
「こうぎょう」と読む言葉には、「興業」「興行」「工業」の3つがあります。どれも同じ読み方なのに、意味はまったく別物なので、文章や書類で迷いやすいところです。
たとえば、領収書や契約書で「工業」と書くべき場面に「興業」としてしまうと、業種そのものが変わって見えることがありますし、映画やスポーツの話題で「興業」と書くと、意図が伝わりにくくなることもあります。
また、興業家のような言い回し、殖産興業といった歴史用語、興行収入やチケット販売の文脈など、検索すると関連キーワードが一気に増えて混乱しがちです。
この記事では、興業と興行と工業の違いと意味を整理し、語源、類義語や対義語、言い換え、英語表現、使い方、例文までまとめて、読み方が同じ言葉の「取り違え」をなくしていきます。
- 興業と興行と工業の意味の違い
- 文章で迷わない使い分けのコツ
- 語源・類義語・対義語と言い換え表現
- 英語表現とすぐ使える例文
目次
興業と興行と工業の違い
最初に、3語の「ズレ」を一気に整理します。読み方が同じでも、指している世界が違います。私は、迷ったら「何をしている話なのか(産業を興す/見せ物を催す/モノを作る)」に立ち返るようにしています。
結論:興業と興行と工業の意味の違い
結論から言うと、興業・興行・工業は次のように分けるとスッキリします。
| 表記 | 中心の意味 | よく出る場面 | 連想しやすい言葉 |
|---|---|---|---|
| 興業 | 事業や産業を興し、盛んにすること | 政策・地域振興・会社の事業展開 | 殖産興業、興業家、産業振興 |
| 興行 | 観客を集め、料金を取って演劇・映画・スポーツなどを催すこと | イベント運営・公演・ツアー・チケット | 興行収入、公演、巡業、上映 |
| 工業 | 原料を加工して製品をつくる産業(製造の分野) | 製造業・工場・産業分類・技術 | 重工業、軽工業、工業製品 |
- 興業=「産業・事業を興して盛んにする」寄り
- 興行=「見せる・開催する・チケット」寄り
- 工業=「作る・加工する・工場」寄り
特に「興業」と「興行」は同じ“こうぎょう”でも方向性が真逆に近いので、文章のジャンル(行政・経済なのか、エンタメ・スポーツなのか)で見分けるのがコツです。
興業と興行と工業の使い分けの違い
使い分けは「一緒に出てくる単語」で判断すると速いです。私は、次のチェックを頭の中で挟むだけで、ほぼ取り違えなくなりました。
興業が自然に見えるセット
- 地域の産業を興業で活性化する
- 新規事業を興業する(=事業を興す)
- 殖産興業(政策・歴史)
興行が自然に見えるセット
- 映画の興行成績
- 全国ツアーで興行する
- プロレスの興行を開催する
工業が自然に見えるセット
- 自動車工業、化学工業
- 工業団地、工業高校
- 製造の現場=工業分野
- 「収入」「チケット」「公演」「上映」が近くにあれば、まず興行を疑う
- 「工場」「製品」「加工」「技術」が近くにあれば、工業が本命
- 「政策」「振興」「産業を盛んに」が近くにあれば、興業がしっくりくる
なお、社名や団体名に含まれる場合は、本人(企業)が決めた固有名詞なので、意味で言い換えず、その表記を尊重するのが基本です。
興業と興行と工業の英語表現の違い
英語は日本語ほど“一語でピタッと”対応しないため、文脈で表現が揺れます。私は次のように「中心イメージ」で選ぶのがおすすめです。
興業の英語表現
興業は「産業を盛んにする」「事業を興す」なので、industrial promotion、industry promotion、enterprise development、revitalization of industryなど、政策・振興寄りの表現が合います。
興行の英語表現
興行は「公演・イベント運営」なので、show business、promoter / promotion(興行主や興行運営の文脈)、performance(公演)、tour(巡業・ツアー)、box office(興行収入)が定番です。
工業の英語表現
工業は産業分類としての「製造・工場」なので、industry、manufacturing、manufacturing industry、industrial(形容詞)が使いやすいです。例えば「工業製品」は industrial products や manufactured goods が自然です。
- 英訳は媒体・業界で慣用が変わるため、提出書類や公的文書は必ず指定表記や公式資料に合わせてください
興業の意味
ここからは、興業を「言葉として」深掘りします。興行と混同されやすいですが、興業はエンタメの“興行”ではなく、産業や事業の“興し”に寄った語です。
興業とは?意味や定義
興業とは、端的に言えば「事業や産業を興して盛んにすること」です。ポイントは、ゼロから起こすだけでなく、すでにある産業を盛り上げるニュアンスも含むところです。
現代だと日常会話で頻出する言葉ではありませんが、歴史用語の「殖産興業」や、「興業家(事業を興す人)」のように、少し硬めの文脈で生きています。
興業はどんな時に使用する?
