「とりわけ」と「特に」の違いや意味・使い方・例文まとめ
「とりわけ」と「特に」の違いや意味・使い方・例文まとめ

「とりわけ」と「特に」は、どちらも“強調”に使える便利な言葉です。ただ、文章や会話で何となく使っていると、「どっちを選べば自然?」「ニュアンスの違いは?」「ビジネスメールでは失礼にならない?」と迷いやすいところでもあります。

この記事では、とりわけと特にの違いと意味を軸に、使い分け、使い方、例文、類語や同義語、対義語、言い換え、語源、英語表現まで、まとめて整理します。読み終えるころには、レポートやメール、日常会話でも“言葉選びの根拠”を持って、とりわけと特にを使い分けられるようになります。

  1. とりわけと特にの意味の違いが一言で説明できる
  2. 場面別に、とりわけと特にの使い分けができる
  3. 類義語・対義語・言い換え表現で語彙の幅が広がる
  4. 英語表現(especially/particularly/in particular)との対応が分かる

とりわけと特にの違い

最初に結論から、両者の“核”となるニュアンスの差を整理します。ここを押さえるだけで、文章の説得力と自然さがぐっと上がります。

結論:とりわけと特にの意味の違い

結論から言うと、「特に」広く使える強調で、「とりわけ」比較の中で目立つものを選び出して強調する言葉です。

どちらも「ほかと比べて目立つ」「そこが重要だ」といったニュアンスを持てますが、私の感覚では次の違いが分かれ目です。

比較ポイント とりわけ 特に
強調のタイプ 複数の中から“選び出す”強調 ポイントを“際立たせる”強調
前提 暗黙に「ほかもある」ニュアンスが出やすい 前提は必須ではない(単独でも成立しやすい)
文章の硬さ やや文章語・説明的で落ち着いた印象 会話〜文章まで幅広く使える
「とりわけ」は“中でも/ことに”に近い働きをします。つまり、比較の枠組みがあるときにハマりやすい言葉です。

とりわけと特にの使い分けの違い

使い分けはシンプルで、迷ったら次の基準で決めると外しません。

  • 比較の集合(候補のまとまり)が意識できるなら「とりわけ」
  • 単に強調したい・日常的に言いたいなら「特に」

例えば「この店は魚が美味しい」でも十分ですが、メニュー全体(肉・野菜・酒など)がある前提で魚が突出しているなら、「この店は、とりわけ魚が美味しい」が自然です。一方で、比較の枠をわざわざ立てずに強調したいだけなら、「この店は特に魚が美味しい」でOKです。

注意:ビジネス文書では、強調語を重ねすぎる(「特にとりわけ非常に」など)と、根拠が薄く見えたり、感情的に読まれたりします。強調は“一つに絞る”のが読み手に親切です。

とりわけと特にの英語表現の違い

英語にするとどちらも “especially” 系で訳せますが、ニュアンスで使い分けると精度が上がります。

  • 特に:especially / in particular(一般的な「特に」)
  • とりわけ:particularly / above all(比較して目立つ「とりわけ」)

たとえば「私は果物が好きで、特にいちごが好き」は I like fruits, especially strawberries. が素直です。対して「候補の中でもとりわけAが優れている」なら、particularly を使うと「選び出して強調」の感じが出ます。

とりわけの意味

ここからは「とりわけ」単体の意味を深掘りします。定義・使う場面・語源・類義語と対義語を押さえると、迷いが一気に減ります。

とりわけとは?意味や定義

「とりわけ」は、副詞として使われ、同じカテゴリの中で、ある対象を抜き出して強調する働きをします。感覚としては、「中でも」「ことに」に近く、説明文やレビュー、論評など“比較しながら述べる文章”でしっくりきます。

ポイントは、「ほかと比べて、ここが際立つ」という視線が、言葉の中に含まれやすいことです。だからこそ、ただ強く言いたいだけの場面よりも、「複数ある中の一つを選んで言いたい」場面で真価を発揮します。

とりわけはどんな時に使用する?

私が「とりわけ」をおすすめしたいのは、次のようなシーンです。

  • 複数の特徴の中から、目立つ一点を取り出したいとき(例:料理全体の中で魚が突出している)
  • 比較・評価・分析をする文章(レポート、レビュー、議事録など)
  • 少し改まったトーンに寄せたいとき(会話でも使えるが、文章語寄り)

「候補が並ぶ」→「その中で抜き出す」→「とりわけ」

逆に、比較の枠組みが弱い場面で使うと、読み手が「ほかは何?」と引っかかることがあります。そういうときは「特に」を選ぶとスムーズです。

とりわけの語源は?

