
「暫時」と「漸次」は、読み方が似ているうえにどちらも改まった文章で見かけやすく、「ざんじ?ぜんじ?」「意味の違いは?」「ビジネスメールで使って大丈夫?」と迷いがちな言葉です。
さらに、類語や言い換え(しばらく、当面、徐々に、段階的に)も多く、うろ覚えのまま使うと、相手に「意図と違うニュアンス」で伝わってしまうことがあります。
この記事では、暫時と漸次の違いを結論から整理し、使い分け、語源、類義語・対義語、英語表現、そしてそのまま使える例文まで、まとめて分かるように解説します。最後まで読めば、会議資料や社内文書、丁寧な連絡文でも迷わず選べるようになります。
- 暫時と漸次の意味の違いと覚え方
- ビジネスでの使い分けと注意点
- 類義語・対義語・言い換え表現の整理
- 英語表現と例文での実践的な使い方
暫時と漸次の違い
まずは全体像として、暫時と漸次が「何を表す言葉なのか」を一気に整理します。ここで軸を押さえると、後半の語源や例文がぐっと理解しやすくなります。
結論:暫時と漸次の意味の違い
結論から言うと、暫時は「少しの間(しばらく)」、漸次は「だんだん(徐々に)」です。似ているのは読み方だけで、意味は別物だと割り切るのが一番早いです。
- 暫時:時間の長さ(短め)を示す。「少しの間」「しばらく」
- 漸次:変化・進行のしかたを示す。「だんだん」「徐々に」「段階的に」
私が運営している「違いの教科書」では、似た言葉は「何を表しているか(時間か/進み方か)」で仕分けるのを推しています。暫時は“時間”、漸次は“変化のプロセス”。これだけで混同が激減します。
暫時と漸次の使い分けの違い
使い分けのコツは、文章の中で置き換えてみることです。暫時が入る場所に「しばらく」を入れて自然なら暫時、漸次が入る場所に「徐々に」を入れて自然なら漸次です。
| 観点 | 暫時 | 漸次 |
|---|---|---|
| 中心の意味 | 少しの間 | だんだん・徐々に |
| 言い換え | しばらく/当面/少々 | 徐々に/次第に/段階的に |
| 合う文脈 | 待つ・休む・保留する | 改善する・拡大する・増減する |
| よくある誤用 | 「暫時改善する」など変化の話に使う | 「漸次お待ちください」など待機に使う |
「お待ちください」は暫時、「改善します」は漸次というセットで覚えると実戦で強いです。
なお、「随時」「逐次」「順次」も混乱しやすい“時・次”仲間です。セットで整理したい人は、当サイトの関連記事も参考になります。「随時」「逐次」「順次」の違いと意味・使い方や例文まとめ
暫時と漸次の英語表現の違い
英語にすると差がさらに明確になります。暫時は「一定の時間だけ待つ」、漸次は「変化が少しずつ進む」です。
- 暫時:for a while / for a short time / for the time being など
- 漸次:gradually / little by little / by degrees / progressively など
英語は「時間(for a while)」と「変化(gradually)」で形がはっきり違うので、日本語でも同じ軸で整理すると迷いません。
暫時とは?
ここからは言葉を個別に深掘りします。まずは「暫時」。丁寧な案内文や、硬めの文書で見かけやすい表現です。
暫時の意味や定義
暫時(ざんじ)は、「少しの間」「しばらくの間」を表す言葉です。ポイントは、具体的な分数ではなく、状況に応じた“短い待機・中断”のニュアンスだということ。
たとえば「暫時休憩」「暫時お待ちください」は、数十秒〜数分程度の“長すぎない時間”を想定することが多い印象です。ただし、厳密な時間が決まっている表現ではありません。
- 暫時は「時間の目安」を示す言葉で、分単位の確約には向かない
- 正確な時間が必要な場面では「5分ほど」「10分程度」など具体表現を優先
正確な意味や用例の確認は、国語辞典や公的機関の用語集など、信頼できる一次情報もあわせて確認してください。最終的な判断は、用途に応じて専門家や社内ルールに従うのが安心です。
暫時はどんな時に使用する?
