「持つ」と「保つ」の違いや意味・使い方・例文まとめ
「持つ」と「保つ」の違いや意味・使い方・例文まとめ

文章を書いていると、「ここは持つと書くべきか、保つと書くべきか」と手が止まることがよくあります。特に「持つと保つの違いや意味」「持つと保つの使い分け」「もつを漢字で書くかひらがなで書くか」「日持ち・長持ちの正しい表記」などは、多くの方が検索している悩みどころです。

例えば、「バッテリーがどれくらいもつ」と書くとき、「バッテリーが持つ」なのか「バッテリーが保つ」なのか、「体がもたない」は「体が持たない」「体が保たない」のどちらが自然なのか……迷い出すとキリがありません。

このページでは、違いの教科書を運営する日本語好きの一人として、「持つ」と「保つ」の意味の違いから、具体的な使い分け、語源・類義語・対義語、英語表現(have・hold・keep など)との対応関係までを、まとめて整理していきます。

「持つ 保つ 違い 意味」と検索してたどり着いた方が、読み終わるころには、自信をもって「ここは持つ」「ここは保つ」と判断できるようになることを目標にしています。

  1. 「持つ」と「保つ」の意味の違いとイメージの差
  2. 日常会話やビジネス文書での自然な使い分けのコツ
  3. 持つ・保つそれぞれの語源、類義語・対義語、英語表現
  4. 例文とNG例から学ぶ「間違えやすい表現」の避け方

目次

持つと保つの違い

まずは全体像として、「持つ」と「保つ」がどんなイメージを持った動詞なのかを整理します。この章では、意味の軸・使い分け・英語表現という三つの観点から、ざっくりとした違いをつかんでいきましょう。

結論:持つと保つの意味の違い

結論から言うと、私は次のようなイメージで整理しています。

表記 基本的な意味 イメージ 典型的な例
持つ 手で支える・所有する・ある状態で続く 手元にある/自分のものにする/状態が続く 荷物を持つ/資格を持つ/体が持つ
保つ ある状態を変えずに維持する・守り続ける 一定の状態をキープする・乱れないように守る 若さを保つ/秩序を保つ/清潔さを保つ

どちらも「長くそのままの状態を続ける」という意味を含みますが、「持つ」はもともと「手に持つ/所有する」側から出てきた言葉、「保つ」は「守って維持する」側から出てきた言葉だと考えるとイメージしやすくなります。辞書レベルでも、「持つ」の意味の一つとして「長くそのままの状態を保ち続ける」が挙げられており、「保つ」のニュアンスが食い込んでいることが分かります。

  • 手で支える・所有するニュアンスが強いのが「持つ」
  • 状態・品質・秩序などを維持するニュアンスが強いのが「保つ」
  • 「長く続く」という意味では「体が持つ」「バッテリーが持つ」のように「持つ」を使うのが一般的

持つと保つの使い分けの違い

意味の軸が見えたところで、実際にどのように使い分けるかを整理していきます。

① 物理的に手で支える・所有するなら「持つ」

手で荷物を支えたり、財布やスマホなどを身につけたりするときは、基本的に「持つ」を使います。

  • この荷物を持つ
  • 傘を持って出かける
  • 彼は車を三台持っている

ここで「保つ」に置き換えることはできません。「保つ」は手に持つという動作とは結びつきにくいからです。

② 状態・品質・秩序などを維持するなら「保つ」が中心

温度・若さ・清潔さ・秩序など、「ある状態を変えずに維持する」という意味合いが強いときは、「保つ」がしっくりきます。

  • 部屋の温度を一定に保つ
  • 肌のうるおいを保つ
  • 秩序を保つ/平静を保つ

「若さを持つ」「秩序を持つ」と言うと、日本語として全くの誤りではないものの、日常的な自然さは大きく下がります。

③ 「どれくらい長く続くか」は「持つ」がよく使われる

「体がどれくらいもつか」「バッテリーがもつか」のように、「ある状態がどれくらい長く続くか」を言う場合、多くの文章や会話では「持つ」が選ばれています。

  • この暑さでは、体が一日も持たない
  • このスマホのバッテリーは一日中持つ
  • この靴は三年は持つ

持つと保つの英語表現の違い

英語に置き換えると、違いがさらにくっきり見えてきます。

  • 持つ:have/hold/own など(所有する・手で持つ)
  • 保つ:keep/maintain/preserve など(状態を維持する)

例えば次のような対応関係をイメージすると、使い分けがスムーズになります。

  • カバンを持つ:hold a bag/have a bag
  • 家を持つ:own a house
  • 体力を保つ:keep up one’s strength/maintain one’s stamina
  • 品質を保つ:maintain the quality/keep the quality

「手にある・所有している」感覚なら have/hold=持つ、「状態を維持する」感覚なら keep/maintain=保つという意識で整理すると、日本語の使い分けもブレにくくなります。