「とりわけ」は、語感の通り、「取り分ける(取り分け)」の発想につながる言葉です。つまり、たくさんあるものから“分けて取り出す”イメージが核にあります。

この「分けて取り出す」感覚があるから、文章の中で使うと、比較の視点が自然に立ち上がるのです。使い分けに迷ったら、「今、私は何かを“取り分けて”いるか?」と自問すると判断が速くなります。

とりわけの類義語と対義語は?

「とりわけ」の類義語は多いですが、ニュアンスが少しずつ違います。ここを押さえると“言い換え力”が上がります。

とりわけの類義語(言い換え)

  • 中でも:口語でも使いやすい素直な言い換え
  • ことに:文章語寄りで、やや硬い
  • ひときわ:際立ち具合が強め(感覚的)
  • 格別に:評価が高い方向に寄りやすい

とりわけの対義語(反対方向の表現)

  • とりたてて〜ない
  • 特段〜ない
  • さほど〜ない

「特段〜ない」の扱いは近く、文脈によってはセットで理解すると便利です。関連として、違いの教科書内でも「別段」と「特段」の使い分けを詳しく整理しています(強調の“ある/なし”が見えやすくなります)。「別段」と「特段」の違いや意味・使い方・例文まとめ

特にの意味

次は「特に」です。日常でもビジネスでも頻出する分、便利な一方で、曖昧に使うと文章がぼやけやすい言葉でもあります。

特にとは何か?

「特に」は、副詞として使われ、ある点を強調して目立たせる言葉です。「とりわけ」ほど“取り出す比較”を前面に出さず、強調したいポイントにライトを当てるように使えます。

そのため、「特に」は次の二つの形で成立しやすいのが特徴です。

  • 比較の中で強調する(例:果物の中で特にいちご)
  • 比較を明示せず強調する(例:特に問題はありません)

この“守備範囲の広さ”が、「特に」の強みです。

特にを使うシチュエーションは?

「特に」は、私の運営する記事でも最も登場回数が多い部類の強調語です。使える場面が多いからこそ、次のような使い方を意識すると文章が締まります。

  • 会話で、強調したいことを短く伝えるとき(例:特に気にしていない)
  • ビジネスで、例外や重点項目を示すとき(例:特に締切に注意)
  • 説明文で、要点を読み手に示すとき(例:特に重要なのは〜)

「比較がなくても成立」→「迷ったら特にでも破綻しにくい」

ただし、便利さゆえに連発すると“雑に強調している”印象になります。文書では強調箇所を絞り、必要なら言い換え(「中でも」「重点的に」「主に」など)も混ぜると読みやすいです。

特にの言葉の由来は?

「特に」は、「特(とく)」=“特別”の「特」に由来し、通常とは区別して扱うニュアンスを持ちます。だから「特に」は、単なる感情の強調だけでなく、重点・例外・区別と相性が良いのです。

例えば「特に指定がなければ〜」は、例外条件の提示として非常に実務的です。強調語というより、“条件分岐”の合図として機能している場面も多いですね。

特にの類語・同義語や対義語

「特に」の類語は、文のトーン(硬い/柔らかい)に応じて選ぶのがコツです。

特にの類語・同義語

  • とくに:表記ゆれ(ひらがなで柔らかく)
  • 中でも:比較の中で際立たせる
  • 重点的に:実務・計画の文脈で強い
  • 主に:対象を絞るが、強調はやや弱め

特にの対義語(対照的な言い方)

  • 特に〜ない(強調点がないことの表明)
  • 一般に(個別ではなく全体として)
  • 総じて(全体傾向として)

「一般に/総じて」は、強調ではなく“全体化”の方向に文を動かす言葉なので、「特に」と対で覚えると便利です。

とりわけの正しい使い方を詳しく

ここでは「とりわけ」を実戦投入できるように、例文・言い換え・ポイント・誤用をまとめます。文章での説得力が上がる使い方を中心に解説します。

とりわけの例文5選

  • この店は料理全般が美味しいが、とりわけ魚料理の完成度が高い
  • 今年は天候が不安定で、とりわけ梅雨の雨量が目立った
  • 新人の中では、彼女がとりわけ説明が丁寧で分かりやすい
  • 資料はどれも重要だが、とりわけ第3章は前提になるので先に読んでほしい
  • この分野は全体的に難しいが、とりわけ用語の定義でつまずきやすい

