「窃盗」と「窃取」の違い|意味や使い方・使い分けを例文で解説
「窃盗」と「窃取」の違い|意味や使い方・使い分けを例文で解説

「窃盗」と「窃取」は、どちらも他人の物を無断で取得する行為を指す語ですが、法的意味や使い方には違いがあります。本記事では、窃盗と窃取の違いを明確に示し、意味・使い方・例文・関連語との比較を通じて理解を深めていただきます。結論を先に述べると、「窃取」は物を盗む行為そのものを指す法律用語概念、「窃盗」はその行為を処罰する罪名(刑法上の犯罪)という関係にあります。

「窃盗」と「窃取」の基本理解

「窃盗」とは?その定義と法的意味

「窃盗(せっとう)」は、日本の刑法上定められた犯罪概念です。刑法第235条によれば、他人の財物を窃取した者は窃盗の罪とされ、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。

窃盗が成立するためには、次の要件が必要です。

  • 他人の財物であること
  • 占有者の意思に反して行われること
  • 不法な領得の意思(他人の権利を排除して自己のものとする意思)
  • その財物を自己または第三者の占有下に移すこと(すなわち「窃取」行為を伴うこと)

また、窃盗未遂罪の成立も可能であり、未遂段階でも処罰の対象となることがあります。

近年、法令上は「懲役」から「拘禁刑」への表記変更などが行われており、法令表記にも注意が必要です。

「窃取」とは?意義とその違い

「窃取(せっしゅ)」は、法律上「窃盗罪の実行行為そのもの」を指す概念です。すなわち、物を盗む行為そのものを表す語として用いられます。例えば、刑法解説などでは、「占有者の意思に反して財物の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移す行為」を窃取と定義するものがあります。

要するに、窃取は以下の要件を満たす行為を指します。

  1. 占有者の意思に反して行われること
  2. 占有を排除すること
  3. 自己または第三者の占有に移すこと

窃盗と窃取の根本的な違い

それらを整理すると、以下のような対比ができます。

用語概念役割・使われ方
窃取他人の占有を不正に排除し、自己または第三者の占有下に移す行為窃盗罪の構成要件(実行行為)として使われる
窃盗他人の財物を窃取した者を処罰する罪名刑法上の犯罪名(処罰対象)として使われる

このように、窃取を含まない限り窃盗は成立せず、また「窃盗」という語を使う場合には背後に窃取があるという構図です。法律理論上も「窃盗罪の実行行為は窃取である」という言い方が一般的です。

なお、「窃取」という語は日常語よりも法律解説や判例論文で使われることが多いため、一般文脈では「窃盗」が用いられることが圧倒的に多い点も押さえておきましょう。

「窃盗」と「窃取」の具体例と使い分け

「窃盗」の具体例と例文

以下は「窃盗」という語を用いた、日常や報道・法律文脈でも使いやすい例文です。

  1. 昨夜、駅構内でスマートフォンを窃盗されたという通報があった。
  2. Aさんは万引きの窃盗罪で起訴された。
  3. 警察は、住宅街で多発している窃盗事件を捜査している。
  4. 被告人は、他人の財布をスリで窃盗したと認定された。
  5. 占有者の承諾なしに物を持ち出す行為は、窃盗となる可能性がある。

「窃取」の具体例と例文

以下は「窃取」という語を用いた、法律解説・判例論文などで使われやすい例文です。

  1. 刑法上、窃取は占有者の意思に反して占有を移す行為とされる。
  2. 被告は被害者の財布を窃取した後、第三者に譲渡したと主張した。
  3. 判例では、自動販売機の商品を偽造コインで得る行為も窃取にあたるとされた。
  4. 窃盗罪の構成要件は、他人の財物を窃取することと定められている。
  5. ある行為が窃取に該当するかどうかは、「占有者の意思」や「占有移転の有無」で判断される。

