
「趣味がこうじて」「病がこうじる」など、会話でも文章でも見かける“こうじる”。でも、いざ漢字にしようとすると「高じる」と「昂じる」のどちらが正しいのか迷いませんか。
この記事では、「高じると昂じるの違い」や「意味」、読み方(こうじる)、使い方、例文、語源(高ずる)、類義語・対義語、言い換え、英語表現までを、ひとつの記事で整理します。「嵩じる」などの表記ゆれや、「講じる」との違いが気になる方も、ここでスッキリさせましょう。
- 高じると昂じるの意味の違いと使い分け
- 語源や類義語・対義語、言い換え表現
- 英語表現にしたときのニュアンス
- すぐ使える例文と間違いやすいポイント
高じると昂じるの違い
最初に結論から整理します。どちらも読み方は「こうじる」で、基本の意味はほぼ共通です。ただし、漢字が与える印象と、文脈での“しっくり感”に差が出ます。
結論:高じると昂じるの意味の違い
私の結論としては、意味の核は同じで、違いは漢字が示すニュアンスです。
- 高じる:程度が高まっていく(増していく)こと全般を広く表す。常用的で無難
- 昂じる:気分・感情・熱量が高揚する方向に“昂ぶる”感じを帯びやすい。やや文章語・描写的
辞書的にも「高じる・昂じる・嵩じる」は同じ語として扱われ、一般に「程度が甚だしくなる/悪化する/激しさが増す」といった方向性で説明されます。
高じると昂じるの使い分けの違い
使い分けは、「何が高まるのか」を意識すると簡単です。
- 高じるが合いやすい:議論・病状・事態・欲求・関係のこじれなど、プラス/マイナスを問わず“程度が増す”場面
- 昂じるが合いやすい:興奮・気分・熱意・闘志など、内側からの高揚を描写したい場面
たとえば「趣味がこうじて」は、一般には「高じて」表記が最も無難です。一方で、作品やエッセイなどで感情の熱量を強く出したいなら「昂じて」と書くと、文字の印象がそのまま効果になります。
高じると昂じるの英語表現の違い
英語にすると、両者は同じ方向に寄せて訳すことが多いです。代表的には次のような表現が使われます。
| 日本語 | 近い英語表現 | ニュアンス |
|---|---|---|
| 高じる/昂じる | grow in intensity | 強さ・程度が増す |
| 高じる/昂じる | be aggravated / get worse | 悪化する(病状・問題) |
| 高じる/昂じる | develop | 進行する/発展する |
特に「病が高じる」は “His illness grew worse / became more serious.” のように、悪化として訳すのが自然です。
高じるの意味
ここからは、それぞれを単独で深掘りします。まずは、いちばん使用頻度が高い「高じる」から確認しましょう。
高じるとは?意味や定義
「高じる」は、簡単に言うと物事の程度が増していくことを表します。気持ち・状態・症状・状況などが、あるラインを超えて強くなるイメージです。
ポイントは、単なる「少し増える」ではなく、“増した結果、次の出来事につながる”ような文脈で使われやすいこと。だからこそ「趣味が高じて副業にした」のように、後半に“結果”が続く文章と相性が良いです。
高じるはどんな時に使用する?
私が実際に文章を書くときは、次の2パターンで使うことが多いです。
- 好意・熱意などが強まって、行動や結果に結びつくとき(例:趣味が高じて資格を取る)
- 議論・症状・トラブルなどが激しくなり、悪化・対立・発展に向かうとき(例:議論が高じて口論になる)
注意したいのは、「高じる」には“程度が増す(しばしば行き過ぎる)”含みがある点です。単に「上達する」「良くなる」という意味での使用は、文脈次第で不自然になります。
高じるの語源は?
「高じる」は、古語の文語動詞「高ずる」にさかのぼる、と説明されるのが一般的です。「高くなる」「程度が増す」といった意味が、口語化の過程で「高じる」に落ち着いた、という流れです。
高じるの類義語と対義語は?
「高じる」の近い言葉は多いのですが、置き換えるときはニュアンス差に気をつけます。
類義語(近い意味)
- 募る:感情・思いが強まる(恋しさが募る)
- 激化する:争い・状態が激しくなる(競争が激化する)
- 悪化する:主にマイナスの状態が進む(症状が悪化する)
- 昂ぶる:感情が高ぶる(※感情寄り)
対義語(近い反対)
- 和らぐ:緊張・症状・感情が弱まる
- 落ち着く:興奮が収まる/状態が安定する
対義語としては「和らぐ」が挙げられることが多く、感情や症状の“強まり”と“弱まり”を対で捉えると理解しやすいです。
昂じるの意味
次に「昂じる」です。使える場面は広いものの、漢字が持つ雰囲気によって、文章の温度感が少し変わります。
昂じるとは何か?
「昂じる」も読み方は「こうじる」で、意味の中心は程度が増す/激しくなるです。辞書でも「高じる」と並列で扱われ、同じ語として解説されることが多い表記です。
ただ、漢字の「昂」には“気分が上がる・高揚する”イメージが強く、文章上は感情・熱意・興奮の上振れと相性が良いと私は感じています。
昂じるを使うシチュエーションは?
「昂じる」がしっくり来るのは、次のような場面です。
- 熱中・こだわり・執着が強まり、行動が加速する場面
- 感情が高揚して、判断が強めに振れる場面(文章表現として)
- 硬めの文章・小説的な心情描写で、語感を整えたい場面
逆に、ビジネスメールや公的文書では、表記ゆれで読者を迷わせないためにも「高じる」に寄せるのが無難です。
- 社内文書・契約関連など、誤解が困る文章では、難しい表記を増やしすぎない
- 固有の言い回し(慣用句)に近い形は、一般的な表記を優先する
昂じるの言葉の由来は?
