五箇条の御誓文と五榜の掲示–試験別対策ガイド
五箇条の御誓文と五榜の掲示–試験別対策ガイド

五箇条の御誓文五榜の掲示は、明治維新直後に発布された日本近代史の出発点ともいえる重要資料です。これらは中学入試から高校入試センター試験対策、日本史検定対策、公務員試験対策まで、幅広い試験で出題される定番テーマとなっています。
本記事では「五箇条の御誓文 五榜の掲示 試験対策」と検索してきた皆さんのために、それぞれの違いや共通点をわかりやすく整理し、試験別対策の視点から解説します。

中でも注目すべきは、試験ごとに「覚えておくべき重要ポイント」や「暗記や理解の方向性」が異なる点です。また、実際に出題された「頻出問題と解答例(5問)」も掲載しているため、得点アップに直結する知識が身につきます。

結論:五箇条の御誓文と五榜の掲示は、対象・内容・目的が明確に異なっており、試験別に整理して覚えることが合格への近道です。

中学入試対策

中学入試対策
  • 覚えておくべき重要ポイント
  • 暗記や理解の方向性
  • 頻出問題と解答例(5問)

覚えておくべき重要ポイント

  • 発布年と背景:
    五箇条の御誓文・五榜の掲示はいずれも明治元年(1868年)に出されました。
    明治維新の新政府が樹立された直後、国内の安定と今後の方針を示すために発布されています。
  • 五箇条の御誓文(ごかじょうのごせいもん):
    1868年4月に明治天皇が神々に誓う形式で公布した、新政府の基本方針です。
    内容は「広く会議を開いて話し合う」「上下身分を問わず協力」「庶民も志を遂げられる社会」「旧来の悪い慣習を改める」「世界の知識を求めて国の基礎を強める」の5つから成り、新しい時代の理想を示しました。
    目的は近代国家への方向性を示すことで、新政府が「これからこの国をこうしていくぞ!」と宣言した重要な誓いの言葉です。
  • 五榜の掲示(ごぼうのけいじ):
    同じく1868年に新政府が民衆に向けて出した5つの禁令です。江戸時代の高札(こうさつ)のやり方を踏襲し、木札を掲示する形で公布されました。
    内容は「犯罪をしない・親孝行」「徒党(集団での騒動)禁止」「キリスト教の禁止」「外国人への暴行禁止」「無断で住居を移さない」など、民衆が守るべき規則が書かれています。
    目的は幕末からの混乱期に治安を維持することで、「新政府になったからって勝手なまねはするな、ルールは守れ」という意味合いがありました。特に「キリスト教の禁止」は江戸幕府の方針をそのまま引き継いだもので、新政府の対外的な批判を避ける意図もありました。

暗記や理解の方向性

  • 「誰に向けたものか」を意識する:
    五箇条の御誓文と五榜の掲示は目的も対象も異なります。御誓文は政府高官や神々への宣誓(未来への約束)掲示は全国の民衆への命令(その場で守るルール)と捉えると区別しやすいです。
    漢字の意味でも、「誓文=誓いの文書」なので政府の方針、「掲示=掲げ示す」なのでお触れ(禁止事項)と覚えましょう。
  • 名称に惑わされない:
    どちらも「五」という字が入りますが、五箇条は「五つの条文(約束事)」、五榜は「五枚の高札(掲示板)」という意味です。
    五箇条=5つの約束五榜=5つの禁止とイメージすると混同しにくくなります(五箇条の御誓文はプラスの内容、五榜の掲示はマイナスの内容)。
  • 問題文のキーワードに注目:
    中学入試レベルでは、設問文に「新しい政治の方針」とあれば御誓文を指し、「民衆に対する禁止令」とあれば五榜の掲示を指すなど、キーワードで判断できます。
    実際、学校のテストでは五榜の掲示が問われることは少なく、五箇条の御誓文の方が頻出です。ただし選択肢のひっかけで五榜の掲示が登場することがあるので、違いを理解しておきましょう。
  • 語呂合わせより概念理解:
    中学入試では細かい条文暗記より、「御誓文=明治の目指す方向性」「掲示=民衆統制のための禁止」という 役割の違い を押さえることが大切です。両者が対になって出る問題も多いので、それぞれ何のために出されたかをセットで覚えておきましょう。

