
ビジネス文書や社内規程、法令やニュースの文章を読んでいると、「計画を策定する」「条例を制定する」「法律を施行する」といった表現がよく登場します。「策定と制定と施行の違いや意味がよく分からない」「法律の制定と施行の違いは?」「公布と施行の違いは?」「策定と作成の違いも一緒に整理したい」と悩む方から、相談を受けることが少なくありません。
特に、就業規則や社内規程、各種マニュアルなどの文書を作る場面では、「ここは策定なのか、制定なのか、施行なのか」「条文中ではどの言葉を使えば正しいのか」「策定の意味や制定の意味、施行の意味の違いを一度きちんと整理したい」と感じている方が多いと思います。法律の世界では、「法律の制定と施行の違い」「法律の成立から公布、施行までの流れ」「公布と施行の違い」といったポイントを押さえておくことが、実務上も試験対策上もとても重要です。
また、「策定の英語表現は?」「制定を英語で言うと?」「施行の英語はenforceで良いのか」「策定と制定の類義語や対義語、言い換え表現もまとめて覚えたい」というニーズもよく耳にします。そこでこの記事では、策定と制定と施行の違いと意味を軸に、語源や類義語・対義語、英語表現、正しい使い方や例文まで、できるだけ分かりやすく整理していきます。
初めて用語の違いを学ぶ方でも、この記事を読み進めていただければ、「策定」「制定」「施行」のそれぞれがどんな場面で使われるのか、どのように使い分ければよいのかが、自然とイメージできるようになるはずです。ビジネス文書の作成や法令関係の勉強はもちろん、日々のニュースを読むときにも役に立つ内容になっていますので、ぜひ最後までお付き合いください。
- 「策定」「制定」「施行」の意味の違いと基本的な使い分け
- 策定・制定・施行それぞれの語源、類義語・対義語、英語表現
- ビジネス文書・法令分野での具体的な使い方と例文
- 間違えやすい表現と、迷ったときのチェックポイント
目次
策定と制定と施行の違い
まずは全体像として、「策定」「制定」「施行」がそれぞれどんな段階・役割を持つ言葉なのかを整理します。ざっくり言えば、策定は「内容を練って決めること」、制定は「ルールや法令を正式な形にすること」、施行は「定めた内容を実際に世の中で効力ある状態にすること」です。この流れを押さえると、細かな使い分けもぐっと理解しやすくなります。
結論:策定と制定と施行の意味の違い
私が実務で使い分けるときの感覚も含めて、三つの言葉の違いを一言でまとめると次のようになります。
| 用語 | 主な意味 | 対象・例 | 位置づけのイメージ |
|---|---|---|---|
| 策定 | 政策・計画・方針の内容を考え、計画としてまとめて決めること | 経営計画、事業計画、基本方針、ロードマップなど | 「中身を練る」段階 |
| 制定 | 法律・条例・規程などのルールを公式な手続で定めること | 法律、条例、規程、規則、社内ルールなど | 「ルールとして成立させる」段階 |
| 施行 | 制定された法律や規則に効力を持たせ、実際に適用し始めること | 法律の施行、条例の施行、改正法の施行日など | 「実際に動かし始める」段階 |
ニュースでよく見かける「法律が制定されました」「来年4月1日に施行されます」という表現は、まさにこの流れを示しています。まず国会などで法律が制定され、その後、施行期日(効力が発生する日)が法律や附則で決められ、指定された日から施行される、という順番です。
一方、「中長期経営計画を策定」「環境基本計画を策定」といった表現は、法律そのものではなく、方針や計画の中身を練り上げるイメージが強くなります。策定=計画の設計、制定=ルールの成立、施行=実際の運用開始と押さえておくと、だいぶ整理されてくるはずです。
ここで説明している「策定」「制定」「施行」の違いは、一般的な日本語の使い方と基本的な法令実務にもとづいた整理です。個別の法律や条例、判例解釈などでは、より専門的な議論が必要になる場合があります。正確な情報は必ず公式な法令データベースや官報、自治体の公表資料をご確認ください。また、具体的な法的判断が必要な場面では、最終的な判断を行う前に弁護士などの専門家へ相談することを強くおすすめします。
策定と制定と施行の使い分けの違い
次に、実際の文章でどう使い分けるかを確認していきます。私が社内ルールや契約書、公的資料のドラフトをチェックするときには、次のような基準で言葉を選ぶことが多いです。
