジネス文書なら「所有している・保有している」、スピーチや文章なら「備えている」、文学的な表現なら「携えている」などを使い分けられます。
以っての意味
続いて、「以って」について見ていきます。日常会話で頻繁に使うわけではありませんが、ビジネス文書や公的なお知らせなど、フォーマルな場面では非常に重要な表現です。
以ってとは何か?
「以って(もって)」は、主に「手段・理由・期限・強調」といった意味を担う言葉です。現代日本語では、「を以って」「これを以って」「本日を以って」のように、名詞とセットで使われることがほとんどです。
代表的な用法は次の通りです。
- 手段・方法:書面を以って通知する(=書面という手段で)
- 理由・原因:本人の希望を以って退職とする(=本人の希望を理由として)
- 期限・区切り:本日を以って閉店する(=きょうを区切りとして)
- 強調:誠に以って遺憾に存じます(=たいへん遺憾である)
いずれも、「何かを基準・手段・きっかけとして、そこから先の結果や状態が決まる」というイメージを共有しています。
以ってを使うシチュエーションは?
「以って」は、普段の会話よりも、ビジネス文書・公的文書・式典での挨拶など、かしこまった場面で使うのが基本です。具体的には、次のような状況が典型的です。
- 会社や店舗の閉店・サービス終了の告知:「〇月〇日を以ってサービスを終了いたします」
- 辞令・通知などの正式な連絡:「書面を以ってお知らせいたします」「これを以って通知といたします」
- 契約・任期の終了:「任期満了を以って退任いたします」
- かしこまった謝罪や挨拶:「誠に以って恐縮に存じます」
一方、友人との会話やカジュアルなメールで「以って」を使うと、やや堅苦しく、不自然に見える場合があります。そのような場では、「〜をもって」をひらがなで書くか、「〜として」「〜により」「〜で」といった別の言い方に言い換える方が自然です。
以っての言葉の由来は?
「以って」は、もともと古語の「もちて」に由来し、漢字の「以」が当てられた形とされています。「以」は漢文で「もって」と読み、「〜を用いて」「〜によって」という意味を持つ字です。
つまり、
「以て(もって)」→「以って(もって)」という表記が広がった
という流れで、現代の「以って」という語形が定着していきました。
その過程で、「手に持つ」という具体的な意味から、手段・理由・期限といった抽象的な意味が強まり、現在では「持って」とは役割を分担するようになっています。
以っての類語・同義語や対義語
「以って」の類語・同義表現としては、文脈によって次のような言い方が自然です。
- 〜をもって(ひらがな表記)
- 〜によって
- 〜を通じて
- 〜を手段として
- 〜として(身分・立場を示す場合)
- 〜をきっかけとして/〜を区切りとして
対義語としてピッタリ一語で対応する言葉はあまりありませんが、意味の対立としては次のような表現が考えられます。
- 〜なしに(手段や理由を用いない)
- 〜に依らずに
- 〜を用いずに
文脈に応じて、「〜によって」と言い換えるか、「〜として」「〜で」と簡潔に置き換えるかを選ぶと、読みやすい文章になります。
持っての正しい使い方を詳しく
ここからは、実際の文章づくりを意識して、「持って」の具体的な使い方や例文、言い換え表現をまとめていきます。
持っての例文5選
まずは、日常からビジネスまで、使いどころの多い「持って」の例文を確認してみましょう。
- 明日の会議には、配布資料を持ってご参加ください。
- 彼は豊富な経験を持って、新しいプロジェクトをリードしている。
- 私は三つの国家資格を持っています。
- お客様の立場に立つ視点を持って、サービス改善に取り組みましょう。
- 彼女は将来への不安を持っていながらも、一歩ずつ前に進んでいる。
「持って」は、「何を持っているのか」=物・経験・資格・意識・感情などをしっかり意識して書くと、文章の説得力が高まります。
持っての言い換え可能なフレーズ
同じ「持って」でも、文章のトーンや文脈によって、より適切な言い換えが存在します。いくつか代表的なパターンを挙げます。
- 経験を持って → 経験を備えて/豊富な経験を背景に
- 資格を持っている → 資格を保有している/資格を取得している
- 意識を持って → 意識をもって(ひらがな)/強い意識を抱いて
- 不安を持っている → 不安を抱えている
- 問題意識を持って → 問題意識を共有して/問題意識を持ちながら
ビジネス文書では、「保有する」「取得する」のように、やや堅めの語を選ぶと文章全体のトーンが整いやすくなります。
持っての正しい使い方のポイント
「持って」を正しく使うためのポイントを、整理しておきましょう。
- 「所有・保持」を表す場面かどうかを最初に確認する
- 通知・期限・宣言の文言には安易に「持って」を使わない(「以って」を検討)
- ビジネス文書では、「持っている」を「保有している」「取得している」と言い換える選択肢も意識する
- 感情や状態に対して使うときは、「抱えている」「感じている」などの言い換えも念頭に置く
とくに、「本日を持って終了いたします」と書いてしまうミスは非常に多いので、「区切りを表すときは『以って』」と覚えておくと安心です。
持っての間違いやすい表現
