
「卑近な例」と「身近な例」は、どちらも「わかりやすい例」を指すように見えるため、違いが曖昧になりがちです。
ただ、文章のトーンや場面によっては、言葉選びひとつで「丁寧」「硬い」「上から目線に見える」といった印象差が出ることもあります。
この記事では、卑近な例と身近な例の違いや意味を軸に、読み方、使い方、語源、類義語、対義語、言い換え、英語表現、そしてそのまま使える例文まで、まとめて整理します。
- 卑近な例と身近な例の意味とニュアンスの違い
- 場面別の自然な使い分けと、誤解されにくい言い方
- 語源・類義語・対義語・言い換え・英語表現の整理
- すぐ使える例文10選(卑近な例5・身近な例5)
卑近な例と身近な例の違い
まずは結論から、両者が「似ているようでズレるポイント」を整理します。意味の核、使い分け、英語表現まで一気に把握すると迷いが減ります。
結論:卑近な例と身近な例の意味の違い
結論から言うと、どちらも「理解しやすい例」を指しやすい一方で、卑近な例は「やや硬い言い方」で、高尚ではないが、わかりやすい・通俗的という含みを持ちます。
一方の身近な例は、日常的で柔らかく、自分の生活圏や経験に近いという距離感・親しさが中心です。
| 表現 | ニュアンスの核 | 向いている文脈 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 卑近な例 | 通俗的でわかりやすい(高尚ではない) | 論説・講義・文章での説明 | 相手によっては「卑しい」と誤解されやすい |
| 身近な例 | 生活や経験に近い・親しみがある | 会話・ブログ・入門解説 | 「ただ近いだけ」で通俗性までは含まないことも |
卑近な例と身近な例の使い分けの違い
使い分けのコツは、「例の近さ」を言いたいのか、「難しい話を噛み砕くための通俗性」を言いたいのかで決めることです。
- 身近な例:読者や聞き手が想像しやすい生活の場面(家計、通勤、スマホ、家事、学校など)を示したいとき
- 卑近な例:抽象論を説明するために、あえて「ありふれた例」「平易な例」を出すとき(やや文章語)
私の運営方針としては、一般の読者向け記事なら基本は身近な例が無難です。卑近な例は「文章が硬くなっても正確に言い切りたい場面」や「論理の流れを明確にしたい場面」で選ぶと、言葉が浮きにくくなります。
卑近な例と身近な例の英語表現の違い
英語では、日本語の「卑近」にある「高尚ではない」という含みを、直訳で再現しようとすると不自然になりがちです。目的は「わかりやすさ」なので、文脈に合わせて自然な英語に寄せます。
- 身近な例:a familiar example / an example close to home / an everyday example
- 卑近な例:a down-to-earth example / a commonplace example / a simple example
「卑近な例」を英語にするときは、相手に失礼な響きにならないよう、down-to-earth(地に足のついた)やsimple(平易な)あたりが安全です。
卑近な例の意味
ここでは「卑近な例」そのものを深掘りします。読み方、定義、使う場面、語源、類義語・対義語まで押さえると、文章で迷わなくなります。
卑近な例とは?意味や定義
卑近な例(ひきんなれい)は、「身近でありふれていて、わかりやすい例」を指します。ポイントは、単に近いだけでなく、高度で高尚な話ではなく、通俗的で理解しやすい方向へ落とすという含みがあることです。
そのため「卑近な例を挙げる」は、説明の技法として「抽象→具体」へ降ろす動きが見えます。学術的な議論や硬めの文章で、話の入口として使われることが多い表現です。
卑近な例はどんな時に使用する?
卑近な例は、次のような場面で特に力を発揮します。
- 概念や理屈が抽象的で、読者がイメージしにくいとき
- 導入でつまずかせず、理解の足場を作りたいとき
- 専門的な議論を、一般向けに噛み砕いて説明したいとき
たとえば「市場原理」「リスク分散」「因果関係」などは、定義から入ると難しく感じやすいテーマです。そこでまず卑近な例を置き、理解のハードルを下げるのが自然です。
卑近な例の語源は?
