
こんにちは、「違いの教科書」を運営しているMikiです。
この記事では、「多岐にわたる」と「多岐に及ぶの違いや意味があいまいで、どちらを使えばよいのか自信が持てない」「多岐にわたるの意味や使い方、例文を確認したい」「多岐に及ぶの意味や使い方、多岐にわたるとの違いを整理したい」といった悩みを持つ方に向けて、丁寧に整理していきます。
特にビジネスメールや資料作成の場面では、多岐にわたるの意味や使い方だけでなく、多岐に及ぶとの違い、多岐にわたるの類義語や言い換え表現、さらには英語表現まで押さえておくと安心です。一方で、ネット上には「多岐に渡る」が正しいのか「多岐にわたる」が正しいのか、「多岐にわたると多岐に及ぶの意味の違いがあるのか」など、情報がばらばらに書かれていて、かえって迷ってしまうこともあるはずです。
そこで本記事では、多岐にわたると多岐に及ぶの違いと意味、使い分け方、語源や類義語・対義語、英語表現や例文までを一気に整理します。読み終えるころには、ビジネスの文章でも日常会話でも、どちらの表現を使うべきかを自信をもって判断できるようになるはずです。
- 多岐にわたると多岐に及ぶの意味とニュアンスの違いが分かる
- 多岐にわたると多岐に及ぶの具体的な使い分けとビジネスでの使い所が分かる
- 類義語・対義語、言い換えや英語表現までまとめて整理できる
- 実践的な例文を通して、すぐに使える文章表現の引き出しが増える
目次
多岐にわたると多岐に及ぶの違い
まずは、多岐にわたると多岐に及ぶの関係性から押さえていきましょう。どちらも「物事がいろいろな方面に広がっていること」を表すという点では共通していますが、日常的な使用頻度やニュアンスには微妙な差があります。この章では、意味・使い分け・英語表現という3つの切り口から整理します。
結論:多岐にわたると多岐に及ぶの意味の違い
結論から言うと、多岐にわたると多岐に及ぶは、意味としてはほぼ同じです。どちらも「物事が多方面に分かれている」「範囲・分野が広い」といったニュアンスを持ちます。
あえて違いを挙げるとすれば、次のようなニュアンスの差です。
- 多岐にわたる:話題・業務・分野などが「幅広く広がっている」ことに焦点がある
- 多岐に及ぶ:影響・活動・取り組みなどが「さまざまな分野へ及んでいる」ことに焦点がある
また、実際の使用頻度としては、多岐にわたるのほうが圧倒的に一般的で、ビジネス文書でも日常会話でもよく使われます。一方の多岐に及ぶは、やや硬め・文章語寄りの印象があり、ニュースやレポート、論文などで見かけることが多い表現です。
- 意味の違いはごくわずかで、どちらも「範囲・分野が広い」ことを表す
- 実務では「多岐にわたる」を使っておけばまず間違いはない
- 文章を少しかしこまった印象にしたいときは「多岐に及ぶ」も選択肢になる
多岐にわたると多岐に及ぶの使い分けの違い
私自身が文章を書くときに意識している使い分けのポイントは、次の3つです。
- ① 読み手や媒体(ビジネスメール・社内資料・レポート・論文など)
- ② 何が「多岐」なのか(話題・分野・影響・活動範囲など)
- ③ 文全体のトーン(やわらかい/やや硬い)
例えば、社内メールや説明資料では、読みやすさを重視して多岐にわたるを使うことが多いはずです。
- 当社の事業は多岐にわたる分野に広がっています。
- ご質問は多岐にわたるため、項目ごとに回答いたします。
一方、ニュースや報告書、論文などでは、影響や取り組みが「さまざまな分野に及んでいる」イメージを出したい場面で多岐に及ぶがよく使われます。
- 事故の影響は、多岐に及ぶ産業分野に広がっている。
- 彼の研究は多岐に及ぶ領域で高く評価されている。
とはいえ、厳密なルールがあるわけではなく、どちらを使っても文意が通じるケースがほとんどです。迷ったときは、多岐にわたるを選んでおけば無難と考えてよいでしょう。
多岐にわたると多岐に及ぶの英語表現の違い
英語に訳すときは、多岐にわたる・多岐に及ぶのどちらも、基本的には同じ表現を使えます。意味としては「幅広い分野にまたがる」「さまざまな領域をカバーする」というイメージです。
よく使われる英語表現の例
- have a wide range of ~(幅広い~を持っている)
- cover a broad range of topics(広い範囲の話題を扱う)
- be involved in various fields(さまざまな分野に関わっている)
- include many different areas / fields(多くの異なる分野を含む)
- be wide-ranging(幅広い、広範囲に及ぶ)
例えば、次のように表現できます。
- 彼の知識は多岐にわたる。
→ His knowledge is wide-ranging. - このプロジェクトは多岐に及ぶ分野に影響を与える。
→ This project will affect many different fields.
