
クリームブリュレとプリンの違いについて調べている方に向けて、用語の整理から実践までをワンストップで解説します。本記事では、まずプリンとは?やクリームブリュレとは?、さらにカタラーナとは?までの基本を丁寧に整理し、見た目は似ていても材料や加熱法、仕上げの工程がどのように異なるのかを解説します。続いて、家庭で役立つプリンの簡単レシピ、クリームブリュレの簡単レシピ、カタラーナの簡単レシピを具体的な配合と手順で提示し、最後にバーナーなしでもできるキャラメリゼの代替手段まで網羅します。、一般的に共有されている製菓の知見と一次情報源に基づく安全上の留意点を交えながら、迷いやすいポイントを一つずつ明確にしていきます。
- 3種の基本定義・歴史・名称の整理
- 材料配合と加熱法の違いから食感を理解
- 家庭で再現しやすい簡単レシピの手順
- バーナーなしのキャラメリゼ代替手段
目次
「クリームブリュレ」「プリン」違いは何?

- プリンとは?
- クリームブリュレとは?
- カタラーナとは?
- 「プリン」「ブリュレ」「カタラーナ」の違い
- 材料と製法の基本ポイント
プリンとは?

プリンは洋菓子の一種で、一般にカスタードプディング(英語圏では custard pudding、フランス語圏では crème caramel)を指します。構成はシンプルで、全卵(卵黄と卵白)、牛乳、砂糖を基本とし、香り付けにバニラを用いるのが一般的です。容器の底に砂糖を煮詰めた液状のカラメルソースを流し、その上にこした卵乳液を注ぎ、蒸し器またはオーブンの湯煎で穏やかに加熱して凝固させます。卵白由来のたんぱく質が熱で変性・凝集して網目状のゲルを形成するため、プリンはぷるんとした弾力と均質な口当たりが得られます。
配合の目安として、牛乳:全卵:砂糖を400ml:2個:60g前後とするレシピが家庭用では扱いやすいバランスです。砂糖濃度は甘さだけでなく凝固温度にも影響し、濃度が高いほど熱安定性が増して固く仕上がる傾向があります。また、卵乳液は目の細かいザルや布で2回以上こすことで気泡や卵殻微粒子を取り除け、なめらかな食感につながります。焼成(蒸し)時は約80〜90℃の湯を天板に張り、オーブン庫内を140〜160℃程度の比較的低温に保つのがセオリーです。中心がわずかに揺れる程度で取り出し、余熱で火入れを完了させると過凝固を防げます。
注意点食の安全に関わる一般的な指針として、卵料理の中心温度は70℃で1分間以上の加熱が安全とされることが案内されています(出典:愛知県-卵の衛生管理について)。本記事では菓子づくりの品質観点から低温長時間の火入れを推奨しますが、衛生管理は各公的機関の最新情報に従うようにしてください。
用語解説
スが入る:加熱温度が高すぎたり気泡が多かったりしたときに生地に小孔が多数あく現象です。たんぱく質の過凝固と水分蒸散が主因とされ、低温・短時間の蒸気抑制と丁寧な裏ごしで予防できます。
ポイント仕上がりを左右する3ポイント:
①卵液は人肌(約35〜40℃)で混合し泡立てない
②湯煎の湯は沸騰直前でキープ
③焼成後は粗熱を取ってから冷蔵し、タンパクゲルを安定化させる
この3点で口当たりが大きく向上します。
クリームブリュレとは?
