
「恩恵にあやかると恩恵にあずかるの違いや意味が知りたい」「どちらが正しい日本語なのか不安」「ビジネスメールで恩恵にあずかるを使っても失礼にならないか気になる」……そんな疑問を持って検索している方も多いのではないでしょうか。
実際、「恩恵にあやかる」は会話やネット上で見聞きすることがある一方で、「恩恵にあずかるこそが正しいのでは?」と悩みやすい表現です。さらに、恩恵にあずかるの正確な意味や使い方、類義語や対義語、英語表現まで整理しておきたいというニーズもよく聞きます。
この記事では、日本語表現の違いを専門的に解説している運営者として、恩恵にあやかると恩恵にあずかるの違いと意味を丁寧に整理し、「どんな場面でどちらを使うべきか」「ビジネス文書で自信を持って使える言い回しはどれか」を分かりやすくお伝えしていきます。
読み終えるころには、「恩恵にあずかる」の正しい使い方や例文、言い換え表現まで一通り理解できるように構成していますので、ぜひ最後まで一緒に確認していきましょう。
- 「恩恵にあやかる」と「恩恵にあずかる」の意味と違い
- 「恩恵にあずかる」の正しい使い方・例文・英語表現
- 「恩恵にあずかる」の語源・類義語・対義語と言い換え
- 誤用になりやすい表現と、失礼にならない言い換えのコツ
目次
「恩恵にあやかる」と「恩恵にあずかる」の違い
まずは、多くの方が一番気になっている「恩恵にあやかる」と「恩恵にあずかる」の違いから整理します。この章では、どちらが正しい日本語なのかという結論とあわせて、それぞれの意味・ニュアンス・英語表現の違いまで一気に押さえていきましょう。
結論:「恩恵にあやかる」は間違った使い方
結論から言うと、「恩恵にあやかる」は誤用(間違った使い方)とされるのが一般的です。多くの辞書・用語解説では、「恩恵にあずかる」が正しい慣用表現であり、「恩恵にあやかる」はそれと混同した誤った言い方だと説明されています。
そもそも「あやかる」は漢字で「肖る」と書き、「ある人や物に影響を受けて、自分も同じように良い状態になりたい・近づきたいと願う」といった意味を持つ言葉です。
例えば、次のような使い方が自然です。
- 優勝した先輩にあやかって、来年は私も結果を出したい
- 運の良い友人にあやかりたい
- ヒット商品の人気にあやかって、新ブランドを立ち上げた
このように、「あやかる」は人や出来事の「良い結果」に便乗したい・あやかりたいというニュアンスが中心で、「恩恵」という名詞と直結させるのは不自然だとされます。
「恩恵にあやかる」は、話し言葉やネット記事では見かけるものの、ビジネス文書・公的な書類で使うと、日本語に詳しい人からは誤用と見なされる可能性が高い表現です。
「恩恵にあずかる」が正しい使い方
一方で、正しい表現は「恩恵にあずかる」です。
「恩恵にあずかる」は、「恩恵(恵み・利益)」と動詞「与る(あずかる)」が組み合わさった形で、「ある対象から恵みや利益を受ける」「主に目上・大きな存在から好意を受ける」という意味を持ちます。
代表的な使い方として、次のような文が挙げられます。
- 政府の補助金制度の恩恵にあずかることができた
- 技術革新の恩恵にあずかり、地方でも高速通信が可能になった
- 先輩方の努力の恩恵にあずかって、今の働きやすい環境がある
このように、「恩恵にあずかる」は具体的な制度・人・環境から受ける好ましい影響を表すときに使うのが基本です。
「恩恵にあやかる」ではなく「恩恵にあずかる」が正しいと覚えておけば、ビジネスシーンでも安心して使えるようになります。
「恩恵にあずかる」の英語表現の違い
「恩恵にあずかる」を英語にするときは、「benefit」という動詞や名詞を使うのが最も自然です。
| 日本語 | 英語表現の例 | ニュアンス |
|---|---|---|
| 恩恵にあずかる | benefit from / benefit by | ~から利益・恩恵を受ける |
| 恩恵にあずかる | enjoy the benefits of | ~の恩恵を享受する |
| 恩恵にあずかる | receive the benefit of | ~の恩恵を受け取る |
| (あやかる) | share somebody's good luck | 誰かの幸運にあやかるという意味合い |
特に、「あやかる」は英語で「share somebody's good luck」と表現できることがあり、「人の幸運にあやかる」というニュアンスが強くなります。
一方、制度やテクノロジーなどの「恩恵にあずかる」と言いたい場合には、「benefit from 〜」や「enjoy the benefits of 〜」といった表現を選ぶのが自然です。
「恩恵にあずかる」の意味
ここからは、「恩恵にあずかる」の意味そのものをもう少し深く掘り下げます。辞書的な定義だけでなく、どんな場面で使うのがふさわしいのか、語源や類義語・対義語まで一気に押さえておくと、表現の幅がぐっと広がります。
「恩恵にあずかる」の意味や定義
「恩恵にあずかる」は、簡単に言えば「ありがたい恵みや利益を受ける」という意味です。
「恩恵」を単独で使うときは、「恵み」「めぐみ」「利益」「思いやり」といったニュアンスがあり、特に「恩」という字には、「相手から受けた好意」へのありがたさが込められています。
そこに「あずかる(与る)」が加わることで、「恩恵にあずかる」は「その恩恵に関わり、それを受ける立場になる」という意味を持つわけです。
「恩恵にあずかる」はどんな時に使用する?