頻出問題と解答例(5問)

  1. 問題: 1868年、明治新政府が発表した、新しい政治の基本方針を何というか。
    解答: 五箇条の御誓文
  2. 問題: 五榜の掲示に含まれていた禁制の具体例を一つ答えなさい。
    解答: キリスト教の禁止
  3. 問題: 五箇条の御誓文と五榜の掲示の目的の違いを簡単に説明しなさい。
    解答: 五箇条の御誓文は新政府が示した国の未来の理想や方針であり、五榜の掲示は民衆に対して示した当面の禁止事項(ルール)です。
  4. 問題:明治新政府が民衆に対して出した禁止令」を指す歴史用語を答えなさい。
    解答: 五榜の掲示
  5. 問題: 次のうち、五箇条の御誓文に関する説明として正しいものはどれか。
    (ア) 一揆の禁止、キリスト教の禁止など、国民に対する禁止令であった。
    (イ) 明治天皇が神に誓う形で示した新政府の基本方針である。
    (ウ) 江戸幕府が定めた庶民統制のための法律である。
    (エ) 明治政府の学問・教育に関する最初の布告である。
    解答: (イ)

高校入試対策

高校入試対策
  • 覚えておくべき重要ポイント
  • 暗記や理解の方向性
  • 頻出問題と解答例(5問)

覚えておくべき重要ポイント

  • 新政府最初の改革:
    五箇条の御誓文と五榜の掲示は、明治維新直後に打ち出された一対の政策です。ともに1868年に公布されましたが、それぞれ示した相手と内容が全く異なります
  • 五箇条の御誓文:
    明治天皇による五か条の誓いで、新国家の基本理念を示しました。「広く会議を興し(合議制の導入)」「上下心を一にし(身分を超えて団結)」「庶民も志を遂げよ(誰もが自分の志を追求)」「旧来の陋習を破り(悪い慣習の打破)」「智識を世界に求めよ(世界の知識を取り入れる)」という内容で、近代国家建設の指針となる画期的な宣言でした。この方針は後の日本の立憲政治や議会開設にもつながっていきます。
  • 五榜の掲示:
    新政府が全国の民衆に掲出した5枚の高札(おふれ)です。内容は「五倫の道を守る(忠孝など道徳遵守)」「徒党・強訴の禁止(騒乱を起こすな)」「邪教(キリスト教)の禁止」「外国人襲撃の禁止」「勝手な逃散・脱走の禁止」からなり、治安維持と旧来秩序の継続が目的でした。特にキリスト教は禁止と明記されており、これは江戸幕府以来の禁教政策の踏襲です。五榜の掲示は明治6年(1873年)に至り、欧米の宗教自由要求などのため廃止・撤回されています。
  • 対照的な内容:
    御誓文が未来志向(改革・開化の宣言)であるのに対し、五榜の掲示は現実志向(秩序維持の規則)でした。これは明治政府が一方で近代化を目指しつつ、他方で急激な混乱を防ぐため旧来の統制も維持しようとした姿勢を表しています。試験ではこの内容の対比(例:「会議を開く」vs「徒党禁止」)がよく問われます。

