
日々の育児や介護で何度も口にする「おむつ」と「おしめ」。辞書ではほぼ同義として扱われますが、言葉の成り立ちや使われ方、歴史をたどると見えてくる“微妙な違い”があります。この記事では、言葉・歴史・製品の性能・ケア方法までを網羅するかたちで丁寧に深掘りします。比較表や実用のコツ、例文も充実させました。
目次
「おむつ」と「おしめ」の違いとは?

「おむつ」とは何か?その基本を理解する
一般に「おむつ」は、乳幼児や高齢者、療養中の方などの排泄物を吸収・保持して衣類や寝具を汚さないようにする衛生用品を指します。布製・紙製の別や、テープ型・パンツ型など複数の形態が含まれます。語源的には難読漢字の「襁褓(むつき)」が関連し、赤ちゃんの下半身にあてる布の意から、現代の吸収体を内蔵した衛生材へと発展してきまし。
近代以降は不織布・高分子吸水材(SAP)などの素材工学が進み、薄型化と高吸収を両立した使い捨て紙おむつが定着。日本の製品史については業界団体の年表がわかりやすいので後段で詳しく触れます(日本衛生材料工業連合会 年表)。

「おしめ」の意味と使用される場面
「おしめ」は、歴史的・口語的に広く使われた呼び名で、語源には「湿(しめ)」=湿布の略をあてる解説もあります。辞書上は「おむつ」と同義語として併記されることが多い一方、現代の一般的な商品名・取扱説明では「おむつ」の表記が圧倒的に主流です。
「おむつ」と「おしめ」の言葉の由来
成り立ちを簡潔にまとめると次のとおりです。
語 | 由来・語源 | 現代の使われ方の傾向 |
---|---|---|
おむつ | 「襁褓(むつき)」→「おむつき」→「おむつ」へと語形変化。現代では布・紙の総称。 | 商品名・医療/介護現場・行政資料などで標準語として広く使用。 |
おしめ | 「湿(しめ)」=湿布の略と関係づける説。辞書では「襁褓/御湿」とも表記。 | 世代・地域によって使用。現代の製品表示では稀で、会話や回想で見聞きすることが多い。 |
「おむつ」と「おしめ」のタイプ別解説

「紙おむつ」と「布おむつ」:それぞれの特長
代表的な二大類型で、利便性・コスト・環境負荷・肌負担などの評価軸が異なります。英国環境庁のLCA(ライフサイクルアセスメント)や国連UNEPのレビューは、使い捨て・再利用の双方に環境影響の“持ち場”があることを指摘しています(UK Environment Agency LCA/UNEP 2021)。


観点 | 紙おむつ(使い捨て) | 布おむつ(再利用) |
---|---|---|
利便性 | 交換が簡単・携帯しやすい・夜間/外出時に強い。 | 洗濯・乾燥・保管の手間が必要。家庭の運用に慣れが要る。 |
吸収力/漏れにくさ | 高分子吸水材で高吸収・薄型化。フィット構造が進化。 | 素材や折り方・カバー選びで実力差。こまめな交換が前提。 |
肌トラブル | 高吸収で皮膚の湿潤時間を短縮できる一方、通気と摩擦の設計が重要。 | 通気に優れるが保水量は控えめ。尿便接触時間を短くする運用が鍵。 |
費用感 | 毎月の消耗費が継続。 | 初期費用+水道光熱・洗剤費。長期利用で有利な場合も。 |
環境影響 | 廃棄物量が課題(可燃ごみ)。 | ごみは少ないが洗濯時の水・エネルギー負荷が生じる(LCA参照)。 |
赤ちゃん用と大人用「おむつ」の違い
対象者の体格や排泄パターン、ケア体制が異なるため、設計思想が大きく変わります。
特性 | 赤ちゃん用 | 大人用(介護用) |
---|---|---|
想定排泄量 | 少量・高頻度。動きが活発。 | 多量・長時間に耐える設計。就寝/臥床も想定。 |
形状 | 新生児用・テープ型・パンツ型・トレーニング用など。 | テープ型・パンツ型・尿とりパッド併用などバリエーション豊富。 |
付加機能 | おしっこサイン・やわらか表面材・ウエストギャザー等。 | 高吸収コア・強力消臭・肌トラブル対策・装着しやすい構造など。 |
市場背景 | 育児領域の定番。 | 高齢化で需要拡大(市場レポート例:IMARC 2024)。 |

