
「取り行う」と「執り行う」は、どちらも同じ「とりおこなう」と読むため、漢字表記で迷いやすい言葉です。結婚式や葬儀、式典、行事、儀式、会議など、あらたまった場面ほど「どっちが正しい?」「ビジネスメールで失礼にならない?」「漢字の意味や語源は?」「例文で確認したい」と不安になりがちです。
この記事では、読み方、正しい表記、使い分け、誤用になりやすいポイント、類義語・対義語、言い換え、英語表現まで、まとめて整理します。最後まで読むと、「取り行う」と書いてしまいがちな場面でも、自然で恥のない日本語に整えられるようになります。
- 取り行うと執り行うの意味の違いと結論
- 誤用になりやすい理由と正しい使い分け
- 類義語・対義語・言い換えと英語表現
- 例文で身につく自然な書き方と注意点
取り行うと執り行うの違い
最初に全体像をつかみます。結論から言うと、日常で見かける「取り行う」は、多くの場合「執り行う」の誤表記として扱われます。ここを押さえるだけで、文章が一気に整います。
結論:取り行うと執り行うの意味の違い
結論はシンプルで、私の整理は次の通りです。
| 表記 | 一般的な扱い | 意味・ニュアンス | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| 取り行う | 誤用・誤記として見なされやすい | 「執り行う」のつもりで書いた誤表記が多い | 低い(公的・ビジネスでは避ける) |
| 執り行う | 正しい表記 | 行事や式典などを改まって行う | 高い(式典・儀式で安心) |
| とりおこなう(ひらがな) | 安全な回避策 | 漢字で迷う場合に誤解が少ない | 高い(柔らかくしたい時) |
辞書でも「執り行う」は「行事や式典などを改まって行う」という意味で説明されます。
- 「取り行う」は「正しい日本語」としては採用しないのが無難
- 迷ったら「執り行う」か、ひらがな「とりおこなう」に逃がす
取り行うと執り行うの使い分けの違い
使い分けというより、「誤表記を避ける」が本質です。
「執り行う」は、結婚式・葬儀・入社式・卒業式・落成式・式典・儀式など、改まった行事に対して使うのが自然です。
一方で「取り行う」は、同じ読みのために置き換えてしまった形として見られやすく、公的文章や社外向け文書では特に避けたい表記です。どうしても漢字に自信がないなら、「とりおこなう」とひらがなにするのも実務的には有効です。
- 「執り」は「執る(とる)」の系統で、「事を取り仕切って実行する」ニュアンスが残りやすい
- 「取り」は日常語として頻出するため、つい当ててしまいがち
取り行うと執り行うの英語表現の違い
英語では、「取り行う」「執り行う」を表記で区別するというより、何をどんな場で行うかで動詞を選びます。
- 式典・儀式を執り行う:hold a ceremony / conduct a ceremony
- 会議・イベントを開催する:hold a meeting / host an event
- 業務・任務を遂行する:carry out duties / execute a plan
「執り行う」は「ceremony(式典)」と相性が良く、「hold a ceremony」のような言い方が分かりやすいです。
英語は文脈で選ぶ言葉が変わります。対外文書では、社内の表現ルールや公式文例(テンプレート)がある場合は必ずそちらを優先してください。
取り行うの意味
ここでは「取り行う」を、国語としてどう扱うべきかを整理します。ポイントは、意味以前に「表記として適切か」です。
取り行うとは?意味や定義
私の結論として、「取り行う」は一般に正しい見出し語として扱われにくく、誤表記として見なされやすい表現です。実際には「執り行う(とりおこなう)」のつもりで「取り行う」と書いてしまうケースが多く、文章の信頼性を落とす原因になります。
ただ、読みとしての「とりおこなう」自体は自然な日本語で、正しい漢字表記が「執り行う」です。
取り行うはどんな時に使用する?
原則として、公的・ビジネス・式典関連の文書では使用しないのが安全です。見かけた場合は、次のように直します。
- 結婚式を取り行う → 結婚式を執り行う
- 葬儀を取り行う → 葬儀を執り行う
- 式典を取り行う → 式典を執り行う/式典を挙行する
- 社外向け:執り行う/挙行する/実施する(文脈で)
- 迷うとき:ひらがな「とりおこなう」にする
取り行うの語源は?
