
「邦人と日本人の違い」と検索したとき、多くの人が混乱するのは、どちらも「日本国籍を持つ人」を指す点で共通しているからです。ニュースや公式文書でよく見かける言葉ですが、正確な意味や使い分けを知らないと、内容を正しく理解できません。
本記事では、邦人とはどういう人を指すのか、日本人とは何を意味するのかを明確にしながら、それぞれの使い方や例文を交えて詳しく解説します。また、在留邦人とは誰か、在外邦人とはどう違うのか、さらには異邦人とは何者かという関連語についても触れていきます。
そして、よく似た言葉である「国」と「邦」の違いについても紹介し、言葉の背景から理解できるようまとめています。
結論として、「邦人」は主に外国にいる日本人を示すフォーマルな表現であり、「日本人」は国籍を持つすべての人に対して使われる一般的な言葉です。状況や媒体によって、適切に使い分けることが求められます。


- 邦人と日本人の意味と使い分け
- 邦人の使い方や例文の具体的な事例
- 在留邦人と在外邦人の違い
- 異邦人や「邦」と「国」の用語の違い
目次
邦人と日本人の違いをわかりやすく解説

「邦人」と「日本人」の違いとは何か?
「邦人」と「日本人」は似た意味を持ちますが、使われ方やニュアンスに明確な違いがあります。
まず、「日本人」は国籍を持つ人を指す言葉です。日本の国籍を持つ人であれば、どこに住んでいても「日本人」と呼ばれます。一方、「邦人」は「自国の人」という意味から派生し、主に日本国外にいる日本人を対象として使われます。
以下に主な違いを整理します。
項目 | 日本人 | 邦人 |
---|---|---|
意味 | 日本国籍を持つ人 | 外国にいる日本国籍を持つ人 |
使用される場面 | 一般的な文脈、日常会話など | 報道、公用文、外交関連など |
用語の印象 | 中立・一般的 | ややフォーマル、限定的 |
例 | 「日本人の観光客」 | 「在外邦人の安否が確認された」 |
このように、両者は「日本国籍を持つ人」を指す点では共通していますが、使用される文脈と対象に違いがあるため、適切に使い分けることが求められます。
「邦人」とはどのような意味か
「邦人」という言葉には、「自国の人」という基本的な意味があります。ただし、現代日本語では、主に日本国外にいる日本人を指す言葉として用いられることが一般的です。
これは「邦」が「日本国」を意味するためであり、日本語における「邦人」は、通常「日本国籍を持つ海外在住者」を示します。
具体的には、以下のような人が該当します。
- 外国に3か月以上滞在している日本人(在留邦人)
- 長期的に海外で生活している日本人
- 永住者や留学生など、海外に生活基盤を持つ日本人
一方で、短期間の旅行者などには、原則として「邦人」という語は使われません。
また、「邦人」は災害や事件、政治的な文脈で用いられることが多く、ニュースでは「○○で邦人が被害に遭った」などの表現がよく見られます。言い換えると、「日本人」という表現よりもややかたい印象を持つ言葉と言えるでしょう。
「邦人」の使い方や例文を紹介
「邦人」という言葉は、特定の文脈に限定されて使用されるため、適切な使い方を理解しておくことが重要です。
特に次のような場面で使用されることが多く見られます。
- 外務省や政府の発表
- 国際ニュースや事件の報道
- 外交政策や安全保障に関する議論
■ よく使われる例文
- 外務省は現地に滞在する在留邦人の安全確保に努めています。
- テロ事件に巻き込まれた邦人2人の安否が確認されました。
- 政府は在外邦人の帰国支援を実施する方針を示しました。
- 邦人保護の観点から、渡航自粛を勧告しています。
- 南米で拘束された邦人グループが無事解放されたとのことです。
■ 注意点
- 国内にいる日本人には使用しない
- 親しい会話やカジュアルな文脈では使わない
- 書き言葉としての使用が中心
このように、「邦人」は公的・報道的な文脈でのみ使われるフォーマルな語であることを理解しておくと良いでしょう。
「日本人」とはどんな定義か