クリームブリュレ(crème brûlée)は文字通り焦がしたクリームを意味し、卵黄と生クリーム(+牛乳少量)のリッチなアパレイユ(菓子用卵乳液)を用いるデザートです。加熱は小型の耐熱容器(ラメキン、ココット)で低温の湯煎焼きとし、凝固点直上を狙って「中心がかすかに揺れる」状態で取り出すことで、とろける滑らかさが得られます。供する直前、表面に砂糖を薄く均一に振り、直火でキャラメリゼして0.5〜1mm程度の薄く硬い飴層を形成。スプーンで割る瞬間のパリッという食感と、下層のクリーミーな層との対比が最大の魅力です。
配合の基礎比は、生クリーム:牛乳:卵黄:砂糖を300:100:4:60(g/ml)程度とし、バニラビーンズで香りを付ける例が多く見られます。卵黄は乳化性の高いレシチンを含むため、乳脂肪との相性がよく、凝固後の口溶けに寄与します。一方で卵白を使わないため弾力は生まれにくく、過加熱による離水(シネレシス)や「卵黄のそぼろ化」を避ける温度管理が重要です。湯煎の湯は80〜90℃、オーブンは140〜150℃程度が目安で、家庭用オーブンの癖によっては温度計・予熱時間の最適化が品質を左右します。
キャラメリゼは砂糖の粒度と層の薄さが均一性を決めます。カソナード(フランス産の粗糖)は溶けやすく風味の厚みが出るとされますが、グラニュー糖でも薄く二度振りしてから強い火で一気に炙れば、ムラの少ない飴層が作れます。焦がし過ぎは苦味が勝るため、色は薄い琥珀色〜中琥珀色を目安に止めます。なお、ブリュレのアパレイユは泡を極力抱き込まないことが肝要で、ホイッパーよりもシリコンヘラで静かに混合し、布で1〜2回こすと気泡が減り、口当たりが大きく改善します。
ポイント器と熱の通り:
陶器は保温性に優れ余熱が回りやすく、ガラスは熱伝導がやや遅い傾向があります。どちらも器に対し生地の厚みが薄いほど熱が均一に通るため、直径広め・浅めの器は滑らかさの再現性が高くなります。
ポイント離水のシグナル:
表面がぶつぶつ波打つ・中心が盛り上がる等は過加熱の兆候です。湯が沸騰している、オーブン温度が高い、または焼成時間が過長である可能性を見直してください。
カタラーナとは?
カタラーナ(crema catalana)はスペイン・カタルーニャ地方に伝わる菓子で、卵黄+牛乳をベースにコーンスターチ等のデンプンを加え、鍋で炊いてとろみを付与してから冷やし固めるのが特徴です。香り付けにはレモンやオレンジの皮、シナモンスティックがよく使われ、乳のやさしい甘みの中に柑橘とスパイスのニュアンスが広がります。提供直前に砂糖を振ってキャラメリゼする点はブリュレと共通ですが、凝固機構が異なるため、食感はずっしり濃厚で、スプーンに重く絡む仕上がりになりやすいのが大きな違いです。
デンプンの糊化(こか)は水分と熱によってデンプングラニュールが膨潤・崩壊し、粘度が立ち上がる現象を指します。コーンスターチの主な糊化温度帯はおおむね65〜80℃とされ、しっかりと温度域を通過させることが粉っぽさの解消と滑らかさの鍵です。配合の目安は、牛乳500mlに対し卵黄4個、砂糖80g、コーンスターチ20g程度。まず牛乳で柑橘の皮とシナモンを短時間のインフュージョン(香りの浸出)し、別ボウルで卵黄・砂糖・デンプンを均一に混合。温めた牛乳を少量ずつ加えて戻し入れ、鍋底を絶えずこそげながら弱〜中火で炊き上げます。とろみが付いたら火を止め、器に流して粗熱を取り、冷蔵で落ち着かせます。
カタラーナは薄い浅型の器に広げて固めると冷却が早く、提供時のキャラメリゼも均一になりやすいです。半冷凍の状態で供するスタイルも広まり、ねっとりとしたクリームにひんやりとした食感が加わって、独特のコントラストを楽しめます。キャラメリゼは砂糖を薄く均一にふり、上火やバーナーで短時間で一気に仕上げるのがポイントです。長時間の加熱は再溶解→再結晶化を招き、べたついた層や厚すぎる層になりやすいため避けます。
