「自書」と「自筆」の違いや意味・使い方・例文まとめ

契約書や履歴書、遺言書などの書類を準備しているときに「自書」や「自筆」という言葉が出てくると、「この二つはいったい何が違うのだろう？」と不安になる方は少なくありません。履歴書の注意書きにある自書で記入や自筆で記入、自署の指定、さらには遺言書に登場する自筆証書遺言のルールなど、どれも似た表現ばかりで戸惑ってしまいますよね。

また、「自書の意味と自筆の意味を辞書で調べてもイメージがつかみにくい」「自筆と直筆の違いはあるのか」「自書と自筆の違いを英語で説明したい」「ビジネスメールで『自書欄にご記入ください』と書いて良いのか分からない」といった細かな疑問もよく耳にします。特に、法的な効力が関係する契約書や遺言書では、言葉の違いがそのまま責任の重さにもつながりかねないため、モヤモヤしたままにしておくのは避けたいところです。

そこでこの記事では、違いの教科書を運営している私Mikiが、自書と自筆の違いや意味、使い分けを整理しつつ、語源や類義語・対義語、英語表現、使い方や例文まで一気に解説していきます。初めてこのテーマを調べる方でもスッと理解できるように、できるだけ専門用語をかみくだいて説明していきますので、「自書と自筆の違い意味をちゃんと理解しておきたい」という方は、どうぞ肩の力を抜いて読み進めてみてください。

読み終えるころには、「これは自書と書くべき場面」「ここは自筆と書いた方が正確」という判断が自分でできるようになり、履歴書や契約書、ビジネス文書、さらには英語での説明まで自信を持って対応できるようになります。

自書と自筆の違い

まずは、自書と自筆の違いをざっくりと押さえておきましょう。どちらも「本人が自分で書く」という点では共通していますが、ニュアンスやよく使われる場面にはきちんとした差があります。

結論：自書と自筆の意味の違い

辞書的な意味を整理すると、次のようにまとめられます。

語	読み方	基本イメージ	よく意識されるポイント
自書	じしょ	自分で書くこと、または自分で書いた文書そのもの	「内容を本人が自分の手で書いたかどうか」という行為全体
自筆	じひつ	本人が自分で書くこと、または本人が書いたもの	「誰の筆跡か」「本人の手書きかどうか」という筆跡・真贋

どちらも「本人が書いたもの」という点ではほぼ同じですが、自書は『自分で書いた行為や文書そのもの』、自筆は『本人の手書きであること（筆跡）』に焦点が当たると考えると違いがイメージしやすくなります。

例えば、遺言書に「遺言者はその全文、日付及び氏名を自書し…」とある場合は、「内容を含めてすべて本人が書くこと」が重視されています。一方で「有名作家の自筆原稿」といった場合は、「その作家本人の筆跡かどうか」が焦点です。

自書と自筆の使い分けの違い

実務的な使い分けとしては、次のようなイメージで押さえておくと便利です。

• 自書：履歴書・申込書・遺言書などの文章全体を本人が書いたかどうかを問題にするとき
• 自筆：原稿・絵画・サインなど、「誰が手で書いたか（描いたか）」という筆跡や真贋を問題にするとき

具体例で比べてみましょう。

• 履歴書は自書にしてください。…志望動機なども含め、内容を本人が自分で書くべきという指示
• この原稿は著者の自筆です。…この原稿は著者本人の筆跡によるものだという意味

日常の会話では、どちらも「本人が書いた」という意味でゆるく使われることもありますが、公的な書類やビジネスの文脈では、自書＝書いた行為・内容、自筆＝筆跡・真贋という違いを意識しておくと安心です。

自書と自筆の英語表現の違い

英語に訳す場合も、ニュアンスの違いを意識すると表現の選び方が変わります。

自書の英語表現

• written by oneself（自分で書いた）
• personally written（本人がみずから書いた）
• entirely written in the person’s own handwriting（全文が本人の手書きで書かれている）

遺言書や申告書などでは、personally written will や self-written statement のように、「内容を自分で書いたこと」を前面に出す表現が相性の良い訳になります。