例文の共通点は、「全体(集合)」が先にあり、その中で抜き出していることです。この形にすると、「とりわけ」が自然に刺さります。

とりわけの言い換え可能なフレーズ

文章のトーンに応じて、次のように言い換えられます。

  • 中でも(会話〜文章まで万能)
  • ことに(文章語・やや硬い)
  • ひときわ(印象・感覚を強めたい)
  • 格別に(評価が高い方向に寄せたい)

同じ強調でも、「ひときわ」は“目立ち方の強さ”が出やすく、「中でも」は“素直な比較”になりやすい、という違いがあります。

とりわけの正しい使い方のポイント

私が文章添削でよく伝えるポイントは、次の3つです。

  • 集合を暗に示す(「全般」「いくつか」「〜の中で」など)
  • 抜き出す対象を具体化する(何がとりわけなのかを明確に)
  • 根拠を一言添える(なぜ目立つのか:味・数値・反応など)

特に3つ目は重要で、強調語は“便利な分だけ根拠が薄く見えやすい”弱点があります。可能なら、短い理由を添えるだけで説得力が上がります。

とりわけの間違いやすい表現

誤用で多いのは、比較の枠組みがないのに「とりわけ」を置いてしまうケースです。

  • (△)とりわけ今日は忙しい
  • (○)今日は特に忙しい
  • (○)今週は忙しいが、とりわけ今日は会議が多い

「とりわけ」は“今週は忙しい”のような比較の土台があると自然です。土台がないなら「特に」に寄せるのが安全です。

特にを正しく使うために

最後に「特に」を整えます。便利な言葉ほど、文章が単調になりやすいので、例文と誤用をセットで押さえておきましょう。

特にの例文5選

  • この件については、特に追加の対応は不要です
  • 注意点はいくつかありますが、特に締切だけは守ってください
  • 私は果物が好きで、特にいちごをよく食べます
  • 出張中は、特に体調管理に気をつけています
  • 今のところ、特に問題はありません

「特に」は比較の土台がなくても成立する分、ビジネス文でも会話でも使いやすいのがよく分かります。

特にを言い換えてみると

文章が「特に」だらけになったら、次の言い換えを挟むだけで読みやすくなります。

  • 重点的に(実務の優先順位が伝わる)
  • 主に(対象を絞る)
  • 中でも(比較の枠組みを立てられる)
  • なかでも(やわらかい表記)

比較の枠組みを作れるなら「中でも」に寄せると、論理の筋が立ちます。比較表現の作り方は、似た構成の解説として「種々」と「様々」の違いや意味・使い方・例文まとめも参考になります。

特にを正しく使う方法

「特に」を上手に使うコツは、強調の目的をはっきりさせることです。具体的には、次のどれなのかを自分の中で決めます。

  • 重点:重要度が高い(特に重要)
  • 例外:条件分岐(特に指定がなければ)
  • 感情:気持ちの強調(特に好き)

目的が決まると、文の形も自然に決まります。例えば“例外”なら「特に〜がなければ」が型として強いですし、“重点”なら「特に重要なのは〜」のように見出し的な使い方ができます。

特にの間違った使い方

「特に」の誤用で目立つのは、強調の対象が曖昧なまま置いてしまうことです。

  • (△)特にお願いします
  • (○)特に締切の共有をお願いします
  • (○)締切の共有をお願いします(強調が不要なら削る)

強調語は、対象が曖昧だと“言っているようで何も言っていない”文になります。特にビジネス文書では、強調するなら対象を具体化するのが鉄則です。

まとめ:とりわけと特にの違いと意味・使い方の例文

「特に」は、会話から文章まで幅広く使える汎用的な強調で、「とりわけ」は、複数の中から抜き出して強調する比較の強調です。迷ったら、比較の土台があるなら「とりわけ」、単に強調したいなら「特に」を選ぶと自然になります。

また、強調語は便利な反面、使いすぎると文章がぼやけます。言い換え(中でも、ことに、重点的に、主に等)も併用し、必要なら短い根拠を添えると説得力が上がります。

本記事の例文や使い分けは、一般的な日本語運用の目安として整理したものです。最終的な表現の選択は、媒体のルールや相手との関係性によっても変わります。正確な基準が必要な場合は、公的機関の文章作成ルールや辞書、所属組織の公式ガイドをご確認ください。重要な文書や契約・法律・医療・安全に関わる表現は、最終的な判断を専門家にご相談ください。

最後に、類語の方向性として「特段〜ない」「別段〜ない」などの“強調しない表現”も一緒に覚えると、文章の調整がしやすくなります。強調する・しないを自在に切り替えられると、言葉選びが一段ラクになりますよ。

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