
「書き留める」と「書き記す」は、どちらも「何かを文字で残す」という意味を含みますが、ニュアンスや用法には微妙な違いがあります。本稿では、「書き留める」と「書き記す」のそれぞれの意味・読み方・使い方を、例文や類義語・英語表現を交えて詳しく解説します。結論を先に述べれば、「書き留める」は“後で思い返せるように書き残す”という意味を強く含み、「書き記す」は“文字を書きつけて記録する・記す”という意味合いが中心です。本記事を読めば、どちらを使うべきか迷う場面でも正しく使い分けられるようになります。
目次
「書き留める」と「書き記す」の基本的な意味
「書き留める」の意味とは?
「書き留める(かきとどめる)」は、「後々思い返したり参照できるように、物事を文字で残しておく」という意味を持つ語です。コトバンクによれば「後に残すために、書いておく。書き残す」などの意味があります。この語は、「記録」「控える」「メモする」といった行為を暗示し、「忘れないように心に留めつつ文字化する」という含みを持ちます。
また、同じ「書留める(かきとめる)」という表記も辞書に見られ、「心覚えのために書きしるしておく」意味で用いられます。つまり、「書き留める」は「ただ書く」よりも一歩踏み込んで、「残しておくことを意図して書く」「後に見直すために書く」ニュアンスを伴います。
「書き記す」の意味とは?
「書き記す(かきしるす)」は、「文字を書きつける」「記録する」「記す」という意味を持つ語です。コトバンクの説明では、「文字を書きつける。書き留める」などが意味として挙げられています。この語は、「記す(しるす)」の意味を前提にしており、「記録を文字にして残す」という行為そのものを指す傾向が強いです。
また、文献的にも、「書き記すということは、情報を整理し、目に見える符号として時間と空間を超えて保持されるということ」である、という論点も紹介されています。つまり、「書き記す」は情報そのものを文字化して保持する行為を重視した語と考えられます。
二つの言葉の読み方と違い
読み方としては、両者とも「かき〇〇す/かき〇〇める」という読みが一般的です
- 書き留める → かきとどめる
- 書き記す → かきしるす
なお、「書留める(かきとめる)」のように、「留める」の字を使う表記も、辞書上では「書き留める」と同義に扱われている例があります。
二語を比べると、「書き留める」は“留める”の語感が入るぶん、「記憶の中にも留めておきたい」という意図を伴うことがあり、一方で 「書き記す」は純粋に記録行為・文字化という側面が前面に出ることが多い、という違いが見えてきます。
「書き留める」と「書き記す」の使い方の基本
「書き留める」を使った例文
以下は、日常またはビジネスで使いやすい「書き留める」を用いた例文です:
- 「会議で出た意見を忘れないよう、スマホに書き留めておいた。」
- 「旅先で見た風景をこのノートに書き留める。」
- 「大切な連絡先を手帳に書き留めておくと安心だ。」
- 「気になった言葉をひとまずノートに書き留めた。」
- 「出張先で聞いたヒントをメモ代わりに書き留めた。」
これらの例では、何かを“忘れないように残しておくために書く”という意図が含まれています。特に、「後で参照する」「思い返す」という用途が見えやすい例文です。
「書き記す」を使った例文
次に、「書き記す」を使った例文を5件示します:
- 「調査結果をレポートに書き記すように準備しておいてください。」
- 「その場で聞いた情報を逐一書き記していった。」
- 「日記には感想を詳しく書き記すことにした。」
- 「彼の言葉を正確に書き記すのは容易ではない。」
- 「会議録を手早く書き記して配布した。」
これらの文では、情報・発言・事実を文字で残す行為そのものが焦点になっています。感情や記憶よりも、「記録として文字化する」ことが前面に出ています。
「書き留める」と「書き記す」の使い分け
上記の例文・意味を踏まえると、使い分けの目安は以下のようになります:
- 記憶・思いをともなって「忘れたくないから残しておきたい」ニュアンスを含む場面 → 書き留める
- 客観的・中立的な事実・情報を文字で残す場面 → 書き記す
実際には、両者が混ざるケースも多く、厳密な線引きが常に明確とはいえません。しかし、文章全体の趣旨や書き手の意図を考えて選ぶと、違和感のない使い分けが可能になります。