自筆の英語表現

• in one’s own handwriting（本人の筆跡で）
• handwritten by …（…による手書きの）
• an autograph manuscript（著者自筆の原稿）

「自筆原稿」「自筆のサイン」といった文脈では、in the author’s own handwriting や the author’s autograph manuscript のように「筆跡」「オリジナルであること」を強調する表現を選ぶと、英語でもニュアンスを伝えやすくなります。

自書の意味

ここからは、自書という言葉そのものに焦点を当てて、意味や定義、使われるシチュエーション、語源、関連語などをもう少し丁寧に見ていきます。

自書とは？意味や定義

自書は、漢字のとおり「自ら書く」と書きます。国語辞典では、おおむね次のように説明されています。

• 自分で書くこと。
• 自分で書いた文書そのもの。

ポイントは、「書いたのは本人かどうか」という行為全体を指しているところです。実務上は、次のようなイメージで理解しておくと分かりやすいでしょう。

• 内容も含めて本人が自分の手で書いた文書であること
• 他人による代筆や、パソコンの印字、スタンプなどではないこと

自書はどんな時に使用する？

自書は、特に次のようなシーンでよく使われます。

• 履歴書や応募書類の「自書で記入してください」という指示
• 各種申込書・誓約書などで、本人が自分の手で内容を書くことを求める場面
• 遺言書（自筆証書遺言）で「全文、日付、氏名を自書すること」とされる場面

なお、自書であるかどうかが法的な有効性に関わるケース（遺言書の方式など）もあるため、重要な書類では必ず最新の法律や公式ガイドを確認することをおすすめします。

自書の語源は？

語源といっても難しい話ではなく、漢字の成り立ちを見るとイメージがつかみやすくなります。

• 自：自分、自ら
• 書：書き記す、文章を書く

つまり自書は、「自ら書き記すこと」という非常にストレートな構成です。古い法律文書や日記にも登場しており、「遺言者は全文、日付および氏名を自書し…」といった形で、本人が自分で書いているかどうかを確認するためのキーワードとして使われてきました。

自書の類義語と対義語は？

自書に近い意味を持つ言葉と、反対のイメージを持つ言葉を整理しておくと、言い換え表現の幅が広がります。

自書の類義語・近い表現

• 自筆：本人が自分で書いたこと・書いたもの
• 手書き：手で書くこと全般（本人か他人かは問わないことも多い）
• 自記：自ら書き記すこと
• 肉筆：本人の生の筆跡が残った文字・絵

自書の対義語・反対のイメージを持つ言葉

• 代筆：本人の代わりに他人が書くこと
• 代書：行政書士などが本人に代わって書類を作成すること
• 印刷・プリントアウト：パソコン等で作成し、印刷した文書

自筆の意味

次に、自筆という言葉の意味や使われ方、語源や類義語・対義語を整理していきます。自書とのニュアンスの違いがよりクリアになるはずです。

自筆とは何か？

自筆は、「本人が自分で書くこと」「本人が書いたもの」を意味します。辞書では、「自分で書くこと。また、その書いたもの。直筆・自書。」といった説明がされています。

自書と似ていますが、自筆は特に『筆跡が本人のものかどうか』という点が意識されやすい言葉です。そのため、誰が書いたかに価値が生まれる場面（有名人のサイン、作家の原稿、画家の素描など）でよく用いられます。

自筆を使うシチュエーションは？

自筆という言葉がよく登場するのは、次のような場面です。

• 作家や漫画家の自筆原稿の展示・販売
• 画家や書家による自筆の絵画・自筆の色紙
• スポーツ選手や芸能人の自筆サインやメッセージ
• 契約書などで、「署名は自筆で行うこと」と指定される場面

ここでは、内容そのものよりも「それが本人の手で書かれたオリジナルかどうか」が重要になります。逆に、書式が定型的で誰が書いても同じような内容になりやすい履歴書や申込書では、自筆よりも自書・自署といった表現の方がよく使われる印象です。

