
「振るう」と「奮う」は、どちらも「ふるう」と読む同訓異義語です。そのため文章を書いていると、「権力をふるう」はどっち?「奮って参加」はなぜ奮う?と迷いやすい言葉でもあります。
実際に検索すると、振るうと奮うの違いと意味だけでなく、使い分け、例文、英語表現、語源、類義語や対義語、言い換え、さらには「揮う」「震う」「篩う」との違いまで気になる方が多い印象です。特に「猛威を振るう」「腕を振るう」「気力を奮う」「奮ってご応募ください」など、定番の言い回しで漢字を間違えると、読み手に違和感を与えてしまうこともあります。
この記事では、違いの教科書を運営するMikiとして、振るうと奮うの意味の核から、使い方・言い換え・英語表現・例文まで、今日から迷わない形に整理します。
- 振るうと奮うの意味の違いと判断のコツ
- 定番表現での使い分けと間違えやすいポイント
- 類義語・対義語・言い換えと英語表現の対応
- そのまま使える例文10本と自然な応用方法
振るうと奮うの違い
まずは最短で迷いを消すために、振るうと奮うの「意味の核」と「選び方」をセットで押さえます。ここを理解すると、例文や語源の細部も一気につながります。
結論:振るうと奮うの意味の違い
結論から言うと、振るうは「手や物を勢いよく動かす」または「力・影響力を外に向けて発揮する」、奮うは「気力・意欲を内側からわき立たせる(奮い立つ)」が中心です。
私が現場で判断するときは、外に向けて作用させるのが振るう、内側を鼓舞するのが奮うと覚えるようにしています。
| 語 | 意味の核 | 向き | 典型例 |
|---|---|---|---|
| 振るう | 振り動かす/力や影響を発揮する | 外向き | 刀を振るう・権力を振るう・猛威を振るう |
| 奮う | 気力や意欲をかき立てる/勢いよく取り組む | 内向き→行動 | 勇気を奮う・気力を奮う・奮って参加する |
振るうと奮うの使い分けの違い
使い分けは「何を対象にしているか」で決まります。手・武器・権力・影響・能力のように、外に出て相手や状況に作用するものなら振るうが基本です。一方、勇気・気力・精神・意欲のように、内面を奮い立たせる話なら奮うが自然になります。
- 振るう:刀/腕/権力/暴力/猛威/采配/手腕 など「外に及ぶ力」
- 奮う:勇気/気力/精神/意気 など「内側から湧かせる力」
また、「奮ってご参加ください」「奮ってご応募ください」の奮うは、丁寧表現の中で「積極的に」のニュアンスを担う定番用法です。ここを振るうにしてしまうと不自然になります。
振るうと奮うの英語表現の違い
英語は漢字の区別がないぶん、文脈で動詞を変えます。振るうは「武器を振り回す」「権力を行使する」などの具体性が強く、奮うは「気力を奮い立たせる」「奮って参加する」などの意欲・熱意が中心です。
| 日本語 | 英語の目安 | ニュアンス |
|---|---|---|
| 刀を振るう | wield a sword | 武器を振り回す |
| 権力を振るう | exercise power / wield authority | 権力を行使する |
| 猛威を振るう | rage / be rampant | 猛威が荒れ狂う |
| 勇気を奮う | muster courage | 勇気を振り絞る |
| 奮って参加する | We encourage you to join. / Please join us. | 積極的に参加してほしい |
なお、英訳は文脈で最適解が変わります。正式な英文が必要な場合は、最終的な判断は専門家にご相談ください。
振るうの意味
ここからは振るうを深掘りします。意味の中心、よく使う場面、語源のイメージ、類義語・対義語まで押さえると、文章の精度が上がります。
振るうとは?意味や定義
振るうは、もともと「勢いよく振り動かす」が基本です。そこから転じて、力・影響力・能力を(外に向けて)発揮する意味でも使われます。
代表例が「刀を振るう」「腕を振るう」「権力を振るう」「暴力を振るう」「猛威を振るう」です。いずれも、何らかの力が外部に作用しているのが共通点です。
振るうはどんな時に使用する?
