
「班田収授法」と「墾田永年私財法」は、日本の古代土地制度を学ぶうえで欠かせないキーワードです。歴史の授業や入試対策でも頻出であり、既出問題や解答例にもよく登場するため、しっかりと理解しておくことが試験対策には非常に重要です。
この記事では、これら2つの法制度の違いを中心に、「いつ」制定されたのか、「誰」が関わったのか、制度の「目的」や「結果」までを、できるだけ簡単にわかりやすくまとめています。また、「読み方」や「語呂合わせ」「覚え方」も紹介しているので、暗記の助けにもなるはずです。
結論から言えば、「班田収授法」は公地公民制のもとで国が「口分田」を支給する制度、「墾田永年私財法」は開墾地を私有できるようにした法であり、そこから「荘園」が広がりました。この流れを正しく理解しておくことで、入試の「頻出」分野にも対応できるようになります。
このページを読むだけで、両制度の本質がつかめるようになっていますので、ぜひ最後までお付き合いください。
- 班田収授法と墾田永年私財法の根本的な違い
- それぞれの法が制定された時期と背景
- 口分田と荘園の関係性と社会への影響
- 試験対策として覚えるべきポイントや語呂合わせ
目次
班田収授法と墾田永年私財法の基本を解説

班田収授法は飛鳥時代に始まり、6歳以上の国民に口分田を支給する制度で、死後は国へ返還する決まりでした。対して墾田永年私財法は奈良時代に施行され、開墾した土地の私有を許可する画期的な法律です。つまり、公地公民から私有地制度への転換点とも言える重要な2法です。
班田収授法と墾田永年私財法の違いとは

単純にいえば、土地を国が管理する制度か、個人の所有を認める制度かという点が大きな違いです。
班田収授法は、6歳以上の国民に一定の農地(口分田)を与え、死後にその土地を国に返還させる仕組みでした。農民は自分の土地としてではなく、あくまで「借りている」状態で耕作します。
一方の墾田永年私財法は、開墾した土地を永遠に個人の財産として認める法律。これによって、貴族や寺院が広大な荘園を所有することが可能になりました。
以下の表に、違いを簡単にまとめます。
項目 | 班田収授法 | 墾田永年私財法 |
---|---|---|
成立時代 | 飛鳥時代 | 奈良時代 |
土地の管理 | 国有(期限付き支給) | 私有(開墾した土地は永年私財) |
対象 | 全国民(6歳以上) | 開墾を行った者(主に貴族・寺院) |
土地の返還義務 | 死亡時に返還 | 返還不要 |
このように、土地制度の考え方が真逆だったことが特徴です。
いつできた?

班田収授法は大化の改新以後、646年の詔をきっかけに施行され、正式な制度化は「大宝律令」(701年)で明文化されました。その後、6年ごとの口分田支給が制度として定着しました。
対する墾田永年私財法は、743年(天平15年)に制定されました。この法律は、同年の詔によって施行され、これまで一時的だった私有地制度が「永年」つまり永久的に認められるようになった点で大きな転換点でした。
時間軸で見ると、以下のようになります。
- 646年:班田収授法(詔による開始)
- 701年:大宝律令で制度化
- 743年:墾田永年私財法の制定
およそ1世紀の間に、土地制度が「国有から私有」へ大きく変化したことがわかります。
誰が定めた?

班田収授法は、天智天皇や持統天皇らが関わる中、大宝律令を整えた藤原不比等らによって制度として確立しました。唐の「均田制」をモデルにしており、国家主導の土地管理政策の一環でした。
一方、墾田永年私財法は、聖武天皇の時代に出された詔です。背景には、仏教保護政策による大寺院への影響力拡大や、開墾意欲を高めるための施策がありました。実務面では藤原広嗣や吉備真備ら律令官僚が深く関与したと考えられています。
つまり、それぞれの法は天皇の意向に基づきつつ、背景には当時の政治的・宗教的な事情が色濃く関係していました。
目的とは?