自筆の言葉の由来は？

自筆も、漢字の構成は非常にシンプルです。

• 自：自分、自ら
• 筆：筆記具・筆跡

つまり、自筆は「自分の筆によるもの」というイメージの言葉です。そこから、「本人が直接書いた文字・絵画・サイン」といったニュアンスで使われるようになりました。誰が書いたかが価値を持つ世界観（オートグラフやコレクションの世界）とも相性の良い言葉です。

自筆の類語・同義語や対義語

自筆の類語・同義語

• 直筆：特定の個人が直接書いた文字や絵画
• 真筆：本人の筆による作品であると証明されたもの
• 肉筆：本人の手書きであることを強調する表現
• 自書：本人が自分で書いたもの（ニュアンスはほぼ重なる）

自筆の対義語・反対のイメージを持つ言葉

• 代筆：他人が本人に代わって書いたもの
• 複製・コピー：オリジナルではない複写物
• 印刷物：活版やプリンタで大量に印刷されたもの

例えば「自筆のサイン」と言った場合、コピーしたサインや印刷されたサインとは対照的に、「その場で本人がペンで書いたサイン」であることが強く意識されます。

自書の正しい使い方を詳しく

ここからは、自書という言葉を実際に使う場面をイメージしやすいように、例文や言い換え表現、使い方のポイント、間違えやすい表現をまとめていきます。

自書の例文5選

• この履歴書は必ず自書で作成してください。
• 申込書の太枠内は、申込者本人が自書することとします。
• 遺言者は、その全文、日付および氏名を自書しなければならない。
• 彼の自書による体験記には、現場の空気感が生々しく伝わってくる。
• アンケートは原則として自書でご回答ください。

自書の言い換え可能なフレーズ

文脈によっては、次のような言い換えもよく使われます。

• 本人が自分で書く：より口語的で分かりやすい表現
• 本人の手書きによる：「手書き」であることを強調したいとき
• 本人による記入：フォーマルな書類の案内文などで使いやすい

自書の正しい使い方のポイント

自書を正しく使ううえで、特に意識しておきたいポイントは次の3つです。

①「全文なのか一部なのか」を意識する

自書が指定されている場合、多くは「全文を本人が書く」ことを期待していると考えた方が安全です。志望動機だけ自書、他はパソコンで印字しても良いのか、といった微妙なラインは、必ず募集要項や注意書きで確認しましょう。

②「自署」「記名」との違いを意識する

自書と似た言葉に、自署（自分の氏名を書くこと）や記名（印字やゴム印を含む氏名の記載）があります。これらの違いを丁寧に整理した記事は、すでに当サイト内でも用意しています。

「自著」と「自署」の違いや意味・使い方・例文まとめでは、自署という言葉の成り立ちや、自筆署名との関係を詳しく解説しているので、合わせて読んでおくと区別がよりクリアになります。

③パソコンや代筆との線引きを意識する

最近は、履歴書や契約書をパソコンで作成するケースも増えています。ただし、「自書」と指定されている書類では、パソコンで作成した文書に押印しただけでは要件を満たさない可能性がある点に注意が必要です。最終的にどの形式が認められるかは書類の種類や制度によって異なるため、必ず募集要項や公式の説明を確認してください。

自書の間違いやすい表現

自書に関して、実務でよく見かける「ちょっと危ない」パターンも挙げておきます。

• 履歴書は自書と書いてあるが、志望動機だけ手書きで他は家族が代筆してしまう
• 遺言書をパソコンで作成し、最後に署名だけ自書すれば十分だと誤解してしまう
• 「自書＝サインだけ手書き」というイメージで、内容はすべて印字にしてしまう

特に法律が関係する書類（遺言書、契約書、届出書類など）の扱いを誤ると、思っていた効力が発生しないリスクがあります。繰り返しになりますが、重要な手続きでは専門家に相談し、正確な情報は必ず公式サイトで確認してください。

