
「従前」と「従来」、どちらもビジネス文書や公文書でよく見かけるのに、いざ自分で書こうとすると「違いは?」「意味は同じ?」「使い分けは?」「読み方は?」と迷いがちです。
さらに、「従前どおり」と「従来どおり」はどちらが自然なのか、「以前」との違い、法律や規程の文脈でのニュアンス、英語ではどう言い換えるのか、例文で感覚を掴みたいという声も多いところです。
この記事では、従前と従来の違いを結論から整理し、使い方、語源、類義語・対義語、言い換え、英語表現まで、実務でそのまま使える形でまとめます。読み終えるころには「どっちを選ぶべきか」がスッと決められるようになります。
- 従前と従来の意味の違いを一文で説明できるようになる
- 従前どおり・従来どおりの使い分けが迷わなくなる
- 類義語・対義語・言い換えと英語表現まで整理できる
- すぐ使える例文で、自然な書き方が身につく
従前と従来の違い
最初に全体像をつかみましょう。ここを押さえるだけで、以降の語源や例文も「なるほど」とつながります。
結論:従前と従来の意味の違い
結論から言うと、私は次の一文で使い分けています。
- 従前:「今より前(これまで)」という過去の時点・状態に焦点がある
- 従来:「前から今まで」続いてきた流れに焦点がある
どちらも「前」を扱いますが、従前は「以前の状態(前の条件)」を指しやすく、従来は「ずっとそうしてきた(慣行・方針・方式)」の継続性が強く出ます。
| 項目 | 従前 | 従来 |
|---|---|---|
| 中心のイメージ | 今より前の状態・条件 | 前から今まで続く流れ・慣行 |
| よく一緒に出る語 | 従前の方式/従前どおり/従前の取扱い | 従来の方針/従来どおり/従来型 |
| 向いている場面 | 「以前の条件」を指定したい | 「これまでの運用」を語りたい |
従前と従来の使い分けの違い
実務で迷うのは、どちらも「変えない」ニュアンスを出せるからです。使い分けは、何を“基準”にしているかで判断するとブレません。
- 条件・状態の比較(前の状態に対して)→ 従前がしっくり
- 運用・慣行の継続(ずっとの流れに対して)→ 従来がしっくり
例えば、制度改正の案内で「改正後も前の条件を維持します」と言いたいなら「従前の条件を維持」が自然です。一方、「これまでの運用を続けます」なら「従来の運用を継続」がハマります。
なお、「前例に従って続ける」という話題が絡む場合は、関連語の理解も効きます。前例をそのまま受け継ぐニュアンスを深掘りしたい方は、「踏襲」と「継承」の違いや意味・使い方・例文まとめもあわせて読むと、文章選びの精度が上がります。
従前と従来の英語表現の違い
英語は日本語ほど「従前/従来」を一語で固定対応させにくいので、文脈で選びます。私は次の整理で訳し分けています。
- 従前:previous / former / prior(前の状態・条件)
- 従来:conventional / traditional / existing / as before(従来の方式・慣行・これまでどおり)
例えば「従前の方式」は the previous method、「従来型の製品」は a conventional product のように、対象が「条件」なのか「慣行・方式」なのかで選ぶのがコツです。
- 契約書や規程などの英訳は、文書全体の用語統一が重要です。最終的な表現は公式資料や社内ルール、専門家の確認をおすすめします。
従前とは?
ここからは用語を一つずつ分解します。まずは「従前」を、意味・使う場面・語源・類義語まで整理します。
従前の意味や定義
従前(じゅうぜん)は、「今より前」「これまで」「以前」といった、過去の時点や過去から現在までの状態を表す言葉です。特に文章では「従前の〜」の形で、以前の状態・条件・取り扱いを指す用途が多いです。
私の感覚では、従前は「前にこうだった」を、やや改まった言い方で正確に示すための語です。口語よりも、通知文・案内文・規程・社内文書などに向きます。
従前はどんな時に使用する?