「取り行う」が広く定着している、というより、「とりおこなう」という読みを先に知っていて、後から漢字を当てた結果として生まれやすい表記です。日本語は同音語が多く、日常的に見慣れた「取る」の「取り」を当てたくなるのは自然な心理です。
ただ、改まった行事を「とりおこなう」と言う場合は「執り行う」が基本なので、文章の整合性を優先して表記を揃えるのが実務的です。
取り行うの類義語と対義語は?
「取り行う」は誤表記として扱うのが基本なので、ここでは「執り行う(とりおこなう)」に置き換えた場合の、実質的な類義語・対義語を整理します。
類義語(言い換え候補)
- 挙行する(式典・儀式を公に行う)
- 実施する(硬すぎず幅広い)
- 開催する(会やイベント向けでカジュアル寄り)
- 執行する(法令・職務など幅が広い)
「執り行う」と「挙行」はほぼ同義として説明されることが多く、置き換えもしやすいです。
対義語(反対の意味になりやすい語)
- 中止する
- 取りやめる
- 延期する
- 日を改める
執り行うの意味
ここからが本題です。「執り行う」は、改まった行事で使える、信頼度の高い表現です。辞書の核となる意味を押さえたうえで、使える場面・避ける場面まで整理します。
執り行うとは何か?
「執り行う(とりおこなう)」は、行事や式典などを改まって行うという意味の言葉です。
単なる「行う」よりも、格式・厳粛さ・公式性が立ちやすいのが特徴で、「式の進行をきちんと取り仕切って実施する」ニュアンスが出ます。
執り行うを使うシチュエーションは?
私が文章チェックで「執り行う」を採用するのは、次のような場面です。
- 結婚式、葬儀、告別式、法要などの儀式
- 入社式、卒業式、表彰式、落成式などの式典
- 開会式、閉会式、記念式典などの公式行事
逆に、ランチ・日常業務・軽いイベントに使うと、過剰に硬くて不自然になりがちです。
- 「会議を執り行う」は硬すぎる場合がある(多くは「開催する」「実施する」で十分)
- 「業務を執り行う」は不自然になりやすい(「遂行する」「実行する」「担当する」などへ)
執り行うの言葉の由来は?
「執り行う」の「執り」は、「執る(とる)」の語感を引き継ぎ、役目として事に当たる/取り仕切るニュアンスが出やすい部分です。そこに「行う」がつくことで、単に実施する以上の「改まって取り仕切って行う」意味合いになります。
語源や成り立ちの説明は辞書や用例によって表現が揺れることもあるので、厳密に確認したい場合は、最終的に国語辞典や公式の用字用語集をご確認ください。
執り行うの類語・同義語や対義語
「執り行う」は、似た言葉が多いぶん、ニュアンス差で選ぶと文章が引き締まります。
類語・同義語
- 挙行する:式典・儀式を公に行う(かなり近い)
- 実施する:幅広く使える標準語
- 開催する:会合やイベント向けでややカジュアル
- 執行する:法律・職務・命令など「決められたことを実地する」方向に広い
「執行」は意味の守備範囲が広く、「業務を執行する」は自然でも「業務を執り行う」は不自然になりやすい、という説明は理解の助けになります。
対義語
- 中止する/取りやめる
- 延期する/日を改める
取り行うの正しい使い方を詳しく
ここは少し言い方がややこしいのですが、「取り行う」を“正しく使う”というより、「取り行うを使わずに正しく整える」のがゴールです。誤表記の修正パターンを例文で固めましょう。
取り行うの例文5選
以下は、ありがちな誤表記を、自然な日本語に直した例です。
- (誤)来週、入社式を取り行います → (正)来週、入社式を執り行います
- (誤)結婚式を取り行いました → (正)結婚式を執り行いました
- (誤)式典を取り行う予定です → (正)式典を挙行する予定です
- (誤)葬儀を取り行うにあたり → (正)葬儀を執り行うにあたり
- (誤)記念式を取り行いました → (正)記念式をとりおこないました
