
「干す」と「乾かす」の違いや意味、それぞれの語源、類義語・対義語、自然で伝わる言い換えと正しい使い方・例文を網羅的に解説します。日常では「洗濯物を干す/髪を乾かす」のように混同しがち。この記事では、干す・乾かすの違いや意味と語源・類義語・対義語・言い換え・使い方を例文を交えてしっかり押さえ、迷わず使い分けできるように整理します。
この記事を読んでわかること
- 「干す」と「乾かす」の意味的なコアと結論的な違いがわかる
- 場面別にどちらを選ぶべきか、実用の判断基準がわかる
- 英語表現(dry, air, hangなど)の対応とニュアンスがわかる
- 語源・類義語・対義語・言い換え・よくある誤用まで体系的に理解できる
定義や語義は国語辞典・公的資料を基礎に再構成しています。
干すと乾かすの違い
結論:干すと乾かすの違い
結論をいえば、干すは「(日光・風などの外部環境に“さらして”水分を除く行為」を表す語で、対象の置き方・方法に焦点があります。
これに対し乾かすは「濡れ・湿りを取り除いて乾いた状態に“する”」という状態変化の結果に焦点がある語です。道具や機械で能動的に水分を飛ばす場合にも広く使えます。
項目 | 干す | 乾かす |
---|---|---|
焦点 | 外気・日光・風に「さらす」動作 | 湿りを取り除き「乾いた状態にする」結果 |
典型対象 | 洗濯物・布団・魚/野菜などの食品(天日干し) | 髪・手・ペンキ・靴・書類・機械部品 など |
方法 | 屋外やベランダ・室内物干しに「掛ける/並べる」 | ドライヤー・除湿機・乾燥機・タオル・送風 |
文型 | 〈目的語〉を干す(=外に出す/広げる) | 〈目的語〉を乾かす(=湿りを除去する) |
比喩的用法 | 「役を干す(仕事を与えず放置)」 | (比喩は少なめ) |
場面ごとの使い分けの違い
- 洗濯物や布団なら:干す(物干し竿にかける動作が核)
- 髪・手・靴・ペンキなら:乾かす(機器・方法を問わず乾燥させる結果が核)
- 食品加工(干物・干し椎茸など):干す(保存・旨味の凝縮を狙う天日/送風のプロセス)
- 電化製品の内部まで水抜きしたい:乾かす(除湿剤・温風など能動的手段)
なお「洗濯物を乾かす」も一般的ですが、物干しに掛ける行為を述べるなら「干す」がより具体的で自然です。
英語表現の違い
日本語 | 自然な英語 | ニュアンス |
---|---|---|
洗濯物を干す | hang the laundry (out) / air-dry the laundry | 外気に「さらす」イメージ(物干しに掛ける) |
髪を乾かす | dry my hair / blow-dry my hair | 結果として乾いた状態にする(機器使用も可) |
布団を干す | air the futon / put the bedding out in the sun | 日光・風に当てて湿気を抜く |
靴を乾かす | dry my shoes / let my shoes dry | 中まで湿りを除く |
食材を干す | sun-dry / air-dry (shiitake, fish) | 保存・旨味濃縮のための乾燥 |
干すの意味
干すとは何か?
干すは「水分・湿気を取り除くために、日光・風・火気などにさらす」という行為を表す他動詞です。井戸や池を「干す(=水を抜いてからにする)」、杯を「飲み干す」のような派生義もあります。さらに比喩的に「役を干す=意図的に仕事を与えない」も現代語で広く用いられます。
干すはどんな時に使用する?
- 洗濯物・布団を物干しにかける/布団を日干しする
- 食材(魚、果物、野菜)を乾物にする
- 池・井戸・田を干す(排水して水を抜く)
- 比喩:タレントを干す、役を干される
干すの語源は?
和語「ほす」は上代から見られる語で、語幹は「ひ(火・日)」との関連(「日(ひ)に当てる」)を指摘する説もありますが確定説はありません。漢字は意味合いから干(かわく・ひるの意)を当てたものです。表記としては「干す」が一般的ですが、古典文献では「乾す」も見られます。常用漢字表では「干(ほ)す/乾(かわ)かす」をそれぞれ別字で掲出しています。
干すの類義語と対義語は?
区分 | 語 | 使い方のヒント |
---|---|---|
類義語 | 日干しする/天日干しする/乾かす/乾燥する | 自然条件に「さらす」プロセスを前面に出すなら「干す」。機械乾燥や結果重視なら「乾かす」。 |
対義語 | 濡らす/湿らす(湿らせる) | 水分を加える動作・状態。 |
乾かすの意味
乾かすとは何か?
乾かすは「濡れ・湿りを取り除いて乾いた状態にする」という意味の他動詞です。日光や風に当てるだけでなく、ドライヤー・乾燥機・除湿機・加熱・吸水など手段を問わず使えます。
乾かすはどんな時に使用する?
