
「教員」「教職員」「教育職員」「教諭」「教師」「講師」—これらの言葉、日常的に聞くけれど明確な違いを説明できる人は少ないのではないでしょうか。これらの呼称は法律で定められた定義があり、それぞれ微妙に異なる意味を持っています。
本記事では、教育現場で使われるこれらの職業名称の違いを法律的根拠や文部科学省の定義に基づいて徹底解説します。また、それぞれの役職の違いによって生じる収入格差についても具体的な数字を挙げて解説します。教育業界を目指している方や、子どもの学校生活に関わる保護者の方にも、ぜひ参考にしていただきたい内容です。
目次
教員と教職員の違い|法律から見た定義

教育職員(教員)とは
教育職員免許法第2条によれば、「教育職員」とは以下のように定義されています。
この法律で「教育職員」とは、学校教育法第1条に規定する学校と幼保連携型認定こども園の主幹教諭、指導教諭、教諭、助教諭、養護教諭、養護助教諭、栄養教諭、主幹保育教諭、指導保育教諭、保育教諭、助保育教諭及び講師(以下「教員」という。)をいう。
つまり、教育職員とは教育に直接関わる専門職のことで、教員免許を必要とする職種の総称です。
教職員とは
一方、「教職員」は教員と職員を合わせた総称で、学校で働くすべての職種を指します。教育公務員特例法では以下のように定義されています。
この法律において「教職員」とは、校長(園長を含む。以下同じ。)、教頭、教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭、講師(常時勤務の者及び地方公務員法第28条の5第1項に規定する短時間勤務の職を占める者に限る。)、寄宿舎指導員、学校栄養職員、事務職員及び技術職員をいう。
教職員には、教育職員のほかに、事務職員や用務員、栄養士などの教育活動を支援する職員も含まれます。
重要な違いのポイント
- 教育職員:直接教育を行う人材で、教員免許が必要
- 教職員:学校に勤務する全ての人材(教育職員+事務職員など)
教育職員は教育の専門家として直接教育活動に携わる人々を指し、教職員は学校で働く全員を指す広い概念というわけです。
教員の定義と役割
「教員」とは、教育職員免許法で「教育職員」と定義されているもののうち、直接的に教育・指導を行う職種を指します。
教員の法的定義
教育職員免許法第2条には、「教育職員」の定義の最後に「(以下「教員」という。)」と記されています。つまり、教員は教育職員の略称であり、法律上は同義として扱われるケースが多いです。
教員の主な役割
教員の主な役割は、学校教育法第28条第6項に「教諭は、児童の教育をつかさどる。」と規定されています。これは教諭の主たる職務を示したもので、教育以外の職務も含まれます。
教諭とは?正規採用の教員
「教諭」は、教員免許を持ち、各都道府県が行う教員採用試験に合格して正規雇用された教員のことです。
教諭の特徴
- 教員免許を保有している
- 採用試験に合格している
- 正規雇用されている
- 学級担任や部活動顧問などの校務分掌を担当する
教諭は学校の中心的な役割を担い、安定した雇用形態と給与体系を持っています。
教師の意味と特徴
「教師」という言葉は法律で明確に定義されているわけではなく、一般的には教える人という意味で使われています。
教師と教員の違い
教師は教えを与える「師」という意味合いが強く、教員は法令用語として員数(人数)の観点から使用されることが多いです。
教員、教師、教育職員は、以下のような違いがあります。
- 教員:法令用語として使用され、員数の観点から使用されることが多い
- 教師:員数よりも教えを与える師という意味合いがある
- 教育職員:事務職員や医療職員など職員構成を示す用語で、広く教育関係職員を含む
講師の種類と位置づけ
講師には大きく分けて「常勤講師」と「非常勤講師」の2種類があります。どちらも教員免許を持っていますが、採用形態や勤務条件が異なります。
常勤講師とは
常勤講師は「臨時的任用教員」とも呼ばれ、主に以下の特徴があります。
