
「使うと遣うの違いや意味がよく分からない」「気を遣うと気を使うはどっちが正しいのか迷う」「言葉遣いと言葉使いのどちらを書けばいいのか不安」「金遣いとお金の使い方のニュアンスの違いを知りたい」――こうした悩みを抱えて、検索からこの記事にたどり着いた方が多いのではないでしょうか。
同じ「つかう」と読むのに、場面によって「使う」と書いたり「遣う」と書いたりする日本語は、本当にややこしいですよね。ビジネスメールや資料、履歴書の志望動機など、きちんとした文書を書くときほど、「この場面では使うと遣うのどちらの漢字を選ぶべきか」「使うと遣うの使い分けの明確な基準はあるのか」と、細かいところが気になってしまうものです。
この記事では、使うと遣うの違いと意味を、日常会話からビジネス文書まで幅広く使えるレベルで整理します。さらに、語源や類義語・対義語、言い換えの表現、英語表現、実際の使い方のポイントや例文まで、使うと遣うというテーマを一通り学べるようにまとめました。
最後まで読んでいただければ、「気を遣う/気を使う」「言葉遣い/言葉使い」「心遣い」「金遣い」などの表記に迷いにくくなり、使うと遣うの違いや意味を自信を持って説明できるようになります。ぜひ、ご自身の文章や会話にどう活かすかをイメージしながら読み進めてみてください。
- 使うと遣うの意味の違いと全体像
- 使うの意味・語源・類義語や対義語
- 遣うの意味・語源・よく使われる表現
- ビジネスや日常会話で迷わない使い分けのポイントと具体例
使うと遣うの違い
まずは「そもそも使うと遣うは何が違うのか」を、全体像から押さえていきます。この章では、意味の違い・使い分けの考え方・英語表現の差という三つの角度から、使うと遣うの違いを整理します。
結論:使うと遣うの意味の違い
結論から言うと、どちらも「何かをつかう」という大きな意味では共通していますが、使うは「道具や人・お金・時間などを広く用いる」一般的な表記、遣うは「誰かのために心やお金などを働かせる」「送り出す・費やす」といったニュアンスに寄った表記です。
日常的な日本語では、ほとんどの場面で「使う」が選ばれます。一方、「遣う」は単独で動詞として使う機会は少なく、「気を遣う」「心遣い」「言葉遣い」「金遣い」などのように、「〜遣い」という形で現れることが多いのが特徴です。
| 表記 | 主な意味・イメージ | よく出てくる語 |
|---|---|---|
| 使う | 道具・人・時間・お金などを目的のために用いる / 利用する | 道具を使う・時間を使う・日本語を使う・人を使う・お金を使う |
| 遣う | 誰かのために心やお金を働かせる / 送り出す・派遣する / 「〜遣い」として現れる | 気を遣う・心遣い・言葉遣い・金遣い・人を遣う・部下を遣わす |
使うと遣うの使い分けの違い
実際に文章を書くとき、次のように考えると使い分けがしやすくなります。
- 迷ったら基本は「使う」:道具・機械・アプリ・サービス・言語・能力など、一般的な「利用する」場面はすべて使うで問題ありません。
- 「〜遣い」と決まり文句になっているもの:言葉遣い・気遣い・心遣い・金遣い・息遣い・上目遣いなどは、漢字ごとセットで覚えてしまいましょう。
- 誰かのために心を配る・配慮するニュアンス:人に対して「気を遣う」「手を遣う」「心を遣う」など、思いやりや配慮を表す場合は遣うの方がしっくりきます。
- 人や部隊を「送り出す・派遣する」イメージ:「部下を現場に遣う」「使者を遣わす」のように、誰かをどこかへ送るイメージを表すときにも遣うがよく用いられます。
- 道具・アプリ・時間・お金など、ふだん迷う場面はほぼ「使う」でOK
- 迷いやすいのは「気を遣う/気を使う」「言葉遣い/言葉使い」「金遣い/お金の使い方」などの慣用表現
- 「〜遣い」とひとまとまりの語として定着しているものは、辞書や教科書に合わせて遣うを選ぶのが無難
使うと遣うの英語表現の違い
英語に訳すときにも、両者のニュアンスの違いがうっすらと出てきます。
使うは、もっとも基本的にはuseで表されます。
- パソコンを使う:I use a computer.
- 時間を有効に使う:I use my time effectively.
- 英語を使う仕事:a job where I use English.
一方で、遣うが含まれる表現は、spend / send / care / be considerateなど、文脈に応じて訳し分けることが多くなります。
- 気を遣う:care about 〜 / be considerate of 〜
- 言葉遣いに気を付ける:be careful with your choice of words.
