「息を飲む」と「息を呑む」の違いと意味|息を飲むは間違い?
「息を飲む」と「息を呑む」の違いと意味|息を飲むは間違い?

「息を飲む」と「息を呑む」の違いや意味が気になって検索している方は、「息を呑む 意味」や「息を呑む 使い方」「息を呑む 類語」「息を呑む 英語」といった関連キーワードも一緒に調べているのではないでしょうか。

実際に、検索窓に「息を飲む 息を呑む 違い 意味」と入れると、「息を飲む 間違い」「息を飲む どっちが正しい」「息を呑む 例文」「息を呑む 英語表現」「息を呑む 類義語」「息を呑む 言い換え」など、似たような候補がたくさん出てきます。

ところが、多くのサイトや辞書を見ても、「結局、日常会話やビジネス文書ではどちらを使えば良いのか」「息を飲むは完全な誤用なのか、それとも許容されるのか」といった実践的な疑問が解決しきれないことも多いはずです。

この記事では、日本語の表記・語感の違いを専門に解説している「違いの教科書」運営者のMikiとして、「息を飲む」と「息を呑む」の違いと意味、語源や類義語・対義語、言い換え、英語表現、正しい使い方と例文までをまとめて整理します。

最後まで読んでいただければ、「息を飲む 息を呑む 違い 意味」というモヤモヤがスッキリ晴れ、メールやレポート、文章表現で迷わずに選べるようになります。

  1. 「息を飲む」と「息を呑む」の意味と違いが一目で分かる
  2. 「息を呑む」の語源・類義語・対義語・言い換え表現を整理できる
  3. ビジネスや日常会話で使える「息を呑む」の自然な例文を身につけられる
  4. 誤用とされやすい表現を避け、読み手に伝わる日本語表現力を高められる

「息を飲む」と「息を呑む」の違い

まずは全体像として、「息を飲む」と「息を呑む」の違いをざっくり押さえます。この章では、結論からズバッとお伝えしたうえで、なぜ「息を飲む」が誤用とされ、「息を呑む」が正しい表記なのかを、辞書的な意味と日本語の表記ルールの両面から解説していきます。

結論:「息を飲む」は間違った使い方

結論から言うと、一般的な日本語として推奨されるのは「息を呑む」であり、「息を飲む」は誤用(誤表記)とみなされることが多いです。

理由は大きく3つあります。

  • 慣用句として辞書に載っているのは「息を呑む」である
  • 「呑む」には「抑え込む」「のみ込んで表に出さない」といった比喩的な意味があり、感情をぐっと抑えるニュアンスに合う
  • 「飲む」は主に液体を飲み込む動作を表す漢字で、比喩的な表現には通常用いない

特に、国語辞典や表現事典では、「息を呑む」を「驚きや恐れ、感動などで一瞬息を止めること」として掲載し、「息を飲む」は誤った表記として扱うことが少なくありません。

とはいえ、現代の日本語環境では、スマホやパソコンの変換の影響で「のむ」と打つと真っ先に「飲む」が出てきてしまうため、誤植としての「息を飲む」がネット上に大量に紛れ込んでいるのも事実です。この「見慣れてしまう感覚」が、「どちらもアリなのでは?」という誤解につながっています。

・公的な文章、ビジネスメール、履歴書・企画書などフォーマルな文書では「息を飲む」と書かないほうが無難です。基本は「息を呑む」を選びましょう。

「息を呑む」が正しい使い方

正しい慣用句として定着しているのは「息を呑む」です。読み方はいずれも「いきをのむ」で、漢字表記だけがポイントになります。

「呑む」は、もともと「飲む」と同源の漢字ですが、比喩表現で「感情や情報をのみ込む」「ぐっと抑え込む」などの意味を表すときに使われてきた表記です。感情が高ぶって、一瞬呼吸が止まるような状態を指す「息を呑む」との相性が非常に良いわけですね。

一方で、公的な文書では表外漢字(常用漢字表にない漢字)を避ける方針から、「息をのむ」とひらがな表記にするケースもあります。新聞や行政文書で「息をのむ」が使われているのを見たことがある方も多いはずです。