「窃盗」と「窃取」の関連用語とその意味

「万引き」とは?窃盗との関連性

「万引き」は、主に商店等から無断で商品を持ち出す行為のことを指し、窃盗罪の一形態として扱われます。つまり、万引きは窃盗の具体例です。報道文脈では「万引き事件」と呼ばれることがほとんどです。

窃取と横領との違い

「横領」は、他人から預かった物や自己の占有下にある他人の物を不正に自己のものとする犯罪です(刑法第252条)

窃取と横領の主な違いを整理すると、次のようになります。

観点窃取横領
占有形態他人の占有を不正に排除して移す既に自己が占有している他人の物を不正に用いる
承諾の有無承諾なし預託など信義的関係がある場合が多い
性質秘密性・強制性が強い信義義務違反的要素が強い
刑法条文窃盗罪(第235条)横領罪(第252条)

横領と着服の違いと類似性

「着服」は、法律用語よりも俗語・報道語として使われることが多く、横領とほぼ同義の意味で用いられます。預かった物を自己のものとして使ってしまう意味合いが強く、法律文脈では「横領」が正確な犯罪名として用いられます。

詐欺罪との比較

「詐欺罪」は、欺罔・虚偽表示などを用いて他人をだまして財物を交付させ、それを自己のものとする犯罪です(刑法第246条など)

窃取・横領・詐欺の違いを簡単にまとめると

  • 窃取(窃盗):無断・密かに物を盗む行為
  • 横領:預けられた物を不正に使用・取得する行為
  • 詐欺:被害者を欺いて同意を引き出し、物を交付させる行為

「窃盗」と「窃取」の英語表現

「窃盗」の英語文例と日本語訳

英語では、窃盗は主に theftstealinglarceny などで表現されます。以下、英語例文と日本語訳です。

  1. He was arrested for theft from a convenience store. → 彼はコンビニでの窃盗で逮捕された。
  2. The court found her guilty of stealing a wallet from a pedestrian. → 法廷は、彼女が歩行者から財布を窃盗したと認定した。
  3. Shoplifting is a form of petty theft. → 万引きは軽犯罪窃盗の一種である。
  4. The stolen car was recovered by the police. → その窃盗された車は警察によって回収された。
  5. He faces up to five years for aggravated larceny. → 彼は重窃盗(aggravated larceny)で最長5年の刑を科される可能性がある。

「窃取」の英語文例 and 日本語訳

「窃取」を法律論的に表現するときは、たとえば “unauthorized taking” や “misappropriation” といった語が用いられます。以下例文と訳を示します。

  1. The act of unauthorized taking of property constitutes theft under law. → 財産の無断窃取行為は、法律上窃盗を構成する。
  2. In criminal law, the misappropriation of someone else’s property without consent is prohibited. → 刑法では、他人の財産を承諾なしに窃取(不正利用)することは禁止されている。
  3. The statute defines an offense for taking property without the owner’s consent. → その法令では、所有者の同意なしに物を窃取する罪を定めている。
  4. Judges often analyze whether the act constituted a transfer of possession against the owner’s will. → 裁判官はしばしば、その行為が占有者の意思に反する占有移転であったかどうかを検討する。
  5. The distinction lies in whether the taking was done secretly or overtly as unauthorized appropriation. → 区別点は、その盗みが秘密裏または公然と無断で窃取されたかどうかにある。

まとめ:「窃盗」と「窃取」の違いや意味

最後に、本記事の内容を整理しておきましょう。

  • 窃取 は、他人の占有を不正に排除して自己または第三者の占有下に移す行為そのものを指す法律行為概念です。
  • 窃盗 は、窃取行為を含むものを処罰するための 罪名 であり、刑法第235条に基づく犯罪規定です。
  • 日常語・報道語では「窃盗」が圧倒的に使われやすく、法律論・解説文脈では「窃取」が登場することが多いです。
  • 関連語である「横領」「着服」「詐欺」との違いを押さえることで、犯罪類型の枠組みも明らかになります。
  • 英語表現を用いると、窃盗は theft / stealing / larceny、窃取は “unauthorized taking” や “misappropriation” といった語で表せます。

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