「日本人」という言葉は、基本的に日本の国籍を持つ人を指す用語です。これは法的に定義されており、国籍法に基づいて日本国籍を取得した人すべてが該当します。
具体的には以下のような人々が「日本人」とされます。
- 日本で生まれた日本国籍保持者
- 外国で生まれても親が日本国籍を持っている子ども(血統主義)
- 帰化などにより日本国籍を取得した外国出身者
また、文脈によっては民族的な意味合いで「日本人」が使われることもあります。例えば「日本人の文化」や「日本人らしさ」といった表現では、必ずしも国籍に限った話ではなく、日本文化や価値観を持った人々を広く指す場合もあります。
注意点としては、国際的な話題では「日本人」は他国の国民と対比される存在として用いられることが多く、ニュートラルな表現として広く受け入れられています。
「日本人」の使い方や例文を紹介
「日本人」は、会話や文章など幅広い場面で使われる、日常的で汎用性の高い表現です。国籍を示すほか、文化・価値観・行動様式などを含めた民族的アイデンティティの文脈でも使われます。
■ 使用される主な場面
- 観光・ビジネス・留学などの日常的文脈
- 文化や習慣に関する話題
- 海外との比較、国際的な文脈
■ よく使われる例文
- 日本人観光客が急増しています。
- 日本人選手が世界大会で優勝しました。
- 日本人の礼儀正しさは世界でも評価されています。
- 海外でも活躍する日本人アーティストが注目されています。
- 日本人留学生の支援制度が拡充されました。
■ 日本人という言葉の特徴
- フォーマル・カジュアル両方に対応可能
- 民族的・文化的背景を含むニュアンスもある
- 外国で生まれた人や帰化した人も「日本人」として表現される
言い換えると、「日本人」は最もオーソドックスで広く通用する用語です。状況に応じて「邦人」との使い分けを意識すると、表現がより適切になります。
邦人と日本人の違いと関連語の基礎知識

「在留邦人」とはどういう人か
在留邦人とは、海外に3か月以上滞在している日本国籍を持つ人を指します。これは外務省が行っている「海外在留邦人数調査」に基づく定義です。
一般的に、以下のような人が在留邦人に含まれます。
- 海外赴任しているビジネスパーソンとその家族
- 長期留学中の学生
- 現地に永住している元日本在住者
- 二重国籍を持つが、日本国籍を保持している者
【ポイント】
- 3か月以上の滞在が目安
- 日本国籍を持っていることが条件
- 観光や短期出張などの一時的滞在者は含まれない
■ 例文
- 外務省は、現地に住む在留邦人の安全確保に努めています。
- 在留邦人の数は年々増加傾向にあります。
このように、在留邦人という用語は、日本政府の公的な調査・対応において重要な区分として使われます。ニュースや報告書などで見かけたときには、長期滞在者を指していると理解しましょう。
「在外邦人」とはどんな立場か
在外邦人は、一定期間を問わず、海外に滞在している日本国籍保有者を総称する言葉です。つまり、長期滞在者である在留邦人だけでなく、短期の旅行者や出張者も含まれます。
以下のように分類されます。
区分 | 滞在期間 | 含まれる人 |
---|---|---|
在外邦人 | 制限なし | 全ての日本人(旅行・出張含む) |
在留邦人 | 3か月以上 | 永住者、留学生など |
【特徴】
- 滞在期間を問わず幅広い対象をカバー
- 海外で生活する日本人に関する法的・制度的支援の対象にもなる
- 在留邦人は在外邦人の一部に含まれる
■ 例文
- 政府は、今回の災害に対し在外邦人の一時帰国支援を決定しました。
- 在外邦人向けの選挙制度が拡充されました。
在外邦人という言葉は、制度設計や災害時対応などで、より広い視点から海外にいる日本人全体を対象とする場合に使用されます。
「異邦人」とは誰を指すのか
「異邦人」は、自国以外の国から来た人、つまり外国人を意味する言葉です。この語はやや文語的・文学的な表現として使われることが多く、日常会話では「外国人」のほうが一般的です。
もともと「異なる邦(くに)」の人という意味から生まれており、以下のような文脈で使われます。
- 宗教的文脈:ユダヤ教・キリスト教では、信仰の外にいる人(異教徒)を意味する
- 文学や音楽:社会的に孤立した人や、異文化にいる人物の心情を表す
- 政治的・文化的:アイデンティティや帰属意識の違いを描写する際
■ 使用例
- 異国の地で暮らす彼は異邦人のような孤独感を感じていた。
- 古代の記録には、異邦人に対する差別が記されている。
注意点として、「異邦人」は状況によっては距離感やよそ者意識を含むことがあり、使用には配慮が求められる語です。カジュアルな場面より、文学的・象徴的な表現に向いています。
「国」と「邦」の違いについて