・原則:文章表現として正しいのは「息を呑む」
・フォーマル文書:表外漢字を避ける場合は「息をのむ」
・「息を飲む」は誤表記とされることが多いので避ける

「息を呑む」の英語表現の違い

「息を呑む」にピッタリ対応する単語が1語だけあるわけではありませんが、状況ごとにいくつか代表的な英語表現があります。

  • gasp(思わず息をのむ)
  • gasp in astonishment(驚きのあまり息をのむ)
  • hold one’s breath(息を止めて見守る)
  • breathtaking(息を呑むような、圧倒されるような)
  • be stunned / be overwhelmed(あまりの衝撃に言葉を失う)

たとえば、

  • We gasped at the breathtaking view.(私たちは息を呑むような絶景に思わず息をのんだ)
  • The audience held their breath during the final scene.(観客はラストシーンの間、息を呑んで見守った)

といった形で、「驚き」「感動」「緊張」など、感情の高ぶりで一瞬呼吸が止まるイメージを英語でも表現できます。

「息を呑む」の意味

ここからは、「息を呑む」という言葉そのものの意味を、辞書的な定義・使われる場面・語源・類義語と対義語の4つの切り口から、少し掘り下げていきます。「どういう場面で使うのが自然なのか」が分かると、文章力が一段アップします。

「息を呑む」の意味や定義

「息を呑む」は、一般に次のような意味で説明されます。

・恐れや驚き、感動、緊張などで、一瞬息が止まるようになること
・その場面に圧倒されて、思わず呼吸や言葉を失うこと

ポイントは、単に「びっくりした」というだけでなく、感情の揺れが大きく、身体の反応としても呼吸が止まるほどのインパクトがあるという点です。

たとえば、

  • 息を呑むほど美しい景色
  • 息を呑むような結末
  • 会場が息を呑むほど静まり返る

といった表現は、「ただきれい」「ただ静か」というレベルを超えて、圧倒的な美しさ・緊張感があることを示します。

「息を呑む」はどんな時に使用する?

私が実務や執筆で「息を呑む」を使うのは、次のようなシーンです。

  • 絶景や芸術作品、圧倒的なパフォーマンスなど「美しさ・完成度」に圧倒されたとき
  • スポーツ・試合・プレゼンなどで、結末が読めず緊張が高まる瞬間
  • 事故・トラブル一歩手前の、瞬間的な恐怖を感じたとき
  • 感動的なサプライズや再会などで、胸がいっぱいになって言葉を失ったとき

たとえば、子どもが道路に飛び出して車とぶつかりそうになった瞬間、親は思わず「息を呑む」でしょうし、ワールドカップ決勝のPK戦で、決着の一蹴を見守る観客もやはり「息を呑む」状態にあります。

つまり、「日常のちょっとした驚き」ではなく、「人生の記憶に残るレベルのインパクト」がある場面でこそ力を発揮する表現です。

「息を呑む」の語源は?

語源に目を向けると、「息を呑む」は古くから日本語に存在する表現で、平安時代の文学作品にも似た用例が見られるとされています。

ポイントは、「呑む」という漢字に含まれる意味です。

  • 「飲む」…液体を口に入れて飲み込むこと
  • 「呑む」…飲み込む・抑え込む、比喩的に「怒りを呑む」「言葉を呑む」など感情をおさえる意味

この「出そうになるものを抑え込む」というニュアンスから、驚きや恐怖、感動で息が「出てこない」、一瞬止まる状態を表す言葉として「息を呑む」が生まれたとされています。

心理学的にも、驚愕反応として一瞬呼吸が止まり、音を立てないように状況をうかがう生理的反応があると説明されることがあります。

「息を呑む」の類義語と対義語は?