実際の文章でよく見かける、誤用・注意したい表現を挙げておきます。
- 誤:本日を持って閉店いたします。→ 正:本日を以って閉店いたします。
- 誤:書面を持って通知いたします。→ 正:書面を以って通知いたします。
- 誤:任期満了を持って退任いたします。→ 正:任期満了を以って退任いたします。
いずれも、「所有」ではなく「区切り」「手段」「理由」を示しているため、「以って」が適切です。
日本語の書き分けに悩みやすい方は、同じようなテーマとして「ほか・他・外」の違いや、「併せて・合わせて」の違いも一度整理しておくと、表記に対する感度がぐっと上がります。例えば、
といった記事も、同じ「書き分けの感覚」を鍛えるのに役立ちます。
以ってを正しく使うために
次に、「以って」を実際の文章でどう使うか、例文や言い換え表現を通じて確認していきます。とくにビジネスや公的な場面での使い方を意識しながら、ポイントを整理しましょう。
以っての例文5選
まずは、「以って」を実際に使った代表的な文例を見ていきましょう。
- 本日を以って、当店は閉店させていただきます。
- 書面を以ってご連絡申し上げます。
- 本人の申し出を以って、退職を承認いたしました。
- これを以って、本件の報告といたします。
- この度の不手際につきましては、誠に以って遺憾に存じます。
どの例文でも、「以って」は単独ではなく、名詞+を以って/これを以ってという形で使われていることに注目してください。
以ってを言い換えてみると
「以って」は便利ですが、使いすぎると文章が硬くなりすぎることもあります。文脈に応じて、次のように言い換えることが可能です。
- 本日を以って閉店いたします。
→ 本日限りで閉店いたします。/本日をもちまして閉店いたします。 - 書面を以って通知いたします。
→ 書面にて通知いたします。/書面でお知らせいたします。 - これを以って報告といたします。
→ 以上をもちまして報告といたします。 - 本人の希望を以って退職とする。
→ 本人の希望により退職とする。
ビジネスシーンでは、「〜をもちまして」「〜により」「〜にて」といった言い換えもよく使われます。文章全体の堅さや読み手との距離感を考えながら、バランスよく選びましょう。
以ってを正しく使う方法
「以って」を正しく使うためのポイントをまとめると、次のようになります。
- 名詞+を以って/これを以って/本日を以って、のようにセットで使う
- 「所有」ではなく「手段・理由・区切り・強調」を表しているかを必ず確認する
- ビジネス文書では、通知・告知・辞令・お知らせなど、フォーマルな局面で用いる
- カジュアルな文章では、「をもって」「として」「により」「で」などに言い換えることも検討する
また、日本語の二字熟語やフォーマル表現の違いを押さえておくと、「以って」を含む文章全体の精度も上がります。例えば、「齟齬」「乖離」「相違」の違いと意味・使い方や例文まとめ のような記事で、似たタイプの語の違いを整理しておくのもおすすめです。
以っての間違った使い方
「以って」は便利な一方で、意味を取り違えると、読み手に違和感を与えたり、意図が伝わりづらくなったりします。注意したいパターンをいくつか挙げておきます。
- 日常会話で乱用する:「昨日を以って締め切りだったんだよね」など、友人同士の会話では不自然に堅い
- 名詞を伴わずに単独で使う:「以って終了します」→「これを以って終了します」などとする
- 所有の意味で使ってしまう:「資格を以っている」→「資格を持っている」が自然
- ひらがなとの混在で表記がぶれる:「を以って」「をもって」が混在し、読みづらくなる
特に公的な文書や契約関連の文書では、表記の揺れそのものが信頼性を損なう要因になることもあります。重要な文書では、社内のルールや公的なガイドライン(公用文作成の手引きなど)をあわせて確認することをおすすめします。
まとめ:持ってと以っての違いと意味・使い方の例文
最後に、この記事の内容をコンパクトに振り返っておきましょう。
- 持っては「所有・携帯・保持」を表し、物理的な物から抽象的な性質・感情まで幅広く使える
- 以っては「手段・理由・期限・強調」を担うフォーマルな表現で、「名詞+を以って」「これを以って」の形で用いる
- 「本日を以って」「書面を以って」「これを以って」などの決まり文句は、ビジネスや公的な文書で頻出する
- 英語に置き換えると、持っては have / with、以っては by / as of / hereby などのイメージになる
- 語源的にはどちらも「もちて」に由来しつつ、現代では役割を分担している
- 類義語・対義語、言い換え表現を押さえておくと、文章のトーンや読みやすさを柔軟に調整できる
日本語の表記や言葉の違いは、一見すると細かな話に思えるかもしれませんが、ビジネスメールや公式文書、人前でのスピーチなどでは「小さな違い」がそのまま信頼感の差に直結します。
ただし、ここで紹介した内容は、一般的な用法や辞書・公的な文書の基準を踏まえて整理したものであり、「絶対にこうでなければならない」という意味ではありません。具体的な契約書や法的な文書、公的機関に提出する書類などについては、正確な情報は公式サイトをご確認ください。また、専門性の高い内容や重要な判断が伴うケースでは、最終的な判断は専門家にご相談ください。