振るうは「動作」か「行使・発揮」のどちらかで捉えるとスムーズです。私は次の2パターンで整理しています。
- 物理的に振り動かす:刀を振るう、旗を振るう、腕を振るう
- 力や影響を及ぼす:権力を振るう、暴力を振るう、猛威を振るう、手腕を振るう
特にビジネス文脈では「手腕を振るう」「采配を振るう」のように、能力を発揮して状況を動かすニュアンスで使われやすいです。
振るうの語源は?
振るうは「振(ふ)る」が核にあり、振動・振り子の振と同じく「揺らす/振り動かす」のイメージが土台です。そこから「勢いが出る」「作用が外へ及ぶ」と意味が広がり、権力や暴力、猛威のような抽象語にも結びつきました。
- 「成績が振るわない」のように、否定形で「勢いが出ない」ニュアンスを作れるのも振るうの特徴
振るうの類義語と対義語は?
類義語は「外に向けて力を出す」という観点で選ぶのがコツです。対義語は文脈依存ですが、「抑える」「控える」「収める」などが自然に対応します。
類義語(近い言い換え)
- 行使する(権力を行使する)
- 発揮する(実力を発揮する)
- ふり回す(棒をふり回す)
- 振りかざす(権威を振りかざす)
対義語(反対側の動き)
- 抑える(権力を抑える)
- 控える(暴力を控える)
- 鎮まる・収まる(猛威が収まる)
奮うの意味
次に奮うです。振るうと同じ読みでも、焦点は「心の動き」にあります。ここを押さえると「奮って参加」の理由も腑に落ちます。
奮うとは何か?
奮うは、気力・意欲・勇気などをかき立てる意味で使われます。「奮い立つ」に近く、内面のエネルギーが高まって行動につながるイメージです。
そのため「勇気を奮う」「気力を奮う」「精神を奮う」のように、内面的な語と相性が良くなります。
奮うを使うシチュエーションは?
奮うが活躍するのは、大きく2つの場面です。
- 自分を鼓舞して踏み出す:勇気を奮う、気力を奮う、精神を奮い起こす
- 積極的に参加・応募してほしい:奮ってご参加ください、奮ってご応募ください
後者は、案内文や告知でよく使われる定番表現です。「奮って」は「ぜひ」「積極的に」に近い丁寧な促しとして機能します。
奮うの言葉の由来は?
「奮」は、勢いよく立ち上がる・ふるい立つニュアンスを含む漢字です。奮うは、その字義の通り、心をふるい立たせる方向で意味が育ちました。振るうが「振り動かす(外向き)」なのに対し、奮うは「奮い立たせる(内向き)」と対になる関係だと理解すると覚えやすいです。
奮うの類語・同義語や対義語
奮うは「内面を燃やす」言葉なので、類語は鼓舞・奮起系が中心です。対義語は「気力が落ちる」方向の語が対応します。
類語・同義語(言い換え)
- 奮起する
- 鼓舞する
- 奮い立つ
- 鼓舞される(受け身の形)
- 勇気を振り絞る(口語寄りの言い換え)
対義語(反対の状態)
- 萎える
- 落胆する
- 気落ちする
- 尻込みする
振るうの正しい使い方を詳しく
ここでは振るうを「間違えない」だけでなく、「文章が引き締まる」使い方まで落とし込みます。例文とセットで感覚を固めましょう。
振るうの例文5選
- 彼は会議でリーダーシップを発揮し、見事な采配を振るった
- 台風が沿岸部で猛威を振るい、交通機関に大きな影響が出た
- 彼女は得意料理で腕を振るい、みんなを驚かせた
- その組織は権力を振るって反対意見を封じた
- 感情に任せて暴力を振るうのは、どんな理由があっても許されない
振るうの言い換え可能なフレーズ
同じ文でも、言い換えで硬さやニュアンスを調整できます。
| 振るう | 言い換え | 向いている文脈 |
