
「攫う」「拐う」「浚う」は、いずれも「さらう」と読む同訓異義語ですが、意味や使い方には明確な違いがあります。 結論から言えば、 「攫う」は奪う・掠め取る、「拐う」は人を連れ去る、「浚う」は土砂などをかき出す という違いがあります。 本記事ではそれぞれの意味・語源・使い方・例文・類義語までを詳しく解説し、「さらう」という言葉を正確に使い分けられるようになります。
目次
「攫う」「拐う」「浚う」の基本的な意味とは?
「攫う」とは?読み方・意味・使い方の基本
「攫う(さらう)」とは、人や物を不意に奪う・かすめ取るという意味を持つ動詞です。 「人攫い」「話題を攫う」「一攫千金」など、スピード感や勢いを伴うニュアンスがあります。 読み方は「さらう」で、「手偏」を含む漢字が示す通り、手で素早く奪い取るイメージを持っています。 コトバンクによると、「人の油断を見て奪い去る」「そっくり持ち去る」「きれいに取る」とされています。 (出典:コトバンク)
「拐う」とは?読み方・意味・使い分け
「拐う(さらう/かどわかす)」は、人をだまして連れ去る・誘拐する意味を持つ言葉です。 「子どもを拐う」「少女が拐われた」など、犯罪性を帯びる使われ方が一般的です。 現代では「誘拐(ゆうかい)」の方が一般的ですが、「拐う」は文学的・古風な表現としても用いられます。
「浚う」とは?読み方・意味・用法
「浚う(さらう/さらえる)」は、水底や溝などにたまった土砂やゴミをかき出す・除去する意味を持つ語です。 「ドブを浚う」「川底を浚う」「鍋を浚う」など、物理的に残りを取り除く意味があります。 「浚」の字は「さんずい(氵)」を含み、水と関わる除去・清掃の意味を表します。 (出典:漢字ペディア)
「攫う」「拐う」「浚う」の違いを徹底比較!
意味の違いを一覧表で整理
3語の意味・使い方の違いを、以下の表にまとめます。
語 | 意味 | 主な対象 | ニュアンス・特徴 |
---|---|---|---|
攫う | 人や物を不意に奪い取る | 人・物・話題 | スピード感・勢い・比喩的用法あり |
拐う | 人をだまして連れ去る | 主に人 | 強制・犯罪・古風な語感 |
浚う | 土砂や残り物をかき出す | 土砂・ゴミ・液体 | 清掃・除去・実作業に使われる |
使い方の違いを例文で確認
「攫う」の例文(5選)
- 泥棒が財布を攫って逃げた。
- 話題の映画が世間の注目を攫った。
- 強風が帽子を攫っていった。
- 一瞬の出来事が心を攫った。
- 彼の演説が聴衆の感情を攫った。
「拐う」の例文(5選)
- 子どもが知らない男に拐われた。
- 旅人が賊に拐われ、身代金を要求された。
- 悪役が姫を拐うシーンが印象的だ。
- 少女を拐った犯人が逮捕された。
- 子供を拐う事件が社会問題になった。
「浚う」の例文(5選)
- 河川の底を浚って流れを改善する。
- 年末にドブを浚う作業を行った。
- 鍋の底を浚ってスープを飲み干した。
- 堀を浚うことで景観を保つ。
- 池を浚ってヘドロを除去した。
漢字の成り立ちから見る意味の違い
- 攫:「手偏+奪う」構成で、手で奪い取る意を示す。
- 拐:「手偏+夬(きる)」構成で、力ずく・強制性を表す。
- 浚:「さんずい偏+享」で、水の中から取り出す意を示す。
「攫う」「拐う」「浚う」の文脈的な使い方
日常会話での使い方と注意点
日常会話では、「拐う」は古風な響きがあり、通常は「誘拐する」「連れ去る」を使うことが多いです。 「攫う」は比喩的表現でよく使われ、「話題を攫う」「人気を攫う」などの用例があります。 「浚う」は「ドブを浚う」「鍋を浚う」など、実際の動作・掃除・料理など具体的な場面で使われます。
文学・映画・報道での使われ方
小説・映画・報道では、情景描写や心理表現を強めるために「攫う」や「拐う」が頻繁に用いられます。 例:「夕陽が海を攫うように沈んでいった」「悪党に姫が拐われる」など。 一方「浚う」は報道や行政文書などで「河川を浚う」「港湾を浚渫する」といった実務的文脈で登場します。
「攫う」「拐う」「浚う」の類義語・言い換え表現
「攫う」の類義語・関連語
- 奪う(うばう)
- 掠め取る(かすめとる)
- 盗む(ぬすむ)
- さらえる(古語的表現)
「拐う」の類義語・言い換え
- 誘拐する(ゆうかいする)
- 拉致する(らちする)
- 連れ去る(つれさる)
「浚う」の類義語・関連表現
- 浚渫(しゅんせつ)
- 掘る・かき出す
- 清掃する・掃除する
- すくい取る・さらえる
まとめ:「攫う」「拐う」「浚う」の違いと正しい使い方
最後に、本記事の内容を簡潔にまとめます。
- 攫う:人や物を不意に奪う。比喩的な用法にも多い。
- 拐う:人をだまして連れ去る。犯罪・古風な文体に使われる。
- 浚う:土砂・残りをかき出す。清掃・除去の意味。
同じ「さらう」でも意味・用法は大きく異なります。文脈に応じて適切に使い分けることで、より正確で表現豊かな日本語を使えるようになります。 日本語の同訓異義語を正しく理解することは、語彙力アップと文章表現力の向上にもつながります。