
「許す」という言葉は、日常会話でも文章でもよく使いますが、「相手の失敗を責めない」という意味だけだと思っていませんか。「外出を許す」「気を許す」「時間が許す」「先行を許す」のように、実際には場面によって意味が少しずつ変わります。また、「赦す」とは何が違うのか、類語の「認める」「容認する」「大目に見る」とはどう使い分けるのか、迷う方も多いでしょう。
この記事では、「許す」の意味を中心に、読み方、使い方、例文、類語・言い換え、対義語、「赦す」との違い、英語表現まで一つずつ整理します。似た表現との境界まで押さえることで、会話でも文章でも、その場面に合った「許す」を選べるようになります。
まずは「何を許すのか」に注目してください。これから行うことを認めるのか、過去の過ちを責めないのか、相手に自由を与えるのかで、言葉のニュアンスが見えてきます。
許す
英語表記:forgive / allow / permit
許すの意味とは?読み方と基本をわかりやすく解説

最初に、「許す」という言葉が持つ中心的な意味を整理します。「許す」は一つの意味だけを持つ言葉ではなく、「認める」「責めない」「自由にさせる」「緊張や警戒を弱める」といった複数の方向に広がっています。
許すとは?意味をわかりやすく整理
「許す」は「ゆるす」と読み、基本的には相手の願いや行為を認めること、罪や過失を責めないこと、相手を自由にさせることを表す動詞です。文脈によっては「気を緩める」「ある状況が可能にする」という意味でも使われます。
- 願い・申し出・行為を認める
- 罪や失敗を責めないことにする
- 相手の自由にさせる
- 警戒や緊張を緩める
- 事情や条件が、ある行為を可能にする
たとえば「父が旅行を許す」は「旅行してよいと認める」、「失敗を許す」は「失敗を責め続けない」、「気を許す」は「警戒心を弱める」という意味です。同じ漢字でも、目的語や前後の言葉によって意味が変わるのが特徴です。
「許す=謝罪を受け入れること」と限定しないことが大切です。特に「時間が許す」「事情が許さない」のような表現では、人が誰かを許可するのではなく、条件や状況が「可能にする」という意味になります。
「許す」の漢字と読み方
「許」は常用漢字で、音読みは「キョ」、訓読みは「ゆるす」です。「許可」「許諾」「特許」などの熟語でも使われます。「許す」「許し」という表記も一般的で、日常文から公的な文章まで幅広く使える漢字です。
「許可」という熟語を思い浮かべると、「許す」の核がつかみやすくなります。「してもよいと認める」という感覚が基本にあり、そこから「責めない」「自由にする」「制限を緩める」といった意味へ広がっていると考えると理解しやすいでしょう。
許すの意味がわかる使い方・例文と類語・言い換え

「許す」は、何を目的語にするかで意味が変化します。ここでは代表的な使い方を例文とともに確認し、さらに類語や対義語との違いも整理します。
許すの使い方と例文
まず、「許す」の代表的な使い方を表で確認してみましょう。
| 意味 | 例文 | 言い換えの目安 |
|---|---|---|
| 行為を認める | 保護者が外出を許す。 | 許可する・認める |
| 過失を責めない | 今回の失敗は許す。 | 勘弁する・大目に見る |
| 自由にさせる | 親しい相手にだけ気を許す。 | 警戒を解く |
| 条件が可能にする | 時間が許す限り説明する。 | 可能である・余裕がある |
| 相手に優位を与える | 終盤で逆転を許した。 | 相手に達成させた |
最後の「逆転を許した」は、自分から積極的に許可したわけではありません。この場合の「許す」は、結果として相手の行為を防げなかったという意味です。スポーツ記事などで「先制を許す」「得点を許す」と書かれるのも同じ用法です。
「時間が許す」「事情が許す」の意味
「時間が許す」は「時間に余裕があり、それを行うことができる」という意味です。「事情が許さない」なら「事情によって、それを行うことができない」となります。人が許可する表現ではないため、「時間が認める」と機械的に言い換えると不自然です。
「気を許す」の意味
「気を許す」は、相手に対する警戒心や緊張を緩めることです。「何でも許可する」という意味ではありません。「彼には気を許して話せる」のように、安心感や信頼関係を表すときに使います。
許すの類語・言い換え
「許す」の類語には、「認める」「許可する」「容認する」「承諾する」「勘弁する」「大目に見る」「見逃す」などがあります。ただし、どれでも同じように置き換えられるわけではありません。
| 言葉 | 主なニュアンス | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 許可する | 行為をしてよいと正式に認める | 入場、撮影、外出など |
| 認める | 正当・妥当として受け入れる | 意見、資格、実力など |
| 容認する | 完全には賛成でなくても受け入れる | 方針、例外、異論など |
| 承諾する | 申し出や依頼を引き受ける | 依頼、条件、提案など |
| 大目に見る | 過失を厳しく追及しない | 軽い失敗、多少の不備など |
「許可・認可・承認」の違いまで整理したい場合は、許可・認可・承認の違いを比較した解説も参考になります。また、権利や利用の場面では許諾・許可・同意の違いを確認すると、より正確に使い分けられます。
相手の小さな失敗を責めない意味なら、「大目に見る」も近い表現です。ただし「許す」よりも「今回は追及しない」という一時的なニュアンスが出やすいため、詳しくは大目に見るの意味と使い方も押さえておくと安心です。
許すの対義語・反対語
「許す」には複数の意味があるため、対義語も一つには決まりません。「行為を認める」の反対なら「禁じる」「禁止する」「拒否する」、「失敗を責めない」の反対なら「責める」「とがめる」、「気を許す」の反対なら「警戒する」が自然です。
- 許可する ↔ 禁止する・拒否する
- 失敗を許す ↔ 責める・とがめる
- 要求を許す ↔ 退ける・拒む
- 気を許す ↔ 警戒する・用心する
このように、対義語を選ぶときも「その文の許すが何を意味しているか」を先に見極める必要があります。
許すの意味と「赦す」の違い・英語表現