- 計画・方針・ビジョンの内容を決めるとき…「中期経営計画を策定する」「行動指針を策定する」
- ルールそのものを作るとき…「新たな就業規則を制定する」「情報セキュリティ規程を制定する」
- すでに定めたルールを動かし始めるとき…「改正就業規則を4月1日に施行する」「新法は来年施行される」
迷ったときは、「これは計画の話か、ルールの話か、運用開始の話か?」と自分に問いかけてみると判断しやすくなります。計画の中身を決めているだけなら策定、ルールとして正式に決める段階なら制定、効力が発生するタイミングの話なら施行、という整理です。
同じ「社内規程」に関する用語の違いとして、「規程」と「規定」の違いや、「内規」と「規程」の違いもよく話題になります。詳しくは、例えば「規程」と「規定」の違いと意味・使い方を整理した記事や、「内規」と「規程」の違いと意味・使い方の記事もセットで読んでいただくと、全体像がよりクリアになるはずです。
策定と制定と施行の英語表現の違い
ビジネスや法務の現場では、英語表現が必要になることも多いので、ここで一度まとめておきます。厳密には文脈によって言い回しを変えますが、実務でよく使う対応関係は次の通りです。
- 策定:formulate、draw up、develop(例:formulate a policy / draw up a business plan)
- 制定:enact、establish、adopt(例:enact a law / establish regulations / adopt a new ordinance)
- 施行:enforce、put into force、come into effect / come into force(例:the law is enforced / the act comes into force on April 1)
特に法律や条例については、「制定された法律(enacted law)」と「施行中の法律(law in force)」はニュアンスが異なる点に注意が必要です。英文契約書や二言語対応の社内規程では、「制定年月日」と「施行(発効)年月日」を別々に表記することも多いため、英語表現もセットで押さえておくと安心です。
策定の意味
ここからはそれぞれの言葉を個別に掘り下げていきます。まずは、ビジネスシーンで特によく登場する「策定」から見ていきましょう。経営計画や事業計画、アクションプランなど、組織の動きをデザインするときに使われる言葉です。
策定とは?意味や定義
「策定」は、一般的に「政策・計画・方針などの内容を考え、具体的な計画として決めること」を意味します。単に文章を書き上げるだけでなく、目的を明確にし、選択肢を検討し、全体として一貫したストーリーにまとめ上げるニュアンスを含んでいます。
例えば、「中期経営計画の策定」「人事制度改革の基本方針を策定」「新規事業のロードマップを策定」といった形で使われます。「こう動いていく」という道筋を考え抜き、合意形成を経て、計画として固める行為が「策定」です。
策定は「考えてから決める」ニュアンスが強い
同じ「作る」でも、「作成」は文書や資料そのものを書き上げる行為に焦点が当たるのに対し、「策定」は内容そのものの検討・調整・合意形成を含んだ、より上位の概念です。そのため、「会議で方向性を決めて、それをもとに詳細な文書を作成する」といったプロセスの上流に位置づけられます。
策定はどんな時に使用する?
実務で「策定」という言葉を使うのは、主に次のような場面です。
- 企業や組織の中長期計画(経営計画、事業計画、DX戦略など)
- 自治体や国の政策(環境基本計画、少子化対策の総合戦略など)
- 社内方針・行動指針・ガイドラインの策定
- リスク管理・BCP(事業継続計画)の策定
これらはいずれも、単に文書を作るだけでなく、多くの関係者の意見を集約し、優先順位を整理し、数値目標やスケジュールを含めて長期的な方向性を固める作業です。そうした「戦略や計画の骨格を作る」場面に、策定という言葉がふさわしくなります。
現場でよく見かけるのが、「計画書の策定」と「計画書の作成」が混在してしまうケースです。基本的には、計画の内容を決めるプロセスは「策定」、その決定事項を文書に落とし込む作業は「作成」と意識して使い分けると、文章がグッと整って見えます。
策定の語源は?
