
「餞別」という言葉を見かけて、「どんな意味なのだろう?」「何と読むのが正しいの?」と疑問に思ったことはありませんか。
退職や転勤、引っ越し、旅行などの場面で耳にする言葉ですが、具体的に何を贈るものなのか、誰に渡すのか、一般的なプレゼントとは何が違うのか、迷うこともあるでしょう。
また、餞別は単にお金や品物を渡すことではありません。そこには、相手との別れを惜しみながら、新しい環境での活躍や旅の安全を願う、日本ならではの心遣いが込められています。
この記事では、餞別の正しい意味や読み方、言葉の由来、具体的な使い方を例文とともにわかりやすく解説します。
さらに、はなむけや退職祝いとの違い、餞別を贈る際の金額の目安、のし袋の書き方、お返しの考え方まで紹介します。言葉の意味を知りたい方も、実際に餞別を渡す予定がある方も、ぜひ参考にしてください。
餞別
英語表記:farewell gift / parting gift
目次
餞別の意味とは?読み方・由来・漢字をわかりやすく解説

餞別は、日常会話だけでなく、職場での送別会や人生の節目にも登場する言葉です。まずは基本的な意味と読み方を確認し、どのような気持ちが込められているのかを見ていきましょう。
餞別の意味と正しい読み方
餞別(せんべつ)とは、遠方へ旅立つ人や転居・転勤する人に対して、別れのしるしとして金品などを贈ること、またはその贈り物を意味する言葉です。
読み方は「せんべつ」で、「せんぺつ」や「せんべち」ではありません。
国語辞典では、旅立つ人を送り出す行為や、別れに際して贈る金品を表す言葉として説明されています。
- 読み方:せんべつ
- 基本的な意味:別れのしるしとして金品などを贈ること
- 主な対象:旅行・転居・転勤などで旅立つ人
- 込められた気持ち:感謝、激励、旅の安全や今後の幸せを願う気持ち
- 代表的な使い方:「餞別を贈る」「餞別を渡す」「餞別をいただく」
例えば、海外へ赴任する同僚に現金を包んだり、退職する先輩に記念品を渡したりする行為が該当します。
大切なのは、餞別が単なる金銭的な援助ではなく、相手を気持ちよく送り出すための贈り物であるという点です。
ただし、餞別という言葉自体には「退職祝い」や「卒業祝い」と完全に同じ意味があるわけではありません。中心となるのは、離れていく相手への別れの気持ちです。
餞別という漢字の意味と語源・由来
餞別という言葉は、「餞」と「別」という二つの漢字から成り立っています。
それぞれの意味を理解すると、なぜ別れ際の贈り物を餞別と呼ぶのかがわかります。
| 漢字 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 餞 | せん・はなむけ | 旅立つ人を見送り、金品や言葉を贈ること |
| 別 | べつ・わかれる | 人と離れること、別れること |
「餞」という漢字には、旅立つ人を見送るという意味があります。古くは、旅の無事を祈って酒食をともにする行為も含まれていました。
また、「はなむけ」という言葉は、かつて旅立つ人が乗る馬の鼻先を進行方向へ向け、旅の安全を願って見送った習慣に由来するとされています。
この「馬の鼻向け」が短くなり、「はなむけ」という言葉になりました。
つまり、餞別には、旅立つ人を見送り、その前途を願うという古くからの文化が息づいているのです。
餞別とはどんなときに使う言葉?