班田収授法の目的は、全国民に公平に土地を配り、安定した税収を確保することでした。律令国家体制を支えるためには、民衆の生活基盤と納税システムが不可欠だったためです。
反対に墾田永年私財法は、農民や貴族・寺社に開墾を促すためのインセンティブ制度でした。班田収授法の形骸化と人口増加により、口分田の確保が難しくなったことが背景にあります。
つまり、班田収授法が「均等な支給」、墾田永年私財法が「開発促進」を意図していた点が異なります。
結果を整理すると

この2つの法律の施行によって、日本の土地制度は大きな転換を迎えました。
まず、班田収授法の運用は次第に困難になり、実質的には破綻しました。人口増加や土地不足によって、口分田を配る土地そのものが足りなくなったからです。
次に、墾田永年私財法によって、私有地=荘園が全国に拡大していきました。特に貴族や大寺院が多くの荘園を所有し、国家の財政基盤が弱体化します。
その結果、律令制度は形骸化し、地方豪族や荘園領主による自治が進み、武士の台頭や封建社会の形成へとつながることになりました。
これが、日本の中世社会へ向かう第一歩となったとも言えるでしょう。
班田収授法と墾田永年私財法を簡単に理解

これらの制度は漢字が難しく感じても、意味がわかればとてもシンプルです。班田収授法(はんでんしゅうじゅほう)は、国が一時的に田んぼを貸す制度で、読み方の通り「田を班(わ)けて授ける」しくみです。墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいほう)は、開いた土地を「永く私財」として認める法律。語呂合わせや表を使って覚えれば、試験対策にも役立ちます。
簡単にわかりやすく整理すると

班田収授法と墾田永年私財法は、どちらも日本の古代における「土地制度」に関する法律ですが、考え方がまったく異なります。
まず、班田収授法(はんでんしゅうじゅほう)は、国が国民に一時的に土地を分け与える仕組みでした。6歳以上の男女に「口分田(くぶんでん)」という農地が与えられ、亡くなれば国に返すルールです。これにより、農民は土地を耕し、税を納める義務を負いました。
一方の墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいほう)は、開墾した土地を持ち主の「永遠の財産」にしてよいという制度。これにより貴族や寺社は新たな土地を私有化でき、後の「荘園」拡大につながります。
ざっくりとした違いを表にすると以下の通りです。
法律名 | 内容 | 土地の扱い |
---|---|---|
班田収授法 | 国が土地を与え、死後返還 | 公的・一時的 |
墾田永年私財法 | 開墾すれば自分の財産になる | 私的・永続的 |
このように、目的も仕組みも正反対といえます。
読み方を確認

文章ではよく目にするけど、声に出すときに戸惑いやすいのが「班田収授法」と「墾田永年私財法」の読み方です。
- 班田収授法(はんでんしゅうじゅほう)
→「班(はん)」=配る、「田」=田んぼ、「収授」=与えて返す
つまり、田んぼを配って返させる法という意味です。 - 墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいほう)
→「墾田」=開墾した田、「永年」=永遠、「私財」=個人の財産
言ってしまえば、「開いた田んぼはずっと自分のもの」法です。
読み方を覚えておくと、試験のときに詰まらずに済みます。音読しておくのも有効です。
口分田・荘園の関係とは

「口分田(くぶんでん)」と「荘園(しょうえん)」は、土地制度の流れを理解する上で重要なキーワードです。
まず口分田は、班田収授法のもとで国から民に与えられる田んぼのこと。これはあくまで国の所有物で、使用が許されたにすぎません。年齢や性別で支給面積が決まり、死亡時に返還されました。
しかし、班田収授法が形骸化していくと、開墾の奨励策である墾田永年私財法が登場します。ここで登場するのが荘園です。これは開墾によって得られた「私有地」で、特に貴族や寺社が所有する例が多く、国家の支配を受けない土地となっていきました。
つまり、口分田が減少し、荘園が拡大したことで、律令制度は崩れ、地方豪族や寺社が力を持ち始めたのです。
この転換が、日本の中世的土地支配=封建社会の原型へとつながる流れを生み出しました。
試験対策に強くなる!重要ポイント整理