持つの意味

ここからは、「持つ」に焦点を当てて、意味・定義・語源・類義語などを詳しく見ていきます。先ほどの全体像を、一段深く掘り下げるイメージで読んでみてください。

持つとは?意味や定義

「持つ」は、基本的に次のような意味を持つ動詞です。

① 手にとる・手の中で支える

もっとも分かりやすいのが、「荷物を持つ」「ペンを持つ」のように、手で支える動作です。

② 所有する・身につける

「車を持つ」「資格を持つ」「傘を持たずに出かける」のように、「自分のものとして所有する」「身につけている」という意味でも頻繁に使われます。

③ 性質や状態を備えている

「魅力を持つ」「可能性を持つ」「歴史を持つ」のように、ある性質や特徴を備えていることを表す用法も代表的です。

④ ある状態が続く・もちこたえる

すでに触れた通り、「バッテリーが持つ」「体が持つ」のように、「ある状態が続く」「耐える」という意味も辞書に明記されています。

持つはどんな時に使用する?

私が普段、「ここは持つ」と判断している典型的なパターンをまとめると、だいたい次のようになります。

  • 具体的に手で持つもの:荷物・ペン・傘・カップ・カバン など
  • 所有・保有しているもの:家・車・資格・資産・ポジション など
  • 抽象的な特徴:魅力・雰囲気・強み・可能性 など
  • 時間的な「もつ」:体力・バッテリー・靴・家電などの耐久性

  • 公用文や新聞では、状態を表す「もつ」をあえてひらがなにして、漢字のニュアンスを薄める書き方もよく採用されています。

持つの語源は?

漢字としての「持」は、左側の「扌(てへん)」が「手」を表し、右側の「寺」が音と意味を補っている形とされています。もともとは「手で支える」「手にとる」という動作が核にあり、そこから「所有する」「担当する」「責任を持つ」など、抽象的な意味へと広がっていきました。

同じ「手」のイメージから派生した漢字としては、「又」が「手の象形」から「握る/取る」を経て「持つ」「再び」の意味に広がった例もあります。字源を意識すると、「持つ」が手の感覚から出てきた言葉だということが、より実感しやすくなるはずです。

漢字の成り立ちやコアイメージについては、「又」と「叉」の違い|意味・使い分け・例文でも詳しく解説していますので、漢字の背景から日本語を捉え直したい方はあわせて参考にしてみてください。

持つの類義語と対義語は?

「持つ」の類義語・対義語を整理しておくと、言い換えの幅が広がります。

類義語(近い意味を持つ言葉)

  • 所有する・保有する・有する
  • 携える・手にする・抱える
  • 抱く(感情・考えなど)

対義語(反対に近い動きを表す言葉)

  • 手放す・失う・放棄する
  • なくす・手から離す

保つの意味

次に、「保つ」に焦点を移して見ていきます。「保つ」は、日常よりもビジネス文書やニュース、解説記事などでよく用いられる、やや硬めの語感を持った言葉です。

保つとは何か?

「保つ」は、おおまかに次の二つの意味を押さえておけば、ほとんどのケースに対応できます。

① ある状態を変えずに続ける・維持する

もっともよく使われるのが、「ある状態を保つ」という用法です。

  • 室内の温度を一定に保つ
  • 健康状態を良好に保つ
  • 清潔さを保つ

② 壊れないように守る・損なわない

やや比喩的になりますが、「若さを保つ」「威厳を保つ」「面目を保つ」のように、「崩れないように守る」という意味合いも強く出ます。

保つを使うシチュエーションは?

私が「ここは保つを選ぶ」と判断するのは、次のような場面です。

  • 温度・湿度・清潔さ・安全性など、環境や状態を一定に維持したいとき
  • 関係性・秩序・バランス・中立性など、崩したくない状態を守るとき
  • 若さ・美しさ・健康・やる気など、長く良い状態をキープしたいとき

保つの言葉の由来は?

「保」の字は、人を表す「亻」と、「子どもを胸に抱いた姿」とも言われる部分が組み合わさった形から、「大切なものをかかえて守る」「守りながら維持する」というイメージが生まれたと説明されることが多い漢字です。

例えば「保護」という熟語では、「保」が「保つ・保持・維持する」、「護」が「守る・護る」を表し、「維持しながら守る」というニュアンスになります。ここからも、「保つ」が「守りながら状態を続ける」というコアイメージを持っていることが分かります。

「保」の含まれる熟語のニュアンスについては、「保護」と「加護」の違い|意味・使い分け・例文も参考になります。保つイメージがどのように熟語に活かされているのか、具体的に確認したい方は、あわせてチェックしてみてください。

保つの類語・同義語や対義語

類語・同義語

  • 維持する・保持する・持続する
  • キープする・守る・維持管理する
  • 安定させる・現状を維持する

対義語

  • 崩す・乱す・損なう
  • 失う・壊す・悪化させる

持つの正しい使い方を詳しく

ここからは、「持つ」をどのように文章の中で使うのが自然か、例文とポイントを通して確認していきます。

持つの例文5選

  • 彼はいつも左手にカバンを持って通勤している。
  • 社会人になってから、ようやく自分の車を持つことができた。
  • このプロジェクトには大きな可能性を持つ新技術が使われている。
  • このスマホのバッテリーは、動画を見続けても一日は十分に持つ。
  • 無理な働き方を続けると、体が長くは持たない。