餞別は、相手が今いる場所を離れて新しい環境へ向かう場面で使われます。
特に、次のような状況が代表的です。
- 転勤:別の支店や遠方の勤務地へ異動する人を見送るとき
- 退職:職場を離れる同僚や上司に感謝を伝えるとき
- 引っ越し:遠方へ転居する友人や知人を送り出すとき
- 旅行:長期旅行や海外旅行へ出発する人を応援するとき
- 留学:海外での学びや新生活に向けて出発する人を励ますとき
- 卒業:新しい進路へ進む人に、門出の贈り物をするとき
ただし、すべての別れに餞別という言葉を使うわけではありません。
例えば、友人と食事をして帰宅するときや、数日間だけ別の部署で働く場合などには、一般的に餞別とは呼びません。
私は、餞別という言葉には、単なる別れよりも「相手が新しい場所へ進んでいく」という前向きな響きがあると感じます。
餞別の意味が伝わる使い方と例文・言い換え表現

餞別は、贈る側と受け取る側の両方で使える言葉です。ただし、表現によって自然さや丁寧さが変わります。ここでは、具体的な例文と似た言葉との違いを紹介します。
餞別の使い方を例文で紹介
餞別を使うときは、「贈る」「渡す」「いただく」「受け取る」などの動詞と組み合わせるのが一般的です。
餞別を贈る側の例文
- 海外赴任する先輩に、部署の皆で餞別を贈りました。
- 来月引っ越す友人へ、ささやかな餞別を用意しました。
- 長年お世話になった同僚に、感謝の気持ちを込めて餞別を渡します。
- 留学する弟に、旅の餞別として現金を手渡しました。
「ささやかな餞別ですが、お受け取りください」という言い方は、贈り物を控えめに表現する丁寧な言葉です。
一方、親しい友人に対しては、「餞別だから、旅行先で使ってね」のような自然な会話でも使えます。
餞別を受け取る側の例文
- 退職の際に、職場の皆さんから餞別をいただきました。
- 温かい餞別をありがとうございました。
- いただいた餞別は、新生活のために大切に使わせていただきます。
- 思いがけない餞別をいただき、感謝の気持ちでいっぱいです。
受け取った側は、金額や品物だけでなく、相手の心遣いに感謝を伝えることが大切です。
餞別とはなむけの違い
餞別とよく似た言葉に「はなむけ」があります。
この二つは、辞書でも類義語として扱われており、基本的な意味はほぼ同じです。
ただし、日常的な使われ方には少し違いがあります。
| 比較項目 | 餞別 | はなむけ |
|---|---|---|
| 基本的な意味 | 旅立つ人への贈り物や送別 | 旅立ちや門出を祝う贈り物・言葉 |
| よく使う対象 | 現金・品物など | 言葉・詩歌・金品など |
| 一般的な印象 | 贈答の具体的な行為 | 励ましや祝福の気持ち |
| 使用例 | 餞別を渡す | はなむけの言葉を贈る |
例えば、転勤する人に現金を渡す場合は「餞別を贈る」が自然です。
一方、卒業式で先生が生徒を励ます場合には「はなむけの言葉」がよく使われます。
しかし、はなむけが言葉だけ、餞別が金品だけを意味するわけではありません。どちらも、旅立つ人への贈り物や見送りを表すことができます。
- 餞別:現金や品物を贈る場面でよく使う
- はなむけ:言葉や気持ちを伝える場面でもよく使う
餞別と退職祝い・送別品・ご祝儀の違い
餞別と混同しやすい言葉には、退職祝い、送別品、ご祝儀などがあります。
いずれも人に何かを贈る際に使いますが、目的に違いがあります。
| 言葉 | 主な意味 | 代表的な場面 |
|---|---|---|
| 餞別 | 別れのしるしとして贈る金品 | 転勤・転居・旅行 |
| 退職祝い | 退職を迎えた人へのねぎらいや祝福 | 定年退職・勇退 |
| 送別品 | 別れる人に贈る品物 | 送別会・異動・退職 |
| ご祝儀 | 祝い事に際して贈る金銭 | 結婚・出産・慶事 |
例えば、定年退職する上司へ記念品を贈る場合、「退職祝い」と「餞別」のどちらも状況によって使えます。
ただし、長年の勤務をねぎらう気持ちを中心に伝えたいなら「退職祝い」、職場を離れることに重点を置くなら「餞別」という表現が適しています。
餞別の類語・言い換えと反対語
餞別は、相手との関係や場面によって別の表現に言い換えられます。
- はなむけ:旅立つ人を励まし、送り出すこと
- 送別の品:別れる相手に贈る品物
- 記念品:出来事や節目を記念して贈る品物
- 贈り物:相手に贈る品物を広く指す言葉
- 激励の品:相手を応援する気持ちを込めた贈り物
餞別に厳密な反対語があるわけではありません。
ただし、「送り出す」という方向性に対しては「歓迎」「出迎え」が対になる概念です。
贈答の場面では、新しく迎える人への「歓迎の品」などが、餞別と対照的な表現になります。
餞別の意味を踏まえた贈り方と金額・のし袋のマナー

