
「懇願」と「嘆願」は、どちらも「強くお願いする」という印象がある一方で、意味のニュアンスや使い分けがあいまいになりがちな言葉です。
「懇願と嘆願の違いは?」「嘆願書って何?」「読み方は?」「使い分けや例文を知りたい」「類語や対義語、言い換え、英語表現まで整理したい」──そんな疑問を抱えてこのページにたどり着いた方も多いはずです。
この記事では、日常会話から公的・文書的な場面まで迷わないための判断軸を、意味・使い方・例文・語源・類義語/対義語・英語表現まで一気に整理します。読み終える頃には、文章でも会話でも自信を持って使い分けられるようになります。
- 懇願と嘆願の意味の違いを一言で整理
- 場面別の使い分けと判断ポイント
- 類義語・対義語・言い換え表現の使い所
- 英語表現と例文でニュアンスを定着
懇願と嘆願の違い
まずは結論から、懇願と嘆願の違いを「意味」「使い分け」「英語表現」の3方向で押さえます。ここが固まると、以降の語源・類語・例文が一気に理解しやすくなります。
結論:懇願と嘆願の意味の違い
結論から言うと、両者の違いは「頼み方に事情説明が含まれるかどうか」です。
- 懇願:相手に聞き入れてほしくて、誠意を込めてひたすら頼み込むこと
- 嘆願:事情や背景を述べつつ、切実さ(嘆き)を伴って熱心に頼み込むこと
私はいつも、「事情を語って“訴える”なら嘆願」「事情を語らず“頼み込む”なら懇願」という軸で整理しています。もちろん実際の文章では重なりもありますが、この軸があるだけで迷いは激減します。
- 懇願=「お願いの熱量」が前面に出る
- 嘆願=「事情の説明+切実さ」が前面に出る
懇願と嘆願の使い分けの違い
使い分けは、場面の「文体」と「目的」で決まります。
日常寄りなら「懇願」
家族や友人、恋人など、近い関係で「どうしても…」と感情が強く出るときは「懇願」がしっくり来ます。言い換えるなら「必死に頼む」「拝むように頼む」に近い感覚です。
公的・文書寄りなら「嘆願」
一方で「嘆願」は、行政・組織・司法など、ある程度かたい文脈で見かけやすい言葉です。特に「嘆願書」のように、事情や背景を文章で説明して相手に判断を求めるケースと相性が良いです。
- 会話で「嘆願」を使うと、やや硬く、ドラマ的・文語的な響きになりやすい
- 文書で「懇願」を使うと、説明不足に見えることがある(意図が「お願い」止まりに映る)
懇願と嘆願の英語表現の違い
英語では「強くお願いする」を表す動詞が複数あり、ニュアンスで選びます。
| 日本語 | 英語の目安 | ニュアンス |
|---|---|---|
| 懇願 | implore / beseech / entreat | 切実に、必死に頼み込む(感情の熱量が強い) |
| 嘆願 | plead / petition | 事情を訴えつつ頼む、または正式に請う(文書的) |
特に「嘆願書」のような文書は、英語ならpetition(請願、申立て)に寄せると自然です。
懇願とは?
ここからは「懇願」単体の意味を深掘りします。日常会話・文章での自然な使い方、語源、類義語/対義語を押さえると、言い換えも含めて表現の幅が広がります。
懇願の意味や定義
「懇願(こんがん)」は、誠意を込めて、どうしても聞き入れてほしい願いをひたすら頼み込むことを指します。
ポイントは、相手に「説明して納得してもらう」というより、感情の熱量で“お願いの強さ”を伝えるところにあります。だからこそ、短い言葉でも圧が出ます。「頼む」「お願いだ」よりも切実さが強いときに選ばれやすい表現です。
懇願はどんな時に使用する?
懇願は、次のように「感情が前面に出るお願い」で効果を発揮します。
- 相手にどうしても引き受けてほしいとき(断られたくない)
- 自分の立場が弱く、お願いするしかないとき
- 謝罪や許しを求めるなど、切実さが強いとき
- 恋愛・家族・友情など、近い関係で感情が高ぶるとき
- ビジネス文書で多用すると「感情的」「圧が強い」と受け取られることがある
- 公的な申請・申立ての文脈では、懇願より「申請」「請願」「要望」などが適する場合が多い
ビジネス表現の「頼む」のニュアンス整理は、別記事の「「恃む」と「頼む」の違い」も参考になります。
懇願の語源は?