「恩恵にあずかる」を使う典型的な場面は、次のようなケースです。
- 国や自治体の制度・補助金・支援策を利用するとき
- 企業や組織の取り組みから利益を受けるとき
- 他者の努力・功績・立場のおかげで、自分が良い影響を受けるとき
- 技術革新・社会インフラなど、大きな仕組みから利益を受けるとき
例えば、ビジネスシーンでは次のように使えます。
- 新制度の導入により、多くの中小企業がその恩恵にあずかっています。
- 先輩方のご尽力の恩恵にあずかり、私たちは良い職場環境で働けています。
日常会話であれば、少し柔らかく「恩恵を受ける」と言い換えても問題ありません。
「恩恵にあずかる」の語源は?
語源をたどると、「恩恵にあずかる」は「恩恵」+「与る(あずかる)」という構造になっています。
- 恩恵:恵み、慈しみ、利益
- 与る(あずかる):主に目上の人や大きな力から好意・利益を受けること
もともと「あずかる」には「そのことに関係する」「その一部になる」といった意味があり、「お褒めにあずかる」「お招きにあずかる」といった表現でも使われます。
「恩恵にあずかる」も同じで、「恩恵というありがたい働きに、自分も関わらせてもらい、その結果として利益を受ける」という感覚の表現です。
「恩恵にあずかる」の類義語と対義語は?
「恩恵にあずかる」と近い意味の類義語、反対の意味の対義語を整理しておくと、文章表現の幅が広がります。
類義語(似た意味の表現)
- 恩恵を受ける
- 恩恵をこうむる
- 恩恵を享受する
- 恩恵を賜る
- 利益を得る/利点を享受する
少し硬めの文章では、「享受する」を使うとビジネス文書らしい印象になります。例えば、「政策の恩恵を享受する」「サービスの恩恵を享受する」といった形です。
「享受」という言葉のニュアンスについては、同じサイト内の「教授」と「享受」の違いでも詳しく解説していますので、あわせて確認してみてください。
対義語(反対の意味の表現)
- 不利益を被る
- 損害を被る
- 不遇をかこつ
- 冷遇される/割を食う
「恩恵にあずかる」がプラスの影響を受ける表現であるのに対し、これらはマイナスの影響を受ける場面で用いる言葉です。文章全体のトーンを揃えるためにも、プラスとマイナスの表現をセットで覚えておくと便利です。
「恩恵にあやかる」の意味
次に、「恩恵にあやかる」がなぜ誤用とされるのかを理解するために、「あやかる」そのものの意味と、誤って使ってしまう理由を整理しておきましょう。
「恩恵にあやかる」とは何か?
先ほども触れたように、「あやかる(肖る)」は「その人や物の良いところ・幸運に影響を受けて、自分も同じような良い状態になりたいと願う」という意味を持つ動詞です。
そのため、本来の使い方は次のような形になります。
- ご夫婦の幸せにあやかりたいと思います。
- 人気商品にあやかって、新シリーズを発売した。
- 運の良い友人にあやかって、同じお守りを買った。
ここでのポイントは、「あやかる」は「結果や状態」に寄り添うイメージだということです。一方、「恩恵」はそれ自体が「恵み」「利益」を表す名詞であり、「恩恵にあやかる」と組み合わせると意味が重複したり、やや不自然な印象になります。
そのため、多くの辞書や言語解説では、「恩恵にあやかる」は「恩恵にあずかる」と混同した誤用だと明記されています。
「恩恵にあやかる」を間違えて使用する理由
では、なぜ多くの人が「恩恵にあやかる」を使ってしまうのでしょうか。理由はいくつか考えられます。
- 音が似ている:「あずかる」と「あやかる」は音が近く、聞き間違え・覚え間違えが起こりやすい
- 意味の領域が重なっているように感じる:どちらも「良い影響を受ける」というイメージがあるため、混同しやすい
- 会話でなんとなく通じてしまう:日常会話では意味が通じるため、そのまま使い続けてしまう
特に、「ブームにあやかる」といった表現もよく使われるので、「恩恵」という言葉と組み合わせても違和感を覚えずに使ってしまう人が少なくありません。
カジュアルな会話で「恩恵にあやかる」と言ってしまっても、相手が訂正してくれることはあまりありませんが、ビジネスメールや公式文書では避けた方が無難です。「恩恵にあずかる」に言い換えるクセをつけておきましょう。
「恩恵にあずかる」の正しい使い方を詳しく