- 髪・手・衣類・靴・傘・ペンキ面・木材・紙などの乾燥
- 機械や回路の水濡れ対策(除湿・温風・吸湿剤)
- 食品加工の「乾燥工程」の一般表現(※天日にさらすなら「干す」も適切)
乾かすの語源は?
自動詞乾く(湿気がなくなる)に使役的な接尾辞‐かすが付いた形が乾かすです。自動詞「乾く」と他動詞「乾かす」は対を成し、表記としては乾を用います(「渇く(のどが渇く)」とは別字・別義)。公的資料でも「乾く/渇く」の使い分けが整理されています。
乾かすの類義語と対義語は?
区分 | 語 | 使い方のヒント |
---|---|---|
類義語 | 乾燥させる/ドライにする/水気を取る/湿気を飛ばす | 結果として「乾いた状態」を作る語群。機械・道具の使用とも相性が良い。 |
対義語 | 濡らす/湿らす(湿らせる) | 水分を付与・保持する語。 |
干すと乾かすの使い方・例文
干すと乾かすの例文
干すの例文
- 洗濯物をベランダに干す。
- 晴れたので布団を干す。
- 大根を天日に干して切り干し大根にする。
- 濡れたカーペットを外に干す。
- 漁港でスルメを干す光景が広がる。
乾かすの例文
- シャワーの後にドライヤーで髪を乾かす。
- 濡れた靴を新聞紙で乾かす。
- ペンキを塗った壁をファンで乾かす。
- 洗ったコップを布巾で乾かす。
- スマホを誤って濡らしたので、電源を切ってゆっくり乾かす。
言い換え可能なフレーズ
目的 | 言い換え | 例 | 注意 |
---|---|---|---|
物干しに掛ける | 物を外に出す/天日に当てる/エア(air) | 布団を外に干す → air the bedding | 「乾かす」でも意味は通るが、行為の具体性は「干す」が高い。 |
水気を取る | 水分を飛ばす/乾燥させる/ドライにする | 靴を乾かす → 水分を飛ばす | 道具・機械の使用を含む広い表現。 |
食品の保存加工 | 乾物にする/乾燥加工する | しいたけを干す → しいたけを乾物にする | 「干す」の方が伝統的手法を自然に喚起。 |
正しい使い方のポイント
- 行為を言いたい時は「干す」:物干し・天日・外気に「さらす」場面。
- 結果(乾いた状態)を言いたい時は「乾かす」:ドライヤー・乾燥機・除湿機・タオルなど手段は不問。
- 衣類については両立:洗濯物を干して乾かす/乾燥機で乾かす(=干さない)。
- 比喩の「干す」は「仕事を与えない」の意。人に対して使うと強いニュアンスになるので注意。
間違いやすい表現
- × 髪を干す → ○ 髪を乾かす(外気に「さらす」より、乾いた状態を作るのが目的)
- × のどが乾かす → ○ のどが渇く(「乾く」と「渇く」は別字・別義)
- × 井戸を乾かす → ○ 井戸を干す(「水を抜いて空にする」のは「干す」)
よくある質問
Q1.「洗濯物を乾かす」と「洗濯物を干す」はどちらが正しい?
どちらも通じますが、ベランダに掛ける行為を言うなら干すが具体的で自然。乾燥機を使うなら乾かすが適切です。
Q2.「乾く」と「渇く」の違いは?
「乾く」は湿気・水分がなくなること(空気・洗濯物・土など)。「渇く」はのど・心などの「うるおいが欲しくなる」こと。漢字と意味が異なるので書き分けに注意。
Q3.「干す」を英語で言うと?
状況により hang (out) / air / air-dry / sun-dry など。hang the laundry (out)「洗濯物を干す」、air the futon「布団を干す」などが自然です。
Q4.「干す」の比喩表現って失礼?
「(人を)干す」は「わざと仕事を与えない」の意で強い否定ニュアンス。ビジネス文書や公の場では避けるほうが無難です。
まとめ:干すと乾かすの違いと意味・使い方の例文
干す=外気・日光などに“さらす”行為、乾かす=乾いた状態に“する”結果。
衣類・布団・食品など「物干し」「天日」と相性が良いのは干す、髪・靴・機械・塗装など「道具や手段で乾燥させる」場面は乾かすが自然です。
語源的にも「乾く↔乾かす」の対と、「干す(干)」の系統は別。使い分けの軸を理解すれば、英語との対応(hang/air-dry vs. dry/blow-dry)も整理できます。
参考文献・出典
- 小学館『デジタル大辞泉』「干す」(コトバンク)
- 小学館『精選版 日本国語大辞典』「乾かす」(コトバンク)
- 小学館『デジタル大辞泉』「乾く」(コトバンク)
- 文化庁「異字同訓の漢字の使い分け例」
- 文化庁「常用漢字表・音訓索引」