日本語側の「多岐にわたる/多岐に及ぶ」よりも、英語では「何が」「どのように」広いのかを具体的に書くのが自然なので、文脈に合わせて上記の表現を組み合わせて使うとよいでしょう。
多岐にわたるの意味
ここからは、多岐にわたるに焦点を当てて、意味・使う場面・語源・類義語と対義語を整理します。まずは、言葉の成り立ちとイメージをしっかり押さえることで、自然な使い方が見えてきます。
多岐にわたるとは?意味や定義
多岐にわたるは、物事がさまざまな方面・分野に広がっていることを表す言葉です。
「多岐」は「たくさんの枝分かれ」「分かれ道が多い状態」という意味を持ち、「わたる」は「ある範囲にまで及ぶ」「広く通じる」という意味の動詞です。
これらが合わさることで、一つのテーマに留まらず、多くの方向・ジャンルに広がっている様子を表現できます。
イメージしやすい具体例
- 多岐にわたる分野で活躍している(活躍範囲が広い)
- 多岐にわたる問題が山積している(問題がいろいろな種類に分かれている)
- 多岐にわたる知識が求められる(必要な知識の範囲が広い)
多岐にわたるはどんな時に使用する?
多岐にわたるは、対象が「三つ以上」で、しかも方向性やジャンルがバラバラなときに特に使いやすい表現です。
例えば、次のような場面です。
- 業務内容が多岐にわたる(営業・企画・事務・広報など、種類が多い)
- 調査項目が多岐にわたる(質問内容が複数の領域をカバーしている)
- 趣味が多岐にわたる(音楽・スポーツ・旅行など)
「たくさんある」だけでなく、「方向やジャンルがバラバラに広がっている」ことまで含めて表したいときに、多岐にわたるはぴったりです。
多岐にわたるの語源は?
語源を分解すると、「多岐」+「に」+「わたる」です。
- 多岐:多くの岐(分かれ道)=多くの方向に分かれている状態
- わたる:ある範囲全体に広がる、及ぶ
「岐」はもともと「枝分かれした道」を意味する漢字で、岐路・分岐などでも使われています。
- 多岐にわたるの「わたる」を「亘る」と表記する説もありますが、亘るは常用漢字ではないため、公用文やビジネス文書ではひらがな「わたる」が一般的です。
- 「多岐に渡る」と書いているケースも見かけますが、多くの辞書・用語解説では誤り(または推奨されない表記)とされています。
多岐にわたるの類義語と対義語は?
多岐にわたるの類義語・近い意味の表現を整理しておくと、文章のバリエーションが一気に増えます。
類義語・言い換え表現の例
- さまざまな/様々な
- 多種多様な
- 多方面にわたる
- 幅広い
- 多彩な
- 雑多な
中でも「さまざま」「多種多様」は、多岐にわたるのニュアンスと非常に近く、状況に応じて置き換えることができます。色々やさまざまの使い分けを丁寧に整理したい場合は、「さまざま」と「様々」の違いや意味・使い方・例文も参考になるはずです。
対義語・反対のイメージを持つ表現
- 単一の
- 限定的な
- 一様な
- 画一的な
- 均一な
例えば「業務が多岐にわたる」と言えば、担当範囲が広いイメージになりますが、「業務範囲は限定的だ」と言えば、その逆の印象になります。このように、類義語と対義語をセットで意識しておくと、文章全体のトーン調整がしやすくなります。
多岐に及ぶの意味
次に、多岐に及ぶの意味やニュアンスを整理していきます。基本的な意味は多岐にわたると同じですが、「及ぶ」という動詞が持つイメージから、少し違った使い所が見えてきます。
多岐に及ぶとは何か?
多岐に及ぶは、物事の影響や活動・関わりが、さまざまな分野・範囲に達していることを表す言葉です。
多岐は先ほどと同じく「多くの枝分かれ・多くの方向」、及ぶは「影響・効果などがある範囲にまで達する」という意味を持ちます。
このため、多岐に及ぶには、何かが波及していく、影響範囲が広がっていくといったニュアンスがやや強く含まれています。
多岐に及ぶを使うシチュエーションは?
