
「賜る」と「承る」はどちらも改まった場面で見かける言葉ですが、意味の違いや使い方、敬語としての立ち位置が似ているため、書くたびに迷いやすい表現です。ビジネス文書や挨拶文で自然に使いたいのに、どちらを選べばよいのか不安になる方も多いはずです。
実際に、「賜ると承るの違い」「それぞれの意味」「語源」「類義語」「対義語」「言い換え」「英語表現」「使い方」「例文」といった観点で整理すると、混乱はかなり減ります。特に、相手から物や厚意をいただく場面なのか、依頼や話を受ける場面なのかを分けて考えると、判断がしやすくなります。
この記事では、「賜る」と「承る」の違いを最初に結論から整理したうえで、それぞれの意味、由来、言い換え、正しい使い方、間違いやすい表現まで、実際に使える形で丁寧に解説します。読み終える頃には、どちらを使うべきかを自信を持って判断できるようになります。
- 賜ると承るの意味の違いと結論
- 場面ごとの自然な使い分けの基準
- 語源・類義語・対義語・英語表現の整理
- 実務や会話ですぐ使える例文と誤用の回避法
目次
賜ると承るの違いを最初に整理
まずは全体像から押さえます。この章では、賜ると承るがどこで分かれるのかを、意味・使い分け・英語表現の3つの軸で整理します。最初にここをつかんでおくと、その後の細かな説明がぐっと理解しやすくなります。
結論:賜ると承るの意味の違い
結論から言うと、賜るは主に「目上の相手から物や恩恵をいただく」ことを表し、承るは「話・依頼・注文・命令などを謹んで受ける、聞く、引き受ける」ことを表します。つまり、両者は同じ敬語でも、対象になるものが違います。賜るは授受、承るは受領・拝聴・受諾に重心がある表現です。
- 賜る:目上から物・厚意・配慮などをいただく
- 承る:話・依頼・注文・命令などを受ける、聞く、引き受ける
- 迷ったら「何を受けるのか」を確認すると判断しやすい
| 比較項目 | 賜る | 承る |
|---|---|---|
| 基本の意味 | いただく、与えられる | 受ける、聞く、引き受ける |
| 対象 | 物、恩恵、厚意、配慮、言葉など | 依頼、注文、話、命令、要望 |
| 敬語の性質 | 謙譲語として使うことが多い | 謙譲語 |
| よく使う場面 | 挨拶文、お礼、式辞、格式ある文書 | 接客、電話応対、受付、ビジネス対応 |
賜ると承るの使い分けの違い
私が実際に判断するときは、「受け取る中身が物や恩恵なら賜る、依頼や話なら承る」という基準で分けています。たとえば「ご厚意を賜る」「ご高配を賜る」は自然ですが、「ご注文を賜る」よりも「ご注文を承る」のほうが一般的です。反対に、「記念品を承る」は不自然で、「記念品を賜る」が自然です。
特にビジネスでは、承るは電話や受付で頻出します。「ご予約を承りました」「ご要望を承ります」といった形です。一方、賜るは日常会話よりも、お礼状や案内文、式典の挨拶のようなやや格式の高い文章で力を発揮します。
- 賜るは硬く、感謝や敬意が濃く出る
- 承るは実務向きで、受け付ける・聞く場面に強い
- 「何を受けるか」に加え、「文章の格式」も見て選ぶと安定する
賜ると承るの英語表現の違い
英語にすると、賜るは文脈に応じて receive、be given、be honored with などで表せます。承るは accept、receive、hear、take などが近く、電話や注文対応なら We accept orders. や We have received your request. のように言い換えるのが自然です。
つまり、英語では日本語ほど一語で敬意の濃さを表しにくいため、単語そのものより文全体の丁寧さで調整するのがコツです。賜るの重みは単純な直訳では出しにくいので、必要に応じて grateful や honored を補うと雰囲気が近づきます。
賜るとは?意味・由来・使う場面を整理
ここからは賜るを単独で掘り下げます。意味の幅、どんな場面で使うと自然か、語源や近い言葉まで順に整理します。承るとの違いだけでなく、賜るそのものの輪郭をはっきりさせる章です。
賜るの意味や定義
賜るは、辞書的には「もらう」の謙譲語として、目上の人から物や恩恵をいただく意味で使われます。また文脈によっては、目上の人が与えるという尊敬寄りの意味で現れることもありますが、現代の実務や文章では「いただく」の方向で理解しておくと使いやすいです。
たとえば「ご厚情を賜る」「ご支援を賜る」「お言葉を賜る」といった形では、単なる受け取りではなく、相手への深い敬意と、自分がへりくだる姿勢が同時に出ます。だからこそ、一般的な「もらう」「いただく」よりも改まった印象になります。
賜るはどんな時に使用する?