暫時が一番しっくり来るのは、「待機」「中断」「保留」「猶予」の文脈です。日常会話よりも、アナウンス・文書・かしこまった会話で自然に見えます。
- 受付・窓口:暫時お待ちください
- 会議進行:暫時休憩いたします
- 交渉・調整:暫時、猶予をいただけますでしょうか
「今すぐではないが、少し待ってほしい」を丁寧に伝えたいときに便利です。
暫時の語源は?
暫時は、漢字の「暫(しばらく)」と「時(時間)」が組み合わさった語です。言い換えるなら「しばらくの時間」。構造がそのまま意味になっています。
語源を難しく考えすぎなくても、暫=しばらくと押さえるだけで十分。ここが漸次(漸=だんだん)との最大の分岐点です。
暫時の類義語と対義語は?
暫時の類義語は「短い待機・当面」を表す言葉が中心です。対義語は文脈で変わります。
| 区分 | 例 | ニュアンス |
|---|---|---|
| 類義語 | しばらく、少々、当面、一時 | 短い時間の継続/待機 |
| 対義語(期間) | 恒久、永遠、長期 | 短い⇔長い |
| 対義語(即時性) | 即時、直ちに、瞬時 | 待つ⇔待たない |
対義語は「何と対比したいのか」で変わるので、文章の目的に合わせて選ぶのがコツです。
漸次とは?
次は「漸次」。こちらは“時間”ではなく、“変化の進み方”を表す言葉です。資料・報告書・改善提案などでよく使われます。
漸次の意味を詳しく
漸次(ぜんじ)は、「だんだん」「次第に」「徐々に」という意味で、物事が少しずつ進む・変わる様子を表します。短時間で一気に変わるのではなく、段階を踏むイメージです。
たとえば「漸次改善する」「漸次拡大する」は、改善や拡大が“一歩ずつ進む”ニュアンスになります。勢いはあるけど急激ではない、そんな表現です。
- 漸次は「変化のスピードや段階性」を丁寧に示せる
- 単発の出来事より、継続的なプロセスに向く
漸次を使うシチュエーションは?
漸次が生きるのは、改善・導入・増減・移行など、プロセスがある話です。ビジネス文書で“硬さ”を出したいときにも相性が良いです。
- 業務改善:運用を漸次見直します
- 導入計画:新制度を漸次導入します
- 数値推移:売上が漸次伸びています
ただし、相手や媒体によっては堅く感じられることもあります。社内チャットなどでは「徐々に」「段階的に」に言い換えると、読み手の負担が減ります。
漸次の言葉の由来は?
漸次は、「漸(しだいに)」+「次(つぎつぎに/順に)」という組み合わせです。意味としては「順を追って、少しずつ」という構造になっています。
この“順を追って”の感覚が、暫時(しばらく待つ)とはまったく別の方向性です。読みが似ているせいで混同しやすいだけで、頭の中では別の棚に置くのが正解です。
漸次の類語・同義語や対義語
漸次の類語は「少しずつ進む・変わる」方向の言葉が中心です。対義語は「急激」「一気に」系が分かりやすいです。
| 区分 | 例 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 類語・同義語 | 徐々に、次第に、だんだん、段階的に、少しずつ | 変化の過程を説明 |
| 対義語 | 急激に、突然、一気に、瞬く間に | 変化の速さを強調 |
文章のトーンを整えたいときは、「漸次」⇔「段階的に」、「急激に」⇔「一気に」など、硬さを揃えるのがおすすめです。
暫時の正しい使い方を詳しく
ここからは実践編です。暫時を“自然に”使うには、定型の型と、誤用パターンを押さえるのが最短ルートです。
暫時の例文5選
- ただいま確認しておりますので、暫時お待ちください
- 会議は暫時休憩とし、10分後に再開します
- 対応方針が固まるまで、暫時この手順で運用します
- 結論を出す前に、暫時検討のお時間をいただけますでしょうか
- 混雑しておりますため、暫時お待ちいただく可能性がございます
ポイントは、「待つ」「休む」「当面の運用」など、時間の区切りを示す文に寄せることです。
暫時の言い換え可能なフレーズ