暗記や理解の方向性

  • 教科書の記述を正確に:
    高校入試では中学歴史教科書の範囲から出題されます。教科書には五箇条の御誓文の条文要旨や、五榜の掲示の禁令内容(キリスト教禁止など)が記載されています。それらを箇条書きで整理し、自分で説明できるようにしましょう。
  • 用語の組み合わせに注意:
    過去問では、「五榜の掲示なのに御誓文の説明を書いた選択肢」など引っかけがよくあります。「~基本方針を示した」とあれば御誓文、「~禁止令」とあれば五榜の掲示だと判断できます。両者をセットで覚えることで、誤った組み合わせを見抜けるようになります。
  • 年号と順序:
    明治元年(1868年)は入試でも重要な年号です。この年に起こった戊辰戦争、御誓文の発布、五榜の掲示、明治改元などの出来事をまとめて時系列で整理しましょう。例えば「戊辰戦争のさなかに御誓文と五榜が出された」ことも押さえておくと、関連事項として記憶が定着します。
  • 背景理解で差をつける:
    余裕があれば、五榜の掲示が1873年に撤廃された理由(キリスト教禁制に対する欧米の批判と新政府の安定化)にも触れておきましょう。中学範囲を超えますが、記述問題などで深い説明を書く際に差がつきます。

頻出問題と解答例(5問)

  1. 問題: 五榜の掲示で「邪教」として禁止されたのは、具体的にどの宗教か。
    解答: キリスト教
  2. 問題: 五箇条の御誓文と五榜の掲示はいずれも明治政府が出したが、その共通する発布年(西暦)を答えなさい。
    解答: 1868年(明治元年)
  3. 問題: 明治政府が五榜の掲示を出した主な目的を簡潔に答えなさい。
    解答: 世情が不安定な中で民衆の暴動や混乱を防ぎ、治安を維持するため。(※答え方例:「新政府が民衆統制のために出した」といった表現でも可)
  4. 問題: 「世界の知識を求め、日本を発展させよう」という趣旨の内容が含まれていたのは、五箇条の御誓文と五榜の掲示のどちらか。
    解答: 五箇条の御誓文(※世界の知識を取り入れる=御誓文第5条の内容)
  5. 問題: 次のうち、五榜の掲示に関する記述として適切なものを選びなさい。
    (ア) 明治新政府の将来の国家方針を示した宣言である。
    (イ) 1868年に庶民に示された五つの禁止事項のことである。
    (ウ) 1873年に布告され、以後明治時代いっぱい維持された法令である。
    (エ) 木戸孝允らが起草し、明治天皇が公布した公文書である。
    解答: (イ)
    ※(ア)は御誓文の説明、(ウ)は五榜の掲示は1873年に廃止されたため誤り、(エ)は御誓文に関する記述です。

大学入試センター試験(共通テスト)対策

大学入試センター試験(共通テスト)対策
  • 覚えておくべき重要ポイント
  • 暗記や理解の方向性
  • 頻出問題と解答例(5問)

覚えておくべき重要ポイント

  • 基本事項の正確な把握:
    五箇条の御誓文・五榜の掲示は日本近代史の基礎事項です。発布年は1868年、御誓文は明治天皇による新政府の基本理念の宣言、五榜の掲示は新政府による旧来秩序維持のための禁令と押さえます。
    共通テストでは単純な暗記よりも正誤判定や資料読み取りの形で問われることが多いので、両者の内容・背景・影響を深く理解しておきましょう。
  • 五箇条の御誓文の意義:
    御誓文は明治国家の指導原理となり、「広く会議を興し…」という第1条の理念は後の議会制度(国会)創設の原点となりました。
    また身分制の撤廃(四民平等)文明開化(西洋文化の積極採用)への流れも、この誓文の精神に基づいて進められています。
    共通テストでは、御誓文が後の版籍奉還・廃藩置県、憲法制定など一連の近代化政策と関連付けて出題されることがあります。
  • 五榜の掲示の限界:
    五榜の掲示は維新直後の過渡的政策であり、キリスト教禁制の撤廃(1873年)など国際的な批判に対応するため数年でその効力を失いました。
    このことから、新政府が対外的には近代国家としての体裁を整える必要に迫られていたことも読み取れます。
    共通テストでは例えば「明治初期の宗教政策」に絡めて、キリスト教解禁との関連で問われる可能性があります。
  • 資料への目配り:
    センター試験・共通テストでは史料の抜粋が出題されることがあります。五箇条の御誓文の原文(漢文調)では「広ク会議ヲ興シ、万機公論ニ決スベシ」や「旧来ノ陋習ヲ破リ、天地ノ公道ニ基クベシ」といった表現が登場します。
    一方、五榜の掲示の原文では「邪教ヲ禁ス(邪教=キリスト教)」などの表現があります。これらのキーワードを見逃さず、どの史料か判別できるようにしておきましょう。
  • 周辺知識との関連:
    御誓文と五榜は戊辰戦争(1868~69年)の最中に出されています新政府が戦争を戦いながら内外に体制整備を示したこと、その後の明治六年政変(征韓論争)頃までに旧来的な禁令を改めていった流れも把握しましょう。
    例えば岩倉使節団(1871~73年)の帰国と同年の五榜廃止など、時系列で整理すると理解が深まります。