興業は、次のような「産業・事業の発展」を語る場面で使うと自然です。
- 地域の主要産業を育てる政策や取り組み
- 新しい事業を立ち上げ、継続的に発展させる話
- 歴史(明治期の近代化など)で産業育成を語る場面
逆に、映画・演劇・スポーツなどの“公演・開催”の話題は興行が中心になります。そこを押さえるだけで、文章の誤解が大きく減ります。
関連して、明治期の政策用語を背景から押さえたい方は、サイト内の解説も参考になります。
興業の語源は?
「興」は“おこす・盛んにする”という方向の漢字です。「業」は“仕事・なりわい・事業”を表します。つまり興業は、文字の組み合わせから見ても「業を興す=事業を盛んにする」が素直な読みになります。
この“興す”の感覚があるため、同じ読み方でも「工(つくる)」の工業とは、漢字の芯がまったく違うと捉えると覚えやすいです。
興業の類義語と対義語は?
興業は文脈が広いので、類義語は「産業・事業を盛んにする」に寄せて考えます。
興業の類義語(近い言い換え)
- 産業振興
- 事業振興
- 企業育成
- 地域活性化(産業面)
- 事業の立ち上げ(新規事業の開始)
興業の対義語(反対方向の考え方)
興業に辞書的に“完全な対義語”が固定であるわけではありませんが、意味の反対方向としては次がイメージしやすいです。
- 廃業(事業をやめる)
- 衰退(産業が弱る)
- 縮小(規模を小さくする)
- 「興業」と書くと硬めの印象になりやすいので、一般向け文章では「産業を盛んにする」「事業を立ち上げる」と言い換えると読みやすい
興行の意味
興行は、日常でも見かけやすい言葉です。映画の興行収入、舞台の興行、プロスポーツの興行など、「観客に見せる・開催する」イメージが中心になります。
興行とは何か?
興行とは、観客を集めて料金を取り、演劇・映画・音楽・スポーツなどを催すこと(また、その催し物)を指します。要するに、見せるために企画し、開催し、運営することです。
“イベントそのもの”を指すこともあれば、“運営行為”を指すこともあります。たとえば「全国を回って興行する」は運営寄り、「この興行は満員だった」はイベント寄りです。
興行を使うシチュエーションは?
興行が活躍するのは、次のような場面です。
- 映画・舞台・ライブなどの公演や上映
- プロレス、格闘技、スポーツ大会などの開催
- 興行収入、動員数、チケット売上などの指標を語るとき
文章の中で「収入」「動員」「チケット」「公演」「上映」が近い場合は、ほぼ興行で整理できます。
興行の言葉の由来は?