実際に餞別を贈るときには、金額や渡し方にも気を配りたいものです。餞別には全国共通の厳密な決まりがあるわけではありませんが、相手の立場や関係性に合わせた配慮が必要です。
餞別はいくら包む?金額の相場と目安
餞別の金額は、相手との関係や職場の慣習によって異なります。
あくまで一般的な予算例として、次のような金額帯を参考にできます。
| 贈る相手・場面 | 金額の目安 |
|---|---|
| 職場の同僚へ個人で贈る | 3,000~5,000円程度 |
| 職場の上司・先輩へ個人で贈る | 3,000~10,000円程度 |
| 友人の引っ越し・旅行 | 3,000~10,000円程度 |
| 家族・親しい親族 | 5,000~20,000円程度 |
| 職場で連名として贈る | 1人あたり500~3,000円程度 |
これらは一律に決められた相場ではなく、予算を考える際の参考例です。実際には、職場の取り決めや過去の慣例を優先してください。
特に、職場で餞別を集める場合には、個人の判断で高額なものを贈るよりも、周囲と相談して金額を決めるほうが自然です。
- 高額すぎる贈り物は、相手にお返しの負担を感じさせる場合がある
- 上司や先輩への現金の贈答は、相手や職場の慣習に配慮する
- 会社によっては贈答品の受け取りに制限があるため、事前に確認する
餞別ののし袋の書き方と水引の選び方
現金を餞別として贈る場合は、目的に合ったのし袋や金封を使用します。
一般的な転勤や転居などの餞別では、紅白の蝶結びの水引が使われることがあります。
蝶結びは結び直しができることから、繰り返しても差し支えない慶事に用いられる結び方です。
表書きは、贈る相手や目的によって選びます。
- 御餞別:転勤・旅行・転居などで旅立つ人へ
- 御礼:お世話になった人へ感謝を伝える場合
- 御祝:新しい門出を祝う場合
- 御退職御祝:退職を祝う場合
ただし、目上の人に「御餞別」と書くことを避け、「御礼」などを選ぶ慣習もあります。
また、結婚に伴う退職など、別の慶事と重なる場合には、その目的にふさわしい表書きや水引を選ぶ必要があります。
名前は通常、水引の下側に贈り主の氏名を書きます。部署などでまとめて贈る場合は、代表者名や「○○部一同」といった表記も使えます。
餞別を渡すタイミングとおすすめの贈り物
餞別を渡すタイミングは、基本的に相手が出発したり、職場を離れたりする前です。
職場なら送別会や最終出勤日、引っ越しなら転居前に会える日などが適しています。
ただし、出発当日は荷物が多く、移動で忙しい可能性があります。そのため、余裕を持って渡す心遣いが大切です。
贈り物としては、現金以外にも次のような選択肢があります。
- 商品券やギフトカード
- 持ち運びやすい日用品
- 旅行先で使える実用品
- 相手の好みに合った文房具
- お菓子や飲み物などの消えもの
- メッセージカードや寄せ書き
特に遠方へ移動する相手には、荷物になりにくい品物が喜ばれやすいでしょう。
私は、餞別を選ぶときには金額だけでなく、相手が新しい環境で実際に使いやすいかどうかを考えることが大切だと思います。
餞別のお返しは必要?お礼の伝え方
餞別をいただいた場合、必ずしも同額相当のお返しを用意する必要はありません。
旅行の餞別であれば、帰宅後にお土産を渡すことがあります。また、転勤や引っ越しの場合には、新生活が落ち着いてから近況を伝えることも丁寧な対応です。
地域や関係性によっては、いただいた金額を参考に返礼品を用意する慣習もありますが、全国共通の義務ではありません。
最も大切なのは、餞別をいただいたことへの感謝を、できるだけ早く相手に伝えることです。
例えば、次のようにお礼を伝えられます。
「このたびは温かいお餞別をいただき、ありがとうございました。新しい環境でも精いっぱい頑張りたいと思います。」
形式的なお返しにこだわりすぎず、相手の心遣いに応えることを意識しましょう。
餞別の意味に関するよくある疑問と間違えやすい表現

最後に、餞別について特に疑問を持たれやすい言葉の違いや使用上の注意点を確認します。漢字の間違いや敬語表現も押さえておくと、実際の場面で迷わず使えます。
餞別と選別はどう違う?間違いやすい漢字
「餞別」と「選別」は、どちらも「せんべつ」と読みますが、意味はまったく異なります。
餞別は、旅立つ人への贈り物です。
一方、選別は、複数のものを基準に従って選び分けることを意味します。
| 言葉 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 餞別 | 別れに際して贈る金品 | 転勤する同僚に餞別を渡す。 |
| 選別 | ものを選び分けること | 品質に応じて商品を選別する。 |
例えば、「退職する先輩に選別を贈る」と書くのは誤りです。
文字を入力する際には、同じ読み方の漢字を変換候補から選び間違えないよう注意しましょう。
餞別は失礼な言葉?目上の人にも使える?
