
「昔の出来事を思い返す」と書かれているのを見て、単に「思い出す」と言う場合と何が違うのか、疑問に感じたことはないでしょうか。また、「思い返す」には過去を思い出す以外にも意味があるため、文章によっては解釈に迷うことがあります。
思い返すは、すでに経験した出来事をもう一度心の中でたどるときに使う言葉です。ふと記憶がよみがえるというより、自分から過去へ意識を向け、当時の様子や気持ちを改めて考えるニュアンスがあります。
この記事では、思い返すの意味や使い方をはじめ、思い出す・思い起こす・振り返るとの違い、類語、例文、敬語表現、英語での言い換えまでわかりやすく解説します。読み終える頃には、場面に合った表現を迷わず選べるようになります。
思い返す
英語表記:look back on/recall/reconsider
目次
思い返すの意味とは?読み方と二つの用法

思い返すには、過去の出来事を改めて思い出すという意味と、いったん決めた考えを見直すという意味があります。まずは、二つの用法を分けて整理しましょう。
思い返すとは?基本的な意味
思い返すとは、過ぎ去った出来事をもう一度心に浮かべ、当時の様子や気持ちを改めて考えることです。
たとえば、卒業アルバムを見ながら学校生活を思い返す場合、写真に写っている場面だけでなく、そのときに交わした会話や自分の感情まで心の中でたどっています。
国語辞典では、「過ぎ去ったことを思い出す」という意味に加えて、「考え直す」という意味も示されています。
- 過去の出来事を改めて心に浮かべる
- 記憶を意識的にたどる
- 当時の状況や感情まで考えることが多い
- 一度考えたことを見直す意味でも使われる
思い返すの中心にあるのは、「一度経験したことへ、再び意識を向ける」という感覚です。
「思い」と「返す」を分けて考えると、覚えやすくなります。「返す」には、元の方向へ戻す、同じ動作をもう一度行うというイメージがあります。そのため、思い返すは「心を過去へ戻し、もう一度考える」と捉えられます。
思い返すは「考え直す」の意味でも使う
思い返すには、過去を回想する意味だけでなく、いったん決めたことや考えたことを見直し、別の判断をするという意味もあります。
たとえば、「腹を立てて帰ろうとしたが、思い返して席に戻った」という文章では、昔の出来事を思い出しているわけではありません。帰ろうとした判断を途中で考え直しています。
- 強い言葉で反論しようとしたが、思い返して黙った。
- 誘いを断るつもりだったものの、思い返して参加することにした。
- 契約を取りやめようとしたが、条件を確認して思い返した。
ただし、現在の日常会話では、この意味に「思い直す」や「考え直す」を使うことが多くあります。「思い返して参加した」でも意味は通じますが、「思い直して参加した」のほうが意図をすぐに理解してもらいやすい場合があります。
- 過去をたどる場合は「思い返す」
- 判断を変更する場合は「思い直す」「考え直す」も自然
- 前後の文章から、どちらの意味かを判断する
思い返すの意味が伝わる使い方と例文

思い返すは、思い出・経験・言葉・出来事などを目的語にして使います。「思い返すと」「思い返せば」という形にすると、過去の回想から現在の感想へ自然につなげられます。
思い返すの使い方と自然な組み合わせ
基本となる形は、「何を思い返すのか」を示す使い方です。
| 形 | 意味 | 使用例 |
|---|---|---|
| 過去を思い返す | これまでの出来事をたどる | 自分が歩んできた過去を思い返す |
| 当時を思い返す | 特定の時期を振り返る | 入社した当時を思い返す |
| 出来事を思い返す | ある経験を改めて考える | 旅行中の出来事を思い返す |
| 言葉を思い返す | 以前聞いた言葉を心に浮かべる | 恩師からもらった言葉を思い返す |
| 思い返すと | 回想から感想へつなげる | 今思い返すと、不思議な出会いだった |
| 思い返せば | 過去を振り返って判断する | 思い返せば、あれが転機だった |
「今思い返すと」「改めて思い返せば」といった形は、過去と現在の見方が変わったことを表す場合にも適しています。
たとえば、当時はつらいだけだった経験でも、時間がたってから「あの経験が自分を成長させた」と考えられることがあります。このように、過去の出来事へ現在の視点から意味を与える場面で、思い返すがよく使われます。
思い返すを使った例文
日常会話での例文
- 子どもの頃を思い返すと、毎日のように外で遊んでいました。
- 昔の写真を見ながら、家族旅行のことを思い返しました。
- 今思い返しても、あのときの驚きは忘れられません。
- 学生時代を思い返せば、友人に助けられてばかりでした。