漢字から語源をたどると、「策」は元々「竹で作ったむち」や「計画・はかりごと」を表し、「定」は「さだめる・きめる」という意味を持ちます。したがって、策定は直訳すると「はかりごと(計画)を定める」というイメージです。
このことからも、策定には「何をどうするか」という方針やストーリーを考え抜き、それをきちんと決めるニュアンスが込められていると考えると、しっくりくるはずです。
策定の類義語と対義語は?
策定に近い意味を持つ類義語と、反対の意味合いを持つ対義語を整理しておきます。
- 類義語:立案、企画、構想、計画、設計、プランニング、立てる
- 近い表現:作成(ただし文書作りに焦点)、まとめる、組み立てる
- 対義語のイメージ:白紙化、撤回、凍結、廃案、見直し(策定した計画を取りやめる・無効にする方向)
「立案・策定→作成→実行」という流れで捉えると、類義語・関連語の位置づけが見えやすくなります。
制定の意味
次に、「制定」です。これは、法律や条例、規程など「ルールそのもの」をつくるときに使われる言葉で、策定とは対象やニュアンスが大きく異なります。
制定とは何か?
「制定」は、「法律・条例・規則・規程などのルールを、正式な手続きに従って定めること」を意味します。国会で法律を制定する、自治体が条例を制定する、会社が就業規則を制定する、といった使い方が代表例です。
ここでのポイントは、制定は「ルールの内容を作る」ことだけでなく、「正式な決定プロセスを経て効力を持つルールとして認めること」まで含む、という点です。単に案を作るだけなら「案の策定」にとどまり、制定には至りません。
制定は「公に通用するルールを作る」イメージ
会社内のローカルルールであっても、「取締役会決議により新たな規程を制定する」といったように、一定の正式な決定手続きが伴う場合に「制定」がふさわしい表現になります。逆に、日常会話レベルの「なんとなくの決まり」に対して「制定」という言葉を使うと、少し大げさに響きます。
制定を使うシチュエーションは?
「制定」を使う主な場面は、次のようなケースです。
- 国会・地方議会での法律・条例の制定
- 会社での就業規則・賃金規程・人事制度などの制定
- 学校・団体などでの校則・会則・規約などの制定
- 新しい制度や方針をルール化するとき(コンプライアンス規程の制定、ハラスメント防止規程の制定など)
例えば、社内文書では「新たな在宅勤務規程を制定しました」「就業規則を全面改定し、新規則を制定しました」といった表現がよく用いられます。ここで「策定」と書いてしまうと、“ルールそのもの”ではなく“計画”のように聞こえてしまうため注意が必要です。
法令関連の言葉の違いに興味がある方には、条文名でよく迷う「要綱・要領・要項」の違いを整理した「要綱」「要領」「要項」の違いと意味・使い方の記事もおすすめです。
制定の言葉の由来は?
「制定」の「制」は、「きまり・ルール・一定の枠組み」を意味し、「定」は「定める・決める」という意味を持ちます。二つを合わせると、「決まりを定める」「ルールを決定する」というイメージになります。
この漢字の組み合わせからも分かるように、制定は「誰かの行動を縛る枠組み」を作るときに使われる言葉です。単なる計画や目標ではなく、遵守が求められるルールであることが前提になっています。
制定の類語・同義語や対義語
制定の周辺にある言葉も、整理しておきましょう。
- 類語・同義語:立法(法律を作ること)、制定・改正(セットで使われることが多い)、制定・公布(法令の流れを表す)、設置(制度や機関を設ける意味で使うことも)
- 近い表現:制定する=定める、公表する(ただし単なる公表は制定とは限らない)
- 対義語のイメージ:廃止、廃止する、撤廃、失効(有効期間が切れる)、無効化
法律の世界では、「制定」だけでなく「改正」(内容を変える)、「廃止」(なくす)、「一部改正」「全部改正」などの表現が組み合わさって使われます。ニュースや官報の表現に慣れてくると、どの段階で何が起きているのかが読み取りやすくなります。
施行の意味
最後に、「施行」です。策定・制定と比べると、日常会話ではあまり使わないかもしれませんが、法令や規程の世界では欠かせない重要なキーワードです。
施行の意味を解説
「施行」は、「制定された法律や条例、規則などを、実際に適用し始めること」を意味します。条文の世界では、「この法律は令和〇年〇月〇日から施行する」といった附則の規定として登場します。
ニュースでも、「改正民法が本日施行されました」「新たな制度が4月1日に施行されます」といった形で伝えられることが多いですね。「決めたルールが、いつから現実の世界で効力を持つのか」を区切る言葉、と捉えると分かりやすいと思います。
施行はどんな時に使用する?