賜るが自然なのは、次のような場面です。
- 式典や挨拶文で感謝を述べるとき
- 目上の相手から厚意・配慮・支援を受けたとき
- お礼状、案内文、社外向けの改まった文章を書くとき
- 「ご高配」「ご厚情」「ご支援」など定型表現で敬意を強く示したいとき
一方で、普段のやり取りで毎回使うと硬すぎることがあります。社内のカジュアルな連絡や、親しい相手へのメールなら「いただく」「頂戴する」のほうが自然に見える場面も少なくありません。賜るは便利だから使うというより、場の格式に合わせて選ぶ言葉だと考えると失敗しにくいです。
- 日常会話で多用すると大げさに聞こえやすい
- 近い関係の相手には距離感が出すぎることがある
- 「物や恩恵をいただく」以外の場面では不自然になりやすい
賜るの語源は?
賜るは、「賜」という漢字が持つ目上の人が物を与えるという意味を背景にした語です。漢字自体に「与える」「たまう」という含みがあり、そこから敬意の濃い授受表現として定着してきました。古風で格式を感じるのは、この成り立ちとも関係しています。
現代日本語では、「恩賜」「下賜」などの熟語にも同じ系統の意味が残っています。こうした背景を知っておくと、賜るが単なる受け取りではなく、相手の立場を高く置いたうえで受ける語だと理解しやすくなります。
賜るの類義語と対義語は?
賜るの近い言葉は多いですが、敬意の強さと格式に違いがあります。私は次のように整理しています。
- 類義語:いただく、頂戴する、拝受する、受領する
- 近い表現:ご高配を受ける、ご厚意にあずかる
- 文脈上の対義語:差し上げる、献上する、授ける
ただし、対義語は一語でぴたりと固定できるとは限りません。賜るが「いただく」なのか「与える」なのかで反対側の語が変わるからです。対義語という考え方そのものを整理したい方は、美化語と丁寧語の違いのように、言葉の分類を分けて考える記事もあわせて読むと、敬語全体の見通しがよくなります。
承るとは?意味・由来・使うシーンを詳しく解説
次に承るを見ていきます。承るはビジネスでよく耳にする一方、意味が複数あるため、何となく使っているとズレやすい言葉です。この章では、意味の幅と自然な使用場面を実務目線で整理します。
承るの意味を詳しく
承るは、「受ける」「聞く」「伝え聞く」「引き受ける」の謙譲語です。つまり、相手の話・命令・依頼・注文・要望などを、自分がへりくだって受けるときに使います。電話での「ご予約を承りました」が代表例です。
承るの強みは、単なる受領だけでなく、内容を受け止めて対応に移すニュアンスまで含ませやすい点です。だからこそ、受付、接客、コールセンター、ビジネスメールなどでよく使われます。
| 承るの意味 | 例 | 近い言い換え |
|---|---|---|
| 受ける | ご依頼を承る | お受けする |
| 聞く | お話を承る | 伺う、拝聴する |
| 引き受ける | ご注文を承る | お引き受けする |
| 伝え聞く | 承るところによれば | うかがうところによれば |
承るを使うシチュエーションは?
承るが自然なのは、次のようなシチュエーションです。
- 電話で依頼・予約・注文を受けるとき
- 相手の要望や相談を受けるとき
- 指示や命令を丁重に受けるとき
- 話を聞く、伺う、受諾するといった場面
たとえば「ご予約を承っております」「ご意見を承りました」「その件、確かに承ります」といった形は自然です。逆に、記念品や贈り物そのものを受け取る場面では、承るは基本的に合いません。承るは“内容や依頼”を受ける語であって、“品物”を受け取る語ではないと覚えると実用的です。
「伺う」との違いまで広げて整理したい場合は、訪れると伺うの違いも参考になります。謙譲語の使い分けが見えやすくなります。
承るの言葉の由来は?