興行は、「興(おこす)」+「行(おこなう)」で、文字通り「催しを起こして行う」イメージです。歴史的には、見世物や芝居などの“催し”を成立させる行為として用いられてきました。
現代でも、興行主(プロモーター)、興行権、興行成績など、運営・権利・実績に関わる語と相性が良いのは、この“行う”の側面があるからです。
興行の類語・同義語や対義語
興行の類語(近い表現)
- 公演
- 上映
- 開催
- イベント運営
- 巡業(地方を回る興行のニュアンス)
興行の対義語(反対方向の表現)
興行も厳密な対義語が一語で固定されるわけではありませんが、反対方向なら次が分かりやすいです。
- 中止
- 休演
- 閉幕(興行が終わる)
- 契約や権利(興行権など)に関わる話は、条件で結論が変わります。正確な情報は公式サイトや契約書をご確認ください
工業の意味
工業は、製品を作る産業の総称です。「工」という字が入る通り、加工・製造・工場のニュアンスが中心になります。興業や興行と違い、エンタメではなく“モノづくり”側です。
工業の意味を解説
工業とは、原料を加工して生活や社会に必要な製品を生産する産業分野を指します。金属、化学、機械、食品、繊維など、広い領域が工業に含まれます。
一口に工業と言っても、重工業・軽工業、基礎素材型・加工組立型など分類はさまざまです。ただ、文章で迷う場面では、まず「工場で加工して製品を作る話か?」に戻ると判断がつきます。
工業はどんな時に使用する?
工業は次のような文脈で使います。
- 産業分類の話(農業・工業・商業など)
- 工場、製造工程、品質管理、技術開発などの話
- 工業製品、工業材料、工業規格などの用語
「工業高校」「工業団地」「工業地帯」など、社会科や地理の文脈でも頻出です。興行収入のような“見せる商売”の話とは軸が異なります。
工業の語源・由来は?
「工」は“たくみ・つくる”の意味を持つ漢字で、手を動かして加工するニュアンスが強いです。「業」は仕事・なりわい。つまり工業は「加工して作る仕事(産業)」が文字通りの骨格です。
興業が“盛んにする”、興行が“催して行う”なのに対し、工業は“加工して作る”。この漢字の芯が違いを作っています。
工業の類義語と対義語は?
工業の類義語(近い言い換え)
- 製造業
- メーカー(文脈によっては近い)
- 産業(より広い)
- ものづくり産業
工業の対義語(反対方向の語)
工業の対義語は、分類上の対比として捉えるのが分かりやすいです。
- 農業(第一次産業の代表)
- サービス業(第三次産業)
工業という語を“第三次産業”の文脈で対比するなら、サービス業や商業が反対側に立ちやすい、と覚えておくと整理できます。
工業の具体例(工業製品と職人仕事の対比など)をもう少しイメージで掴みたい方は、関連テーマの記事も役立ちます。
興業の正しい使い方を詳しく
ここからは、興業を「文章で安全に使う」ことに集中します。興業は硬めの語なので、使い方を誤ると不自然になりやすい一方、ハマると文章が締まります。
興業の例文5選
興業を自然に使える例文を5つ紹介します。
- 地域の特産を生かし、産業を興業で底上げする施策が進められている
- 創業者は新分野に挑み、事業を興業して会社を大きくした
- 明治期の殖産興業は、近代化を支える重要な政策として語られる
- 地方都市では、雇用のために新たな興業の柱を作る動きがある
- 観光だけでなく、産業面の興業が地域の持続性を左右する
興業の言い換え可能なフレーズ
興業は便利ですが、文脈によっては言い換えた方が読みやすいことがあります。
- 硬めに書きたいとき:産業振興、事業振興
- やさしく書きたいとき:産業を盛んにする、事業を立ち上げる
- 施策っぽくしたいとき:産業育成、地域経済の活性化
興業の正しい使い方のポイント
興業を正しく使うポイントは、対象が「催し」ではなく「産業・事業」になっているかです。
特に、興行収入やチケットの話に興業を当てないこと。この一点を守るだけで、混同はかなり減ります。
チェックリスト
- 話題は産業政策・事業展開・地域振興か
- 近くに「収入」「公演」「上映」「動員」がないか
- 言い換えると「産業を盛んにする」になるか
興業の間違いやすい表現
興業で多い間違いは、興行の意味で使ってしまうケースです。
