
「申し上げる」と「奏する」は、どちらも相手に向かって何かを伝える印象があり、違いが分かりにくい言葉です。とくに、意味の違い、使い分け、語源、類義語、対義語、言い換え、英語表現、例文までまとめて知りたい方は多いのではないでしょうか。
実際には、「申し上げる」は現代の敬語として広く使われる一方で、「奏する」は古風で限定的な場面や、「功を奏する」「楽器を奏する」のような別の意味でも使われるため、同じ感覚で置き換えると不自然になることがあります。
この記事では、「申し上げる」と「奏する」の意味の違いを軸に、正しい使い分け、自然な使い方、間違えやすい表現まで整理してご説明いたします。読み終えるころには、文章でも会話でも迷わず使い分けられるようになります。
- 申し上げると奏するの意味の違い
- 場面ごとの自然な使い分け
- 類義語・対義語・言い換え表現
- すぐ使える例文と誤用の注意点
目次
申し上げると奏するの違いを最初に整理
まずは結論から、2語の違いを一気に整理いたします。ここで全体像をつかんでおくと、後半の語源や例文までスムーズに理解できます。
結論:申し上げると奏するは意味の守備範囲が違う
「申し上げる」は、現代日本語で広く使われる「言う」の謙譲表現です。自分の発言や行為をへりくだって示し、相手への敬意を表します。
一方の「奏する」は、意味が複数ある語です。文脈によって、君主や高位の相手に申し上げる、音楽をかなでる、成果をもたらすという意味を奏します。したがって、現代の一般的な敬語表現としては「申し上げる」のほうがはるかに使用範囲が広いです。
| 語句 | 基本の意味 | 主な使用場面 | 現代での使いやすさ |
|---|---|---|---|
| 申し上げる | 言う・するの謙譲表現 | ビジネス、手紙、挨拶、謝罪、依頼 | 高い |
| 奏する | 君主に申し上げる/音楽をかなでる/成果をもたらす | 古風な文章、歴史文脈、慣用句、音楽表現 | 低い |
- 現代の敬語として自然なのは「申し上げる」
- 「奏する」は意味が広く、古風・文語的な響きが強い
- 「功を奏する」のように、言う意味以外でも使われる
申し上げると奏するの使い分けの違い
使い分けの軸は、とても明確です。現代の会話やメールで相手に敬意を示したいなら「申し上げる」を使います。たとえば、「ご報告申し上げます」「お礼申し上げます」「お願い申し上げます」は自然ですが、「ご報告を奏します」とするとかなり不自然です。
「奏する」を使うのは、主に次のような場面です。
- 古典や歴史の文脈で、君主に対して申し上げる場面
- 音楽について「一曲を奏する」「琴を奏する」と述べる場面
- 慣用表現として「功を奏する」「効を奏する」と使う場面
つまり、同じ「伝える」系の言葉に見えても、日常的な敬語では置き換えられません。 迷ったときは、「現代の相手への敬語か、それとも文語・古典・慣用句か」で判断するとぶれにくくなります。
- 取引先へのメールで「奏する」を使うと、意味よりも違和感が先に立つことが多い
- 「奏する」は場面限定の語なので、無理に格調高さを出そうとして使わないほうが安全
申し上げると奏するの英語表現の違い
英語では、日本語ほど細かい敬語差がありません。そのため、「申し上げる」は文脈に応じて say、tell、state、express などで表します。
一方、「奏する」は意味ごとに訳し分ける必要があります。君主に申し上げる意味なら report to the sovereign や submit a petition のように説明的になり、音楽なら play や perform、成果をもたらすなら produce results や be effective が近いです。
| 日本語 | 意味 | 英語表現の目安 |
|---|---|---|
| 申し上げる | 丁重に言う | say / tell / state / express |
| 奏する | 君主に申し上げる | report to / submit to |
| 奏する | 音楽をかなでる | play / perform |
| 功を奏する | 成果をもたらす | work / be effective / produce results |
敬語そのものを詳しく整理したい方は、表現の使い分け感覚が近い「改めて」と「改めまして」の違いもあわせて読むと理解が深まります。
申し上げるとは?意味・使う場面・語源を解説
ここからは、「申し上げる」そのものを詳しく見ていきます。意味だけでなく、どんな相手にどう使うのが自然かまで押さえておくと、実用性がぐっと高まります。
申し上げるの意味や定義
「申し上げる」は、基本的に「言う」の謙譲語です。自分側の発言を低めて示すことで、相手を立てる働きを奏します。
また、「お礼申し上げます」「お願い申し上げます」「ご報告申し上げます」のように、単なる発言だけでなく、自分側の伝達行為全体を丁重に述べる言い方としても広く用いられます。
さらに、「お詫び申し上げます」「ご案内申し上げます」のように名詞と結びつき、儀礼的でかしこまった文体を作る役割もあります。
- 「申す」よりも改まった響きが出やすい
- 話し言葉より、文章・挨拶・公式の場でよく使われる
- 相手の行為には使わず、自分側の行為に使う
申し上げるはどんな時に使用する?