従前が活きるのは、“前の状態”を基準にして話を進めたいときです。典型は次のような場面です。
- 手続き・運用が「変更なし」であることを示す
- 制度変更後も「前の条件を維持」することを示す
- 比較の起点として「従前に比べて〜」と述べる
「従前どおり」は特に鉄板で、案内文や規程で頻出します。「従前どおりご利用いただけます」「取扱いは従前どおりです」のように、読み手の不安を抑える表現として強いです。
従前の語源は?
従前は、漢字の通りに分解すると理解が早いです。
- 従:従う、したがう(ある基準・流れに沿う)
- 前:前、以前
つまり語感としては「前(過去)に沿う・前の状態に従う」というイメージになります。だからこそ「従前の方式」「従前の取扱い」のように、前の状態を“参照基準”として示す言い方が自然にハマります。
従前の類義語と対義語は?
従前に近い言葉はいくつかありますが、ニュアンスが少しずつ違います。混同しやすいものを中心にまとめます。
従前の類義語(近い意味)
- 以前:ある時点より前(基準点の置き方で幅が出る)
- 従来:前から今まで(継続性が強い)
- これまで:口語寄りで幅広い
- 前の/旧:やや簡潔、文体はくだける
従前の対義語(反対方向に近い表現)
- 今後:これから先
- 以後:ある時点より後(基準点が明確)
- 以降:ある時点から後(継続の含みもある)
- 「以前/以後/以降」は基準時点の置き方で誤解が生まれやすい語です。重要文書では、日付や条件を明示し、最終的な判断は専門家にご相談ください。
従来とは?
次に「従来」です。従来は「昔から今まで」の流れを含むため、慣行・方式・方針などと相性が良い言葉です。
従来の意味を詳しく
従来(じゅうらい)は、「前から今まで」「これまで」という意味で、過去から現在へ続く継続性を帯びた語です。さらに辞書的には「物事のよって来るところ(由来・来歴)」の意味で使われることもありますが、日常・ビジネスでは「これまで」という用法が中心になります。
私の書き分けとしては、「従来の方針」「従来方式」「従来型」のように、運用・仕組み・スタイルを指すときに積極的に使います。
従来を使うシチュエーションは?
従来は、“ずっと続いてきたやり方”を語るときに強い言葉です。例えば次のようなシーンが典型です。
- 方針や運用を変えない(従来の方針を維持)
- 新方式との比較(従来方式と比べて〜)
- タイプ分け(従来型/従来モデル)
「従来どおり」もよく使いますが、私は「慣行として続ける」ニュアンスを出したいときに選びます。案内文で「今までのやり方でOKです」と言うなら従来どおりが自然です。
文書で「変更」と「訂正」を混同して、意図と違うニュアンスになることもあります。文言の整理が必要な場合は、「改定」と「改訂」の違いや意味・使い方・例文まとめも参考になります。
従来の言葉の由来は?
従来も漢字の意味で捉えると腑に落ちます。
- 従:従う、踏みならす(一定の流れに沿う)
- 来:来る(ここまで来た、今に至る)
つまり語感としては「これまで従ってきたものが今に至る」というイメージです。だから「従来の慣行」「従来方式」のように、過去から積み上がってきた流れを含む言い方と相性が良くなります。
従来の類語・同義語や対義語
従来の近い表現は多いですが、文章の堅さやニュアンスが変わるので、用途別に整理します。
従来の類語・同義語
- これまで:口語寄りで柔らかい
- 以前から:会話でも使いやすい
- 在来:従来より硬め、「在来線」など定着語も多い
- 従前:前の状態を指す(継続より状態に寄りやすい)
- 旧来:古くからの(「古さ」や保守性が出やすい)
従来の対義語に近い表現
- 新たに:新規導入
- 刷新:古いものを新しくする(仕組み・体制の更新)
- 新方式:従来方式と対比で使う
従前の正しい使い方を詳しく
ここからは「従前」を実際に書けるようにするパートです。例文と、言い換え、注意点までまとめて押さえます。
従前の例文5選
- 手続きの流れは従前どおりで、追加の提出書類はありません
- 本件の取扱いは従前の運用に準じて判断します
- サービス内容は従前の条件を維持し、料金のみ改定します
- 従前に比べて問い合わせ件数が増加しています