多岐に及ぶは、ニュースや報道、レポート、論文、ビジネス文書など、やや硬めの文体で使われることが多い表現です。
- 影響・被害・問題などが、さまざまな分野に広がるとき
- 活動・研究・取り組みが、複数の領域にまたがっていることを示したいとき
- 公的な文章・報告書などで、フォーマルな印象を出したいとき
例としては、次のような文章が挙げられます。
- 今回のシステム障害は、多岐に及ぶ業務プロセスに影響を与えた。
- 彼の研究は、多岐に及ぶ学術分野で参照されている。
- インフレの影響は、多岐に及ぶ産業分野に波及している。
多岐にわたるに比べると、「影響・結果・波及」のイメージが強いため、何かが広く及んでいる様子を、少し硬めのトーンで伝えたいときに向いていると考えてよいでしょう。
多岐に及ぶの言葉の由来は?
多岐に及ぶも、「多岐」+「に」+「及ぶ」に分解できます。
- 多岐:複数の道へと分かれているさま
- 及ぶ:ある範囲や状態にまで達すること
このため、多岐に及ぶは「いろいろな枝分かれした部分にまで影響・活動が届いている」というイメージで理解すると分かりやすくなります。
多岐に及ぶの類語・同義語や対義語
多岐に及ぶの類語は、多岐にわたるとかなり重なりますが、特に次のような表現が近いイメージを持ちます。
類語・同義語の例
- 多方面に及ぶ
- 広範囲にわたる
- 広い分野に影響する
- 幅広い領域をカバーする
- さまざまな分野で展開される
対義語の例
- 一部の分野に限られる
- 限定的な影響にとどまる
- 狭い範囲にしか及ばない
「及ぶ」が「影響が届く」イメージの動詞なので、多岐に及ぶの対義語は、影響が限定されている・広がっていない状態を表す表現と覚えると整理しやすいはずです。
多岐にわたるの正しい使い方を詳しく
ここからは、実際の文章で多岐にわたるを使いこなすために、例文・言い換え・使い方のポイント・間違えやすい表現をまとめて解説します。
多岐にわたるの例文5選
多岐にわたるの使い方をイメージしやすいよう、ビジネスと日常の両方から例文を挙げます。
- 当社は多岐にわたる分野で事業を展開しています。
- プロジェクトの成功には、多岐にわたる専門知識が必要です。
- 会議では多岐にわたるテーマが議論されました。
- 彼女は多岐にわたる業務を一手に引き受けている。
- 趣味が多岐にわたる友人は、どんな話題にもついてきてくれます。
いずれも、「種類が多い」「方向やジャンルが幅広い」というイメージを自然に表現できる例です。
多岐にわたるの言い換え可能なフレーズ
同じ文章の中で何度も多岐にわたるを使うと、くどい印象になりがちです。その場合は、次のような言い換えをうまく織り交ぜると、読みやすさがぐっと高まります。
代表的な言い換え表現
- さまざまな分野にまたがる
- 多方面にわたる
- 幅広い分野で
- 多種多様な領域で
- 多彩な分野において
例えば、
- 当社は多岐にわたる分野で事業を展開しています。
→ 当社は多方面にわたる分野で事業を展開しています。 - 多岐にわたるご質問をいただきました。
→ さまざまな観点からのご質問をいただきました。
色々・さまざま・多様といった語の違いも確認しておきたい場合は、「色々」と「いろいろ」の違いや意味・使い方・例文まとめなどの記事で、ニュアンスの差を整理しておくと表現の幅がさらに広がります。
多岐にわたるの正しい使い方のポイント
多岐にわたるを使うときに、私が特に意識しているポイントは次の3つです。
- 「多岐」だと分かるように、できるだけ具体的な対象(業務・分野・テーマなど)を後ろに置く
- 「多岐」が本当にふさわしいか、一つの視点にまとまっていないかを確認する
- 文の中で繰り返しすぎないよう、類義語とバランスよく使う
例えば、「多岐にわたる課題」とだけ書くよりも、
- 多岐にわたる経営課題(人材・資金・組織・制度など)
- 多岐にわたる社会問題(教育・福祉・環境・経済など)
のように、何が「多岐」なのかを補足すると、読み手にとってぐっと分かりやすくなります。
多岐にわたるの間違いやすい表現
多岐にわたるは、表記や使い方の面で少し間違えやすいポイントがあります。
- × 多岐に渡る
→ 一般には誤表記とされることが多く、「多岐にわたる」とひらがなで書くのが無難です。 - △ 多岐に亘る
→ 意味としては正しいものの、「亘る」は常用漢字ではないため、公的な文書やビジネス文書では避けられる傾向があります。 - △ 多岐にわたるを、選択肢が少ない場面(2つ程度)で使ってしまう
→ 選択肢が3つ以上、かつ方向性が多様なときに使うのが自然です。