持つの言い換え可能なフレーズ

文脈に応じて、次のように言い換えることもできます。

  • 車を持つ → 車を所有する・車を手に入れる
  • 魅力を持つ → 魅力を備える・魅力がある
  • 体が持たない → 体力が続かない・体力がもたない
  • バッテリーが持つ → バッテリーが長持ちする

所有・保有のニュアンスなら「持つ」⇔「所有する/備える」、時間的な継続なら「持つ」⇔「続く/長持ちする」と読み替えると、自然な言い換えが見つけやすくなります。

持つの正しい使い方のポイント

  • 「手に持つ」「所有する」「性質として備える」のどれかに当てはまるかを意識する
  • 状態そのものを維持するニュアンスが強いときは、「保つ」や「維持する」も候補に入れる
  • 同じ文の中で「持つ」を多用しすぎないように、類義語でリズムを整える

持つの間違いやすい表現

「持つ」は意味が広いぶん、書き手によって表記が分かれやすい単語です。よくあるポイントを挙げておきます。

① 「もつ」を漢字にするか、ひらがなにするか

「日持ち」「長持ち」のように、「そのままの状態が続く」という意味合いが強いときは、辞書や漢字表記のガイドラインでは、ひらがなの「もつ」を推奨する立場もあります。常用漢字表では、「保」に「もつ」の読みが示されていないため、「保つ」の意味での「もつ」は「ひらがなで書く」か「持つで代用する」かという選択になる、という考え方です。

ビジネス文書や公用文では、誤解や読みにくさを避けるために、「日もち」「長もち」「どれくらいもつか」のようにひらがなで表記されるケースも少なくありません。

② 抽象的な対象に何でも「持つ」を当ててしまう

「自信を持つ」「信念を持つ」などは日常的に使われる表現ですが、スタイルによっては「自信をもつ」「信念をもつ」とひらがなで書く方が、中立的で読みやすいとされることもあります。

  • どちらかが絶対の正解というわけではなく、「媒体のルール」「読み手への配慮」によって最適な表記が変わることを意識しましょう。

保つを正しく使うために

続いて、「保つ」の使い方を具体的な例文とともに見ていきます。「持つ」と比べるとやや硬めの印象があるため、ビジネスシーンとの相性が良い動詞です。

保つの例文5選

  • 室内の湿度を一定に保つことで、カビの発生を防げる。
  • 適度な運動と睡眠が、心身の健康を保つカギになる。
  • どんな場面でも、冷静さを保つことを心がけている。
  • この容器は、食品の鮮度を長く保つように設計されている。
  • 長年にわたり、高い品質を保つブランドであり続けたい。

保つを言い換えてみると

「保つ」は、次のような表現に言い換えられます。

  • 品質を保つ → 品質を維持する・品質をキープする
  • 秩序を保つ → 秩序を守る・秩序を維持する
  • 若さを保つ → 若さを維持する・若々しさをキープする

「保つ」は英語の keep/maintain に近く、「維持する」と言い換えて違和感がないかどうかが判断の目安になります。

保つを正しく使う方法

  • 対象が「状態」か「品質」であれば、まずは「保つ」を候補にする
  • 「持つ」で書いてみて違和感があるときは、「保つ」「維持する」「キープする」に置き換えてみる
  • ビジネス文書では、「保つ」と「維持する」を使い分けて、文全体のリズムを整える

保つの間違った使い方

「保つ」は便利な言葉ですが、次のような使い方は不自然になりやすいので注意が必要です。

  • ×「この荷物を保っていてください」→ 〇「この荷物を持っていてください」
  • ×「ペンをしっかり保って書きなさい」→ 〇「ペンをしっかり持って書きなさい」
  • ×「財布を保って出かける」→ 〇「財布を持って出かける」

「保つ」はあくまで「状態の維持」に重心があるため、「物理的に手で支える」場面は「持つ」を選んだ方が自然です。

まとめ:持つと保つの違いと意味・使い方の例文

最後に、「持つ」と「保つ」のポイントをまとめておきます。

  • 持つ=手で支える・所有する・性質や状態を備える・ある状態が続く
  • 保つ=ある状態を維持する・守る・崩れないようにキープする
  • 手で持つ/所有する/耐久性の話 → 持つ が中心
  • 温度・品質・秩序・健康など状態の維持 → 保つ が中心

また、「生きる/活きる」「浸ける/漬ける」「ほか/他/外」など、表記や意味の違いで迷いやすいペアも多く存在します。漢字やひらがなの選び方で悩む場面が多い方は、「生きる」と「活きる」の違いと意味・使い方・例文など、関連する記事もあわせて読むと、日本語全体の感覚が整いやすくなります。

「持つ」と「保つ」は、一度イメージが腑に落ちてしまえば、それほど怖い言葉ではありません。この記事が、日々の文章やビジネスメールで「どちらを書こうか」と迷ったときの、小さな道しるべになればうれしいです。

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