- 漢字に迷う文は、ひらがなにするだけで誤表記リスクを大きく減らせます
取り行うの言い換え可能なフレーズ
文脈に応じて、次の言い換えが使えます。
- 式典・儀式:執り行う/挙行する
- 会議・イベント:開催する/実施する
- 業務・任務:遂行する/実行する/進める
なお、「遂行」などの近い言葉のニュアンス差が気になる方は、当サイトの「完遂と遂行の違い(意味・使い方・例文)」もあわせて参考になります。
取り行うの正しい使い方のポイント
- 「とりおこなう」を漢字で書くなら「執り行う」を選ぶ
- 硬さを調整したいなら「実施する」「開催する」を検討する
- 迷ったらひらがな「とりおこなう」にする
公的文書や社外メールでは、表記の揺れが信用に直結します。社内の用字用語集、官公庁・団体の公式表記がある場合は、必ず公式サイトや公式資料をご確認ください。
取り行うの間違いやすい表現
- 「会議を執り行う」:硬く不自然になりやすい(多くは開催・実施)
- 「業務を執り行う」:意味がずれやすい(遂行・執行・実行へ)
- 「取り行う」と「取り扱う」「取り組む」などの混同:文章全体がぶれやすい
言葉の選択は、業界・社内文化でも揺れます。最終的な判断は、上長や編集責任者、必要に応じて国語の専門家にご相談ください。
執り行うを正しく使うために
「執り行う」は便利ですが、万能ではありません。場に合った硬さを保ちつつ、対象(何を執り行うのか)を明確にすると、文章が一段と上品になります。
執り行うの例文5選
- 本日、落成式を執り行いました
- 葬儀は近親者のみで執り行います
- 来週、入社式を執り行う予定です
- 記念式典を厳粛に執り行いました
- 式は予定どおり執り行われました
執り行うを言い換えてみると
同じ内容でも、文体の硬さや対象によって言い換えが効きます。
- 式典・儀式:挙行する/実施する
- 会合:開催する/実施する
- 社内のやや硬い文:とりおこなう(ひらがな)
イベントの「主催/主宰」など、行事まわりの言葉も一緒に迷いやすいので、必要なら「主催と主宰の違い(意味・使い方・例文)」も参照してください。
執り行うを正しく使う方法
- 「何を執り行うのか」を具体名詞で書く(式典・葬儀・結婚式など)
- カジュアルな対象には使わず、開催・実施などに逃がす
- 迷うなら、ひらがな「とりおこなう」で誤字を回避する
また、対外文書では「意味」と「意義」など別の語も混同しがちです。文章の精度を上げたい方は、「意味と意義の違い(使い分けと例文)」もあわせて読むと、言葉選びの軸が作りやすくなります。
執り行うの間違った使い方
- ランチを執り行う(過剰に硬く不自然)
- 日常業務を執り行う(多くは「遂行する」「実行する」「担当する」)
- 軽い集まりを執り行う(開催・実施の方が自然)
言い回しの硬さは、相手との距離感にも影響します。誤解が不安なときは、社内のテンプレートや公式文例を優先し、正確な情報は公式サイトや公式資料をご確認ください。最終的な判断は、必要に応じて専門家にご相談ください。
まとめ:取り行うと執り行うの違いと意味・使い方の例文
「取り行う」と「執り行う」は読みが同じでも、表記の扱いが大きく異なります。改まった行事や式典では、基本は「執り行う」を選び、漢字に迷うならひらがな「とりおこなう」にするのが安全策です。
- 正しい表記:執り行う(行事・式典などを改まって行う)
- 避けたい表記:取り行う(誤表記と見なされやすい)
- 言い換え:挙行する/実施する/開催する(対象と硬さで選ぶ)
- 英語:hold/conduct a ceremony など、文脈で動詞を選ぶ
言葉は「正しさ」だけでなく「場に合うか」も大切です。公式な場では必ず一次情報(公式サイト・公式資料・社内規定)を確認し、判断に迷う場合は専門家へ相談する姿勢も忘れないでください。