「申し上げる」は、主に次のようなフォーマルな場面で使います。
- 取引先へのメールや文書
- 式典・スピーチ・挨拶文
- 謝罪や感謝を丁重に伝える場面
- 案内・依頼・報告を改まって述べる場面
たとえば、「心より御礼申し上げます」「下記の通りご報告申し上げます」「不行き届きがございましたことをお詫び申し上げます」は自然です。反対に、親しい友人との会話で毎回使うと硬すぎる印象になりやすいです。
相手に敬意を示したいが、過度に古風にはしたくない。 そんなときに最も使いやすいのが「申し上げる」です。
申し上げるの語源は?
「申し上げる」は、「申す」と「上げる」が結びついた語です。「申す」は「言う」のへりくだった表現で、「上げる」には、目上に向かって差し出すような方向性が感じられます。
そのため、「申し上げる」は単なる発話ではなく、言葉をうやうやしく差し出すような感覚を含む表現として発達してきました。現代ではそこまで意識しなくても使えますが、改まった響きが残っているのはこの成り立ちによるものです。
申し上げるの類義語と対義語は?
「申し上げる」の類義語は、丁寧さや場面によって使い分けます。
| 分類 | 語句 | ニュアンス |
|---|---|---|
| 類義語 | 申す | より基本的な謙譲表現 |
| 類義語 | 述べる | やや客観的・説明的 |
| 類義語 | お伝えする | 実務的で柔らかい |
| 類義語 | ご報告する | 内容が報告である場合に限定 |
| 対義語 | おっしゃる | 相手側の「言う」を高める尊敬語 |
| 対義語に近い語 | 黙る | 伝えない・発言しない |
敬語の方向性で迷う方は、相手を立てる語と自分をへりくだる語の違いを意識すると整理しやすくなります。関連して、組織を指す敬称の使い分けが気になる場合は「御社」と「貴社」の違いも参考になります。
奏するとは?意味・使う場面・言葉の由来
次に、「奏する」を詳しく見ていきます。この語は意味が一つではないため、使う前にどの意味なのかを確認することが大切です。
奏するの意味を詳しく
「奏する」には、主に次の3つの意味があります。
- 君主や高位の相手に申し上げる
- 音楽をかなでる、演奏する
- 成果をもたらす、効果をあらわす
このうち、現代の日常でよく目にするのは、実は「功を奏する」のような3つ目の意味です。また、芸術や文学では「琴を奏する」「静かに旋律を奏する」のような表現も見かけます。
いっぽう、1つ目の「申し上げる」の意味での「奏する」は、現代では歴史・古典・儀礼的文章に寄る表現です。したがって、現代の一般的な敬語として「申し上げる」と同じ感覚で使うのは適切ではありません。
奏するを使うシチュエーションは?