施行を使う主なシチュエーションは、次の通りです。
- 法律・条例・規則の施行(新設・改正を問わず)
- 社内規程やルールの施行(改定した就業規則を○月○日から施行する、など)
- 制度改正・税制改正・料金改定などの開始時期を示す表現
特に、法律の世界では「成立→公布→施行」という流れで用語が使い分けられており、「成立」と「公布」と「施行」は別々の意味を持ちます。「公布と施行の違い」がよく試験に出題されるのは、このためです。
施行日や適用開始日を誤って理解すると、契約や手続きのタイミングを大きく間違えてしまうおそれがあります。税制改正や補助金制度、登記制度など、生活やビジネスに直接影響する制度については、必ず公式の公表資料・専門機関の解説を確認し、重要な判断を行う際は税理士・司法書士・弁護士などの専門家に相談するようにしてください。この記事の内容はあくまで一般的な目安であり、最終的な判断は必ず専門家と相談のうえで行ってください。
施行の語源・由来は?
「施行」の「施」は「ほどこす・実行する」、「行」は「おこなう・すすむ」という意味を持ちます。つまり、施行は直訳すると「定めたことを実際におこなう・適用する」というイメージです。
漢字だけを見ると「施工(工事の施工)」と似ていますが、一般的な読み方も意味も異なります。「施行(しこう/せこう)」は法令や制度に関する用語、「施工(せこう)」は工事などに関する用語という違いがありますので、読み間違えには注意しましょう。
施行の類義語と対義語は?
施行の周辺語も整理しておきます。
- 類義語:実施、実行、運用開始、適用開始、発効(条約など)、施用
- 近い表現:発効する(treaty comes into force)、効力を生じる、有効となる
- 対義語のイメージ:停止、凍結、中止、失効、廃止
法律の世界では、「施行」そのものを停止することもあり、「当分の間、施行を停止する」「施行日を延期する」といった表現が使われます。このように、施行は単なる「開始」ではなく、「効力のオン・オフ」を管理する概念でもあります。
策定の正しい使い方を詳しく
ここからは、実際に「策定」をどのように使えばよいか、例文や言い換えを通じて具体的に見ていきます。ビジネス文書やプレゼン資料での表現の精度を高めたい方は、ぜひチェックしてみてください。
策定の例文5選
まずは、実務でそのまま使える「策定」の例文を5つ挙げます。
- 当社は、2030年を見据えた中期経営計画を策定しました。
- 新規事業の立ち上げに向けて、市場調査にもとづく事業戦略を策定する必要があります。
- リスク分散の観点から、複数拠点を前提としたBCP(事業継続計画)を策定しました。
- 全社的なDX推進のためのロードマップを策定し、各部署に共有しました。
- 環境負荷低減を目的として、2030年までの温室効果ガス削減目標を策定しています。
いずれも、「何をどのように進めるか」という中長期的な方針を具体化している例です。「策定する対象」が計画や戦略・方針であることがポイントです。
策定の言い換え可能なフレーズ
文章のトーンや読みやすさに応じて、「策定」を別の表現に言い換えることもあります。代表的な言い換えを挙げておきます。
- 計画を策定する → 計画を立案する/計画をまとめる/計画を組み立てる
- 方針を策定する → 方針を決定する/方針を定める
- 戦略を策定する → 戦略を描く/戦略を構築する
ただし、「策定」という言葉には計画の中身を練り上げるニュアンスが含まれるため、単なる「作成」「作る」に置き換えると、少し軽く感じられることもあります。社内文書では、「策定」と「作成」の使い分けがブレないように、用語のルールをあらかじめ決めておくと安心です。
策定の正しい使い方のポイント
策定を正しく使うために、次の3点を意識しておくと失敗しにくくなります。
