
図面を読んでいると、「矢視図」と「断面図」が並んで出てきて、どっちを見れば何が分かるの?と迷うことがあります。特に、矢視や補助図の扱い、断面の切断線(A-Aなど)やハッチングのルール、第三角法・第一角法との関係まで絡むと、混乱しやすいポイントが一気に増えます。
この記事では、矢視図と断面図の違いと意味を、製図・設計の現場で迷わない実務目線で整理します。英語表現(arrow view、section view、cross section)や、語源・言い換え、類義語・対義語、使い方のコツ、例文までまとめているので、「結局どう使い分ければいい?」がスッと腑に落ちるはずです。
図面の見方に不安がある方も大丈夫です。見える情報(外形)と、切って見せる情報(内部)を分けて考えるだけで、図面の読み取り精度が上がります。
- 矢視図と断面図の意味の違い
- 図面上での使い分けと読み取りのコツ
- 英語表現と言い換えの整理
- 例文で身につく正しい使い方
矢視図と断面図の違い
矢視図と断面図は、どちらも「形状を伝える図」ですが、何を見せるための図かが根本的に違います。ここを押さえるだけで、図面の理解は一段ラクになります。
結論:矢視図と断面図の意味の違い
結論から言うと、矢視図は矢印で示した方向から見た外観(外形)を示す図で、断面図は対象を切断して内部形状を見せる図です。
言い換えるなら、矢視図は「見る向きを追加する図」、断面図は「中身を見せるために切る図」です。図面は基本的に正面図・平面図・側面図などの投影図で構成されますが、そこで表現しづらい形状が出てきたときに、矢視図や断面図が活躍します。
- 矢視図:矢印方向から見た外形を追加し、形状理解を補助する
- 断面図:切断して内部形状・肉厚・空洞・段差などを明確化する
つまり、矢視図は「外から見える形を正しく伝える」、断面図は「外からは見えない構造を正しく伝える」ための図です。
矢視図と断面図の使い分けの違い
使い分けはシンプルで、外形が伝わらないなら矢視図、内部が伝わらないなら断面図です。ただし実務では、両方が必要になるケースもあります。
たとえば、斜め方向にしか見えない面取り形状や、複雑な曲面の繋がりは、正面図や側面図だけだと誤読されやすいので矢視図が有効です。一方、リブ、肉厚、空洞、段差、貫通穴の内部側の座ぐりなどは、断面図がないと確定できません。
- 矢視図は「どの方向から見たか」を矢印で指定する発想
- 断面図は「どこを切ったか」を切断線(A-Aなど)で指定する発想
注意したいのは、断面図には「切断した位置」だけでなく、視線方向の後方に見える外観要素も含めて描くルールが採用される場合があることです。社内標準やJIS/ISO、業界慣習で表現が変わることもあるので、最終的な判断は所属組織の製図ルールや規格、または設計・製図の専門家にご相談ください。
矢視図と断面図の英語表現の違い
英語では、矢視図は一般にarrow view、断面図はsection view、またはcross-sectional viewなどと表現されます。
ただし、英語圏の図面文化では「補助投影(auxiliary view)」という概念が前面に出ることがあり、日本語の矢視図を英訳するときに、状況次第で表現が揺れることがあります。現場で誤解を避けたいなら、図面注記として「矢印方向の外観図」であること、あるいは「切断している断面図」であることを補足すると安全です。
- 海外案件では用語だけでなく、投影法(first angle / third angle)の前提も確認する
- 「cross section」は断面そのものを指すこともあるため、図面では「section view」の方が伝わりやすい場面がある
矢視図とは?
ここからは、矢視図そのものを深掘りします。意味・使う場面・語源イメージ・類義語まで押さえると、図面を読むのも描くのもスムーズになります。
矢視図の意味や定義
矢視図は、矢印で示した方向から見た形状を表す図です。正面図・側面図・平面図だけでは形状が誤解されやすいときに、「この方向から見た姿が必要」と判断して追加します。
ポイントは、矢視図は切っていないこと。あくまで外から見た外観であり、内部構造を見せるのが目的ではありません。
矢視図が効く典型パターン
- 斜め面の傾きが、既存の投影図では伝わらない
- 曲面同士のつながりが、見え線・隠れ線だけでは曖昧
- 一部形状の見え方を補助的に示したい
矢視図はどんな時に使用する?