餞別という言葉そのものが、相手を見下す失礼な表現というわけではありません。
ただし、目上の人に渡す現金や品物について、「御餞別」という表書きを避ける慣習があります。
特に上司や恩師などに対しては、「御礼」「感謝」など、相手への敬意が明確に伝わる言葉を選ぶと無難です。
また、目上の人に現金を贈ること自体を好ましくないと考える場合もあるため、品物や記念品を選ぶ方法もあります。
日常会話で「餞別をいただきました」と言うことは自然ですが、実際の贈答では相手との関係に合わせた配慮が必要です。
餞別は退職する人以外にも贈ってよい?
餞別は、退職する人だけに使う言葉ではありません。
むしろ、古くからの意味では、遠方への旅立ちや転居、転任などが代表的な使用場面です。
例えば、海外旅行へ出発する親戚、留学する友人、遠方へ引っ越す知人に対しても餞別を贈れます。
反対に、転職や退職の際であっても、相手との別れより勤務への感謝を中心に伝えるなら「退職祝い」「御礼」のほうがふさわしい場合もあります。
その場で何を伝えたいのかによって、言葉を選ぶことがポイントです。
餞別を英語で表現すると?
餞別を英語で表現する場合には、「farewell gift」や「parting gift」などが使えます。
それぞれの表現には、次のようなニュアンスがあります。
- farewell gift:別れの際に贈る記念品やプレゼント
- parting gift:別れのしるしとして渡す贈り物
- farewell present:送別のプレゼント
- gift for your new journey:新たな門出を応援する贈り物
例えば、「We gave her a farewell gift.」は、「私たちは彼女に餞別を贈りました」という意味になります。
ただし、日本語の餞別には現金を包む慣習も含まれるため、英語の「farewell gift」と完全に一致するわけではありません。
現金を贈ることを明確にしたい場合は、文脈に応じて「money as a farewell gift」などと説明できます。
まとめ|餞別の意味と正しい使い方を覚えよう
餞別(せんべつ)とは、遠方へ旅立つ人や転居・転勤する人に対して、別れのしるしとして金品などを贈ること、またはその贈り物を指す言葉です。
- 餞別の読み方は「せんべつ」
- 基本的な意味は、旅立つ人への別れの贈り物
- 転勤・退職・引っ越し・旅行・留学などで使われる
- はなむけとほぼ同じ意味だが、餞別は金品を指す場面でよく使われる
- 贈る金額やのし袋の表書きは、相手との関係や慣習に応じて選ぶ
- 餞別をいただいたら、まず感謝の気持ちを伝えることが大切
餞別の本質は、贈り物の金額や豪華さではありません。
これまでの感謝や別れを惜しむ気持ち、そして相手の新しい一歩を応援する思いを形にすることにあります。
言葉の意味を正しく理解し、場面に合った使い方を心がけることで、相手に温かな気持ちを伝えられるでしょう。
【参考文献】
- 公益財団法人 日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』「餞」
- 公益財団法人 日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』「餞(はなむけ)」
- 小学館『デジタル大辞泉』『日本国語大辞典』ほか「餞別」(コトバンク収録)
- 小学館『デジタル大辞泉』『日本国語大辞典』「餞」(コトバンク収録)