- 対象は「計画・方針・戦略」など、内容を練る性質のものに限定する
- 文書名そのものよりも、その中身を決めるプロセスを表すときに使う
- 「策定」と「作成」「制定」のどれを使うか、組織内で用語ルールを揃える
例えば、「就業規則を策定する」と書いてしまうと、「規則(ルール)」なのか「その運用方針」なのかが曖昧になります。一般的には「就業規則を制定する」「就業規則を改正する」のほうがすっきり伝わります。
策定の間違いやすい表現
実務でよく見かける「策定」の誤用パターンも、いくつか押さえておきましょう。
- 書類や帳票そのものに対して「策定」を使う(例:報告書を策定する)
- ルールそのものに対して「策定」を使う(例:就業規則を策定する → 制定するが適切)
- 「策定」「制定」「作成」が同一文書内で混在し、意味の違いが曖昧になっている
こうした点は、社内の規程やマニュアルを整えるときに、まとめて見直しておくと効果的です。すでに公開している規程やルールの表記を修正する場合は、影響範囲が大きくなることもあるので、慎重に対応しましょう。
制定を正しく使うために
続いて、「制定」の具体的な使い方を見ていきます。特に社内規程や各種ルールを整備する立場の方にとっては、日常的にお世話になる言葉です。
制定の例文5選
まずは、制定の代表的な例文を5つ挙げます。
- 新たな個人情報保護規程を制定し、全社員に周知しました。
- 地方自治体は、子育て支援を目的とする新条例を制定しました。
- 憲法は国の基本的なルールを定める最高法規として制定されています。
- ハラスメント防止に関するガイドラインを制定し、相談窓口を設置しました。
- 本会は、会員の資格や会費に関する会則を制定する。
いずれも、「ルールそのもの」が新たに作られている例です。制定は「ルールを作ること」そのものを指す点を改めて確認しておきましょう。
制定を言い換えてみると
文章の硬さを少し和らげたいときや、読み手に合わせて表現を調整したいときには、「制定」を次のように言い換えることもできます。
- 新しい規程を制定する → 新しい規程を設ける/新しい規程を整備する
- 会則を制定する → 会則を作る/会則を定める
- 条例を制定する → 条例を成立させる(ただし法技術的にはニュアンスに注意)
とはいえ、社内規程や法令関連の文書では、「制定」という言葉を使ったほうが専門的なニュアンスが伝わりやすい場面も多くあります。読み手と用途に合わせて、どの表現が最も適切かを考えながら選ぶことが大切です。
制定を正しく使う方法
制定を正確に使うためのチェックポイントは、次の3つです。
- 対象が「ルール・規程・法令」かどうかを確認する(計画なら策定、文書なら作成)
- 決定プロセス(取締役会決議、総会決議など)が伴う場合に使う
- 「制定日」「改正日」「施行日」を書き分ける習慣をつける
特に社内規程集では、「制定日」「最終改正日」「施行日」「改定日」などの表記をどう揃えるかで、読み手の理解度が大きく変わります。規程全体の設計方針として、一度ルールを決めておくと、今後の改定がとてもスムーズになります。
制定の間違った使い方
制定でよく見られる誤用や、誤解を招きやすい例を挙げておきます。
- 「規定を制定する」と書いてしまう(一般には「規程を制定する」「規定する」が自然)
- 単なる周知・告知に対して「制定」を使う(例:社内連絡のレベルなのに「○○を制定しました」とする)
- 施行の意味で制定を使う(例:新制度を4月1日に制定する → 施行するが適切)
これらは、読み手に「どの段階の話をしているのか」が伝わりにくくなる原因になります。必要であれば、「制定(ルールを作る)→施行(効力を持たせる)」というセットで説明を書くと、誤解を避けやすくなります。
施行の正しい使い方を解説