「使い捨ておむつ」と「再利用おむつ」の利便性
家庭環境・生活導線・価値観・外出頻度で最適解は変わります。迷ったら「日中は布、夜間や外出は紙」といったハイブリッド運用も有効です。環境面の優劣は使用条件(洗濯温度/乾燥機の有無/交換頻度)で逆転しうる点も、LCA研究で繰り返し示されています。
言葉の背景:「おしめ」の方言と死語

「おしめ」の方言:地域による言葉のバリエーション
「おしめ」は地域で語形が揺れることがあり、古い文献・地域誌・方言資料に散見されます(例示は割愛)。現代標準語としては「おむつ」が優勢で、公的文書・製品名でも統一される傾向にあります(日本衛生材料工業連合会)。
「おしめ」は死語になりつつある?
若年層の会話・製品表示では「おしめ」を見聞きする機会が減っています。とはいえ完全な死語ではなく、世代語としての温かい響きや、昔語り・随筆の語彙として今も生きています。辞書ではいまも「おむつ」と同義に掲げられています。
「おむつ」と「おしめ」:言葉の変遷
- 古くは「襁褓(むつき)」=包む布全般の意。
- 赤子の股部を覆う布の機能語へ特化。
- 口語で「おしめ」も併用され普及。
- 素材・工業化の進展で「おむつ」が標準語に定着。
「おむつ」と「おしめ」の英語での表現
「おむつ」は英語で何と言うのか?
米語では diaper、英語(主に英国)では nappy が一般的です。用途や素材を明確にすると通じやすく、例:disposable diaper(使い捨て)、cloth diaper(布)。
「おしめ」は英語でどのように使われるか
英語に「おしめ」に対応する別語は基本的にありません。訳す際は diaper にまとめ、必要なら “old-fashioned term in Japanese” と注記します。
英語圏における文化的な違い
- 公共施設におむつ替え台が広く整備。
- 使い捨て主流だが、エコ志向層は布やレンタル(diaper service)を選ぶことも。
- 関連語:diaper change/diaper rash。
日本における「おむつ」の普及とその歴史
「おむつ」の歴史:いつから使われ始めたか
戦後の衛生材工業化とともに紙おむつが登場。1960年代に今日の原型となる構造が登場し、その後テープ型やパンツ型が普及していきました(JHPIA「紙おむつの歴史」)。
ユニ・チャームなどの企業の影響
国内メーカーの技術革新(不織布・通気・吸収コアの進化、装着性、消臭技術など)が快適性を大きく前進させました。年表ベースでは、ユニ・チャームのベビー用「マミーポコ」(1983)、大人用「ライフリー」(1987)、トレーニング「トレパンマン」(1990)、はかせる「ムーニーマン」(1992)などがトピックとして挙がります(ユニ・チャーム社史)。
「おむつ」文化の変遷:古代から現代まで
- 古代〜近世:襁褓=包む布の文化。
- 近代:布おむつを家庭で洗って再利用。
- 1970〜:使い捨て紙おむつの普及で育児負担が軽減。
- 現在:高齢化で大人用の需要が拡大。
「おしめ」の漢字と関連用語の解説
「おしめ」の漢字の意味と由来
辞書では「襁褓(むつき)」が正字で、「御湿」と説明されることも。いずれも「赤子を包む/湿りを受ける布」という機能から派生しています。現代では仮名表記が基本です。
「おしめ」に関連する言葉たち
- 襁褓(むつき):包む布の総称から、おむつの意へ。
- おくるみ:全身を包む布。広義の襁褓に近い歴史的背景。
- おむつカバー:布おむつに重ねる防水・フィットのための外装。
- 尿とりパッド:大人用で重ねて吸収量を増す補助材。
「おしめ」に対する社会の認識
「おしめ」は温かい響きのある生活語。一方で公的・実務の語彙は「おむつ」へ統一が進み、検索・製品選択の観点でも「おむつ」キーワードが有利です。
「おむつ」と「おしめ」を正しく使うためのポイント
「おむつ」の交換のタイミングと注意点