ポイント焦げ付き・だま対策:
デンプンは局所的に高温部ができるとだま(ゲル塊)になりやすい性質があります。厚手鍋を使い、シリコンへらで「鍋底の角」を丁寧になぞること、火加減を中弱火に限定することが効果的です。
用語解説
サラマンドラ(鉄製の焼きごて):カタラーナやブリュレの表面を焦がすのに使用していた歴史的な道具。現代ではガスバーナーや上火グリルで代替します。
「プリン」「ブリュレ」「カタラーナ」の違い
3種は見た目が似通いますが、凝固の仕組み・乳脂肪の比率・粉類の有無・熱の入れ方・表面仕上げ・提供様式までが系統的に異なります。まずは俯瞰できる比較表で骨格を押さえ、その後に実務的な判断基準を解説します。配合や器選び、温度管理に迷った際は、この表を参照すると整合が取りやすくなります。
項目 | プリン | クリームブリュレ | カタラーナ |
---|---|---|---|
主な卵の使い方 | 全卵(卵白+卵黄) | 卵黄のみ | 卵黄のみ |
乳成分の中心 | 牛乳中心(脂肪低〜中) | 生クリーム中心(脂肪高) | 牛乳中心(脂肪低〜中) |
粉類の有無 | 基本なし | なし | コーンスターチ等を加える |
凝固のメカニズム | 卵白タンパクのゲル化 | 卵黄タンパク+乳脂肪の網目 | デンプンの糊化(粘度付与) |
加熱・工程 | 蒸し/湯煎焼き | 低温の湯煎焼き | 鍋で炊いてから冷却 |
表面仕上げ | 液状カラメルソース | 砂糖を直火でキャラメリゼ | 砂糖を直火でキャラメリゼ |
代表的な食感 | ぷるんと弾力・均質 | とろける・クリーミー | ねっとり・重厚 |
提供スタイル | 型出し提供も多い | 器のままスプーンですくう | 器のまま/薄く広げて切り分け |
よく使う香り | バニラ中心 | バニラ中心 | レモン皮・オレンジ皮・シナモン |
失敗の典型 | ス(小孔)、過凝固 | 離水、表面のぶつぶつ | だま化、焦げ付き |
食べ頃温度 | よく冷やして4〜10℃ | よく冷やして4〜10℃ | 冷蔵〜半冷凍 |
まぎらわしい名称:「焼きプリン」は表面に焼き色が付くことがありますが、砂糖層を直火で焦がすキャラメリゼ工程とは異なります。焼き目は乾燥・褐変による色付きで、ブリュレのパリ層の食感は得られません。
選び方の目安として、軽快で素朴な卵乳の風味を際立てたい場合はプリン、濃厚で余韻の長い口溶けを求めるならブリュレ、スパイスや柑橘香を伴う重厚さを楽しむならカタラーナが適しています。器の選定も結果に直結します。浅めで広い器は熱の通りが速く均一で、ブリュレやカタラーナのなめらかさや均一なキャラメリゼに有利です。一方、背の高いプリン型は伝熱が緩やかになり、中心が過加熱になりにくく、弾力を保ったまま全体を凝固させやすくなります。
ポイント砂糖の種類は風味と溶け方を左右します。グラニュー糖は精製度が高く中立的な甘味で、プリンのカラメルやブリュレのキャラメリゼに幅広く適合します。カソナードは糖蜜分を含むため溶けやすく香りが豊かで、薄い均一層を作りやすい一方、厚く振ると流動性が高くなり剥離の要因となるためごく薄く均一が原則です。
「クリームブリュレ」「プリン」材料と製法の違い

- プリンの簡単レシピ
- クリームブリュレの簡単レシピ
- カタラーナの簡単レシピ
- バーナーなしでもできるキャラメリゼの方法
- 材料と製法の基本ポイント