「懇願」は、漢字の意味を分解すると理解が速い言葉です。
- 懇:ねんごろ、心がこもって丁寧、誠実
- 願:ねがう、望みをかける
つまり「懇願」は、心を込めて丁寧に願うという漢字そのままの構造です。ここに「事情説明」という要素は必須ではありません。むしろ「誠意」「切実さ」が核になります。
懇願の類義語と対義語は?
類義語・対義語を押さえると、言い換えの精度が上がります。
懇願の類義語
- 哀願(あいがん):同情に訴えつつ頼む(嘆願寄りの切実さ)
- 請願(せいがん):公的に願い出る(文書的)
- 乞う(こう):強く求める(短く硬い表現)
- 切願(せつがん):切実に願う(文語寄り)
- 頼み込む:口語で自然な言い換え
懇願の対義語(反対の方向性)
- 拒絶する:願いを受け入れない
- 断る:依頼を退ける
- 命じる:お願いではなく指示で動かす
※対義語は辞書的に1対1で完全対応するとは限らず、文脈上「反対の行為」として整理するのが実用的です。
嘆願とは?
次に「嘆願」を深掘りします。嘆願は、事情説明や文書性が絡む場面で真価を発揮します。意味・由来・類語/対義語をセットで押さえると、表現の選び間違いが減ります。
嘆願の意味を詳しく
「嘆願(たんがん)」は、事情や背景を述べながら、切実な思い(嘆き)を込めて頼み込むことを指します。
懇願との違いは、「なぜそれを願うのか」を説明し、相手に判断してもらう構造が入りやすい点です。だからこそ「嘆願書」のように文章化され、提出される形に馴染みます。
嘆願を使うシチュエーションは?
嘆願は、次のように「事情説明が必要」「相手が組織」「文書で提出する」場面で使いやすいです。
- 処分の軽減などを求めて、理由を添えてお願いするとき
- 行政・学校・団体などへ、事情を説明して要望を出すとき
- 嘆願書・請願書・陳情書など、文書の形式で訴えるとき
- 社会的な問題で、背景を語りつつ協力を求めるとき
「お願い」の強さを文脈で使い分けたい場合は、「「依頼」と「要請」の違い」も合わせて読むと、文章のトーン設計がしやすくなります。
嘆願の言葉の由来は?
「嘆願」も漢字から理解すると、意味がブレません。
- 嘆:なげく、悲しみ・切実さを表す
- 願:ねがう、望みをかける
つまり嘆願は、「嘆き(切実さ)を伴う願い」です。単なるお願いではなく、「事情があって切実に訴えたい」という色が出ます。
嘆願の類語・同義語や対義語
嘆願の類語・同義語
- 哀願(あいがん):同情に訴えて頼む(嘆願に近い)
- 請願(せいがん):公的に願い出る(文書寄り)
- 陳情(ちんじょう):事情を述べて訴える(行政・団体で多い)
- 申立て(もうしたて):正式に申し出る(手続き寄り)
嘆願の対義語(反対の方向性)
- 威圧する:お願いではなく圧で動かす
- 恫喝する:脅しで従わせる
- 強要する:相手の意思を無視して求める
対義語は「お願い」とは逆に、相手の合意を前提にしない方向の語が並びます。文章の印象は大きく変わるので注意してください。
懇願の正しい使い方を詳しく
ここでは「懇願」の例文と、言い換え、よくある誤用パターンまでまとめます。使える形に落とし込むのが目的です。
懇願の例文5選
- 彼は涙目で、もう一度だけ会ってほしいと懇願した
- 期限までに仕上げるから、今回だけは許してくれと懇願した
- 子どもに、犬を飼いたいと何度も懇願された
- どうしても必要なんです、お願いしますと懇願するように頭を下げた
- 彼女は去らないでと懇願したが、返事はなかった
懇願の言い換え可能なフレーズ
文体や相手との距離で、次の言い換えが便利です。
- 口語で柔らかく:頼み込む/お願いする/必死に頼む
- 硬めの文章で:切願する/乞う
- 感情を強める:拝むように頼む/泣きつく
- 会話なら「頼み込む」を挟むと、懇願の重さを調整しやすい