- 祖母の言葉を思い返すたびに、心が落ち着きます。
文章やスピーチでの例文
- 創業当時を思い返しますと、多くの方々の支えがあったことを改めて実感いたします。
- これまでの歩みを思い返せば、決して平坦な道のりではありませんでした。
- 故人との日々を思い返し、在りし日の温かな笑顔をしのんでおります。
- 今回の経験を思い返し、今後の行動へ生かしていきたいと考えています。
- 初めて舞台に立った日のことは、今でも鮮明に思い返すことができます。
- 未来の予定には、基本的に「思い返す」を使わない
- 単に記憶から答えを取り出す場面では「思い出す」が自然
- 仕事の改善点を整理する場合は「振り返る」が合うこともある
たとえば、「来年の計画を思い返す」は不自然です。未来のことには「思い描く」「考える」「計画する」を使います。
また、「電話番号を思い返す」よりも「電話番号を思い出す」のほうが自然です。電話番号を記憶から取り出すことが目的であり、その記憶について改めて考えるわけではないからです。
思い返すの意味と類語・似た言葉との違い

思い返すには、思い出す・思い起こす・振り返る・回想するなど、多くの似た表現があります。どれも過去に意識を向ける言葉ですが、記憶の呼び起こし方や、振り返る目的が異なります。
思い返すと思い出すの違い
思い返すと思い出すの違いは、過去へ意識を向ける積極性と、考える深さにあります。
| 言葉 | 意味の中心 | ニュアンス | 例 |
|---|---|---|---|
| 思い返す | 過去を改めて考える | 意識的に記憶をたどる | 青春時代を思い返す |
| 思い出す | 記憶を心によみがえらせる | 意識的な場合にも、ふと浮かぶ場合にも使う | 友人の名前を思い出す |
思い出すは、忘れていた人名や予定などが心に浮かぶ場面にも使えます。何かをきっかけに、自然と昔のことがよみがえった場合にも適しています。
一方、思い返すは、すでに記憶している出来事へ自分から意識を向け、その内容をたどる場面に向いています。辞書の類語解説でも、思い出すはふと心に浮かぶ場合を含み、思い返すは経験したことを改めて考える表現として区別されています。
- 名前や予定を記憶から取り出すなら「思い出す」
- 過去の経験をじっくり考えるなら「思い返す」
- ふと浮かんだ記憶には「思い出す」が合いやすい
思い返すと思い起こす・振り返るの違い
思い起こすは、記憶の奥にある出来事を意識して呼び起こす表現です。思い返すよりも、眠っていた記憶をよみがえらせる印象が強くなります。
振り返るは、過去の出来事を確認し、経過・成果・問題点などを整理する場面でよく使われます。感情を味わうだけでなく、客観的に見直すニュアンスを持たせられる言葉です。
| 言葉 | 適している場面 | 表現の特徴 |
|---|---|---|
| 思い返す | 経験や当時の気持ちをたどる | 個人的で感情を伴いやすい |
| 思い出す | 忘れていた情報を心に浮かべる | 日常的で幅広い |
| 思い起こす | 古い記憶を意識的に呼び起こす | やや改まった表現 |
| 振り返る | 活動や期間を見直す | 評価や改善につながりやすい |
| 回想する | 過去の場面を心の中でたどる | 文章的で落ち着いた印象 |
過去を表す言葉の細かな違いを知りたい場合は、「回想」と「回顧」の意味や使い方の違いも参考になります。
また、自分の行動を反省する意味まで含めたいときは、「顧みる」と「省みる」の違いを押さえておくと、より正確に表現できます。
思い返すの類語と言い換え表現
思い返すの類語は、どのような気持ちで過去を見るのかによって使い分けます。
- 回想する:過去の出来事を心の中でたどる
- 回顧する:過去を振り返り、意味や評価を考える
- 追憶する:過ぎ去った人や時代を懐かしく思う
- 追想する:過去の人や出来事をしみじみと思い浮かべる
- 顧みる:過去や周囲の状況へ目を向ける
- 省みる:自分の行いや考え方を見直す
- 振り返る:これまでの経過を確認し、整理する
- 思い直す:一度決めた考えや判断を変更する
楽しい思い出を心に浮かべるなら「回想する」、亡くなった人をしのぶなら「追憶する」や「追想する」、仕事の成果と課題を整理するなら「振り返る」が適しています。
「反省する」「自省する」「内省する」との使い分けについては、反省・自省・内省の意味の違いで詳しく整理しています。
思い返すの意味を英語・敬語・言い換えまで整理

思い返すを英語や改まった表現に置き換える場合は、過去を懐かしむのか、特定の記憶を呼び戻すのか、判断を考え直すのかを明確にすることが大切です。
思い返すを敬語で使うには?