皮膚科学的には、尿便との接触時間を短くし、清潔と乾燥を保つことが発疹(diaper rash)予防の基本です。小児科学の患者教育資料も「汚れに気づいたらすぐ交換」「概ね3〜4時間ごと」を推奨しています(American Academy of Pediatrics/HealthyChildren、関連記事:AAP 患者教育)。
- 汚れ・におい・おしっこサインをこまめにチェック。
- うんちの際はできるだけ早く交換し、ぬるま湯ややわらかい布でやさしく洗浄。
- しっかり乾かし、必要に応じてバリアクリーム(亜鉛華など)を薄く。
- 装着は「ぴったり・キツすぎず」。ギャザーの内外を整え、背中と足まわりの隙間を減らす。
- 発疹が3〜4日以上続く・悪化する・発熱を伴う場合は医療機関へ。
よく使う声かけ・実用フレーズ(5例×2セット)
- 交換タイミングに関する声かけ
- 「おむつ濡れてきたね、今きれいにしようね。」
- 「うんち出た?すぐ替えるから待っててね。」
- 「長いお出かけだから、夜用にしておこう。」
- 「おしっこサインが出たから替えようか。」
- 「お昼寝前に新しいのにして気持ちよく寝よう。」
- 交換中の安心フレーズ
- 「少し冷たいけど、すぐ終わるよ。」
- 「お尻きれいにするね。きもちいいね。」
- 「テープ閉めるから少しだけじっとしててね。」
- 「ギャザー整えるよ、くすぐったいね。」
- 「新しいおむつでスッキリしたね!」
「布おむつ」や「おむつカバー」の手入れ方法
- 前処理:便はトイレで落として予洗い。尿のみは軽くすすいでOK。
- 洗剤選び:中性〜弱アルカリの衣料用。蛍光増白剤・強い香料は避けると無難。
- 温度:皮脂や便汚れはぬるま湯(40〜60℃)が効果的。素材表示に従う。
- すすぎ:洗剤残りは肌トラブルの原因。2回以上を目安に。
- 乾燥:天日干しで除菌・消臭をサポート。乾燥機は縮みやすい素材に注意。
- 消毒:定期的に酸素系漂白・煮沸など(素材の耐熱・色落ちに注意)。
- カバー管理:防水層(ラミネート)の劣化・伸び・ほつれを定期点検。
連絡帳やメモに使える定型フレーズ(5例)
- 「本日、午前中におむつ替え3回、便1回。」
- 「少しかぶれあり。自宅で保護クリーム使用。」
- 「外出予定のため夜用を持参します。」
- 「サイズアップを検討中(太もも周りがきつめ)。」
- 「おしっこサインが見やすいものを好みます。」
失敗しない「おむつ」選びのポイント
チェック項目 | 見るポイント | ひと工夫 |
---|---|---|
サイズ/フィット | 体重目安+太もも/お腹の跡の有無。 | 漏れが続く/跡がつく→ワンサイズ見直し。 |
吸収/通気 | 夜間の持ち・起床時の肌状態。 | 夜間は上位モデルやパッド併用で対策。 |
肌当たり | 表面材の柔らかさ・摩擦感。 | かぶれ時は素材変更・クリーム併用。 |
コスト | 1枚単価×1日枚数で月次概算。 | 定期便/箱買い・クーポン活用。 |
生活導線 | 持ち運び・夜間交換・保育園運用。 | 自宅は布、外出は紙などハイブリッド運用。 |

まとめ:「おむつ」と「おしめ」は何が違うの?
この記事が「おむつ」と「おしめ」の違いを正しく言い分け、毎日のケアを少しラクにするヒントになれば嬉しいです。ご家庭の価値観・生活導線・お子さまやご家族の肌状態にあわせて、最適な選択をしていきましょう。
参考文献・出典
- 辞書・語源:コトバンク「襁褓/おしめ/おむつ」/辞典オンライン「襁褓」
- 歴史・業界:日本衛生材料工業連合会「紙おむつの歴史」/ユニ・チャーム「社史」
- 環境評価:UK Environment Agency「LCA of Disposable and Reusable Nappies」/UNEP「Single-use nappies and their alternatives」
- 小児科・スキンケア:American Academy of Pediatrics(HealthyChildren)/AAP患者教育資料
- 英語表現:Merriam-Webster「diaper」/Cambridge「nappy」
- 市場動向:IMARC Japan Adult Diaper Market(2024)