自筆を正しく使うために

続いて、自筆という言葉の具体的な使い方や例文、言い換え表現、注意点をまとめていきます。

自筆の例文5選

• 会場には著者の自筆原稿が多数展示されている。
• サイン会で、選手が一人ひとりの名前を入れて自筆でメッセージを書いてくれた。
• この絵は、画家本人の自筆であることが鑑定によって確認された。
• 重要な契約書なので、署名欄には必ず自筆で記入してください。
• 祖父の自筆による日記は、家族にとって大切な宝物になっている。

自筆を言い換えてみると

自筆を別の言葉で説明するときには、次のようなフレーズがよく使われます。

• 本人の手書き：本人がペンや筆を持って書いたもの
• 本人の筆跡による：筆跡に注目した説明
• 直筆：特定の個人が直接書いたものというニュアンス（価値が意識されやすい）

英語であれば、in her own handwriting や handwritten by the author などと説明するとイメージが伝わりやすくなります。

自筆を正しく使う方法

自筆という言葉を適切に使うためのポイントを整理しておきましょう。

①「誰の筆跡か」をはっきりさせる

自筆という以上、「誰の自筆か」が明確でなければ意味がありません。文章の中では、できるだけ「著者の自筆原稿」「画家の自筆サイン」のように、主語をはっきりさせるのが基本です。

②価値や真贋が問題になる場面で使う

「自筆のサイン」「自筆の絵画」といった表現には、コピーや印刷物とは違う、オリジナルとしての価値が含まれます。価値判断が伴う場面で使う言葉だという意識を持っておきましょう。

③ビジネス文書では「署名」「サイン」との関係にも注意

ビジネス文書では、「自筆の署名（自筆サイン）」という形で使われることが少なくありません。当サイトでは、署名と記名の違いについても別記事で詳しく解説しています。

「署名」と「記名」の違いや意味・使い方・例文まとめを読むと、「署名（自署）」「サイン」「記名」の三つの関係が整理できるはずです。

自筆の間違った使い方

最後に、自筆という言葉でありがちな誤解や注意点も押さえておきます。

• パソコンで作成した文書を「自筆の原稿」と呼んでしまう
• コピーしたサインや印刷された署名を「自筆サイン」と誤って説明する
• 本人ではなく、代筆者が書いた文字に「自筆」とラベリングしてしまう

まとめ：自書と自筆の違いと意味・使い方の例文

最後に、自書と自筆の違いをコンパクトに振り返っておきましょう。

• 自書：自分で書くこと、また自分で書いた文書そのもの。履歴書や申込書、遺言書などで「内容を本人が自分の手で書く」ことを求めるときに使われる。
• 自筆：本人が自分で書くこと、また本人が書いたもの。原稿や絵画、サインなどで「その筆跡が本人のものかどうか」「オリジナルかどうか」に価値が置かれる場面で使われる。

言い換えると、自書は「書いた行為・内容」に、自筆は「誰の筆跡か・オリジナルか」に軸足を置いた言葉だと理解しておくと、使い分けに迷いにくくなります。

自書と自筆を正しく使い分けるうえで大切なのは、次の3点です。
・履歴書や契約書では、自書か自署か、自筆か記名かを正確に読み取ること
・価値や真贋が問題になる場面では、自筆・直筆・真筆などの区別を意識すること
・英語表現では「personally written」「in one’s own handwriting」など、文脈に合った訳を選ぶこと

なお、自書や自筆は、遺言書・契約書・各種申請書など、人の財産や権利義務に大きな影響を与える場面でも頻繁に登場します。この記事で解説した内容は、あくまで一般的な目安として押さえていただき、具体的な手続きについては必ず最新の法令や公式サイトで確認してください。判断に迷う場合や、人生に関わる大事な場面では、最終的な判断は専門家にご相談ください。

もし、自書や自筆とあわせてサインや署名のニュアンスも整理したい場合は、英語由来のサイン表現に焦点を当てた「シグネチャー」と「オートグラフ」の違いや意味・使い方・例文まとめも参考になるはずです。自書・自筆・署名・サインの全体像が見えてくると、書類作成や日常会話での言葉選びがぐっと楽になります。