思い返す自体は敬語ではありません。自分の行為を丁寧に伝える場合は、「思い返します」「思い返しました」「思い返しております」のように表現します。
- 当時のことを思い返しますと、皆様への感謝が尽きません。
- これまでの日々を思い返し、改めて御礼申し上げます。
- 故人との思い出を静かに思い返しております。
目上の人の行為を表す場合、「思い返される」という形もありますが、受け身や自然に記憶が浮かぶ意味にも受け取れるため、文脈によってはわかりにくくなります。
そのような場合は、次のように具体的な表現へ言い換えると自然です。
| 伝えたい内容 | 自然な表現 |
|---|---|
| 相手が過去を語った | 当時を振り返ってお話しくださいました |
| 相手が昔を懐かしんだ | 懐かしそうに思い出をお話しになりました |
| 自分が過去を振り返る | 当時を思い返しますと |
| 式典で歩みを振り返る | これまでの歩みを振り返りますと |
- 自分の行為は「思い返します」で丁寧に表せる
- 目上の人には「振り返ってお話しになる」などが自然
- 無理に敬語化せず、文全体を丁寧に整える
思い返すの英語表現
思い返すを英語にする場合、最も使いやすい表現の一つがlook back onです。人生のある時期や過去の経験を振り返る場面に適しています。
- I often look back on my school days.
私はよく学生時代を思い返します。 - Looking back on those days, I realize how fortunate I was.
あの日々を思い返すと、自分がどれほど恵まれていたかに気づきます。
recallは、特定の出来事・会話・感情などを記憶から呼び戻す場合に使えます。
- I recalled what my teacher had told me.
先生に言われたことを思い返しました。 - She recalled the moment they first met.
彼女は二人が初めて会った瞬間を思い返しました。
英語辞典や和英辞典でも、過去を振り返る意味ではlook back、記憶を呼び戻す意味ではrecallなどが対応する表現として示されています。
「いったん決めたことを考え直す」という意味の思い返すには、reconsiderやthink againが適しています。
| 英語 | 意味 | 適した場面 |
|---|---|---|
| look back on | 過去を振り返る | 学生時代や人生の一時期を思い返す |
| recall | 記憶を呼び戻す | 特定の出来事や言葉を思い返す |
| remember | 覚えている・思い出す | 日常的な広い表現 |
| reminisce | 懐かしい思い出を語る | 昔話をしながら思い返す |
| reconsider | 考え直す | 判断や決定を見直す |
思い返すの意味と使い方のまとめ
思い返すとは、過去の出来事をもう一度心に浮かべ、当時の状況や気持ちを改めて考えることです。「一度決めた考えを見直す」という意味で使われることもあります。
- 読み方は「おもいかえす」
- 基本の意味は、過去の経験を改めて心の中でたどること
- 一度決めた考えを見直す意味もある
- 思い出すは、忘れていた情報がふと浮かぶ場合にも使える
- 振り返るは、経過や成果を客観的に整理する場面に向く
- 英語ではlook back onやrecallが使える
- 考え直す意味ではreconsiderが適している
名前や予定を記憶から取り出すなら「思い出す」、経験した出来事をじっくりたどるなら「思い返す」と覚えると、使い分けやすくなります。
過去をどのような目的で心に浮かべているのかを考えれば、思い返す・思い出す・振り返るなどの中から、場面に合った言葉を選べるでしょう。
【参考文献】
- デジタル大辞泉「思い返す」
- 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉「思い返す」
- 類語例解辞典「思い出す・思い返す」
- 国立国語研究所「データベース・コーパス・資料」
- プログレッシブ和英中辞典「思い返す」