暗記や理解の方向性

  • 正誤問題への対策:
    共通テストでは、「五箇条の御誓文に含まれない内容はどれか」「五榜の掲示について誤っている記述はどれか」などの正誤判定が出ます。
    それぞれの条文内容を暗記するだけでなく、「それは御誓文か五榜か」を瞬時に判断する練習をしておきましょう。
    例えば「キリスト教禁止」は御誓文には含まれず五榜の掲示の内容、逆に「会議を開設」は五榜には出てこない御誓文の内容です。
  • 因果関係を理解する:
    御誓文→政体書の制定(1868年閏4月)→立憲制への布石、五榜の掲示→キリスト教解禁(1873年)というように、両者の後に続く政策変化を押さえましょう。こうした因果関係を理解しておくと、文章を読ませる問題で背景を問われたときに対応できます。
  • 周辺用語とのセット学習:
    五箇条の御誓文と関連深い用語として「文明開化」「富国強兵」「版籍奉還」などがあります。御誓文第5条の「智識ヲ世界ニ求メ…」は文明開化(西洋文明の摂取)に通じる精神ですし、第1条の「広く会議ヲ…」はやがて国会開設(自由民権運動)に繋がります。
    五榜の掲示に関連する用語では「神仏分離令」「キリスト教解禁」など宗教政策の転換があります。これらをセットで理解・暗記すると、選択肢の消去法に役立ちます。
  • 記述式にも対応:
    共通テストでは記述はありませんが、二次試験や私大入試では「五箇条の御誓文が日本の近代化に果たした役割を述べよ」「明治初期の禁令が撤廃された理由を説明せよ」などと問われることがあります。
    その際は、御誓文が立憲政治の理念を示したことや五榜の掲示が国際的批判(宗教の自由要求)により撤回されたことを盛り込むと良いでしょう。

頻出問題と解答例(5問)

  1. 問題: 次のうち、五箇条の御誓文の内容として当てはまらないものを選びなさい。
    (ア) 議会を開いて国の政策を広く公論に基づき決定すること。
    (イ) 明治天皇が神々に誓う形で公布されたこと。
    (ウ) 人々が身分に関係なく志を遂げられる社会を目指すこと。
    (エ) 特定の宗教(キリスト教)の信仰を禁止すること。
    解答: (エ)
    ※(エ)はキリスト教禁止のことで、これは御誓文ではなく五榜の掲示の内容です。
  2. 問題: 五榜の掲示に含まれていたキリスト教禁制は、その数年後の1873年に撤廃されました。その主な理由を答えなさい。
    解答: 欧米諸国から信教の自由に反するものとして強い批判を受け、新政府が禁令を解かざるを得なくなったため
  3. 問題: 五箇条の御誓文の発布は、日本の政治体制の形成にどのような影響を与えたか。簡潔に答えなさい。
    解答: 合議制・議会制を導入する基礎となり、封建的身分制度の廃止や西洋文明の受容(文明開化)を推進する原動力となった
  4. 問題: 明治政府が五榜の掲示を出した目的として最も適切なものを次から選びなさい。
    (ア) 近代国家の基本方針を示すため
    (イ) 新政府への支持を広く得るため
    (ウ) 社会の秩序を直ちに維持するため
    (エ) 欧米列強との戦争に備えるため
    解答: (ウ)
  5. 問題: 五箇条の御誓文の「智識ヲ世界ニ求メ…」という精神と特に関わりの深い明治初期のスローガンを、次のうちから選びなさい。
    (ア) 和魂洋才  (イ) 尊王攘夷  (ウ) 文明開化  (エ) 富国強兵
    解答: (ウ) 文明開化
    ※「智識を世界に求め、大いに皇基を振起すべし(御誓文第5条)」の方針のもと、西洋の学問や技術を取り入れる文明開化が推進されました。

