
ニュースや会社での会話で「社長を慰留する」「退職を申し出た社員を慰留した」と聞き、「慰留とは具体的にどういう意味?」「ただ引き止めることと何が違うの?」と疑問に感じたことはありませんか。慰留は、退職や辞任などを考えている人に対して、考え直してその場にとどまってもらうよう働きかけることを表す言葉です。
この記事では、慰留の意味と読み方をはじめ、「慰留する」「退職慰留」「慰留を固辞する」といった表現の使い方、引き止める・残留など似た言葉との違いまで、例文を交えながらわかりやすく解説します。意味だけでなく、どのような場面で使うと自然なのかまで理解できる内容にまとめました。
慰留
英語表記:dissuade someone from resigning / persuade someone to stay
目次
慰留の意味とは?読み方・語源をわかりやすく解説

まずは、慰留という言葉が何を表しているのかを整理しましょう。「慰める」という漢字が入っているため、単純に相手を慰める意味だと思われることもありますが、実際には辞めようとしている人を思いとどまらせる場面で使われることが多い言葉です。
「慰留」とは?基本的な意味
慰留とは、退こうとしている人をなだめたり説得したりして、その考えを思いとどまらせることを意味します。
- 読み方は「いりゅう」
- 辞職・退職・退任などを考えている人に使う
- 相手に考え直してもらい、現在の立場にとどまるよう働きかけること
- 会社・政治・スポーツなど、比較的改まった場面で使われやすい
たとえば、会社の部長が「今月末で退職したい」と申し出た際、社長が「重要な仕事を任せたいので、もう一度考えてもらえないだろうか」と話したとします。このように、辞めようとしている人に残ってもらうよう働きかけることが「慰留」です。
「辞めないでほしい」と相手に働きかけることと覚えると、意味をつかみやすいでしょう。
「慰留する」とは?どんな状態を表す?
実際の文章では、「慰留」という名詞だけでなく、「慰留する」という形が非常によく使われます。
「慰留する」とは、辞任・退職・退任などの意思を示した人に対して、考え直すよう説得し、その職や立場にとどまってもらおうとすることです。
- 退職を申し出た社員を上司が慰留する。
- 辞任の意向を示した会長を役員たちが慰留した。
- 監督の退任報道を受け、球団側が慰留に動いた。
- 社長は重要な人材だとして、本人を慰留する考えを示した。
このように、単なる日常的なお願いよりも、職・役職・所属などから離れようとしている人を引き止める場面で自然に使われます。
慰留という漢字の意味と語源
「慰留」は、「慰」と「留」という2つの漢字から成り立っています。
| 漢字 | 主な意味 | 慰留でのニュアンス |
|---|---|---|
| 慰 | なぐさめる、心を安らげる | 相手をなだめたり気持ちに働きかけたりする |
| 留 | とめる、とどめる | その場や地位にとどまらせる |
つまり、文字どおりに考えると、相手の心に働きかけながら、とどまってもらうというイメージになります。
ただし、現在の一般的な用法では、慰留する人が必ずしも相手を「慰める」必要があるわけではありません。待遇を見直したり、続投を依頼したりするなど、辞意を考え直してもらうための働きかけ全般を指すことがあります。
「慰留」と「残留」の違い
「慰留」と字面が似ている言葉に「残留(ざんりゅう)」があります。しかし、誰の行動を表すのかが異なります。
| 言葉 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 慰留 | 辞めようとする人を思いとどまらせる | 会社が社員を慰留する |
| 残留 | その場所や組織に残りとどまる | 社員が会社に残留する |
簡単にいえば、慰留は「残ってもらおうとする働きかけ」、残留は「実際に残ること」です。
「会社がAさんを慰留した結果、Aさんは会社に残留することになった」とすれば、両方の違いがよくわかります。
慰留の意味がわかる使い方と例文|退職・辞任の場面

慰留は、特に人事や組織の話題でよく登場します。「慰留する」だけでなく、「慰留を受ける」「慰留に応じる」「慰留を固辞する」など複数の言い回しがあるため、それぞれの意味を押さえておくとニュース記事も理解しやすくなります。
退職慰留とは?会社で使われる意味
退職慰留とは、退職しようとしている社員に対し、会社や上司が退職を考え直すよう働きかけることです。
たとえば、重要な社員が退職を申し出た際に、会社が仕事内容や待遇について話し合い、「できれば今後も働いてほしい」と伝えることがあります。このような働きかけは退職慰留と呼ばれます。
退職慰留の例文
- 上司から強く退職慰留されたが、退職の意思は変わらなかった。
- 会社は退職を申し出た技術者に対して慰留を行った。
- 待遇の見直しを提示し、会社側は本人の慰留を図った。
- 退職慰留を受けた結果、もう一度働き方を考えることにした。
なお、「慰留」は辞めないよう求める行為を指す言葉であり、相手が実際に残るかどうかまでは意味に含まれません。
「慰留を受ける」「慰留に応じる」の意味
慰留される側から表現すると、「慰留を受ける」となります。
そして、慰留された人が説得を受け入れ、辞任や退職を取りやめる場合には、「慰留に応じる」という表現が使えます。
- 会社が本人を慰留する
- 本人が慰留を受ける
- 本人が慰留に応じる
- 結果として会社や役職に残る
例文にすると、「監督は辞任する意向を示していたが、クラブ側の慰留に応じ、来季も指揮を執ることになった」のようになります。
反対に、慰留を受けても辞める意思を変えなければ、「慰留に応じなかった」「慰留を断った」と表現できます。
「慰留を固辞する」「慰留を断る」とは?