例えば、次のような場面を想像してみてください:
- 「感銘を受けた言葉を、思いが消えないうちに書き留めておきたい」→ 書き留めるの方が自然
- 「会議で発言された内容をそのまま議事録に書き記す」→ 書き記すがふさわしい
このように、書き手が“感情・記憶との結びつき”を意図しているか、それとも“事実・情報の正確な記録”を意図しているかで、語選びをするのがコツです。
「書き留める」と「書き記す」の類義語
「書き留める」の同義語・類語
- 書き残す
- 控える
- メモする
- 記録する
- 書き付ける
これらの語は、「何かを失わないように文字で残す」という意味で重なる部分があります。ただし、語感やニュアンスは多少異なります。たとえば「控える」は記録にやや控えめな意味を含み、「メモする」は手軽な記録行為を示します。
「書き記す」の同義語・類語
- 記す(しるす)
- 記録する
- 書き付ける
- 記載する
- 筆記する
「書き記す」は、「記す」を重視した語なので、これらの語との置き換えがしやすい場合があります。ただし、「記載する」「筆記する」などは公式文書や形式的記録を含む場面で使われることが多い点に注意が必要です。
「書き留める」と「書き記す」の言い換え表現
「書き留める」の言い換え例
- メモしておく
- 記憶に残すために書く
- 心に留めて書く
- 忘れないように書き残す
- ひとまず文字にしておく
「書き記す」の言い換え例
- 記録する
- 記す
- 記載する
- 筆記する
- 書き付ける
「書き留める」と「書き記す」の英語表現
「書き留める」を英語で表すと?
「書き留める」に相当する英語表現としては、以下のような語が一般的に使われます:
- jot down — さっと要点などをメモする意味を含む“書き留める”としてよく使われます。
- write down — 一般的な“書き留める・書き記す”の意味で広く用いられます。
- make a note of — 重要な点を記憶・記録する意図を強める言い方です。
例えば、「I want to jot down your suggestions for later.(後で検討できるよう、あなたの意見をメモしておきたい)」や、「Please write down the meeting decisions.(会議の決定を記録しておいてください)」のように使われます。
「書き記す」を英語で表すと?
「書き記す」に近い意味の英語表現も、主に「記録する」系統の語が適しています:
- record — 音声・映像・文字などを記録する意味で汎用的に使われます。
- note down — “記す”という意味で「メモする・書き込む」ニュアンスを含みます。
- document — 公式な記録・文書化するというニュアンスを持つビジネス英語でよく使われる語です。
たとえば、「The reporter recorded the witness’s statements in his notebook.(記者は目撃者の証言をノートに書き記した)」などの使い方が挙げられます。
まとめ:「書き留める」と「書き記す」の違い・意味・例文・使い方
本記事では、「書き留める」と「書き記す」の違いを、意味・読み方・使い方・類義語・言い換え・英語表現という観点から整理して解説しました。以下に改めてポイントをまとめます:
視点 | 書き留める | 書き記す |
---|---|---|
意味の中心 | 忘れないように残す意図を伴う記録 | 情報・事実を文字で記録する行為 |
ニュアンス | 記憶や思いを含むことがある | より中立・客観的な記録性が強い |
使う場面の例 | 旅日記・感想・アイデアなど | 議事録・報告書・記録文書など |
英語表現 | jot down / write down / make a note of | record / note down / document |
実際には、書き手の意図や文脈によってどちらを使っても意味が通ることもありますが、「感情・記憶を伴った残したいもの」には「書き留める」、「事実・情報を正確に文字で残す」には「書き記す」が適していることを念頭に置くと、自然で読みやすい文章になります。
語彙運用の精度を高めたい方は、この記事の例文や言い換え例を手元で声に出して使ってみると、感覚がつかみやすくなるでしょう。