- 教員免許を有している
- フルタイム勤務(正規教員と同等)
- 基本的に1年間の有期雇用(更新の可能性あり)
- 担任や部活動顧問を任されることもある
- 給与は正規教員に準ずる(ただし昇給に限界がある)
非常勤講師とは
非常勤講師は授業のみを担当するパートタイム的な立場で、以下の特徴があります。
- 教員免許を有している
- 授業時間のみの勤務(週に数コマ程度)
- 基本的に1年間の有期雇用
- 担任や部活動顧問を任されることはほとんどない
- 授業単位(時間数)で給与が決まる
教員と教職員の違い|役職別の年収比較

公立学校教員の役職別年収(概算)
教育関係者の年収は、役職や経験年数によって大きく異なります。以下に各役職の平均年収を示します。
役職 | 平均年収 |
---|---|
校長 | 約786万円 |
副校長 | 約773万円 |
教頭 | 約752万円 |
主幹教諭 | 約712万円 |
指導教諭 | 約715万円 |
教諭 | 約557万円 |
助教諭・講師 | 約23〜27万円(月給) |
年齢別の年収目安
年代別の年収目安額です。
- 20代:約380万円~450万円(初任給は約23万円前後)
- 30代:約450万円~550万円(30代後半には年収が500万円を超えることも)
- 40代:約600万円~700万円(長年の勤務や役職によって年収アップ)
- 50代:約700万円~800万円(管理職に就くことが多く、年収ピーク)
※出典:TAC教員採用試験情報
常勤講師と正規教員の年収差
常勤講師と正規教員では、職務内容はほぼ同等でありながら、年収に約40万円以上の差があります。また、この差は年々広がっていく傾向にあります。
常勤講師の初任給は約16~18万円(基本給)、手当込みで月22~25万円程度になります。一方、正規教員の場合はより高い給与水準と安定した昇給があります。
教育関係者の呼称
教育現場には様々な立場の方々が働いており、それぞれ法律で定められた役割や位置付けがあります。
- 教育職員:教員免許を持ち教育に直接関わる専門職
- 教職員:学校で働く全ての職種を含む総称
- 教員:教育職員の略称、直接教育・指導を行う職種
- 教諭:教員免許を持ち採用試験に合格した正規雇用の教員
- 教師:教える人を指す一般的な言葉
- 講師:教員免許を持ちながらも非正規雇用として働く教員(常勤・非常勤)
これらの違いを理解することで、学校教育における様々な立場の人々の役割や責任、待遇の違いについて正しく認識することができます。教育関係者のみならず、保護者や教育に関心のある方々にとっても、こうした知識は学校との関係構築に役立つでしょう。
教員と教職員の違いを理解するための要点まとめ
この記事全体の要点を以下にまとめます
- 教員は教育職員免許法における教育職員の略称である
- 教職員は教員と学校職員全体を含む広い概念である
- 教育職員には教諭・養護教諭・栄養教諭など免許を持つ教員が含まれる
- 教職員には事務職員や技術職員など教育支援スタッフも含まれる
- 教員は児童生徒に直接教育・指導を行う専門職である
- 教職員は学校組織全体の職務を支える多職種の総称である
- 教諭は正規雇用され教員採用試験に合格した教員である
- 教師という語は法律用語ではなく、一般的な呼称である
- 教師は「教え導く師」として精神的な意味を含むことが多い
- 教員は法令上の用語として、職制や人数把握に用いられる
- 講師には常勤と非常勤があり、雇用形態や待遇に違いがある
- 常勤講師は担任や部活を担当することもある臨時的任用教員である
- 非常勤講師は授業のみを担当するパートタイム職である
- 教員と常勤講師には給与・昇給制度に差がある
- 教育職員は教育の専門家として免許保持が必須である
(参考文献・法令)
教育職員免許法 第2条
教育公務員特例法
学校教育法 第28条第6項
文部科学省「教育職員の定義について」
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」