- 規程の表記を整えましたが、内容は従前と変更ありません
従前の言い換え可能なフレーズ
文体や読み手に合わせて、言い換えも用意しておくと便利です。
- これまでどおり(柔らかい案内文向き)
- 以前のとおり(口語寄りで分かりやすい)
- 前の条件で(条件を明確にしたいとき)
- 現行どおり(「今のルール」を基準にする場合)
- 変更なし(端的だがぶっきらぼうに見える場合も)
- 「従前どおり」は硬いですが安心感があります。通知・案内では「不安を減らす言い回し」として強い武器になります。
従前の正しい使い方のポイント
従前を自然に使うポイントは3つです。
- 何が従前なのかを名詞で具体化する(従前の条件/従前の方式/従前の取扱い)
- 比較・継続のどちらかを明確にする(従前に比べて/従前どおり)
- 重要文書は基準を明示する(日付・条項・対象範囲)
特に規程や契約の文脈では、「従前」が指す範囲を読み手が誤解するとトラブルになりえます。重要事項は、公式サイトや原文の規程を確認し、最終的な判断は専門家にご相談ください。
従前の間違いやすい表現
私が文章添削でよく見るのは、次のズレです。
- 「従前から」と書いてしまい、意味が重複して冗長になる
- 「従前の方針」と書きたいのに、実際は「従来の方針(これまでの方針)」が自然なケース
- 「従前」と「以前」を混同して、基準時点が曖昧なままになる
「従前」は“前の状態”を指すのが得意な語です。「ずっと続いてきた方針」を言いたいなら、従来を選んだほうが読み手に伝わりやすいことが多いです。
従来を正しく使うために
最後に「従来」です。従来は便利な一方、「古い・保守的」という含みが出ることもあるため、言い方の選び方が大事になります。
従来の例文5選
- 従来の方針を踏襲しつつ、運用だけを改善します
- 従来方式と比べて、手続きの所要時間が短縮されました
- ご利用方法は従来どおりで、ログイン画面のみ変更しました
- 従来型の研修から、実践重視の形式へ移行します
- 従来の慣行に合わせるだけでなく、背景も説明します
従来を言い換えてみると
従来は「文体の硬さ」を調整しやすい言葉です。読み手との距離感で言い換えを選びます。
- これまで(柔らかく万能)
- 今まで(会話向き)
- 従来の慣行→これまでのやり方(平易化)
- 従来方式→旧方式/現行方式(対比を明確に)
- 従来型→既存型(「古い」含みを弱める)
従来を正しく使う方法
従来を上手く使うコツは、「継続の線」を意識することです。
- 運用・慣行・方式と一緒に使う(従来の運用/従来方式/従来の慣行)
- 比較の相手を置くと明確になる(従来方式と新方式)
- 評価語を添えないと中立に伝わる(「古い」と決めつけない)
なお、文書によっては用語の統一(表記ゆれ防止)が最優先です。社内スタイルガイドや公式資料がある場合は、それを優先し、最終的な判断は専門家にご相談ください。
従来の間違った使い方
従来で起きやすいミスは、次の2パターンです。
- 「従来」を“前の状態”の意味で使い、条件や比較の話がぼやける(この場合は従前や以前が適切なことが多い)
- 「従来から」のように重複表現になり、文章がくどくなる
「従来」は“継続の流れ”を指す語です。前の状態をピンポイントで示したいときは、従前のほうが精度高く伝わります。
まとめ:従前と従来の違いと意味・使い方の例文
最後に、従前と従来の違いをもう一度シンプルに整理します。
- 従前は「今より前(これまで)の状態・条件」を示す語で、従前の条件/従前どおりのように“前の状態”を基準にするときに強い
- 従来は「前から今まで続く流れ・慣行」を示す語で、従来の方針/従来方式/従来型のように“これまでの運用”を語るときに強い
- 英語は文脈で訳し分け、従前はprevious/former/prior、従来はconventional/traditional/existing/as beforeが目安
- 重要文書では、公式資料の確認や用語統一が必須で、最終的な判断は専門家にご相談ください
迷ったら、「前の状態を指したいなら従前」「継続の流れを言いたいなら従来」という軸に立ち返ってください。例文の型まで覚えておくと、次からは文章が一気に書きやすくなります。