配合と熱の加減は、出来上がりの食感・風味・保形性を決める核心です。卵のタンパク質は加熱により変性し、互いに結合して三次元の網目構造(ゲル)を形成します。一般的な調理学の解説では、卵白タンパクはおおむね62〜65℃付近から、卵黄タンパクは65〜70℃付近から凝固が進むとされます。全卵ベースのプリンは卵白の寄与が大きく、弾力が生じやすい一方、過加熱で「ス」が入りやすくなります。卵黄主体のブリュレは凝固帯がやや高く、低温長時間で中心温度をそっと引き上げる制御が鍵になります。
乳成分の脂肪は舌触りを劇的に変えます。生クリームの脂肪球は、卵黄レシチンやカゼイン(牛乳由来のタンパク)と相互作用し、口溶けの滑らかさ・コク・余韻を増幅します。脂肪比率が高いほど口溶けは良くなる半面、熱伝導が緩やかになり焼成時間が延びるため、湯煎の湯温・水位・器の材質をセットで見直すと再現性が高まります。
カタラーナに用いるデンプンは、加熱中に糊化(グラニュールの膨潤・崩壊)を起こして粘度が立ち、最終粘度は濃度・糖濃度・攪拌強度・冷却速度などの関数で決まります。糖濃度が高いと糊化温度が上がる傾向があるため、砂糖の投入タイミングを分けると火入れが安定します。弱火で鍋底を絶えずこそぐこと、角部に焦げ残りを作らないこと、85〜90℃付近を長く滞在させないこと(デンプンの劣化=老化促進)などが滑らかな口当たりにつながります。
熱の与え方では、湯煎焼きにおける水位は器の半分前後が基準です。水位が低すぎると側面の温度差が大きくなり、外固・中心柔の差が強く出ます。逆に高すぎると沸騰時の対流で器が動き、表面に波打ちや気泡の偏りを招くことがあります。湯の初期温度は80〜90℃、オーブンは140〜150℃での安定運転が扱いやすく、庫内温度の段差を抑えるために天板の予熱も有効です。
仕上げのキャラメリゼは、砂糖のキャラメル化(糖の熱分解による褐変)であって、タンパク質と糖の反応であるメイラード反応とは異なります。キャラメル化は概ね160℃以上で進行し、一気に加熱して薄い層を作るのがポイントです。低温で長く炙ると溶解・再結晶が進み、ざらつきや厚ぼったさの原因になります。砂糖の厚みはごく薄く全体が隠れるくらいに留め、必要に応じて二度振り・二度炙りで均一性を高めます。
ポイント器材最適化:
オーブン温度の実測は独立温度計で確認するのが確実です。家庭用オーブンは表示との乖離が見られる場合があり、±10〜20℃の補正で品質が安定するケースが一般的です。湯煎の湯温は電気ケトルからの熱湯を直接使わず、一度ボウルで温度調整すると過沸騰を防げます。
ポイント味の設計指針:
甘さを下げると口当たりが軽くなる反面、凝固の余裕が減りやすくなります。甘さを抑えたい場合は、卵黄比率を微増する、焼成温度を5〜10℃下げて時間を延長する、といった補正を組み合わせると破綻しにくくなります。
プリンの簡単レシピ

材料(耐熱プリン型4個分)
全卵2個(M)、牛乳400ml、砂糖60g、バニラエッセンス少量。カラメル用:砂糖50g、水大さじ1、湯大さじ1。
好みでコクを増やす場合は牛乳の一部を生クリーム(例:牛乳300ml+生クリーム100ml)に置き換えます。
下準備
オーブンを150℃に予熱します。深めの天板(湯煎用)、細目のこし器、ゴムべら、温度耐性のある耐熱型を用意します。型の内側を薄く湯で温めておくと、カラメルの広がりが均一になります。
カラメルを作る
小鍋に砂糖50gと水大さじ1を入れて中火にかけ、ゆすらずに濃い琥珀色まで煮詰めます。火を止めて湯大さじ1を加え、余熱で均一化します(跳ねに注意)。直ちに型の底に等分に流し、傾けて底面に薄く広げます。ここで厚くしないことが、後の型出し時の「べた付き」防止に有効です。
卵乳液を仕込む
牛乳400mlと砂糖60gを鍋で人肌(約40℃)まで温め、砂糖を溶かします。ボウルで全卵2個をよく溶きほぐし、温めた牛乳を少しずつ注いで混ぜ合わせます。バニラエッセンスを加え、細目のこし器で2回以上こすと気泡と不純物が取り除かれ、きめが整います。泡が多い場合は表面をバーナーで軽くあぶるか、数分静置して落ち着かせます。