私が設計図面をチェックするとき、矢視図が必要だと感じるのは「読み手が立体を想像して迷う余地が残る」瞬間です。加工・検査・組立のどこかで誤解が起きそうなら、矢視図を足す価値があります。
たとえば、同じ“穴”でも、面に対して垂直なのか、斜めなのかで加工が変わります。投影図で穴の軸方向が読み取りづらいなら、矢視図で「この面に対してこう見える」を示すと、図面の解像度が上がります。
- 外形の誤読リスクがあるなら矢視図で補う
- 追加の矢視図は、結果的に問い合わせや手戻りを減らしやすい
矢視図の語源は?
「矢視図」は、文字通り「矢(矢印)で示した方向から視る図」という構造です。製図では、視線方向を明示するために矢印が多用されますが、その発想を名前に落とし込んだのが矢視図です。
用語としては「矢視」「矢視方向」として使われることもあり、「矢視A」「矢視B」のように図面内で識別する運用も見かけます。表記ルールは組織や業界で差が出やすいので、迷ったら社内標準や規格に合わせるのが確実です。
矢視図の類義語と対義語は?
矢視図の類義語は、文脈によって少し揺れますが、近い概念としては「補助図」「補助投影図」「補助ビュー」が挙げられます。英語では「auxiliary view」と言い換えられる場面もあります。
一方で、対義語を厳密に置くのは難しいものの、機能として反対側にあるのは「断面図」です。矢視図が外観の補助なら、断面図は内部の提示です。
- 類義語:補助図、補助投影図、補助ビュー(auxiliary view)
- 対義語(機能的に対照):断面図(内部を見せる)
断面図とは?
断面図は、設計意図を誤解なく伝えるための強力な手段です。外観だけでは決められない情報を、切って見せることで確定させます。
断面図の意味を詳しく
断面図は、対象物をある平面で切断し、その切断面と内部形状を表した図です。内部の空洞、肉厚、段差、リブ、勘合部の形状など、外側からは見えない要素を明確にできます。
断面図では、切断する位置を示すために、元の図(たとえば正面図)に切断線を入れ、A-AやB-Bのような記号を付け、矢印で視線方向を示すのが一般的です。また、切断された面にはハッチング(斜線)を入れて「ここが切れている面だ」と分かるようにします。
- 断面図は「どこを切るか」と「どちらから見るか」の指定がセット
- ハッチングは材料表現や視認性のルールが絡むため、社内標準・規格の確認が安全
断面図を使うシチュエーションは?
断面図が必要になるのは、「外形だけでは形状が確定しない」ときです。代表例は、穴の段付き、内部の空洞、厚みの変化、内部に隠れたリブ構造など。投影図で隠れ線を増やして表現する方法もありますが、複雑になるほど読みづらくなり、ミスの温床になります。
断面図を1枚入れるだけで、加工者や検査担当が迷わなくなるケースは多いです。図面の情報量は増えますが、誤解が減るなら“良い増加”だと私は考えています。
- 隠れ線だらけになるなら、断面図で一気に整理する
- 肉厚・段差・内部空間のような「内部の決め手」は断面図が強い
断面図の言葉の由来は?
「断面」は、物を断ち切ったときに現れる面のことです。つまり断面図は、切った結果として見える面(および内部形状)を図として表したもの。言葉の構造がそのまま機能を説明しています。
図面用語は、現場の操作や動作をそのまま名前にしているものが多いので、由来を理解すると定着が早くなります。
断面図の類語・同義語や対義語
断面図の類語としては、「断面」「セクション図」「切断図」などが挙げられます。英語では「section view」「cross-sectional view」「cross section」などが使われます。
対義語を置くなら、やはり機能として対照的なのは「矢視図」です。断面図が内部を見せるなら、矢視図は外観の視点追加です。
- 類語・同義語:セクション図、切断図、断面(文脈による)
- 対義語(機能的に対照):矢視図(外観を見せる)
矢視図の正しい使い方を詳しく
ここでは、矢視図を文章としてどう使うか(説明や会話での使い方)と、図面コミュニケーションとしてどう押さえるかを、例文中心にまとめます。
矢視図の例文5選
矢視図は、設計・製造の会話や図面注記でよく登場します。以下は自然に使える例文です。
- この形状は正面図だけだと誤解されそうなので、矢視図を追加します
- 矢視図Aを見ると、面取りの位置関係がはっきりします
- 矢視図の方向はこの矢印で示しているので、見え方はそちら基準で確認してください
- 矢視図に寸法を入れる場合は、基準面との関係が分かるように整理しましょう
- この角度は矢視図がないと読み取りにくいので、補助ビューとして出しておきます
矢視図の言い換え可能なフレーズ