- 誤:映画の興業収入が伸びた
- 正:映画の興行収入が伸びた
「収入」「上映」「公演」のような単語が並ぶなら、興業ではなく興行です。文章を出す前に、同音異義の取り違えがないか最終チェックするのがおすすめです。
興行を正しく使うために
興行は、映画・舞台・スポーツなどの文脈で非常に便利ですが、工業・興業と混ざると一気に意味が壊れます。ここでは“興行らしさ”の軸を固めます。
興行の例文5選
興行の具体例を5つ紹介します。
- この映画は国内の興行成績が好調だ
- 劇団は地方を回って興行し、ファンを増やしている
- プロレスの興行が週末に開催される
- 今季はホームの興行収入が伸びた
- 主催者は安全対策を整えたうえで興行を実施した
興行を言い換えてみると
興行は、文章のトーンに合わせて言い換えられます。
- 公演(舞台・ライブ寄り)
- 上映(映画寄り)
- 開催(一般的で万能)
- イベント運営(ビジネス寄り)
- ツアー(巡業・地方公演寄り)
「興行」という言葉が硬く感じる媒体では、「開催」や「公演」に落とすだけで読みやすさが上がります。
興行を正しく使う方法
興行の正しさは、「観客に見せる催し」「料金を取る運営」という骨格があるかどうかで判断します。無料イベントでも興行的に扱われるケースはありますが、一般の文章では“チケット・入場料・動員”の要素があると分かりやすいです。
- 興行=観客がいる催し
- 興行=運営・開催・動員の話
- 興行=興行収入(box office)
収益や契約が絡む場合は条件で解釈が変わることがあります。正確な情報は公式サイトをご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。
興行の間違った使い方
興行の誤用で目立つのは、工業や興業の話に興行を当ててしまうケースです。
- 誤:地元の工場誘致を興行として進める
- 正:地元の工場誘致を興業(産業振興)として進める
工場誘致・雇用創出・産業育成は、基本的に興業(または産業振興)の領域です。興行にするとエンタメの匂いが出てしまいます。
工業の正しい使い方を解説
工業は一見わかりやすい言葉ですが、興業と字面が似ているせいで書き間違いが起きます。ここでは、工業を“製造・加工”の言葉として固定します。
工業の例文5選
工業の例文を5つ紹介します。
- この地域は自動車工業が盛んだ
- 工業団地に新しい工場が建設される
- 化学工業では安全管理が重要になる
- 工業製品の品質は工程管理に左右される
- 工業高校では実習を通して基礎技術を学ぶ
工業を別の言葉で言い換えると
工業は、読み手に合わせて次のように言い換えできます。
- 製造業(業種として分かりやすい)
- ものづくり(やわらかい表現)
- メーカー(企業側を指すとき)
- 製造分野(説明的)
工業を正しく使うポイント
工業のポイントは、原料を加工して製品を作ることにあります。文章では、次の言葉が近いと工業が自然です。
- 工場、製造、加工、工程、設備、品質、規格、部品、材料
反対に、チケット・動員・上映などが近いなら工業ではありません。ここを取り違えると、文章の信頼感が下がりやすいので注意してください。
工業と誤使用しやすい表現
工業で多いミスは「興業」との書き間違いです。読み方が同じなので、変換候補の選択ミスで起こりやすいです。
- 誤:〇〇興業(製造業の会社を説明しているのに)
- 正:〇〇工業(原料加工・製造の文脈なら)
ただし、社名として「〇〇興業」が正式名称の企業もあります。固有名詞の場合は、その会社の正式表記が正解です。迷ったら公式サイトや登記情報などで確認してください。
まとめ:興業と興行と工業の違いと意味・使い方の例文
最後に、興業・興行・工業の違いをもう一度まとめます。同じ読み方でも、意味が違う以上、文章の印象や正確さに直結します。
- 興業:事業や産業を興して盛んにする(政策・産業振興・興業家など)
- 興行:観客を集めて料金を取り、演劇・映画・スポーツなどを催す(興行収入・公演・上映など)
- 工業:原料を加工して製品を作る産業(工場・製造・工業製品など)
実務の書類、契約、社名の表記などは、読み手や条件で解釈が変わることがあります。正確な情報は公式サイトをご確認ください。最終的な判断は専門家にご相談ください。