ニュースでは「慰留を固辞した」という表現も見かけます。
固辞とは、相手からの申し出や依頼などを強い意思をもって断ることです。そのため、「慰留を固辞する」は、残るよう求められても、その申し出を受け入れず辞任・退職の意思を変えないという意味になります。
たとえば、「会長は周囲から慰留されたものの、本人の意志は固く、慰留を固辞した」と使います。
「固辞」と「辞退」の細かなニュアンスについては、「固辞」と「辞退」の違いや意味・使い方でも詳しく解説しています。
「慰留を促す」「慰留を図る」はどう使う?
「慰留」には、「慰留を促す」「慰留を図る」「慰留に努める」といった表現もあります。
「慰留を図る」は、本人が辞めないよう働きかけようとすることです。「会社側は幹部の慰留を図っている」のように使います。
一方、「慰留を促す」は、第三者に対して「その人を引き止めるよう働きかけてほしい」と求めるニュアンスになります。
- 役員から社長に、部長を慰留するよう促した。
- チームは主力選手の慰留を図る方針だ。
- 経営陣は最後まで本人の慰留に努めた。
誰が誰を引き止めるのかを明確にすると、文章がわかりやすくなります。
慰留の意味と類語・対義語|引き止める・残留との違い

慰留の意味をより正確につかむには、似た言葉との違いを見るのが効果的です。特に「引き止める」「説得する」「思いとどまらせる」は近い意味を持ちますが、使える場面の広さが異なります。
慰留の類語・言い換え表現
慰留の主な類語や言い換えには、次のような表現があります。
| 表現 | 意味・特徴 |
|---|---|
| 引き止める | 立ち去ったり行動したりしようとする人をとどめる |
| 思いとどまらせる | 何かをしようとしている人に考え直させる |
| 説得する | 話をして相手を納得させる |
| 翻意を促す | 一度決めた意思を変更するよう働きかける |
| 続投を求める | 現在の役職や仕事を引き続き担当するよう求める |
この中で最も日常的なのは「引き止める」です。「慰留」はそれよりも改まった表現で、退職・辞任・退任など、職や立場を離れる話題と相性がよいという特徴があります。
「慰留」と「引き止める」の違い
「慰留」と「引き止める」は近い意味ですが、使える範囲が異なります。
「引き止める」は、「帰ろうとする友達を引き止めた」「店を出ようとする客を引き止めた」のように、日常のさまざまな場面で使えます。
一方、「慰留」は通常、辞職・退職・退任など、現在の地位や所属から離れようとする人をとどめる場面で使います。
- 友人が帰ろうとしている → 引き止める
- 社員が会社を辞めようとしている → 慰留する・引き止める
- 社長が辞任しようとしている → 慰留する
- 監督が退任しようとしている → 慰留する
「慰留」は「引き止める」より使用場面が限定され、その分、ニュースやビジネスなどの改まった文章に向いています。
「慰留」と「説得」「思いとどまらせる」の違い
「説得」は、話し合いによって相手に納得してもらうこと全般を表します。そのため、「購入を説得する」「計画の変更を説得する」など、退職とは関係のない場面でも使えます。
「思いとどまらせる」も範囲が広く、「無理な計画を思いとどまらせる」「危険な行動を思いとどまらせる」といった使い方ができます。
これに対し慰留は、「辞める」「退く」という意思を持つ人を、その立場に残るよう働きかけるニュアンスが中心です。
つまり、慰留のために説得し、その結果として退職を思いとどまらせるという関係で考えると理解しやすいでしょう。
慰留の対義語・反対の表現は?