ここからは、「恩恵にあずかる」を実際の文章の中でどのように使えばよいのかを、例文や言い換え表現を交えながら具体的に見ていきます。場面別の使い方や、間違えやすいポイントもあわせて確認していきましょう。
「恩恵にあずかる」の例文5選
まずは、ビジネスから日常会話まで使える例文を5つ紹介します。
- 新制度の導入により、多くの中小企業が税制優遇の恩恵にあずかっています。
- 先人たちの努力の恩恵にあずかり、私たちは安心してインフラを利用できています。
- この奨学金制度のおかげで、私も経済的支援の恩恵にあずかることができました。
- オンライン会議ツールの発達の恩恵にあずかり、地方にいながら都会と同じように仕事ができます。
- 観光客増加の恩恵にあずかり、地域全体の売上が伸びています。
どの例文でも、「具体的な制度・技術・人の努力などから、良い影響を受けている」という状況を表しています。
「恩恵にあずかる」の言い換え可能なフレーズ
文章の硬さや読み手の層に応じて、「恩恵にあずかる」を他の表現に置き換えることもできます。
- 恩恵を受ける
- 恩恵をこうむる
- 恩恵を享受する
- 恩恵の影響を受ける
- メリットを受ける/利益を得る
ビジネスメールで迷ったら、まずは「恩恵を受ける」「メリットを受ける」のような、読み手にとって分かりやすい表現を優先するとよいでしょう。「恩恵にあずかる」は少し格式の高い印象を与えたいときに、ピンポイントで使うイメージです。
「恩恵にあずかる」の正しい使い方のポイント
誤用を避けながら自然に使うために、次の3つのポイントを意識してみてください。
①「恩恵」が何なのかをできるだけ具体的に書く
「恩恵にあずかる」だけでは抽象的になりやすいので、「何の恩恵にあずかるのか」を具体的に示すと、読み手にとってぐっと分かりやすくなります。
- × その恩恵にあずかることができました。
- 〇 奨学金制度の恩恵にあずかることができました。
② ビジネスでは「感謝」の気持ちとセットにすると自然
「恩恵」という言葉には、相手への感謝のニュアンスが含まれています。そのため、ビジネスメールでは、感謝の表現と組み合わせるとより自然です。
- 貴社のご厚意の恩恵にあずかり、プロジェクトを無事に完遂することができました。
- 多大なるご支援の恩恵にあずかりましたこと、心より御礼申し上げます。
③ フランクな場面では言い換えも活用する
日常会話やカジュアルな文章では、「恩恵にあずかる」だとやや堅く感じることもあります。その場合は、次のような言い換えも検討してみてください。
- この制度のおかげで助かっている。
- このサービスのメリットを受けている。
- インターネットの発達の恩恵を受けて、地方でも情報が取りやすくなった。
「恩恵にあずかる」の間違いやすい表現
最後に、「恩恵にあずかる」に関連して間違えやすい表現を整理しておきましょう。
- 恩恵にあやかる(誤用)
- 恩恵に預かる(「預かる」と書くのは誤字で、「与る」と表記するのが本来)
- 恩恵をあずかる(「に」ではなく「を」を使うと不自然)
正しいのは「恩恵にあずかる」という形です。「恩恵にあやかる」「恩恵をあずかる」といった言い回しは、違和感を覚える人も多いため、ビジネスシーンでは避けた方がよいでしょう。
まとめ:「恩恵にあやかる」と「恩恵にあずかる」の違いと意味
最後に、「恩恵にあやかる」と「恩恵にあずかる」の違いとポイントを振り返っておきます。
- 正しい表現は「恩恵にあずかる」で、「恩恵にあやかる」は「恩恵にあずかる」と混同した誤用とされる。
- 「恩恵にあずかる」は、「ある対象から恵み・利益を受ける」「主に目上や大きな存在から好意を受ける」という意味で使う。
- 類義語には「恩恵を受ける」「恩恵をこうむる」「恩恵を享受する」などがあり、文章のトーンによって使い分ける。
- 英語では「benefit from」「enjoy the benefits of」などが自然で、「あやかる」は「share somebody's good luck」といった表現に近い。
日本語表現は、仕事の評価や信頼にも直結する大切な要素です。「なんとなく」で使っていた言葉も、一度立ち止まって整理しておくことで、文章全体の印象が大きく変わります。
この記事が、「恩恵にあやかる」と「恩恵にあずかる」の違いを整理し、ビジネスでも日常でも自信を持って言葉を選べるきっかけになればうれしく思います。