日本史検定対策

日本史検定対策
  • 覚えておくべき重要ポイント
  • 暗記や理解の方向性
  • 頻出問題と解答例(5問)

覚えておくべき重要ポイント

  • 基本データの網羅:
    五箇条の御誓文・五榜の掲示に関して、日本史能力検定では細かな事項まで問われることがあります。発布年月日は五箇条の御誓文が慶応4年3月14日(1868年4月6日)、五榜の掲示がその翌日から掲示開始(1868年4月7日)とされています。
    年号だけでなく月日や元号も余裕があれば覚えておきましょう。両者とも明治維新政府成立直後、明治天皇の江戸城入城(東京遷都)に先立つタイミングで公布されています。
  • 起草者と関係者:
    五箇条の御誓文の草案は由利公正福岡孝弟が起草し、長州藩出身の木戸孝允(桂小五郎)が加筆修正して完成させました。木戸孝允は御誓文起草を通じて明治維新の基本方針を定めた人物であり、版籍奉還や廃藩置県にも尽力しています。
    五榜の掲示の原案作成には大学校(太政官の部署)の官僚らが関わり、由利公正ら新政府要人が深く関与しました(※誰が書いたかまで問われる可能性は低いですが、御誓文に木戸孝允五榜に由利公正などと関連付けて覚えるとよいでしょう)。
  • 原文と語句の理解:
    御誓文・五榜ともに漢文調の原文が残っています。五箇条の御誓文の原文は5つの条文すべて「一(ひとつ)...べし」の形で始まり、第3条にある「官武一途庶民ニ至ル迄各其志ヲ遂ゲ」は「すべての身分の人々がそれぞれ志を遂げよ」という意味です。また第5条「智識ヲ世界ニ求メ」はそのまま「世界に文明の知識を求めよ」の意で、明治政府の開明的姿勢を示します。
    五榜の掲示の原文では「五倫ノ道ヲ守ルベシ(儒教的道徳遵守)」「邪教ヲ禁ス」などの表現が特徴的です。「邪教」=キリスト教を指すことは頻出知識です。また「徒党・強訴・逃散を厳禁す」といった語も、史料問題で読めるようにしておきましょう。
  • 内容の差異と共通点:
    両者とも五箇条/五榜という名前で五つの項目からなりますが、前者は改革目標後者は禁止事項という対極的内容です。
    共通点としては明治政府が発した公告であること、発布時期が同じであること、そして封建社会から近代国家への転換期を象徴する文書であることです。
    日本史検定では、「この二つの資料が同時に発せられた意義」や「内容が正反対である理由」などを考察させる問題もあり得ます。
  • その後の展開:
    五箇条の御誓文は形式的には大日本帝国憲法発布(1889年)まで生きたとされ、明治天皇はことあるごとに御誓文を引き合いに出して統治の基本としました。
    一方、五榜の掲示は上述の通り1873年に撤回され、実質的に廃止されています(キリスト教解禁徴兵令公布などと同じ明治6年の出来事)。このように、新政府の方針が維新初期から変化していく流れを押さえることも大切です。