最後に、「施行」の具体的な使い方を見ていきます。法律や規程だけでなく、社内制度の運用開始時期を案内する場面でもよく使う言葉です。
施行の例文5選
施行の代表的な例文を5つ挙げます。
- 改正民法は、令和2年4月1日に施行されました。
- 新しいテレワーク規程は、来月1日から施行されます。
- 改正個人情報保護法の一部規定は、段階的に施行されています。
- 本規程は、2025年4月1日より施行する。
- 条例の施行後、一定期間を経て見直しを行う予定です。
いずれも、「いつから効力を持つのか」を明示している例です。契約書や社内規程の末尾に、「附則」として施行日を定めるケースもよく見られます。
施行を別の言葉で言い換えると
「施行」を少しやわらかく言い換えたい場合には、次のような表現が考えられます。
- 制度を施行する → 制度を開始する/制度の運用を始める
- 法律が施行される → 法律が効力を持つようになる/法律が有効になる
- 規程を施行する → 規程の運用を開始する
ただし、法律や条例に関する説明では、「施行」という言葉を使うことで、「単なる運用開始」ではなく「法的な効力の発生」であることを明確にできます。専門性や正確さを重視する文脈では、「施行」をそのまま使うほうが望ましい場面が多いと考えてよいでしょう。
施行を正しく使うポイント
施行に関する実務上のポイントを整理しておきます。
- 「制定日」と「施行日」は別の日になることが多いと理解しておく
- 施行日は条文本文ではなく「附則」に規定されるケースが多い
- 段階的施行(一部条文だけ先に施行)があり得ることを意識しておく
特に税制改正や民法改正などでは、「一部の条文のみ先行して施行される」「経過措置として古いルールと新しいルールが並走する」ことも珍しくありません。重要な取引や契約に関わる場合は、「いつ時点のルールが適用されるのか」を十分に確認したうえで判断することが大切です。
施行と誤使用しやすい表現
施行と混同しやすい、あるいは誤解を招きやすい表現も紹介しておきます。
- 「施工(せこう)」と書いてしまう(工事用語なので法令用語とは別)
- 「施行する」と「施行される」を混同し、主語が曖昧になる文章
- 適用開始日と施行日を同じものとして扱ってしまう(条文上、区別されることもある)
読み手が法律の専門家でない場合は、「施行日(効力が発生する日)」といった形で補足を加えると親切です。また、条文や規程を作成するときには、「施行日」「適用日」「発効日」などの用語を統一することも重要なポイントになります。
まとめ:策定と制定と施行の違いと意味・使い方の例文
この記事では、「策定」「制定」「施行」という三つの言葉について、意味の違い・使い分け・語源・類義語や対義語・英語表現・具体的な例文まで一気に整理しました。最後に、ポイントを簡単に振り返っておきます。
- 策定:政策や計画、方針などの内容を考え、計画としてまとめて決めること。対象は主に計画・戦略・方針。
- 制定:法律・条例・規程などのルールを、正式な手続きに従って定めること。ルールそのものを作る段階。
- 施行:制定された法律や規則に効力を持たせ、実際に適用し始めること。いつからルールが動き出すかを示す概念。
迷ったときは、「内容を練る段階=策定」「ルールとして形にする段階=制定」「効力を発生させて運用する段階=施行」という三段階で考えると整理しやすくなります。社内規程や契約書、法令関係の文書に関わる方は、用語の使い分けが文章の信頼感に直結しますので、この機会に一度しっかり整理しておくことをおすすめします。
同じく法令・規程まわりの用語としては、「付と附の違い」もよく質問を受けるテーマです。漢字の使い分けに不安がある方は、「付」と「附」の違いや意味・使い方・例文を整理した記事も参考にしてみてください。