表記の誤りは、書き手の細部への配慮が問われるポイントでもあります。一般的な読み方や表記の誤りは、「役務(やくむ)」と「役務(えきむ)」の違いと意味のような記事でも詳しく整理しているので、気になる場合は併せて確認してみてください。
多岐に及ぶを正しく使うために
続いて、多岐に及ぶについても、例文・言い換え・使い方のコツ・間違った使い方をまとめて押さえておきましょう。多岐にわたるとの違いを意識しながら読むと、使い分けのイメージがよりはっきりしてきます。
多岐に及ぶの例文5選
多岐に及ぶの使い方をイメージしやすいよう、フォーマル寄りの文体で例文を挙げます。
- 本件の影響は、多岐に及ぶ部門に波及しています。
- 彼は多岐に及ぶ分野で第一線の研究を続けている。
- 今回の施策は、多岐に及ぶ社会問題の解決を目指したものです。
- インシデントの原因は、多岐に及ぶ要因が複雑に絡み合っていました。
- このプロジェクトには、多岐に及ぶ専門家が関わっています。
いずれも、「影響・関与・活動がさまざまな分野に達している」イメージを表しています。
多岐に及ぶを言い換えてみると
多岐に及ぶは、次のような表現で言い換えることができます。
言い換えの候補
- 広範囲にわたる
- 多方面に及ぶ
- 幅広い分野に影響する
- さまざまな分野に波及する
- 多くの領域に関わる
文脈に合わせて、影響の広がりを強調したいときは「広範囲にわたる」「多方面に及ぶ」、関与・参加の広さを示したいときは「多くの領域に関わる」のように、焦点を少し変えてあげると文章の精度が上がります。
多岐に及ぶを正しく使う方法
多岐に及ぶを不自然なく使うためには、次のポイントを意識するとよいでしょう。
- 「影響・活動・関与・経験」など、何が「及ぶ」のかをはっきりさせる
- ビジネスメールなど読み手に負担をかけたくない場面では、多岐にわたるとのバランスを取る
- 文全体のトーン(硬さ)に合わせて、言い換え表現も検討する
例えば、
- 彼は多岐に及ぶ分野で活躍している。
→ 彼は多岐にわたる分野で活躍している。(少し読みやすい印象) - 不具合の影響は多岐に及ぶ。
→ 不具合の影響は多方面に及ぶ。(具体性が増す)
「多岐に及ぶでなければ成立しない文」はほとんどありません。多岐にわたるや他の類語と置き換えながら、文脈に最もなじむ表現を選ぶのが、実務的な使い方だと考えています。
多岐に及ぶの間違った使い方
多岐に及ぶで気をつけたいのは、「多岐である必要がない場面」や「ただ難しい言い方に見せたいだけの文章」で無理に使ってしまうことです。
- × 彼の趣味は多岐に及ぶ映画鑑賞です。
→ 趣味の対象が一つ(映画鑑賞)のため、「多岐」とは言いにくい。 - × 会議では多岐に及ぶ一つの議題について話し合いました。
→ 「多岐」と「一つの」が矛盾している。 - × 多岐に及ぶ理由で遅刻しました。
→ 日常会話では不自然に堅く、「いろいろな理由で遅刻しました」で十分。
このように、数が多いことだけを強調したいなら「さまざまな」「いろいろな」で十分なケースも多いです。「多岐に及ぶ」を使うときは、あくまで文章全体の読みやすさとバランスを優先しましょう。
まとめ:多岐にわたると多岐に及ぶの違いと意味・使い方の例文
最後に、本記事のポイントを整理します。
- 多岐にわたると多岐に及ぶは、どちらも「物事が多方面に分かれている」「範囲が広い」という意味で、意味の差はごくわずか。
- 多岐にわたるは日常的で汎用性が高く、ビジネスメールや会話でも使いやすい。
- 多岐に及ぶはやや硬めの印象があり、「影響がさまざまな分野に達している」ニュアンスを出したいときに向いている。
- どちらも、さまざま・多種多様・多方面にわたる・広範囲にわたるなどの類義語と組み合わせて使うと、文章の幅が広がる。
迷ったときは、多岐にわたるを優先して使い、必要に応じて多岐に及ぶや他の類語を補助的に使う、というスタンスでほとんどの場面をカバーできます。
なお、本記事で紹介した意味や用法、類義語・対義語は、一般的な辞書や用語解説、ビジネス文書の用例などを前提とした「一般的な目安」です。実際の運用ルールは会社や媒体によって異なることもありますので、正確な情報は公式な辞書・文法書・社内規程などをご確認ください。
特に、公的な書類や重要な契約文書など、読者の人生や財産に影響を与え得る文書では、言葉の選び方が大きな意味を持ちます。最終的な判断に迷う場合は、社内の文書担当者や日本語の専門家にご相談ください。
「違いの教科書」では、今後も日本語の似た表現の違いや使い分けを、例文と一緒に分かりやすく解説していきます。多岐にわたる表現の違いを楽しみながら、語彙力を少しずつ磨いていきましょう。