「奏する」が自然に収まるシチュエーションは、かなり限られています。
- 歴史資料や古典の解説
- 天皇・朝廷・君主などに関わる叙述
- 文学的な音楽表現
- 「功を奏する」「効を奏する」などの定型表現
たとえば、「策が功を奏した」は現代語として自然です。しかし、「部長にその件を奏しました」は不自然です。現代ビジネスでは、「部長に申し上げました」「部長にお伝えしました」が自然だからです。
- 現代語で一番生きているのは「功を奏する」
- 人への敬語としての「奏する」は限定的
- 日常敬語では「申し上げる」に置き換えるのが基本
奏するの言葉の由来は?
「奏する」は、もともと君主の前で言葉や音楽を差し出すような場面と結びついた語です。そのため、単に「言う」ではなく、上位者に向けて正式に申し出る、あるいは音をかなでて届けるという格調高い響きを持っています。
この由来があるため、現代でも「奏上」「演奏」「伴奏」「功を奏する」など、やや文語的・格式的な語群の中で生き残っています。
奏するの類語・同義語や対義語
「奏する」は意味ごとに類語が変わります。ひとまとめに覚えると混乱しやすいので、意味別に整理するのがおすすめです。
| 意味 | 類語・同義語 | 対義語に近い語 |
|---|---|---|
| 君主に申し上げる | 奏上する、言上する、申し上げる | 退ける、黙する |
| 音楽をかなでる | 奏でる、演奏する、弾く | 止める、沈黙する |
| 成果をもたらす | 効果をあげる、実を結ぶ、うまく働く | 効かない、不発に終わる |
申し上げるの正しい使い方を例文で詳しく解説
ここからは実践編です。意味が分かっても、実際の文章で自然に使えなければ身につきません。よく使う型と、誤用しやすい点をあわせて押さえていきます。
申し上げるの例文5選
まずはそのまま使いやすい例文を5つご紹介いたします。
- このたびは温かいご支援を賜り、心より御礼申し上げます。
- 下記の件につきまして、取り急ぎご報告申し上げます。
- 不手際がございましたことを、深くお詫び申し上げます。
- 今後とも変わらぬご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。
- まずは書中をもちまして、ご挨拶申し上げます。
いずれも、挨拶・謝罪・感謝・報告・依頼といった、フォーマルな場面でよく使う型です。「名詞+申し上げます」の形で覚えると応用しやすくなります。
申し上げるの言い換え可能なフレーズ
毎回「申し上げる」を使うと文体が重くなることもあります。そんなときは、場面に応じて次のように言い換えると自然です。
| 元の表現 | 言い換え | ニュアンス |
|---|---|---|
| ご報告申し上げます | ご報告いたします | やや実務的で軽い |
| お願い申し上げます | お願いいたします | 日常のビジネスで使いやすい |
| お伝え申し上げます | お伝えいたします | 少し簡潔 |
| 御礼申し上げます | 感謝いたします | やや直接的 |
依頼表現の細かな違いも気になる方は、依頼・確認まわりで近い感覚がある「ご確認のほど」と「ご確認の程」の違いも役立ちます。
申し上げるの正しい使い方のポイント
「申し上げる」を自然に使うコツは、次の3点です。
- 自分側の行為に使う
- 改まった場面で使う
- 同じ文中で重ねすぎない
たとえば、「社長が申し上げました」は、自分の社長について外部に述べるなら不自然です。相手側の行為なら「おっしゃいました」、自分側なら「申し上げました」と、敬語の方向をはっきりさせる必要があります。
また、一通のメールで「申し上げます」を何度も続けるとくどくなります。「申し上げます」「いたします」「ご案内します」をバランスよく使い分けると、読みやすく整います。
申し上げるの間違いやすい表現
よくある誤りを見ておきましょう。
- 相手の発言に「申し上げる」を使う