- 金遣いが荒い:spend money recklessly.
- 部下を海外に遣う:send a subordinate overseas.
日本語の文章では表記を丁寧に使い分ける必要がありますが、英語にするときは、どちらの漢字かよりも「何を・誰に対して・どんなニュアンスでつかうのか」を軸に訳語を選ぶことが大切です。
使うの意味
ここからは、使うという表記に焦点を当てて、意味や定義、語源、類義語・対義語などを掘り下げていきます。普段何気なく使っている言葉ですが、改めて整理しておくと、文章を書くときの精度が一段上がります。
使うとは?意味や定義
一般的な国語辞典では、使うは次のような意味で説明されます(要約)。
- 物や道具・機械などを、目的のために働かせる
- 人を働かせる・用事をさせる
- お金・時間・エネルギーなどを消費する
- 言語・能力・技術などを用いる
私自身の感覚としては、「自分の目的を達成するために、人や物・お金・時間などを手段として動かすこと全般」を広くカバーするのが使うです。
たとえば、次のような場面では、基本的にすべて「使う」で問題ありません。
- スマホ・PC・アプリ・機械・道具などを操作する
- 日本語・英語などの言語を用いる
- 時間・お金・労力・人材などの資源を投じる
- 知識・スキル・アイデア・想像力などの無形の能力を働かせる
使うはどんな時に使用する?
もう少し具体的に、使うが自然に選ばれるシーンを整理してみましょう。
1. 道具・機械・サービスを利用するとき
もっとも頻度が高いのが、道具や機械、サービスなどを利用する場面です。
- 電車を使って通勤する
- 新しいアプリを使う
- 資料作成にパワーポイントを使う
- 家事に便利な道具を使う
2. 言語・ルール・仕組みを用いるとき
言語やルール、仕組みに関しても、基本的には使うを選びます。
- 敬語を正しく使う
- 専門用語をあまり使わない
- 社内ルールをうまく使う
- 制度を有効に使う
3. 資源(時間・お金・エネルギー)を消費するとき
時間やお金などをどのように配分するかという話でも、使うが基本です。
- 時間を無駄に使わない
- 限られた予算を賢く使う
- 体力を使いすぎない
使うの語源は?
漢字としての使は、「人偏(亻)」と「吏(役人)」から成る会意兼形声文字だとされます。つまり、「人が役人として誰かのために働く姿」から、「(人や物を)使う・使える」という意味が生まれたということです。
もともとは「使者(つかい)」や「使命」など、他者のために働くイメージの強い漢字でしたが、そこから意味が広がり、「道具を使う」「時間を使う」といった、現代の幅広い使い方に発展していったと考えられます。
語源を知っておくと、「使うというのは、本来『目的のために人や物を動かすこと』なんだ」という軸ができるので、似た漢字との違いを考えるときのヒントになります。
使うの類義語と対義語は?
使うの類義語・近い意味を持つ表現として、代表的なものを挙げておきます。
類義語・同義語
- 用いる(道具・方法・言葉などを用いる)
- 利用する(サービス・制度・人脈などを積極的に活かす)
- 活用する(知識や仕組みをうまく使って成果を上げる)
- 駆使する(高度な技術や能力を自在に使いこなす)
- 操る(機械や人形・言葉などを巧みに動かす)
対義語・反対のイメージを持つ語
- しまっておく(使わずに保管する)
- 温存する(将来のためにとっておく)
- 節約する(使い方を抑える)
- 貯める・蓄える(お金やエネルギーを使わずに蓄積する)
文章の中で「使う」を繰り返しすぎると単調になるので、言い換え候補としてこうした類義語をいくつかストックしておくと、表現の幅がぐっと広がります。
遣うの意味
続いて、遣うに焦点を当てて見ていきます。使うに比べると出番は少ないものの、気遣い・心遣い・言葉遣い・金遣いなど、日常でもよく目にする表記が多く含まれています。
遣うとは何か?
遣うは、もともと「つかわす(派遣する・送り出す)」の意味を持つ漢字から生まれた表記です。漢和辞典などでは、「つかわす・送る・差し向ける」といった説明がよく見られます。
現代日本語では、次のようなイメージで使われることが多いです。
- 誰かのために心や気持ちを働かせる(気を遣う・心遣い)
- お金を費やす・やりくりする(金遣いが荒い・金遣いが細かい)
- 言葉・文字・筆などの扱い方(言葉遣い・仮名遣い・息遣い・筆遣い)
- 人や部隊を送り出す(使者を遣わす・部下を現場に遣う)
このように、遣うには「自分の持っているものを、誰かのため・何かのために差し向ける・費やす」ニュアンスが強く含まれていると考えると、感覚的に理解しやすくなります。
遣うを使うシチュエーションは?