暗記や理解の方向性

  • 語呂合わせの活用:
    覚えるべき条文が多いため、語呂合わせで効率よく暗記する方法も有効です。例えば五箇条の御誓文は、 「広い上に官僚がいるが、陋習を破り、知識を世界へ!」 と覚えるとそれぞれが第1~5条の頭字語になります(広=広く会議、上=上下心を一に、官=官武一途、陋習=旧来ノ陋習ヲ破ル、知識=智識ヲ世界ニ求メ)。
    五榜の掲示も 「人が集まるキリストの外国脱走禁止!」 と語呂合わせがあり(人=五倫の道、集まる=徒党禁止、キリスト=キリスト教禁止、外国=外国人襲撃禁止、脱走=逃亡禁止)、五つの禁令を素早く思い出せます。
    暗記だけでなく原文のニュアンスも理解するため、可能であれば現代語訳と併せて読んでおきましょう。
  • 比較しながら暗記:
    御誓文と五榜はセットで問われることも多いので、対比表を自作するのも効果的です。「発布者:御誓文=明治天皇(神に誓う) / 五榜=太政官」「対象:政府高官・神 / 一般民衆」「内容:改革の理想 / 禁止と心得」「目的:近代国家の基本方針提示 / 社会秩序の安定化」など、一覧表に整理すると頭に入りやすくなります。
    試験本番でも、思考整理のために問題用紙の余白にサッと対比メモを書けるようにしておくと安心です。
  • 過去問演習:
    日本史検定では過去に御誓文の起草者「邪教」の指す中身を問う問題、御誓文と五榜の内容の組み合わせを問う問題などが出題されています。
    市販の過去問題集や公式テキストで類題に当たり、問われ方を確認しましょう。
    記述式では「明治政府が掲げた五箇条の御誓文の第○条の内容を現代語で説明せよ」などの形式も考えられます。
    その場合は、例えば第1条なら「広く会議を興し…」=「広く会議を開いて物事を決めること」といった具合に、自分の言葉で説明できるよう練習しておきます。
  • 周辺事項の深掘り:
    1級など上位級を目指す場合、五箇条の御誓文と五榜の掲示に関連するエピソードもチェックしましょう。
    例えば御誓文起草時の岩倉具視や大久保利通の反応、御誓文奉読の儀式の様子(三条実美が読み上げ)や、五榜の掲示に対する民衆の受け止め(キリスト教徒弾圧の継続)などです。それらは余裕があればで構いませんが、理解が深まると記憶も強固になります。

頻出問題と解答例(5問)

  1. 問題: 五箇条の御誓文の草案作成に関わった人物の組み合わせとして正しいものを次から選びなさい。
    (ア) 由利公正・福岡孝弟
    (イ) 大久保利通・木戸孝允
    (ウ) 木戸孝允・福澤諭吉
    (エ) 由利公正・大木喬任
    解答: (ア)
    ※五箇条の御誓文は由利公正・福岡孝弟が草案を書き、木戸孝允(桂小五郎)が加筆修正しました。
  2. 問題: 五榜の掲示の原文で「邪教ヲ禁ス」とあるが、この「邪教」とは何を指すか。
    解答: キリスト教
  3. 問題: 五箇条の御誓文と五榜の掲示が公布された年月を、西暦で答えなさい。
    解答: 1868年4月(明治元年4月)
  4. 問題: 五榜の掲示は明治6年に廃されるが、その背景理由として最も適切なものを選びなさい。
    (ア) 新政府に対し士族の反乱が頻発したため。
    (イ) 欧米諸国から宗教弾圧政策への批判を受けたため。
    (ウ) 明治天皇が自らキリスト教を許容すると宣言したため。
    (エ) 幕末以来の攘夷運動が再燃したため。
    解答: (イ)
    ※五榜の掲示廃止の直接要因は、キリスト教禁止が外交問題となったことによる国際的圧力です(新政府の権威確立により不要になった面もありますが、主要因ではありません)。
  5. 問題: 五箇条の御誓文第一条に掲げられた「広く会議ヲ興シ…」という改革は、何を意味しているか。現代語で答えなさい(20字程度)。
    解答: 広く代表者による会議(議論の場)を開設し、合議によって政治を行うこと
    (記述解答例)「国民参加の会議を設け、話し合いで政治決定をすること」でも可。