「国」と「邦」はどちらも「くに」を意味しますが、使われ方や意味合いに微妙な違いがあります。
【語源・意味の違い】
- 国(国土・国家):領域、政治的な組織、国民を含む国家そのもの
- 邦(自国):日本を主語とする場合、自分の属する国=日本の意味合いが強い
古代中国では、両語は同義として使われていましたが、漢の時代に「邦」が避諱(ひき)によりあまり使われなくなり、代わりに「国」が一般化しました。日本語では、明治期以降に「邦」が「日本国」を意味するようになり、今では限定的に以下のような熟語で使われます。
【例:邦が使われる熟語】
- 邦人:自国の人(=日本人)
- 邦画:日本映画
- 邦楽:日本の伝統音楽
- 邦訳:外国語を日本語に訳すこと
このように、「邦」は現代日本語では日本に関わる事柄を強調する目的で用いられることが多く、「国」とは使われる場面が異なります。
マスコミと公用文での使い分け
「邦人」と「日本人」の使い分けについては、マスコミ(報道)と公用文(政府文書)で基準が異なるのが特徴です。
【マスコミの傾向】
- 事件や災害などの暗いニュースでは「邦人」を使用
- 賞の受賞や活躍などの明るいニュースでは「日本人」を使用
- 長期滞在者=邦人、短期滞在者=日本人とされる場合もある
【公用文での傾向】
- **「邦人救出」「邦人保護」**などの熟語で「邦人」を使用
- **「海外に住む日本人」**など、単独で使うときは「日本人」を使用
- 一つの文書内で両方の語が併用されることもある
■ 具体例
- 「在留邦人の救出を急ぐ」(熟語+邦人)
- 「海外に住む日本人が増加している」(単独+日本人)
このように、同じ意味を持つ語であっても、使用される文脈によって言葉が選ばれていることがわかります。読み手としては、それぞれの意図をくみ取って理解することが大切です。
邦人と日本人の違いをわかりやすく解説|要点まとめ
- 「邦人」は主に海外にいる日本国籍保持者を指す語である
- 「日本人」は日本国籍を持つすべての人を対象にする
- 邦人は報道・外交など公的な場面で使用されやすい
- 日本人は日常的・一般的な文脈で幅広く使われる
- 「邦人」は3か月以上の海外滞在者に対して使われやすい
- 短期旅行者には「日本人」と表現するのが一般的
- 邦人は災害や事件の報道時に使われる傾向がある
- 日本人は活躍や受賞など明るい話題で用いられる
- 在留邦人は3か月以上海外に滞在する日本国民を指す
- 在外邦人は短期・長期問わず海外にいる日本人の総称
- 異邦人は自国以外の国の人を意味する文語的表現
- 「邦」は日本を意味する文脈で限定的に使われる
- 「国」は国家や政治的組織を表す一般的な漢字である
- 公用文では熟語にする場合「邦人」、単体では「日本人」を使う傾向がある
- マスコミと政府文書では語の使い分けに違いが見られる