承るの語源は、「受け賜る」にあると説明されます。つまり、上位者からの命令や言葉を「受け」「いただく」という発想からできた語です。この成り立ちのため、承るには「ただ聞く」以上に、謹んで受け止める響きがあります。
語源に賜るが含まれている点は興味深いですが、現代語としての使い分けでは両者は別物です。ここを混同すると、「物を承る」のような不自然さが生まれやすくなります。
承るの類語・同義語や対義語
承るの類語は、意味のどこに焦点を当てるかで選び方が変わります。
- 類語・同義語:伺う、拝聴する、お受けする、引き受ける、受諾する
- やや近い語:承知する、了承する、了解する
- 文脈上の対義語:断る、辞退する、拒む、却下する
ただし、「承知」「了解」は承ると完全な同義ではありません。承るは受ける行為そのものに敬意が乗り、承知や了解は理解・了承の結果に重心があります。このあたりを丁寧に見たい方は、御意と了解の違いのような記事もあわせて読むと、返答語の整理がしやすくなります。
賜るの正しい使い方を詳しく
ここからは実践編です。賜るは意味を知っていても、実際の文章で自然に使えるかどうかは別問題です。この章では、例文・言い換え・ポイント・誤用をまとめて押さえます。
賜るの例文5選
まずは使い方の型が見える例文を確認しましょう。
- 平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます
- このたびは温かいご支援を賜り、誠にありがとうございました
- ご多忙のところご出席を賜り、心より感謝申し上げます
- 貴重なご助言を賜りましたこと、深く感謝申し上げます
- 本日は祝辞を賜り、誠に光栄に存じます
これらに共通するのは、相手が目上または敬意を払うべき存在であり、受ける内容が物・厚意・配慮・言葉などである点です。定型表現として覚えておくと、挨拶文やお礼文で非常に使いやすくなります。
賜るの言い換え可能なフレーズ
賜るはやや硬いので、場面に応じて言い換えると文の温度感を調整できます。
- いただく:もっとも自然で汎用的
- 頂戴する:やや改まっているが使いやすい
- 拝受する:書類や品物の受領を明確にしたいとき
- お受けする:恩恵よりも受領行為を前面に出したいとき
たとえば、「ご支援を賜る」は格式が高く、「ご支援をいただく」は少し柔らかくなります。文章全体の雰囲気や相手との距離感を見ながら選ぶのがポイントです。
賜るの正しい使い方のポイント
賜るを正しく使ううえで、私が特に大事だと考えるポイントは3つです。
- 相手が敬意を払うべき存在かを確認する
- 受ける対象が物・厚意・配慮・言葉かを確認する
- 日常的な会話より、改まった文章で使う意識を持つ
- 迷ったら「いただく」に置き換えて自然か確認する
- 感謝表現と組み合わせると賜るの良さが出やすい
- 社内の軽いやり取りでは無理に使わない
賜るの間違いやすい表現
誤用として多いのは、賜るを「依頼を受ける」「注文を受ける」の意味で使ってしまうことです。たとえば「ご予約を賜ります」は文脈によっては見かけるものの、一般的な受付表現としては「ご予約を承ります」のほうが自然です。賜るは受領そのものより、恩恵や厚意をいただく重みが強いからです。
また、あまりに軽い内容に使うと大げさに聞こえることがあります。文章の格式と釣り合っているかを必ず確認しましょう。
承るを正しく使うために
最後に、承るの実践的な使い方を整理します。承るは実務で便利な分、使いすぎたり、対象を取り違えたりしやすい言葉です。例文と誤用をセットで押さえておくと安定します。
承るの例文5選
まずは基本形から確認します。
- お電話にてご予約を承っております
- ご要望は確かに承りました
- その件につきましては、私が承ります
- 貴重なお話を承り、大変勉強になりました
- ご注文を承りましたので、発送準備を進めます
承るの例文は、依頼・要望・話・注文といった対象と組み合わせると安定します。受付や接客、ビジネスメールでは非常に使い勝手のよい表現です。
承るを言い換えてみると
承るは便利ですが、文脈によっては別の語のほうが自然です。
- 伺う:聞くことを前面に出したいとき
- お受けする:引き受ける行為をわかりやすくしたいとき
- 拝聴する:講演や話を聞く敬語として明確にしたいとき
- 受諾する:契約・申請など事務的な承認を示したいとき
たとえば「ご意見を承る」は自然ですが、「ご意見を伺う」にすると少し会話的になります。「ご注文を承る」は受付業務らしさが出ますが、「ご注文をお受けする」はやや説明的で平明です。相手や場面に合わせて選び分けましょう。
承るを正しく使う方法
承るを自然に使うには、次の判断基準が役立ちます。
- 相手からの依頼・注文・話を受ける場面か
- その内容に対応する、引き受ける含みがあるか
- 丁寧な接客・事務対応の言葉として適切か
- 「承りました」は受領と了解の両方の含みを持たせやすい
- 電話・予約・注文・要望との相性がとてもよい
- 品物そのものには基本的に使わない
承るの間違った使い方
承るで特に注意したいのは、品物や贈答品を受け取る場面にそのまま使わないことです。「記念品を承りました」「金一封を承りました」は不自然で、ここは「記念品を賜りました」「金一封を頂戴しました」などが自然です。
また、「承らせていただきます」は場面によっては過剰敬語に見えることがあります。シンプルに「承ります」「承りました」で十分なケースも多いので、丁寧さを重ねすぎないことも大切です。
まとめ:賜ると承るの違いと意味・使い方の例文
賜ると承るの違いは、受ける対象にあります。賜るは目上の相手から物や恩恵、厚意、言葉などをいただくときに使い、承るは依頼・注文・話・命令などを受ける、聞く、引き受けるときに使います。
- 賜る:ご高配を賜る、ご支援を賜る、ご祝辞を賜る
- 承る:ご予約を承る、ご要望を承る、お話を承る
- 物・恩恵なら賜る、依頼・話なら承ると覚えると実用的
- 賜るは格式高め、承るは実務向き
この2語は似て見えても、使い分けができると文章の自然さが大きく変わります。迷ったときは「何を受けるのか」「どのくらい改まった場面か」の2点を確認して選んでみてください。そうすれば、挨拶文でもビジネス対応でも、ぐっと自信を持って使えるようになります。