「卑近」は、卑(ひくい)+近(ちかい)の組み合わせです。この「卑」は人格を貶める意味だけではなく、「高尚」の反対側にある「通俗」「平易」の方向を示すことがあります。
つまり卑近は、ざっくり言えば高い所の話ではなく、低い所=手元の話に降ろして近づけるというイメージです。ここを押さえると、「卑近=卑しい」と短絡しないで済みます。
卑近な例の類義語と対義語は?
卑近な例に近い言葉は複数ありますが、ニュアンスが微妙に違います。
類義語
- 具体例:抽象に対して具体を示す(通俗性は含まない)
- 身近な例:生活に近い(柔らかい)
- ありふれた例:珍しくない例(やや素っ気ない)
- 平易な例:難しくない例(説明のしやすさに焦点)
- 手近な例:手元にある・近くで用意できる例
対義語
- 高尚:知的で気高い方向
- 崇高:尊く気高い方向
- 高遠:理想が高く遠い方向
- 迂遠:回りくどく、わかりにくい方向
卑近な例は「わかりやすさ」に強みがある一方で、扱う題材によっては「軽い」と感じられることもあります。目的に合わせて使い分けるのが大切です。
身近な例の意味
次に「身近な例」です。こちらは日常での使用頻度が高く、文章も会話も自然にまとめやすい便利な表現です。
身近な例とは何か?
身近な例(みぢかなれい)は、読者や聞き手の生活や経験に近く、想像しやすい例を指します。距離感としては、物理的な近さだけでなく、心理的・関係的な近さも含みます。
「身近」という言葉自体が「自分の身の周辺」「自分の生活圏」を基準にするため、身近な例は共感と理解を同時に取りにいけるのが強みです。
身近な例を使うシチュエーションは?
身近な例は、次のようなシーンで特に自然です。
- ブログやSNS、社内資料など、読者層が広い文章
- 授業や研修、プレゼンなど、理解の足並みを揃えたい場面
- 「自分ごと化」してもらい、行動につなげたい説明
たとえば「節約」「防災」「スマホ依存」「時間管理」などは、身近な例があるだけで理解が一気に進みます。反対に、身近さが薄い例を出すと「結局どういうこと?」となりやすいので、読者の生活を想像して選ぶのがコツです。
身近な例の言葉の由来は?
身近は、身(自分自身・生活圏)+近(距離が近い)で成り立つ言葉です。語の構造が直感的なので、意味も取り違えにくいのが特徴です。
「身近な問題」「身近なテーマ」と言うときは、単なる距離だけでなく、自分の暮らしに関係が深いというニュアンスが出ます。
身近のニュアンスを「手近」と混同しやすい方は、別記事で整理しています。
身近な例の類語・同義語や対義語
身近な例の周辺語を押さえると、言い換えの幅が広がります。
類語・同義語
- 親しみのある例:温かさ・距離の近さが強い
- 日常的な例:生活の中によくある
- よくある例:頻度を強調(やや口語)
- 身の回りの例:生活圏の具体物を連想させる
- 馴染みのある例:経験として浸透している感じ
対義語
- 疎遠な例:関係が薄くイメージしにくい
- 馴染みのない例:経験がなく理解の足場がない
- 遠い世界の例:生活から距離がある
「身近」を強調しすぎると、逆にスケールが小さく見えることもあります。説明の目的が「共感」なのか「概念理解」なのかで、言い換えを調整するのが上手いやり方です。
卑近な例の正しい使い方を詳しく
ここからは「卑近な例」を実際にどう使うかを、例文と言い換えで具体化します。誤解されやすいポイントも一緒に押さえます。
卑近な例の例文5選
- 卑近な例を挙げると、毎月の家計簿でも「固定費を下げる」効果が見えてきます
- この理屈は難しく聞こえますが、卑近な例で言えば「渋滞を避けるために早めに出る」ようなものです
