
平安時代の宮廷には「女御」と「更衣」という天皇の妃が存在し、それぞれの地位や役割には明確な違いがありました。
女御は中宮や皇后に次ぐ高位の妃であり、政治的な影響力を持つこともありました。一方、更衣は女御より下の身分で、天皇の寵愛によって地位が左右される存在でした。
また、「中宮と皇后ではどちらが上なのか」「女房とは何が違うのか」といった疑問を持つ人も多いでしょう。


この記事では、女御と更衣の違いをはじめ、宮廷内の序列や役割について詳しく解説します。
- 女御と更衣の違い
- 女御や更衣になる条件
- 女御と中宮の違い
- 女御と女房の違い
目次
女御と更衣の違いは?身分や序列を解説

女御とは?役割をわかりやすく解説
女御(にょうご)とは、天皇の後宮に仕える女性のうち、皇后や中宮に次ぐ高い地位の妃を指します。主に皇族や貴族の中でも位の高い家柄の女性が選ばれました。
女御の役割は、天皇の日常の身の回りのお世話だけでなく、後宮を統括する立場としての責任も担っていました。
政治的にも影響力が強く、自分の産んだ子どもを皇位継承者として後押しする立場でもありました。ただし、後宮の秩序を乱さないように調整役としての役目も期待されていました。
更衣とは?役割をわかりやすく解説

更衣(こうい)とは、天皇の妃の中で女御よりも下位に位置付けられる存在です。役割としては、天皇の日常の世話や話し相手を務めることが主でしたが、後宮での権限や影響力は限定的でした。
身分も中級貴族の家柄が中心で、政治的な役割はほぼありません。多くは個人的な寵愛を受けることで天皇の目に留まりますが、女御に比べて権威や影響力は低く、立場は不安定だったと言えます。
女御と更衣の人数は?
女御と更衣の人数は時代によって異なりますが、基本的に女御の人数は少なく、通常2~4名程度、更衣は人数の上限が12名程度と言われています。しかし実際には多いときで数十名にも及ぶことがあったようです。
ただし、あまりにも数が増えると後宮の秩序が乱れることから、一定数で管理される傾向にありました。そのため、女御と更衣では人数面でも明確な差があります。
女御になる条件と選ばれ方

女御に選ばれる条件としては、高い家柄と皇室や政権との強い結びつきが必要でした。基本的に摂関家や皇族に近い血筋を持つ女性が選ばれる傾向がありました。
また、容姿や教養、性格なども重要視され、後宮の調和を保てる人柄であることが好まれました。女御は天皇本人が選ぶ場合もありますが、多くは政治的な理由で摂関家など有力貴族が天皇に推薦する形式が一般的でした。
更衣の出身や選ばれ方の特徴
更衣の出身は、女御ほど高い家柄ではなく、中級貴族や地方の有力者の娘が多かったとされています。容姿の美しさや性格の穏やかさなど、個人的な魅力で天皇の関心を引くことが重要でした。
選ばれ方も政治的な理由より、天皇自身の好みや感情的な結びつきが優先される傾向がありました。このため、更衣の地位は個々の天皇の愛情次第で大きく変わる、不安定な立場だったと言えます。
女御と更衣の違いは?中宮や他の役職とも比較

女御と中宮の違いは?
女御と中宮の最も大きな違いは、後宮での地位や役割の重要さです。中宮とは皇后に準ずる立場で、皇后が不在の場合には後宮のトップとなります。
女御も高い身分ですが、中宮より一段下の地位に置かれました。実際、中宮は後宮の管理者であり儀式など公式な場面でも中心的な存在であるのに対し、女御は後宮内で影響力があるものの、中宮ほどの権限や正式な代表権を持つことはありません。
このように考えると、女御は中宮を補佐する立場ともいえます。
女御と女房の違いは?

女御と女房の大きな違いは、後宮での役割と身分にあります。女御は皇妃という正式な地位を持ち、天皇の妃としての役割を担いますが、女房は女御や更衣に仕える女性たちのことで、いわば侍女のような存在でした。
実際に女房は、女御の身の回りの世話や話し相手、日常生活の雑務を担当しますが、政治的な影響力はありません。むしろ女房は後宮内での生活を支える裏方的な役割に徹していました。
女御・更衣・中宮の居住エリアの違い
女御、更衣、中宮はそれぞれ居住するエリアが明確に分かれていました。まず、中宮は後宮内でも特に格式の高い中心的な位置にある「中宮御所」に居住します。
次に、女御は中宮御所に近いエリアに個別の住居が与えられ、比較的豪華な邸宅で生活しました。
一方、更衣の居住エリアはさらに外側に位置し、規模や設備も女御ほど豪華ではありません。つまり、居住エリアは明確な身分差を示す指標ともなっていました。
女御・更衣の服装や待遇の違い

女御と更衣では服装や待遇にもはっきりした違いがあります。女御の服装はより格式が高く、使われる素材や装飾も豪華で、宮中儀式の場でも正式な装いが許されました。
一方、更衣は女御より格下のため、服装も簡素であり、着用できる色や素材も制限されていました。
待遇面でも、女御は個別の邸宅や多数の侍女を与えられ、身の回りの世話や安全面でも手厚い保護がありましたが、更衣はこれほど厚遇されることはなく、基本的に女御の次に位置付けられるため、地位に応じた控えめな待遇を受けることになりました。
女御や更衣は出世できるのか?
女御や更衣からさらに出世できるかどうかは、明確なルールがなく不確定でした。一般的に女御が皇子を生み、その皇子が皇太子や天皇に即位すれば、女御は中宮や皇后に昇格できる可能性があります。
一方、更衣が出世するにはさらに高い壁があり、更衣が産んだ皇子が皇位を継ぐなど特別な状況がない限り、更衣から女御や中宮へ昇格することは稀でした。
このように、女御は条件次第で地位が上がるチャンスがあるのに対し、更衣が地位を上げるためには相当な幸運と偶然が必要だったと言えます。
女御と更衣の違いについて|Q&A

まとめ:女御と更衣の違いをわかりやすく整理
- 女御は中宮に次ぐ高い地位の妃で、更衣はそれより低い身分の妃
- 女御は高貴な家柄、更衣は中級貴族が中心
- 女御は政治的役割があるが、更衣にはほぼない
- 女御は序列上、中宮や皇后に次ぎ、更衣はその下に位置する
- 女御の人数は少数、更衣は多い場合で十数名程度
- 女御は後宮の調和を保つ役割、更衣は個人的な寵愛が中心
- 女御は皇子の母になる可能性が高く、更衣はその可能性が比較的低い
- 女御の待遇は個別の邸宅で手厚い、更衣は待遇が比較的簡素
- 女御は皇后・中宮への昇格可能性があり、更衣は難しい
- 女御には正式な儀式での役割があるが、更衣には特別な役割がない
- 女御は皇族や摂関家の血縁者が多く、更衣は地方の有力者の娘も多い
- 女御の人数は数名、更衣は多い時で十数名に及ぶ
- 女御の服装は豪華で格式高く、更衣はそれより控えめで質素
- 女御の選ばれ方は家柄や人柄が重要、更衣は天皇の個人的好みが重要
- 女御は後宮内の管理的立場で、更衣は天皇の個人的寵愛が中心