多くの中学・高校・大学入試で問われる「班田収授法」と「墾田永年私財法」ですが、試験対策のポイントは“比較・年代・背景”の3つをセットで押さえることです。
まず、「どちらが先か」という流れを時代順に覚えることが基本です。
班田収授法(飛鳥時代:646年の大化の改新以降) → 墾田永年私財法(奈良時代:743年)
この順番をしっかり頭に入れておきましょう。
次に押さえるべきは土地の扱いの違いです。班田収授法は国が土地を貸し、墾田永年私財法は土地の私有を認めた、という対比です。
さらに「結果」も重要。班田収授法が破綻し、墾田永年私財法によって荘園制度が広がったという流れまで言及できると得点に結びつきやすくなります。
表にまとめるとこうなります:
制度名 | 時代 | 土地の扱い | 結果 |
---|---|---|---|
班田収授法 | 飛鳥時代 | 公地公民制度 | 荘園なし・国家管理 |
墾田永年私財法 | 奈良時代 | 私有地認可 | 荘園拡大・貴族が力持つ |
これらの視点で覚えると、応用問題にも強くなります。
語呂合わせと覚え方のコツを紹介
年代や制度の名前は暗記が必要ですが、語呂合わせでリズムよく覚えると定着しやすくなります。以下に代表的な語呂を紹介します。
- 班田収授法 → 646年「む・し・ろ・む」大化の改新とセットで覚える
→「むしろ無理に班田収授!」などと語呂合わせ。 - 墾田永年私財法 → 743年「な・し・み」
→「な、しみじみ感じる私有地の喜び」など。
また、名前の意味を分解する方法も効果的です。
- 班田収授法=「田を班(わ)けて、収めて、授ける」
- 墾田永年私財法=「開いた田んぼを、永く私有できる法」
このように「言葉を意味で解体」してイメージ化すると、記憶が深く定着します。
頻出・既出問題と解答例まとめ
ここでは、入試や模試で実際に出題された「班田収授法」と「墾田永年私財法」に関する例題を紹介し、どう答えるべきかのポイントも解説します。
例題①:班田収授法と墾田永年私財法の違いを簡潔に述べよ(記述)
→ 解答例:「班田収授法は土地を国が貸し与える制度で、墾田永年私財法は開墾した土地の私有を認めた制度である。」
例題②:次の年号に関係する制度を答えよ。①646年 ②743年(選択)
→ 解答例:①班田収授法 ②墾田永年私財法
例題③:墾田永年私財法によって生まれた社会制度を選べ(選択)
→ 解答例:荘園制度
これらの問題を通じて、よく出るのは「制度名と年号」「土地の扱いの違い」「結果として起きた社会変化」です。
実際の対策では、上記のような出題傾向を意識して、「用語→意味→時代→結果」の流れで復習しましょう。
班田収授法と墾田永年私財法について違いを総まとめ
この記事全体の要点を以下にまとめます
- 班田収授法は国が土地を一時的に貸し与える制度
- 墾田永年私財法は開墾した土地の私有を認める法律
- 班田収授法は飛鳥時代に始まり大宝律令で制度化
- 墾田永年私財法は奈良時代の743年に制定
- 班田収授法の土地は死亡時に国へ返還する義務がある
- 墾田永年私財法の土地は返還不要で永続的に所有できる
- 班田収授法の対象は6歳以上の全国民
- 墾田永年私財法は貴族や寺社の開墾者が対象
- 班田収授法の目的は公平な土地分配と税収安定
- 墾田永年私財法の目的は開墾を促進すること
- 墾田永年私財法により荘園が拡大し国家財政が弱体化
- 班田収授法の実施困難が墾田永年私財法の背景にある
- 口分田は国有地で荘園は私有地として対比される
- 読み方は「はんでんしゅうじゅほう」「こんでんえいねんしざいほう」
- 語呂合わせでは646年=班田収授法、743年=墾田永年私財法と覚える