「息を呑む」と近い意味を持つ類義語・言い換え表現と、反対の意味に近い対義語を整理しておきましょう。

区分 語句 ニュアンス
類義語 固唾をのむ 不安や緊張のあまり、成り行きをじっと見守る
類義語 息を止める 緊張・集中・驚きで一瞬呼吸を止める
類義語 息を殺す/息をひそめる 気配を消して静かに身構える、隠れる
類義語 圧倒される/言葉を失う 感情の強さで何も言えなくなる
対義語 ほっと息をつく 緊張から解放されて安心する
対義語 肩の力を抜く 構えていた気持ちをゆるめる
対義語 リラックスする/くつろぐ 緊張状態とは逆の、ゆったりした状態

類義語・対義語をセットで覚えておくと、「息を呑む」だけでなく、場面に応じて表現を使い分ける力がついていきます。

言葉の違いをまとめて確認したい場合は、例えば「生きる」と「活きる」の違いを整理した記事も参考になると思います。「生きる」と「活きる」の違いや意味・使い方・例文では、意味・使い分け・英語表現の整理の仕方を詳しく解説しています。

「息を飲む」の意味

ここからは、あえて誤表記とされる「息を飲む」側に焦点を当てます。なぜ多くの人が「息を飲む」と書いてしまうのか、その背景を理解しておくと、今後の誤用を防ぐことができます。

「息を飲む」とは何か?

「息を飲む」という言葉は、一般の国語辞典には慣用句としてほとんど掲載されていません。多くの場合、本来の「息を呑む」を、漢字変換ミスや表記の揺れによって書き誤ったものとされています。

厳密には、「飲む」と「呑む」はいずれも「のむ」と読み、「何かを口に入れてのみこむ」という点では共通していますが、

  • 「飲む」…液体を飲むときに使うのが基本
  • 「呑む」…固体を噛まずに飲み込む、または比喩的に感情・情報などを抑え込むときに使う

という使い分けが説明されることが多いです。

このため、「息」という目に見えないものを、感情と結びつけて比喩的に表現する場合は「呑む」を用いるのが自然で、「息を飲む」は不自然な漢字の組み合わせになってしまう、というわけです。

「息を飲む」を間違えて使用する理由

では、なぜここまで「息を飲む」という表記が広まってしまったのでしょうか。私が実際に文章を添削していて感じる理由は次のとおりです。

  • パソコン・スマホの変換で「いきをのむ」と入力すると、最初に「息を飲む」が出てきやすい
  • 「呑」が常用漢字ではなく、画数も多いため見慣れず、「飲む」で代用してしまう
  • 日常会話では漢字を意識せずに話すため、表記の誤りに気づきにくい
  • ネット記事やSNSで誤表記が大量に流通し、それを見て「これが普通」と思ってしまう

特に、スマホの予測変換は「頻繁に使われている形」を優先するため、誤表記が多く使われるほど、ますます誤表記が出やすくなるという悪循環があります。

・ビジネス文書やプロフィール文など、人に見られる前提の文章では、変換に頼りきりにせず、一度「息を呑む」と「息を飲む」のどちらが正しいかを確認してから使う習慣をつけると安心です。

「息を呑む」の正しい使い方を詳しく

ここまでで「どちらが正しいか」は整理できたと思います。ここからは実践編として、具体的な例文や言い換え表現、使い方のポイント、間違えやすい表現をまとめておきます。「読む」だけでなく、「自分でも書ける」状態を目指しましょう。

「息を呑む」の例文5選

まずは、感覚をつかみやすいように「息を呑む」を使った例文を5つ挙げます。

  • 山頂から見下ろした夜景は、誰もが息を呑むほどの美しさだった。
  • 延長戦のラストワンプレー、スタジアム全体が息を呑んでボールの行方を見守った。
  • 事故の瞬間を捉えた映像に、会場は思わず息を呑んだ。
  • 主人公の告白シーンは、観客が息を呑むほどの緊張感に満ちていた。
  • 数十年ぶりの再会を果たした二人の姿に、周囲の人々は息を呑んで見入った。

どの例文にも共通しているのは、「一生に何度もないようなインパクトのある瞬間」や「物語のクライマックス」など、感情の振れ幅が大きい場面だということです。

「息を呑む」の言い換え可能なフレーズ

文章の中で「息を呑む」を何度も使うと、どうしても単調になってしまいます。その場合は、場面に応じて次のような言い換え表現を組み合わせると、表現に幅が出ます。

  • 固唾をのむ(不安や緊張で成り行きを見守るニュアンスが強い)
  • 圧倒される(力の差やスケールの大きさに言葉を失う)
  • 言葉を失う(ショックや感動で何も言えなくなる)
  • 凍りつくように静まり返る(場の空気が「止まる」イメージを強めたいとき)
  • 胸がいっぱいになる(感動寄りの穏やかなニュアンス)