- 文章なら「切願する」で過度に感情的に見せずに強さを出せる
懇願の正しい使い方のポイント
懇願を自然に使うコツは、「お願いの強さ」を主役にすることです。事情説明を長く書くよりも、相手に“どうしても”を伝える方向が合います。
- 「お願いだ」「どうか」「頼む」といった語と相性が良い
- 相手の裁量に委ねる(強制しない)
- 謝罪・許し・再挑戦など「切実さ」があると映える
なお、言葉の強さは人間関係に影響します。ビジネスや公的場面では、状況に応じて「依頼」「要請」「申請」などへの置き換えも検討してください。最終的な判断は、職場のルールや担当者の指示など公式情報を確認するのが安全です。
懇願の間違いやすい表現
懇願は強い言葉なので、次の誤りが起きやすいです。
- 公的文書で「懇願」を多用して、感情的な文章に見える
- 「懇願書」と書いてしまう(一般には「嘆願書」「請願書」のほうが自然)
- 相手に圧をかける言い方(脅しや強要)と混同する
- 処分・契約・金銭など、人生や財産に影響しうる案件では、用語の選び方ひとつで印象が変わる
- 必要に応じて、専門家(弁護士、行政書士、社内法務など)へ相談するのが確実
嘆願を正しく使うために
嘆願は「事情を述べて訴える」性質があるため、文章の組み立てが重要です。例文とともに、文書・会話の使い所を整理します。
嘆願の例文5選
- 処分の軽減を求め、事情を説明したうえで嘆願した
- 家族の病状を理由に、期限の延長を嘆願した
- 地域の安全対策を求める嘆願書が提出された
- 本人は反省していると訴え、厳罰を避けてほしいと嘆願した
- 現状の困難を訴え、支援の継続を嘆願した
嘆願を言い換えてみると
嘆願は文脈によって、より適切な語に置き換えられます。
- 公的に願い出る:請願する/陳情する/申立てる
- 事情を述べて頼む:哀願する/訴える/嘆き願う
- 文書の体裁を整える:要望する/要請する(内容による)
「嘆願=必ず嘆きながら泣く」ではありません。実務的には、「事情説明を伴う強いお願い」という理解が最も扱いやすいです。
嘆願を正しく使う方法
嘆願を正しく使うコツは、「お願い」よりも「理由と背景」を先に置くことです。特に文書では順序が重要になります。
嘆願(文書)で意識したい構成
- 結論:何を求めるのか(例:処分軽減、期限延長など)
- 理由:なぜ必要なのか(客観的事実)
- 状況:背景や経緯(過不足なく)
- お願い:協力・配慮を求める言葉で締める
- 嘆願は「相手に判断してもらう」語なので、事実関係の正確さが信頼につながる
- 手続きや書式は組織ごとに異なるため、必ず公式サイトや担当窓口の案内を確認する
嘆願の間違った使い方
嘆願でよくある間違いは、次の3つです。
- 事情説明がなく、「強いお願い」だけが残ってしまう
- 感情の表現が過多で、事実が見えにくくなる
- 本来は「申請」「申立て」「要請」が適切なのに、嘆願と書いてしまう
特に法的・制度的な手続きが絡む場面では、用語選びが結果に影響する可能性があります。断定せず、正確な情報は公式サイトをご確認ください。必要なら、弁護士や行政書士など専門家への相談も検討しましょう。
まとめ:懇願と嘆願の違いと意味・使い方の例文
最後に要点をまとめます。
- 懇願は、誠意を込めてひたすら頼み込む言葉で、感情の熱量が前面に出やすい
- 嘆願は、事情や背景を述べつつ切実に頼み込む言葉で、文書や公的文脈と相性が良い
- 英語は、懇願ならimplore/beseech/entreat、嘆願ならplead/petitionが目安
- 対義語は1対1で固定ではなく、「拒絶」「断る」「威圧」「強要」など文脈で整理すると実用的
使い分けに迷ったら、「事情説明が軸なら嘆願」「お願いの熱量が軸なら懇願」で判断してください。文章の場面では、手続きや書式が絡むこともあります。