焼成(湯煎焼き)
カラメルを入れた型に卵乳液を静かに注入し、天板に並べます。天板に80〜90℃の湯を器の半分ほどまで注ぎ、150℃のオーブンで25〜35分焼きます。中心がわずかに揺れる「ゼリー状の揺れ」になったら取り出し、天板から外して粗熱をとります。オーブンの癖により、140℃で時間延長のほうが滑らかに仕上がるケースもあります。
ポイント失敗防止:
スが入る主因は高温の蒸気・過加熱・気泡です。湯は沸騰させない、アルミホイルでふわっと落とし蓋をして蒸気直撃を避ける、卵乳液を丁寧にこす——の3点で大幅に改善します。
冷却・型出し・保存
室温で粗熱をとった後、冷蔵庫で最低3時間冷やし、ゲル構造を安定させます。型出しは、型の側面を指で軽く押して空気を入れる、または温湯に数秒だけ浸けて周縁を緩め、皿に一気に反転します。冷蔵で2日程度が家庭での目安とされ、乾燥を避けるため密閉して保存します。
好みの硬さに調整する
硬めが好みの場合は卵1/2個分増量または焼成温度+10℃で時間短縮、なめらか重視なら牛乳の一部を生クリーム化し、温度を5〜10℃下げて時間延長します。甘さを抑える際は、前述の通り凝固余裕が減るため、温度管理をより慎重にします。
ポイント蒸し器で作る場合:
ごく弱火で蓋に布巾を挟み、15〜20分を目安に中心温度が安定するまで蒸します。強火の蒸気はス発生の原因になりやすい点に注意してください。
クリームブリュレの簡単レシピ

材料(浅型ココット約4〜5個分)
生クリーム300ml、牛乳100ml、卵黄4個、砂糖60g、バニラビーンズ1/2本(またはペースト少量)、仕上げ用砂糖(グラニュー糖またはカソナード)適量。
より軽めに仕上げたい場合は生クリーム:牛乳=2:2、濃厚さを強めるなら3:1を目安に比率を調整します。
下準備と器選び
オーブンを140〜150℃に予熱します。深めの天板、湯沸かし用の熱湯、細目のこし器、耐熱の浅型ココットを用意します。浅く広い器は熱が均一に入りやすく、なめらかに仕上がる傾向があります。器が厚手の場合は蓄熱で中心温度の立ち上がりが遅くなるため、焼成時間をやや延ばす想定を立てます。
アパレイユ(卵乳液)の仕込み
鍋に生クリームと牛乳、割いたバニラビーンズを入れ、沸騰手前まで温めて香りを抽出します。別ボウルで卵黄と砂糖を白っぽくなるまで混ぜ、温めた乳を少量ずつ加えて乳化を安定させます。全体が均一になったら細目のこし器で1〜2回こすことで、気泡や凝固しやすい微細な固形成分を取り除き、舌触りを整えます。泡は仕上がりの表面欠陥につながるため、表層の泡はスプーンで除去するか数分静置して落ち着かせます。
低温の湯煎焼き
ココットにアパレイユを等分に注ぎ、天板に並べます。天板へ80〜90℃の熱湯を器の半分の高さまで注ぎ、140〜150℃で30〜40分焼きます。焼き上がりは表面が薄い膜を張り、中心が「わずかに揺れる」状態が目安です。オーブンの実温が低い・器が深いなどの要因で時間は変動するため、視覚的な揺れと器の縁の固まり具合を併せて判断します。
ポイント焼成と器の関係:
アパレイユの厚みが厚いほど伝熱距離が伸び、時間が延びます。浅型(深さ2cm)なら30分前後、やや深め(3cm)で35〜40分が一つの目安です。天板をあらかじめ予熱しておくと底面からの立ち上がりが安定します。
アパレイユ厚み | 目安焼成温度 | 目安時間 |
---|---|---|
約2cm(浅型) | 150℃ | 28〜35分 |
約3cm(標準) | 145℃ | 32〜40分 |
約4cm(深型) | 140℃ | 40〜50分 |