実際の文章では、遣うは単独の動詞というよりも、次のような「慣用的な組み合わせ」で現れることがほとんどです。
1. 気持ちや心を向ける場面
- 気を遣う(相手の気持ちや状況に配慮する)
- 心遣い(相手への思いやり・気配り)
- 手を遣う(手間をかける・わざわざ対応する)
2. お金や資源のやりくりを表す場面
- 金遣い(お金の使い方の傾向)
- 無駄遣い(不要なものにお金や時間を費やすこと)
- 小遣い(自由に使える少額のお金)
3. 言葉・文字・表現の扱いを表す場面
- 言葉遣い(話し方や表現の選び方)
- 仮名遣い(かなの書き方・表記ルール)
- 文字遣い(漢字・かなの使い分け)
- 筆遣い(筆やペンの運び方)
4. 人やモノを「送り出す」場面
- 使者を遣わす(メッセンジャーを派遣する)
- 部下を現場に遣う(部下を現場へ行かせる)
こうして並べてみると、遣うが持つ「誰かのために心や資源を差し向ける」「送り出す」というイメージが、さまざまな言葉に共通していることが分かります。
遣うの言葉の由来は?
漢字の成り立ちの観点から見ると、遣は「辶(しんにょう:道を行く意)」と、「肉を両手で捧げ持つ人」を表す部分から成るとされます。つまり、「大切なもの(肉)を携えて道を行き、誰かのもとへ送り届ける」イメージがもとになっているということです。
そこから、「軍を遣わす」「使者を遣わす」のように、人や軍隊を送り出す意味が生まれ、さらに派生して「心遣い」「気遣い」「金遣い」といった、心やお金・労力を「誰かのために差し向ける」表現へと広がっていきました。
語源を踏まえると、遣うが「自分のリソースを相手のために差し向ける」という、どこか温かさのある漢字に見えてくるはずです。
遣うの類語・同義語や対義語
遣うは単独の動詞というより、表現全体で意味が決まるケースが多いので、「気を遣う」「心遣い」「金遣い」などそれぞれに近い表現を押さえておくと便利です。
気を遣う・心遣いの類語・言い換え
- 配慮する
- 気配りをする
- 思いやりを持つ
- 心を砕く
- 心を配る
金遣いの類語・言い換え
- お金の使い方
- 支出の傾向
- 浪費グセ(くだけた表現)
- 倹約ぶり(対極的なニュアンスを含む場合も)
対義語的なイメージを持つ語
- 無頓着である(気を遣わない)
- 配慮が足りない
- ドライなお金の使い方をする
- 心を配らない・心ここにあらず
文章や会話では、「どこまで柔らかく・どこまでビジネスライクに表現したいか」に応じて、遣うを中心にしつつ、こうした類語を組み合わせていくと、表現のニュアンス調整がしやすくなります。
使うの正しい使い方を詳しく
ここからは、使うにフォーカスして、具体的な例文や言い換え、誤用しやすいポイントを整理していきます。
使うの例文5選
- この資料を作るときは、パワーポイントとエクセルを併せて使うと効率が良くなります。
- 限られた予算を有効に使うために、必要な出費とそうでない出費をはっきり分けましょう。
- 相手や場面に応じて、敬語とフランクな表現を上手に使い分けることが大切です。
- プレゼンでは、スライドだけに頼らず、身振り手振りも使うと印象に残りやすくなります。
- 新しいことを学ぶときこそ、失敗を恐れずに時間をたっぷり使う価値があります。
使うの言い換え可能なフレーズ
同じ「使う」でも、場面によっては別の表現に置き換えた方が自然な場合があります。
- 道具・機械を使う → 道具を活用する/機械を操作する
- 制度を使う → 制度を利用する/制度を活かす
- 時間を使う → 時間を割く/時間を投資する
- 人を使う → 人材を配置する/メンバーをアサインする
使うの正しい使い方のポイント
使うを上手に使いこなすためのポイントを、いくつか挙げておきます。
- 「何を」「何のために」使うのかをはっきり書く(例:時間を使う → 目標達成のために時間を使う)
- 同じ文中で「使う」が何度も出てくるときは、類義語で言い換えてリズムを整える
- ビジネスメールでは、「人を使う」という表現がきつく感じられる場合、「協力をお願いする」「担当してもらう」などの柔らかい言い回しを優先する
- 抽象的な「使う」より、「活用する」「投資する」など、行動の中身が伝わりやすい語への置き換えも検討する
使うの間違いやすい表現