公務員試験対策

公務員試験対策
  • 覚えておくべき重要ポイント
  • 暗記や理解の方向性
  • 頻出問題と解答例(5問)

覚えておくべき重要ポイント

  • 頻出ポイントを絞る
    公務員試験(教養科目の日本史)では出題範囲が広いため、五箇条の御誓文と五榜の掲示についても要点だけ暗記しておくのが効率的です。
    ズバリ押さえるべきは、発布年=1868年御誓文=明治天皇の誓約による新政府の基本方針五榜の掲示=新政府が民衆に示した禁止令という点です。
    一言で表せば、五箇条の御誓文=「天皇親政」(天皇中心の政治の宣言)、五榜の掲示=「民衆運動禁止」(民衆の乱を禁じた布告)とまとめられます。
  • 人物名との結びつき:
    選択肢では人物名との組み合わせ問題が出ることがあります。五箇条の御誓文は木戸孝允(桂小五郎)が中心となって定めたことを覚えておきましょう。
    木戸孝允は明治新政府の参謀役で、御誓文起草やその後の版籍奉還など維新改革を主導しています。
    五榜の掲示に著名な個人名はありませんが、由利公正など維新官僚が関与しました。
    公務員試験では「五榜の掲示=由利公正が起草」とまで問われる可能性は低いですが、御誓文と木戸の組み合わせは覚えておく価値があります。
  • 関連事項:
    箇条の御誓文は「明治維新の基本方針」、五榜の掲示は「旧体制からの引き継ぎ規制」という位置づけです。
    例えば改元「明治」や版籍奉還(1869年)などと並べて、維新前期の改革として整理しておきましょう。
    こうしたキーワードは、公務員試験向けの日本史ノートでも重要語として挙げられています。
    過去問では「五箇条の御誓文⇒天皇親政の確立「五榜の掲示⇒民衆統制策」のように、一問一答で問われることがあります。
  • 近現代史の頻度:
    公務員試験では明治以降の近現代史からの出題が多めです。
    五箇条の御誓文・五榜の掲示は明治時代の冒頭の内容なので、頻出度は高くはありませんが基本事項として押さえておく必要があります。
    特に地方上級・国家一般職などではごく簡単な一問(一致や正誤)が出る程度ですが、間違えず得点源にするために確実に暗記しておきましょう。

暗記や理解の方向性

  • 流れで覚える:
    個別の年号暗記にとどまらず、明治維新の流れの中で位置付けて覚えます。「鳥羽・伏見の戦い(戊辰戦争開始)→新政府樹立→五箇条の御誓文・五榜の掲示→明治改元→江戸開城→...」という順序を意識すると記憶に残りやすいです。大きな流れを押さえておけば、公務員試験の年代整序問題にも対応できます。
  • 過去問に即した学習:
    公務員試験は過去問の焼き直しが多いと言われます。日本史の分野でも、過去に出題された知識が繰り返し問われる傾向があります。五箇条の御誓文・五榜の掲示についても、一度過去問で出ていれば類似の選択肢がまた出るかもしれません。
    過去問集で一度でも見た選択肢(例えば「五榜の掲示:キリスト教禁止」など)は確実に覚え、初見の問題にも応用が利くようにしましょう。
  • キーワードを端的に:
    暗記カードなどを使って、「五箇条の御誓文=1868年・基本方針・木戸孝允」「五榜の掲示=1868年・禁令・キリスト教」のように短いフレーズで覚える訓練をしましょう。
    公務員試験本番では長文記述は不要で、選択肢の正誤判断がメインです。したがって頭の中には箇条書きの知識が入っている状態が望ましいです。
    キーワードさえあれば選択肢を見て判断できます。
  • 深追いしすぎない:
    教養試験の日本史は満点を狙う科目ではなく、コスパよく得点する科目です。
    五箇条の御誓文や五榜の掲示も、基本事項以上の細かいエピソード(例:由利公正の人となり、原文全文の暗記など)に深入りしすぎないようにしましょう。
    他の重要テーマ(外交や経済史など)とのバランスも大切です。「明治時代のスタート時点の政策」として押さえたら、ひとまず合格点は取れる知識と言えます。