冷却とキャラメリゼ
焼成後は湯煎から外し、粗熱が取れたら冷蔵庫で最低3時間冷やして組織を安定させます。供する直前、表面を完全に乾かしてから砂糖を薄く均一に振り、バーナーで素早く一気に炙って薄い飴層を作ります。砂糖は一度に厚くかけると溶け残りや再結晶の原因になるため、二度振り・二度炙りで均質化すると失敗が減ります。カソナードは溶けやすくコクが出やすい一方で焦げ色が早いので手早さと距離感が肝要です。
注意点卵を含む料理は中心まで十分に加熱する衛生管理が推奨されています。食の安全に関わる一般的な指針として、卵料理の中心温度は70℃で1分間以上の加熱が安全とされています(出典:愛知県-卵の衛生管理について)。家庭では低温長時間で火入れをコントロールし、冷却・保存は清潔な密閉容器で行うなど、基本の衛生管理を徹底してください。
仕上がりを左右する微調整
濃厚さを出したい場合は卵黄を1個追加、軽くしたい場合は牛乳比率を増やし、焼成温度を5〜10℃下げて時間延長します。香りはバニラが基本ですが、柑橘皮を乳に浸出させると爽やかな余韻に、ラムやリキュールをごく少量加えると香りの奥行きが生まれます。表面のパリ層は室温や湿度で軟化しやすいため、キャラメリゼ後はできるだけ早く供するのが理想です。
カタラーナの簡単レシピ

材料(耐熱バット約20×15cm)
牛乳500ml、卵黄4個、砂糖80g、コーンスターチ20g、レモンまたはオレンジの皮少量、シナモンスティック1/2本、仕上げ用砂糖適量。
風味付けとしてバニラやスターアニスを加えても良好です。
香り出しと下準備
鍋に牛乳とシナモン、柑橘の皮を入れ、弱火で温めてから蓋をして10分ほど蒸らすと香りが穏やかに移ります。別ボウルでは卵黄・砂糖・コーンスターチをダマが残らないようにしっかり混ぜ、均一な状態を作ります。ここで砂糖を一部(10〜20%)だけ先に加え、残りを炊き上げ段階で加えると、デンプンの糊化を妨げにくく火入れが安定します。
テンパリングと炊き上げ
香りを移した牛乳を再加熱し、卵黄側に少量ずつ注いで温度をなじませ(テンパリング)、鍋に戻します。弱〜中火で絶えず底からかき混ぜながら加熱し、ふつふつ手前〜とろみがつくまで炊きます。コーンスターチの滑らかな糊化には十分な温度到達が必要で、不足すると粉っぽさや離水の原因になります。とろみが付いたら火を止め、残りの砂糖を加えて均一化し、こし器でこすことで香味の固形や微細なダマを除去します。
成形・冷却・表面仕上げ
耐熱バットに流し入れ、表面をならして粗熱を取り、冷蔵庫で3〜4時間冷やし固めます。供する直前に砂糖を薄く振り、バーナーでキャラメリゼします。半冷凍(−5〜−8℃帯)にしてから供すると、外はパリッと、内側はアイスのように冷たい独特の口当たりを楽しめます。切り分ける場合はバットの厚みを薄め(1.5〜2cm)にすると均一なプレートが得られます。
ポイント滑らかさの要点:
鍋底の角は焦げつきのホットスポットです。ヘラの先端が角にフィットする形状を選び、絶えず角をなぞるように混ぜ続けるとダマ化を防げます。とろみが付いた直後に振動や強い撹拌を加えると粗い粒子が生じやすいため、火を止めたら静かに扱うのが安全です。
ポイント香りの設計:
柑橘皮は白いワタを避け、表層の色付いた部分だけを薄く削ると苦味が出にくくなります。シナモンはスティックを推奨で、パウダーは濁りやすく舌残りの要因になります。
質感の調整と保存
より軽い食感にしたい場合はコーンスターチを15gに、重厚にしたい場合は25gに。甘さを下げた際は離水しやすくなるため、冷却時間を十分に取り、必要に応じてゼラチンをごく少量(2〜3g/総量)で補助する手法もあります。保存は冷蔵で2日程度が家庭の目安です。キャラメリゼは供する直前が原則で、先に作ると湿気で飴層が軟化しやすくなります。