- 卑近な例に落とし込むと、複利の考え方は「雪だるま式に増える」と説明できます
- 卑近な例で恐縮ですが、私の経験でも同じ失敗をしました
- 卑近な例から出発して、最後に抽象的な結論へ戻すと理解が深まります
卑近な例は、文全体が硬いときほど自然に馴染みます。逆に、普段の会話で使うと「急に難しい言葉を使った」印象になることがあるので、場面を選びましょう。
卑近な例の言い換え可能なフレーズ
誤解を避けたいときは、次の言い換えが便利です。
- わかりやすい例を挙げると
- 具体例で言うと
- 身近な例で言うと
- たとえば
- イメージしやすい例としては
卑近な例の正しい使い方のポイント
卑近な例を自然に見せるポイントは3つです。
- 抽象語の直後に置く:概念提示→卑近な例→まとめ、の順にする
- 卑近な例は短く:例が長いと主題がぼやける
- 例のあとに橋渡し文:「つまり」「このように」で抽象へ戻す
卑近な例はあくまで補助輪です。例そのものを語りすぎず、説明したい主題へ戻す一文を必ず添えると、文章が締まります。
卑近な例の間違いやすい表現
間違いやすいのは、「卑近」を人格評価のように扱ってしまうケースです。
- 誤:あの人の考え方は卑近だ(文脈によっては侮辱に聞こえる)
- 誤:卑近=卑しい、下品(意味がズレる)
身近な例を正しく使うために
身近な例は使いやすい反面、「誰にとって身近か」を取り違えると、逆に伝わりにくくなります。ここでは例文とコツをまとめます。
身近な例の例文5選
- 身近な例で言うと、スマホの通知を切るだけでも集中力は変わります
- 身近な例として、コンビニでの買い物を思い浮かべてください
- 身近な例に置き換えると、保険は「もしもの時の備え」です
- 子どもにも伝えるなら、身近な例として学校生活の話にすると分かりやすいです
- 身近な例から考えると、環境問題も自分の生活とつながっていると気づけます
身近な例を言い換えてみると
場面によって、次の言い換えがしっくりきます。
- 身の回りの例
- 日常の例
- よくある場面
- 自分の生活に置き換えると
- イメージしやすい例
「身近」を連発すると稚拙に見えることもあるので、言い換えを混ぜると文章のリズムが整います。
身近な例を正しく使う方法
身近な例を「伝わる例」にするコツは、聞き手の属性を意識することです。
- 読者の生活圏に合わせる:学生・社会人・子育て世帯で“身近”は変わる
- 具体物を出す:スマホ、電気代、通勤時間など、触れられる題材が強い
- 1例で足りなければ2例まで:例の出しすぎは散漫になる
身近な例の間違った使い方
身近な例の失敗は、例が「身近」ではなく「特定の人にしか身近でない」ことです。
- 誤:身近な例として、海外不動産投資の話をします(一般読者には遠い)
- 誤:身近な例として、専門職の業務フローを前提にする(前提知識が必要)
まとめ:卑近な例と身近な例の違いと意味・使い方の例文
卑近な例と身近な例は、どちらも「わかりやすい例」を示す場面がありますが、意味の焦点が異なります。
- 卑近な例:高尚ではないが通俗的でわかりやすい例(やや文章語)
- 身近な例:生活や経験に近く、想像しやすい例(柔らかい)
迷ったときは、一般向けなら「身近な例」「具体例」を基本にし、文章が硬い場面や論理展開のために「卑近な例」を選ぶと失敗しにくいです。
言葉の意味や用法は辞書などの信頼できる資料(公式に準ずる情報)で確認してください。文章の印象や適切さは媒体・相手・目的で変わるため、最終的な判断に迷う場合は、国語の専門家や編集者などプロに相談することもおすすめします。