頻出問題と解答例(5問)

  1. 問題: 五箇条の御誓文が発布された西暦年はいつか。
    解答: 1868年
  2. 問題: 五箇条の御誓文の起草・編集に深く関与し、「広く会議を興し…」など明治維新の基本方針を定めた人物は誰か。
    解答: 木戸孝允(桂小五郎)
  3. 問題:広ク会議ヲ興シ、万機公論ニ決スベシ」という一節が含まれる明治新政府の宣言は何か。
    解答: 五箇条の御誓文
  4. 問題: 五箇条の御誓文と五榜の掲示に関する次の記述のうち、正しいものを選べ。
    (ア) 五箇条の御誓文は新政府の基本方針を示したもので、五榜の掲示は民衆統制のための禁令である。
    (イ) 五箇条の御誓文ではキリスト教の禁止が宣言され、五榜の掲示では議会の開設が約束された。
    (ウ) 両方とも明治天皇が神前で読み上げた宣言文である。
    (エ) 両方とも戊辰戦争後の明治4年(1871年)に公布された。
    解答: (ア)
    ※(イ)は内容が逆、(ウ)は五榜の掲示は天皇が読み上げたものではない、(エ)は年が誤り(正しくは1868年)。
  5. 問題: 次の政策のうち、五榜の掲示に含まれないものはどれか。
     1.徒党・強訴の禁止
     2.地租改正の実施
     3.キリスト教の禁止
     4.外国人への暴行禁止
    解答: 2
    ※「地租改正の実施」は1873年の財政改革であり、五榜の掲示の内容ではありません。他の1・3・4は五榜の掲示に含まれる禁令事項です。

五箇条の御誓文・五榜の掲示と試験対策に役立つ重要ポイントまとめ

  • 両者は明治元年(1868年)に発布された新政府の最初の重要文書である
  • 五箇条の御誓文は明治天皇による未来の国の方針を示す宣言である
  • 五榜の掲示は新政府が民衆に示した禁止事項の高札形式の布告である
  • 御誓文は「会議の設置」「身分を超えた協力」など近代化を目指す内容である
  • 五榜は「キリスト教の禁止」や「徒党の禁止」など治安維持を主眼としている
  • 御誓文は政府内部や神に対しての誓約であり、対象が上層向けである
  • 五榜は民衆向けの命令であり、現実的な生活ルールの提示である
  • 御誓文には木戸孝允が関与し、近代国家の理念形成に関わった
  • 五榜は旧来の統制方針を踏襲しつつ、民衆を抑える手段として使われた
  • 御誓文は文明開化・立憲政治など明治の改革につながる理念である
  • 五榜は1873年に国際批判を受けて撤廃され、短命な政策であった
  • 試験では御誓文が「新政府の基本方針」として頻出である
  • 五榜は「キリスト教の禁止」や「五倫の道」など具体的内容が問われやすい
  • 過去問では両者の混同を狙った選択肢が多いため、比較理解が重要である
  • 年号(1868年)や関連用語(文明開化、版籍奉還)とのセット暗記が効果的である

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