- 日常会話で必要以上に多用する
- 「申しあげる」と表記ゆれを起こす
- 「お願い申し上げさせていただきます」のように過剰敬語にする
特に注意したいのは、敬語は重ねれば良いわけではないという点です。「ご確認いただきたくお願い申し上げます」くらいで十分丁寧です。過剰に盛ると、かえって読みづらくなります。
- 「社長が申し上げました」は相手を立てる方向としてずれやすい
- 「申し上げさせていただく」は、必要性が薄いと回りくどくなる
奏するを正しく使うために知っておきたいこと
「奏する」は美しい語ですが、使う場面を誤ると不自然さが目立ちます。ここでは、意味ごとの例文と、現代語での安全な使い方を整理いたします。
奏するの例文5選
意味が伝わりやすい例文を5つご紹介いたします。
- 新しい対策が功を奏し、売上が回復した。
- 早めの処置が効を奏して、大事には至らなかった。
- 演奏会で若い奏者が美しい旋律を奏した。
- 物語の中で家臣は君主に事情を奏した。
- 静かな夜に琴を奏する音が庭に響いた。
このように、「奏する」は現代では功を奏するか音楽を奏するで出会うことが多く、人に向かって丁重に言う意味ではかなり限定的です。
奏するを言い換えてみると
「奏する」は意味ごとの言い換えを押さえると使いやすくなります。
| 奏するの意味 | 言い換え | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 君主に申し上げる | 奏上する、申し上げる | 歴史・古典・儀礼文 |
| 音楽をかなでる | 奏でる、演奏する | 音楽紹介、文学表現 |
| 成果をもたらす | 効果をあげる、うまく働く、結果を出す | 報告文、説明文、会話 |
現代の実務文では、「功を奏する」以外は、より分かりやすい言い換えにしたほうが読み手に親切なことが多いです。
奏するを正しく使う方法
「奏する」を正しく使うには、まず意味を一つに固定することが大切です。読み手がすぐ意味を取れる文脈に置けば、美しい表現として機能します。
たとえば、対策の効果を述べるなら「功を奏する」、音楽なら「旋律を奏する」、歴史文脈なら「帝に奏する」というように、定型的な結びつきの中で使うと自然です。
逆に、現代のメールで「本件につきまして奏します」は不自然です。ここは素直に「ご報告申し上げます」「お伝えいたします」とするほうが読みやすく、誤解もありません。
- 現代実務では「功を奏する」以外は使用頻度が低い
- 人への敬語として使うより、慣用句や文学表現として覚えると失敗しにくい
奏するの間違った使い方
最後に、よくある不自然な使い方を挙げます。
- 取引先への通常メールで「ご連絡を奏します」とする
- 上司への日常報告で「先ほど奏しました」とする
- 「功を奏でる」と混同する
- 音楽以外で何でも「奏する」に置き換える
特に「功を奏する」と「奏でる」の混同は起こりやすいです。結果が出るなら「功を奏する」、音を出すなら「奏でる」と覚えると整理しやすくなります。
まとめ:申し上げると奏するの違いと意味・使い方の例文
「申し上げる」と「奏する」は、どちらも格調を感じさせる言葉ですが、実際の使い方にははっきりした違いがあります。
- 申し上げる:現代の敬語として広く使える、「言う」の謙譲表現
- 奏する:君主に申し上げる・音楽をかなでる・成果をもたらす、という複数の意味を持つ文語的な語
- 日常的な敬語やビジネス文書では、基本的に「申し上げる」を使う
- 「奏する」は「功を奏する」「旋律を奏する」など、意味が固定された場面で使うと自然
迷ったときは、「現代の相手への敬語なら申し上げる」「古風・文学・慣用句なら奏する」と考えると、ほとんどの場面で判断できます。
ことばの違いは、意味だけでなく、場面・相手・文体まで含めて捉えるとぐっと分かりやすくなります。今後「申し上げる」と「奏する」で迷ったときは、ぜひ本記事の例文と比較表を見返してみてください。