|---|---|---|
| 権力を振るう | 権力を行使する | 公的・フォーマル |
| 腕を振るう | 腕前を発揮する | 説明的・丁寧 |
| 猛威を振るう | 猛威をふるう(ひらがな表記) | 読みやすさ重視 |
| 暴力を振るう | 暴力に訴える | 批評・論説 |
振るうの正しい使い方のポイント
振るうは、目的語(何を振るうか)を見ればほぼ決まります。「外に影響が出る名詞」+振るうの形になっていれば自然です。
- 外に作用する:権力・暴力・猛威・手腕・采配・腕(腕前)
- 物理動作に寄せる:刀・旗・腕・棒
迷ったときは「それは外に向けて発揮するものか?」と自問するのが一番早いです。
振るうの間違いやすい表現
よくある混同は次の2つです。
- 「奮って参加」を「振るって参加」と書く(促しの定番は奮って)
- 「勇気を振るう」と書く(内面の話なので基本は勇気を奮う)
- 固有名詞や団体の公式表記が関わる文書は、正確な情報は公式サイトをご確認ください
奮うを正しく使うために
奮うは、正しく使えると文章が前向きに締まります。一方で、振るうと入れ替えると違和感が出やすいので、典型パターンを丸ごと覚えるのが近道です。
奮うの例文5選
- 本番前に気力を奮って、最後までやり切った
- 勇気を奮って上司に提案したところ、意外にも好感触だった
- 新しい挑戦に向けて精神を奮い立たせた
- イベントには奮ってご参加ください
- 締切が迫っていたが、意欲を奮って計画を立て直した
奮うを言い換えてみると
奮うは、文体に合わせて言い換えやすい言葉です。特に案内文では「奮って」を別表現にすると、硬さを調整できます。
- 奮ってご参加ください → ぜひご参加ください/よろしければご参加ください/積極的にご参加ください
- 勇気を奮う → 勇気を出す/勇気を振り絞る
- 気力を奮う → 気持ちを立て直す/気力を奮い起こす
奮うを正しく使う方法
奮うは「心のエンジンをかける」言葉です。ですから、目的語に勇気・気力・精神・意欲などが来ていればほぼ正解です。また「奮って+動詞(参加する/応募する)」の形は、案内・募集の定番として覚えておくと便利です。
- 「奮って」は「熱意をもって」「積極的に」という丁寧な促しとして機能する
奮うの間違った使い方
奮うを外向きの「行使」に当てるとズレます。
- 誤:権力を奮う(正:権力を振るう)
- 誤:猛威を奮う(正:猛威を振るう)
- 誤:暴力を奮う(正:暴力を振るう)
文章の正確さが求められる提出物や公的文書では、辞書や公式の表記基準に当たるのが安心です。最終的な判断は専門家にご相談ください。
まとめ:振るうと奮うの違いと意味・使い方の例文
最後に要点を整理します。迷ったときは「外に作用させるか、内面を鼓舞するか」に立ち返ると、振るうと奮うはほぼ見分けられます。
- 振るう:振り動かす/力・影響力・能力を外に向けて発揮する(刀・権力・猛威・暴力・腕 など)
- 奮う:気力・意欲・勇気をかき立てる/奮い立つ(勇気・気力・精神・奮って参加 など)
- 英語は文脈で動詞が変わる(wield / exercise / muster など)
- 迷いが残る場合は、正確な情報は公式サイトをご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください
同じ読みでも、漢字が違うだけで意味の向きが変わります。定番表現(猛威を振るう/奮って参加)だけでも確実に押さえておくと、文章の信頼感が一段上がります。
なお、同じ読みで迷いやすい言葉の整理として、以下の記事も参考になります。