相手の理解度や場面に応じて、矢視図は言い換えると伝わりやすくなります。
- 矢印方向から見た図
- 矢視方向の外観図
- 補助ビュー(補助図)
- この方向から見た形状を示す図
特に社外の相手や新人に説明するなら、「矢印方向から見た図」と言うだけで誤解が減ります。
矢視図の正しい使い方のポイント
矢視図を“役に立つ図”にするコツは、矢印方向と対象範囲を迷わせないことです。矢視図があるのに問い合わせが来る図面は、だいたい「どっち向き?」「どの面のこと?」が曖昧です。
- 矢印は図面上で見落とされない位置に置く
- 矢視図の識別(A、Bなど)を統一し、参照元と対応させる
- 必要なら矢視図側にも基準となる輪郭・中心線を入れて理解を助ける
線の扱いに迷う場合は、線種の基礎を一度整理すると理解が安定します。図面での線の意味づけは、別記事の「破線と点線の違いを図面や道路でわかりやすく解説」も参考になります。
矢視図の間違いやすい表現
矢視図でよくある混乱は、「矢視図=断面」と誤認するケースです。矢視図は切りません。あくまで外観です。
- 「矢視図で内部が分かる」は誤り(内部を見せるなら断面図)
- 矢印の向きが曖昧だと、矢視図の価値が落ちる
- 寸法を入れすぎると、主投影図との整合が崩れて読みづらくなることがある
図面表現は組織や規格によって運用差があります。最終的には、所属先の図面標準やJIS/ISO、公式の規格資料をご確認ください。判断に迷うときは、設計・製図の経験者や専門家への相談が確実です。
断面図を正しく使うために
断面図は便利ですが、作図ルールが絡むため、曖昧に描くと逆に誤解を生むことがあります。例文とポイントで、迷いやすい部分を整理します。
断面図の例文5選
- 内部の肉厚が分かるように、A-A断面図を追加しました
- このリブ形状は外観では判断できないので、断面図で示します
- 切断線の矢印方向に注意して、断面図を読み取ってください
- 断面部のハッチングは社内標準に合わせて統一します
- 複数断面が必要なので、縦断面と横断面を分けて掲載します
断面図を言い換えてみると
断面図は、説明相手によって言い換えると理解が早まります。
- 切って中を見せた図
- 内部形状を示す図
- セクション図(section view)
- 切断面の形が分かる図
断面図を正しく使う方法
断面図の要点は、切断位置・視線方向・断面表現(ハッチング)をセットで整えることです。ここが揃うと、読み手の脳内に立体が正確に立ち上がります。
断面図で押さえる実務ポイント
- 切断線(A-Aなど)は主投影図の中で見落とされないように配置する
- 矢印で「どちらから見た断面か」を必ず示す
- 断面のハッチングは、材料や社内ルールに合わせて一貫性を持たせる
- 一枚で説明できないなら、無理に詰めずに断面図を分ける
なお、断面の描き方は規格・業界・提出先(官公庁等)で要求が変わることがあります。正確な要件は公式の規格・ガイドラインをご確認ください。最終的な表現判断が必要な場合は、設計・製図の専門家に相談するのが安全です。
断面図の間違った使い方
断面図で多い失敗は、「切断しているのに、何を切ったのか分からない」状態です。断面図単体は正しくても、参照元(切断線の入った図)が曖昧だと、読み手は迷います。
- 切断線の記号(A-Aなど)と断面図の表記が対応していない
- 視線方向の矢印がなく、左右が逆に解釈される
- 断面部の表現が不統一で、どこが切れているのか判別しづらい
- 断面図に不要な情報を盛り込みすぎて、かえって見づらい
断面図は「情報を増やす図」ではなく、「曖昧さを消す図」です。目的がブレたら、断面図を入れる意味が薄れます。
まとめ:矢視図と断面図の違いと意味・使い方の例文
矢視図と断面図は、図面の理解を助ける“武器”ですが、役割ははっきり分かれています。矢視図は矢印方向から見た外観、断面図は切断して内部を見せる図です。
- 外形の見え方を補うなら矢視図
- 内部形状を確定したいなら断面図
- 英語では矢視図はarrow view、断面図はsection view/cross-sectional viewが目安
- 例文のように「何を伝えたい図か」を言語化できると運用が安定する
図面は、読む側の状況(加工・検査・組立)によって必要な情報が変わります。迷ったときは「外観を補うのか」「内部を見せるのか」を基準に決めるとブレにくいです。
また、線種の扱いや図面表現の細部は、組織の標準や規格で差が出ます。正確な情報は公式サイトや規格資料をご確認ください。最終的な判断に不安がある場合は、設計・製図の専門家にご相談ください。
関連理解として、平面・立体の捉え方を整理したい方は「「一次元」「二次元」「三次元」「四次元」の違いと意味」も、図面を“次元”で捉える助けになります。