たとえば、「息を呑むような美しさだった」を「その美しさに圧倒された」「あまりの美しさに言葉を失った」と書き換えると、文章全体のリズムを保ちながらも、伝えたい感情を微妙に調整できます。

感情表現の使い分けという意味では、「嗚咽」と「号泣」の違いを整理した「嗚咽」と「号泣」の違いや意味・使い方・例文まとめも、感情の強さと語の選び方を考えるヒントになると思います。

「息を呑む」の正しい使い方のポイント

ここでは、「息を呑む」を使うときに私が意識しているポイントを整理しておきます。

  • 本当にインパクトのある場面だけに使う
    些細な驚きにまで多用すると、言葉のインフレが起こり、表現の強さが薄れてしまいます。
  • 文脈で感情の種類を補う
    驚き・恐怖・感動・緊張など、どんな感情で息を呑んだのかを前後の文で補っておくと、読み手に伝わりやすくなります。
  • ビジネス文章では用法に注意する
    商品レビューやプレゼン資料などで使うときは、主観が強くなりすぎないよう、「多くの参加者が息を呑むほどの熱気でした」のように事実に近い形で使うとバランスが取れます。
  • 漢字表記を統一する
    1本の文章の中で「息を呑む」と「息をのむ」を混在させないようにしましょう。方針を決めて統一するのがプロの書き方です。

・小さな驚きには使わず、「物語の山場」「人生のハイライト」級の場面に絞る
・感情の種類(驚き・恐怖・感動など)を周辺の文で補う
・文章全体で「呑む」か「のむ」か、表記の方針を揃える

「息を呑む」の間違いやすい表現

最後に、「息を呑む」まわりで特によく見かける間違いをまとめておきます。

  • × 息を飲む
    → ○ 息を呑む/息をのむ(誤表記として扱われやすい)
  • × 息を呑み込む
    → 息はそもそも呑み込む対象ではないので不自然。「息を呑む」で十分意味が伝わります。
  • △ 息を止めるほど〜
    → 文脈によってはOKですが、「息を呑むほど〜」と比べるとやや説明的で、比喩としてのインパクトは弱くなります。

こうした細かな違いを整理しておくと、文章の「格」が一段上がったような印象を読者に与えることができます。同じ趣旨で、似た表現の違いをまとめた「気概」「気骨」「気合」の違いや意味・使い方・例文まとめも、表現力の底上げに役立つはずです。

まとめ:「息を飲む」と「息を呑む」の違いと意味

最後に、「息を飲む」と「息を呑む」の違いと意味を、もう一度コンパクトに振り返っておきます。

  • 正しい慣用句として定着しているのは「息を呑む」(いきをのむ)である
  • 意味は、恐れ・驚き・感動・緊張などで一瞬息が止まるようになること
  • 「息を飲む」は辞書上の慣用句としてはほぼ扱われず、多くの場合「息を呑む」の誤表記とされる
  • フォーマルな文章では、「息を呑む」または表外漢字を避けて「息をのむ」と書くのが無難
  • 類義語には「固唾をのむ」「息を止める」「圧倒される」などがあり、場面に応じて言い換え可能
  • 英語では「gasp」「hold one’s breath」「breathtaking」などを使って表現できる

・「息を飲む」と「息を呑む」は、音は同じでも意味の設計図が異なります。
・どちらを選ぶかで、文章全体の印象や信頼感が変わることを意識しておきましょう。

言葉の選び方は、読む人の受け取り方や信頼感に直結します。今回ご紹介した内容は、一般的な辞書や表現事典、言語解説サイトなどをもとに整理したものですが、数値的な頻度や表記ルールなどは、あくまで「一般的な目安」と考えてください。

公的な基準や最新の表記ルールを確認したい場合は、正確な情報は公式サイトや最新の国語辞典などをご確認ください。また、出版・教育・ビジネス文書などで迷ったときは、最終的な判断は日本語教育の専門家や校閲者・編集者などの専門家にご相談ください

「違いの教科書」では、今後もこうした微妙なニュアンスの違いを、できるだけ分かりやすく整理していきます。この記事が、「息を呑む」を自信を持って使いこなすきっかけになればうれしいです。

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