使うは基本的に安全な表記ですが、遣うとの関係で迷いやすい表現がいくつかあります。
1. 気を使う/気を遣う
日常会話では「気を使う」も広く使われていますが、「相手への配慮」というニュアンスをきちんと出したいときは、遣うを用いた「気を遣う」がより丁寧です。
2. 言葉使い/言葉遣い
こちらも同様に、「言葉遣い」が一般的で、辞書や国語の教科書もこの表記を採用することが多くなっています。「言葉使い」も誤りとまでは言えませんが、きちんとした文章・公的な書類では「言葉遣い」を選ぶと安心です。
3. 金使い/金遣い
「金遣いが荒い」「金遣いが細かい」のように、セットで使われるのはほとんどが金遣いです。「お金の使い方」という言い方に置き換えて考えると、意味のイメージはつかみやすくなります。
遣うを正しく使うために
最後に、遣うの具体的な例文と言い換え、使い方のコツ、誤用しやすいパターンをまとめます。ここを押さえておくと、「ここはあえて遣うを書きたい」という場面で、自信を持って選べるようになります。
遣うの例文5選
- 初対面の人が多い場では、相手に失礼のないように、いつも以上に言葉遣いに気を遣うようにしています。
- 忙しい中わざわざ時間を割いてくださったことに対して、細やかな心遣いでお礼を伝えたいところです。
- 将来のためにお金を貯めつつも、ときには自分や家族のために思い切ってお金を遣うことも大切だと感じます。
- 最近はストレスからか、つい感情的な言葉遣いをしてしまうことがあり、自分でも気を遣わなければと思っています。
- 社長は信頼する部下を海外拠点に遣い、新しい市場開拓を任せました。
遣うを言い換えてみると
遣うが含まれる表現を、意味が分かりやすい日本語に言い換えてみます。
- 気を遣う → 相手の気持ちに配慮する/周囲に気配りをする
- 心遣い → 相手への思いやり/温かい配慮
- 金遣いが荒い → お金を浪費しがちだ/支出が大雑把だ
- 金遣いが堅実だ → お金を計画的に使う/支出を管理している
- 部下を海外に遣う → 部下を海外に派遣する/海外拠点へ送り出す
遣うを正しく使う方法
遣うを無理なく自然に使うためのポイントを、整理してみましょう。
- まずは「気遣い・心遣い・金遣い・言葉遣い・仮名遣い」など、慣用的なセット表現から覚える
- 「誰かのために心やお金を差し向けるイメージ」があるかどうかを考えてみる
- フォーマルな文章では、「気を遣う」「言葉遣い」など、遣うを含む表記が辞書的に推奨されやすいものを優先する
- 動詞として単独で使う必要があるときは、文語的・やや格式ばったニュアンスになることを理解しておく
遣うの間違った使い方
最後に、「これは基本的に使うの方が自然」というパターンを押さえておきましょう。
- × ペンを遣う → ◯ ペンを使う
- × スマホを遣う → ◯ スマホを使う
- × アプリを遣う → ◯ アプリを使う
- × 交通機関を遣う → ◯ 交通機関を使う
まとめ:使うと遣うの違いと意味・使い方の例文
最後に、この記事の内容を簡潔に振り返ります。
- 使うは、道具・言語・時間・お金などを広く「用いる」一般的な表記で、迷ったらこちらを選べば大きく外れることはありません。
- 遣うは、「誰かのために心やお金を差し向ける」「送り出す」ニュアンスを持つ表記で、気遣い・心遣い・金遣い・言葉遣いなどの慣用表現に多く用いられます。
- ビジネス文書や公的な書類では、「気を遣う」「言葉遣い」「金遣い」など、辞書や教科書で一般的な表記に合わせると読み手の安心感につながります。
- 英語では、使うはuse、遣うを含む表現はspend・send・careなど、文脈に応じた動詞で表現するのが自然です。
日本語には、使うと遣うのように、同じ読みで意味やニュアンスが異なる漢字の組み合わせがたくさんあります。たとえば、併せてと合わせての違いや、とおりと通りの違い、履くと穿くの違いなども、同じ読みで意味や使い分けが変わる代表的なペアです。あわせて学んでおくと、「漢字の使い分け」というテーマをより立体的に理解できるはずです。
使うと遣うの違いや意味・使い方の例文を一度整理しておけば、今後「どっちだったかな?」と迷う時間が確実に減ります。ぜひ、ご自身のメールや資料の表現を見直すときのチェックリストとして、今日学んだポイントを活用してみてください。