バーナーなしでもできるキャラメリゼの方法
直火バーナーがなくても、いくつかの代替加熱法でパリッとした飴層に近い質感を得られます。前提として、カスタード面はよく冷やし乾燥し、砂糖は薄く均一に振る——この2点が成功率を大きく左右します。以下の方法はそれぞれ特徴が異なるため、器材と目的に合わせて選択します。
オーブントースター(上火)方式
庫内を予熱して高温状態を作り、冷えた器を一気に入れて表面だけを短時間で炙ります。途中で一度取り出し、追い砂糖をして再度短時間加熱すると均一な層になりやすくなります。器は耐熱を使用し、急激な温度差で割れないよう注意します。焦げやすいカソナードより、溶けやすく扱いやすいグラニュー糖がおすすめです。
魚焼きグリル・オーブンの上火(ブロイル)
強い上火で表面を近距離から一気に加熱します。耐熱トレイに氷水を張り、器の底面に接するように置くと、下層の温度上昇を抑えつつ表面だけを焦がしやすくなります。短時間勝負のため、砂糖は極薄に、扉は開閉を少なくして熱損失を抑えます。
熱したスプーン・こて当て方式
金属スプーンの背面や金属ヘラを直火で赤熱させ、砂糖を振った表面に軽くタッチして溶かします。点で押さえるのではなく、面で滑らせるイメージで薄く広げるとムラが出にくくなります。火傷防止として耐熱手袋を着用し、取っ手の根元まで高温になる点に留意してください。
キャラメル板(飴タブレット)を作って載せる
小鍋で砂糖をハードクラッグ(150〜155℃相当)まで煮詰め、耐熱シート上に薄膜で流し固めます。固まった板を割り、カスタード表面に載せます。完全な直火キャラメリゼのような密着感はやや弱いものの、均一な硬い飴層を再現できます。ミクロの気泡が美観を損ねる場合は、流し直後にシートの上から薄く重しを置くと平滑になります。
注意点ガラスは耐熱仕様のみを使用し、急加熱・急冷却を避けます。砂糖は高温で粘性が高く、皮膚に付着すると重度の火傷につながりやすいため、長袖・耐熱手袋・小さめの鍋を用いて作業します。トースターやグリル使用時は、油脂やクズの残留による発煙・引火に注意し、庫内を清掃してから行ってください。
ポイント砂糖の選び分け:
グラニュー糖は癖が少なく、トースター方式で扱いやすい砂糖です。カソナードは溶けやすく褐色化が速い一方、厚みが出るとべた付きやすいので極薄層を心がけます。粉糖はデンプンを含むため、焦がし色が不均一になりやすく推奨しません。
「クリームブリュレ」「プリン」の違い|要点まとめ
- プリンは全卵と牛乳主体でぷるんと弾力が出やすい質感に仕上がる
- クリームブリュレは卵黄と生クリームで濃厚かつなめらかな口溶けになる
- カタラーナは粉の糊化で粘度を作りねっとり重厚な食べ応えになる
- プリンは液状カラメルソースを合わせ全体をまとめる味設計となる
- ブリュレとカタラーナは砂糖を直火で焦がし薄いパリ層を形成する
- 蒸し焼き湯煎焼き鍋炊きの違いが凝固構造と水分保持に直結する
- 卵白の有無がゲルの強度を左右し弾力や崩れやすさに影響を与える
- 乳脂肪比率がコクと口溶けを規定し後味の重さ軽さに反映される
- 砂糖の種類と層の厚みがキャラメリゼの香りと歯ざわりを左右する
- 焼きプリンの焼き色は上火由来であり直火のキャラメリゼとは異なる
- なめらかさの鍵は低温長時間と丁寧な裏ごしおよび気泡の除去である
- カタラーナは香り付けに柑橘とシナモンを使い風味の輪郭を作りやすい
- バーナーが無くても上火と熱した金属で代替の飴層再現が可能である
- 器の厚みや形状が伝熱を左右し焼成時間の最適値に差を生じさせる
- クリームブリュレとプリン 違いは材料配合仕上げ加熱の総合差で決まる