「昂じる」の「昂」は、「昂る(たかぶる)」にも使われる字で、高く上がる/高揚する方向のイメージを持ちます。だからこそ「昂じる」は、同じ“こうじる”でも、心理描写の温度が上がりやすい表記だと捉えると納得しやすいです。
関連するニュアンス整理として、「昂る」と「高ぶる」の違いもあわせて読むと、漢字が持つ空気感がつかみやすくなります。
昂じるの類語・同義語や対義語
類語・同義語(近い言い換え)
- 高まる:程度が上がる(より一般的)
- 昂ぶる:興奮する(感情に寄る)
- 熱を帯びる:議論や感情がヒートアップする
- 過熱する:熱量が行き過ぎる(比喩的にも)
対義語(近い反対)
- 冷める:熱意・気分が引く
- 鎮まる:興奮が収まる
- 和らぐ:強さが弱まる
「昂じる」は感情寄りに読まれやすいので、対義語も「冷める」「鎮まる」などがしっくり来ます。なお、対義語として「和らぐ」が挙がる整理もあります。
高じるの正しい使い方を詳しく
ここからは「高じる」を“実際に書ける/話せる”レベルに落とし込みます。例文と、言い換え、誤用しがちなポイントをセットで覚えるのが一番早いです。
高じるの例文5選
- 議論が高じて、つい言い過ぎてしまった
- 読書好きが高じて、書評ブログを始めた
- 不安が高じて、眠れない日が続いている
- 彼の猜疑心が高じて、周囲との関係がぎくしゃくした
- 症状が高じた場合は、早めに医療機関へ相談したほうがよい
「趣味が高じて」は定番で、後ろに“結果(始めた/転職した/資格を取った)”を置くと自然です。
高じるの言い換え可能なフレーズ
文章のトーンに合わせて、次のように言い換えると読みやすくなります。
| 高じるの言い換え | 合う場面 | 例 |
|---|---|---|
| 募る | 感情・思い | 不安が募る |
| 悪化する | 症状・状況 | 病状が悪化する |
| 激化する | 争い・競争 | 対立が激化する |
| エスカレートする | 会話寄り | 口論がエスカレートする |
高じるの正しい使い方のポイント
私が校正でよくチェックするのは、次の3点です。
- 「何が」高じるのかが明確か(議論/不安/趣味/症状など)
- 後半が結果・影響につながっているか(〜してしまう/〜に発展する)
- 良化の意味で使っていないか(「上達した」には基本的に使わない)
高じるの間違いやすい表現
「高じる」は同音異義語が多いので、誤変換・誤用が起きやすい言葉です。
- 「策を講じる」と「事態が高じる」を混同して書く(講じる=手段を考えて実行する)
- 「状況が好転した」の意味で「高じる」を使う(高じるは“増す”側で、良化ニュアンスにはなりにくい)
- 「趣味がこうじて」を「工事て」などに誤変換する
とくに「講じる」はビジネスで頻出なので、変換候補が近い文章ほど注意が必要です。
昂じるを正しく使うために
「昂じる」は、正しく使うと文章の温度感を上げられます。一方で、読み手によっては「なぜこの漢字?」と引っかかることもあるので、場面選びが大切です。
昂じるの例文5選
- 期待が昂じて、前日の夜はなかなか眠れなかった
- 好奇心が昂じて、未経験の分野に飛び込んだ
- 闘争心が昂じて、つい強い口調になった
- 正義感が昂じて、相手を追い詰める言い方になってしまった
- 熱意が昂じると、視野が狭くなることがある
いずれも、感情・熱量が内側からせり上がるイメージを前面に出しています。
昂じるを言い換えてみると
「昂じる」は、文章の雰囲気に合わせて次のように言い換えできます。
- 高まる:最も一般的で幅広い
- 昂ぶる:興奮を強めたい
- ヒートアップする:会話やコラム向き
- 過熱する:行き過ぎのニュアンスを明確にできる
読み手の年齢層や媒体(SNS/ブログ/社内文書)によって、ひらがな(こうじる)にするのも一つの手です。
昂じるを正しく使う方法
私のおすすめは、次の基準で判断することです。
- 読み手が迷わない文章にしたい → 高じるに寄せる
- 感情描写・文学的な温度がほしい → 昂じるを選ぶ
- “程度が増して結果に至る”構図を見せたい → どちらでも可(ただし媒体に合わせる)
昂じるの間違った使い方
誤りやすいのは、漢字のイメージだけで“テンションが上がる=昂じる”と固定してしまうケースです。
- 単に「嬉しい」「楽しい」を言いたいだけで使う(重く聞こえることがある)
- 公的・事務的な文章で多用し、読者に表記の負担をかける
- 「昂じる」を「昂る」と混同して、語尾や文型を崩す
「昂じる」は便利ですが、文章全体の語彙レベルと揃えないと、そこだけ浮いてしまいます。
まとめ:高じると昂じるの違いと意味・使い方の例文
「高じる」と「昂じる」は、どちらも「こうじる」と読み、意味の中心は「程度が増す/激しくなる」です。違いは、漢字が示すニュアンスにあります。
- 迷ったら、一般的で無難な高じる
- 感情や熱量の高揚を描写したいなら昂じる
- 「趣味が高じて」「議論が高じて」「病が高じる」など、結果につながる文で使うと自然