「慰留」には、辞書上で必ず一語に定まる対義語があるわけではありません。文脈によって反対方向の表現を選びます。
退職の場面であれば、会社側が社員に辞めないよう働きかける「退職慰留」に対し、会社側が社員に退職を勧める「退職勧奨」は、意味の方向が反対になります。
| 表現 | 会社側の働きかけ |
|---|---|
| 退職慰留 | 会社に残ってほしいと働きかける |
| 退職勧奨 | 退職するよう勧める |
また、「辞任を了承する」「退任を認める」「退職を受理する」なども、状況によって慰留とは反対方向の行動を表します。
慰留の意味をビジネスで正しく使うポイントと注意点

慰留は人の重要な決断に関わる言葉です。そのため、意味を知るだけでなく、「誰が誰に働きかけているのか」「本人が最終的にどう判断したのか」を分けて考えることが大切です。
慰留されるとは退職できないという意味ではない
「会社から慰留された」と聞くと、「会社から退職を認めてもらえない状態」を想像するかもしれません。しかし、慰留という言葉そのものは、辞めないよう働きかけることを表しているだけです。
そのため、「慰留された=残ることが決まった」という意味にはなりません。
本人が受け入れれば「慰留に応じた」、拒否すれば「慰留を断った」「慰留を固辞した」という結果になります。
- 「慰留」と「退職の拒否」は同じ意味ではない
- 慰留された後の本人の判断まで確認する
- 「慰留した」だけでは、残留が決定したとは限らない
なお、雇用契約の終了については契約形態や意思表示の方法などによって扱いが異なります。実際の退職手続きについて判断するときは、言葉の意味だけでなく、就業規則や法令、公的機関の案内を確認することが大切です。
慰留する側は相手の意思を尊重する
慰留は、会社にとって必要な人材や、組織にとって重要な役割を担う人に対して行われることがあります。
ただし、本来は相手の考えを聞き、そのうえで「もう一度考えてもらえないか」と働きかけるものです。慰留という言葉からも、強制的に残らせるというより、相手の意思に働きかけて考え直してもらうという性質が読み取れます。
退職をめぐる働きかけでは、本人の意思を尊重することが重要です。厚生労働省も、反対方向の働きかけである「退職勧奨」について、労働者の自由な意思決定を妨げるような行為が問題となる場合があることを示しています。
慰留をする場合にも、一方的に結論を押しつけるのではなく、退職を考えた理由や本人の希望を確認しながら話し合う姿勢が適切でしょう。
慰留に関するよくある疑問
慰留とは簡単に言うと何ですか?
簡単に言うと、辞めようとしている人に「残ってほしい」と働きかけることです。会社員の退職、役員の辞任、監督の退任などでよく使われます。
「慰留する」は目上の人にも使えますか?
使えます。「役員が社長を慰留した」「党幹部が代表を慰留した」のように、相手の地位にかかわらず使える表現です。
慰留と慰労は同じ意味ですか?
同じではありません。「慰留(いりゅう)」は辞めようとする人を思いとどまらせることですが、「慰労(いろう)」は苦労や働きをねぎらうことです。
「長年働いた社員を慰労する」は自然ですが、「長年働いた社員を慰留する」とすると、「その社員が辞めようとしており、会社が引き止めている」という別の意味になります。
「慰留を断る」と「慰留を固辞する」はどちらが自然ですか?
どちらも使えます。「慰留を断る」は日常的でわかりやすい表現です。一方、「慰留を固辞する」は、強い意思をもって慰留に応じなかったことを表す、より改まった言い方です。
ニュース記事や公式な文章では「再三の慰留を固辞した」のような表現が使いやすいでしょう。
慰留の意味と使い方まとめ
慰留は、ニュースやビジネスでよく目にする一方、日常会話ではそれほど頻繁に使わないため、意味を曖昧に覚えやすい言葉です。
- 慰留の読み方は「いりゅう」
- 意味は、退こうとする人をなだめたり説得したりして思いとどまらせること
- 「退職慰留」は、退職しようとする社員に残るよう働きかけること
- 「慰留に応じる」は、説得を受け入れて辞任・退職などを考え直すこと
- 「慰留を固辞する」は、残るよう求められても強い意思で断ること
- 「引き止める」より改まった表現で、辞職・退職・退任の場面によく使われる
- 「残留」は引き止める行為ではなく、実際にその場や組織に残ること
- 退職の場面では「退職勧奨」が反対方向の働きかけを表す
一言で覚えるなら、「辞めようとする人に、考え直して残ってもらうよう働きかけること」が慰留です。「会社が慰留する」「本人が慰留に応じる」「慰留を固辞する」というように、誰の行動を表しているのかに注目すると正しく使い分けられます。
【参考文献】
- 小学館『デジタル大辞泉』・小学館『精選版 日本国語大辞典』「慰留」
- 厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
- 厚生労働省「退職、解雇、雇止めなど」
- 厚生労働省「退職勧奨|裁判例」
- e-Gov法令検索「民法」第627条ほか