暫時は便利ですが、文章の硬さが合わないと浮きます。相手や媒体に合わせて言い換えを持っておくと安心です。
- 丁寧:少々お待ちください/しばらくお待ちください
- ビジネス文書:当面の間/一時的に
- 口語:ちょっとの間/少しだけ
相手が専門用語に慣れていないなら、無理に暫時を使わない。これも立派な使い分けです。
暫時の正しい使い方のポイント
暫時は“時間の曖昧さ”を許容する表現です。だからこそ、誤解が困る場面では補助情報を足すのがコツです。
- 待機時間が読めるなら「暫時(5分ほど)」のように目安を添える
- 「暫時対応します」は不自然になりやすいので、動詞は「お待ちください」「休憩します」などに寄せる
- 相手が外部(顧客・取引先)の場合は、より平易な言い換えも検討する
なお、運用・契約・法務など、判断を誤ると影響が大きい文書では、表現の最終確認を必ず行ってください。正確な情報は公式資料をご確認のうえ、必要なら専門家にご相談ください。
暫時の間違いやすい表現
暫時で多いミスは、「漸次」と混ぜて“変化”の意味で使ってしまうことです。
- 誤:暫時改善していきます(改善=変化の話なので漸次が自然)
- 正:漸次改善していきます/段階的に改善していきます
- 誤:暫時増加しています(増加=推移なので漸次が自然)
- 正:漸次増加しています/徐々に増加しています
暫時は「今この場の待機・中断」に強い言葉、と覚えておけばブレません。
漸次を正しく使うために
漸次は“少しずつ進む”を上品に言える反面、待機の意味では使えません。ここは例文で感覚を固めましょう。
漸次の例文5選
- 課題を整理し、優先度の高いものから漸次対応します
- 新システムは一部部署から漸次導入していきます
- 試験運用の結果を踏まえ、運用ルールを漸次改善します
- 問い合わせ件数は漸次落ち着いてきています
- 在庫状況を見ながら、出荷を漸次進めます
「段階」「順序」「推移」が見える文に置くと、漸次の良さが出ます。
漸次を言い換えてみると
読み手に伝わることを最優先するなら、漸次は言い換え候補が豊富です。文章の硬さを調整する目的でも役立ちます。
- やわらかめ:徐々に/だんだん/少しずつ
- 計画感:段階的に/順を追って
- フォーマル:gradually(英語)/progressively(英語)
企画書・報告書では「段階的に」のほうが具体性を出しやすいこともあります。どちらが適切かは、読み手の前提知識と文書の目的で選んでください。
漸次を正しく使う方法
漸次を自然に使うためのコツは、「何が、どんな順で、どう変わるのか」を一緒に書くことです。漸次だけだと抽象的なので、補助線を引いてあげるイメージですね。
- 「A部署→B部署→全社」のように、導入順を添える
- 「今月は改善案の整理、来月から反映」のように段階を添える
- 「漸次増加」など推移なら、期間(この数か月で)を添える
数値を出す場合は、あくまで一般的な目安として示し、断定を避けるのが無難です。正式な数値や条件は、社内の一次資料・公式情報をご確認ください。
漸次の間違った使い方
漸次で多い誤りは、暫時の定型句に混ぜてしまうことです。特に「お待ちください」は要注意です。
- 誤:漸次お待ちください
- 正:暫時お待ちください/少々お待ちください
- 誤:漸次休憩します(休憩はプロセスではなく区切り)
- 正:暫時休憩します/一度休憩します
漸次=変化、暫時=待機。この対比を体に染み込ませるのが最短です。
まとめ:暫時と漸次の違いと意味・使い方の例文
最後に、暫時と漸次の違いをもう一度まとめます。
- 暫時:少しの間・しばらく(待機/中断/当面)
- 漸次:だんだん・徐々に(変化/進行/段階的)
- 迷ったら「しばらく」に置き換えて自然なら暫時、「徐々に」に置き換えて自然なら漸次
- 誤解が困る文書では、具体的な時間・段階を添え、公式情報の確認や専門家への相談も検討
暫時と漸次は、使えると文章が引き締まる一方で、混同すると意味が逆転してしまう危険な組み合わせです。この記事の例文を、自分の業務文面に置き換えて練習しておくと、次に出会ったときに迷いません。