「ゆるす」と入力すると、「許す」と「赦す」のどちらを使うべきか迷うことがあります。さらに英語では、日本語の「許す」を一語だけで表せないことがあります。ここでは、この二つのポイントを整理します。
許すと赦すの違い
「許す」と「赦す」は、どちらも「ゆるす」と読みますが、使える範囲が異なります。「許す」は広く使える一般的な表記で、願いを聞き入れる、行為を認める、自由にさせる、過失を責めない、といった幅広い場面に使えます。
一方の「赦す」は、主に罪や過失、刑罰、義務などを免じる意味に重点があります。「罪を赦す」「過ちを赦す」のように、すでに生じた罪や責任をとがめない場面で使われやすい漢字です。
| 項目 | 許す | 赦す |
|---|---|---|
| 読み方 | ゆるす | ゆるす |
| 中心の意味 | 認める、自由にする、責めない | 罪・過失・刑罰などを免じる |
| 使える範囲 | 広い | 比較的限定的 |
| 例 | 外出を許す、気を許す、失敗を許す | 罪を赦す、過ちを赦す |
許すの英語表現はforgive・allow・permitを使い分ける
日本語では「許す」の一語で表せても、英語では意味によって単語を使い分けます。過ちや失敗を責めないならforgive、行為を認めるならallowやpermitが基本です。
| 英語 | 意味 | 日本語の例 |
|---|---|---|
| forgive | 人の過ちや罪を許す | 彼の失敗を許す |
| allow | 人に何かをすることを許す | 子どもの外出を許す |
| permit | 規則・権限に基づいて許可する | 入場を許す |
| excuse | 失礼や軽い過ちを大目に見る | 遅刻を許してもらう |
| pardon | 罪や無礼を赦免する | 罪を赦す |
たとえば、「I forgive you.」は「あなたを許します」という意味ですが、「外出を許す」をそのままforgiveで表すことはできません。許可の意味ならallowやpermitを選びます。日本語の意味を先に特定してから英単語を選ぶのがポイントです。
許すの意味を正しく理解するための注意点とまとめ

最後に、「許す」を使うときに迷いやすい表現を整理します。特に「自分を許す」「人を許す」という心理的な表現は、「相手の行為を正しいと認めること」と混同しないことが大切です。
自分を許す・人を許すとはどういう意味?
「自分を許す」は、自分の失敗や不完全さを必要以上に責め続けない、という意味で使われます。「人を許す」も同様に、相手がしたことを全面的に正しいと評価する意味とは限りません。
言葉の上では、「許す」と「正しいと認める」は別の判断です。「その行為は間違っていた」と考えながらも、「いつまでも責め続けることはしない」という態度を「許す」と表すことがあります。
そのため、「許したのだから、もう問題にしてはいけない」「許したのだから、以前と同じ関係に戻るべきだ」とまで意味を広げるのは適切ではありません。日本語としての「許す」は、責めない、認める、自由にするなど、対象によって意味の範囲が変わります。
「許せない」「許される」の意味と使い方
「許せない」は、「許すことができない」という意味です。道徳的・感情的に受け入れられない場合にも、規則上認められない場合にも使えます。「その発言は許せない」なら強い非難、「無断立ち入りは許されない」なら規則や社会通念上認められないことを表します。
「許される」は受け身の形で、「認められる」「責められずに済む」という意味です。「この場所では飲食が許されている」「一度の失敗なら許されることもある」のように使います。前者は許可、後者は過失への寛容という違いがあります。
許すの意味と使い方のまとめ
「許す」は、「相手の願いや行為を認める」という意味を中心に、過失を責めない、自由にさせる、警戒を緩める、事情が行為を可能にするといった意味まで持つ、使える範囲の広い言葉です。
- 許すは「認める・責めない・自由にする」など幅広く使える
- 「時間が許す」は「時間的に可能である」という意味
- 「気を許す」は「警戒心を緩める」という意味
- 類語は「許可する・認める・容認する・大目に見る」などで、文脈によって使い分ける
- 「赦す」は、罪・過失・刑罰・義務などを免じる意味に重点がある
- 英語では、過ちを許すならforgive、行為を許すならallow・permitが基本
迷ったときは、「何を許すのか」と「許した結果どうなるのか」を確認すると、意味を判断しやすくなります。行動をしてよいと認めるのか、過去の失敗を責めないのか、警戒を緩めるのか。この違いを意識すれば、「許す」という言葉をより正確に使えるようになります。
【参考文献】
- 文化庁「常用漢字表の音訓索引」
- 公益財団法人 日本漢字能力検定協会「漢字ペディア:許す」
- 公益財団法人 日本漢字能力検定協会「漢字ペディア:同訓異義 ゆるす」
- 国立国語研究所デジタルアーカイブNINDA「オンライン版鳩間方言辞典:ユルスン」

