
日本語には、「かかる」という読みを持つ語が複数あります。具体的には、漢字の違いによって意味や用法が異なる「掛かる」「懸かる」「架かる」「係る」です。本記事では、「掛かる/懸かる/架かる/係る」の違い・意味・語源・類義語・対義語・言い換え・使い方・例文を徹底的に解説します。
この記事を読んでわかること
- 「掛かる」「懸かる」「架かる」「係る」のそれぞれの意味
- 正しい使い分けが理解できる
- 語源や類義語・対義語について知ることができる
- 実際の例文を通じて使い方が身につく
目次
掛かると懸かると架かると係るの違い

結論:掛かると懸かると架かると係るの意味の違い
まず最初に、さっと結論を整理します。以下の表で各語の違いを比較します。
| 語 | 主な意味 | 典型的な用例 |
|---|---|---|
| 掛かる | ぶら下がる・作用・影響が及ぶ・時間や費用が必要になる | 「壁に絵が掛かっている」「時間が掛かる」 |
| 懸かる | 高い所に位置する・重大な結果に左右される | 「月が中天に懸かる」「優勝が懸かった試合」 |
| 架かる | 一方から他方へ渡される・橋などがかかる | 「川に橋が架かる」 |
| 係る | 関係する・関わる | 「この件に係る費用」「人命に係る問題」 |
このように、読みはいずれも「かかる」ですが、漢字によって意味・使われる場面が明確に異なります。
掛かると懸かると架かると係るの使い分けの違い
では、具体的にどのような場面で使い分けるべきか、深掘りします。
- 掛かる:日常会話で最も幅広く使われる「かかる」。何かがぶら下がっている、作用が及んでいる、時間・コストが必要などの意味。例えば「電話が掛かる」「費用が掛かる」など。
- 懸かる:やや書き言葉・文語的な印象。宙吊りのような状態、高い所にある、または「運命がこの結果に懸かっている」というように重大な決定・左右するという意味で用いられます。
- 架かる:物理的に「一方から他方へ渡す」動き・構造に関して使われることが多い漢字。橋・ケーブル・連絡通路などに使用。
- 係る:物事が「関係する/かかわる」という意味。契約書・法律文書・公式文書などでよく用いられ、日常会話よりもやや堅めの印象。
使い分けのポイントを挙げると
- ぶら下がる・掛ける・影響が及ぶ →「掛かる」
- 宙にある・重大な結果に関与する →「懸かる」
- 橋や構造物が渡される・掛け渡す →「架かる」
- 関係・かかわり・関連 →「係る」
掛かると懸かると架かると係るの英語表現の違い
日本語特有の漢字使い分けなので英語に直すと一語にまとまることが多いですが、それぞれニュアンスに応じた英語があります。
| 語 | 英語訳(例) | ニュアンス説明 |
|---|---|---|
| 掛かる | to take, to cost, to hang, to be affected | 「時間が掛かる」→ “take time”、「影響が掛かる」→ “be affected” |
| 懸かる | to be at stake, to hang over, to depend on | 「命が懸かっている」→ “life is at stake” |
| 架かる | to span, to bridge, to be built across | 「橋が架かる」→ “a bridge spans the river” |
| 係る | to relate to, to concern, to pertain to | 「この件に係る規則」→ “regulations relating to this matter” |
英語訳を意識することで、それぞれ日本語のニュアンスも掴みやすくなります。
掛かるの意味

掛かるとは何か?
「掛かる」は「かかる」と読む漢字の一つで、以下のような意味を持ちます:物がぶら下がる・ひっかかる、作用・影響が及ぶ、時間・費用・手間が必要になる、また機械などが作動するなどの意味も含まれます。例えば「壁に絵が掛かっている」「ブレーキが掛かる」など。
掛かるはどんな時に使用する?
日常的には非常に頻出です。以下のような場面で使います
- 何かが掛けられている・ぶら下がっている → 「絵が壁に掛かっている」
- 時間・費用・手間が必要 → 「この仕事には時間が掛かる」
- 影響・作用が及ぶ → 「迷惑が掛かる」「圧力が掛かる」
- 機械が動き始める・機能し始める → 「エンジンが掛かる」
ただし、上記すべてを「掛かる」で表記してよいというわけではなく、文脈によって漢字を変えることもあります。
掛かるの語源は?
「掛かる」の「掛」という字は、「かける」「ひっかける」「吊り下げる」などの意味を含んでいます。元来、物を吊る・かけるという意味から転じて、作用・影響・手間が「かかる」という意味になったと考えられています。
掛かるの類義語と対義語は?
類義語と対義語を整理すると以下の通りです。
| 類義語 | 説明 | 対義語 | 説明 |
|---|---|---|---|
| かかる(平仮名) | 漢字を使わずに同義で用いられることが多い | 免れる・逃れる | 手間・時間・影響を受けずに済む |
| 時間を要する | 手間・時間が掛かるという意味 | すぐ終わる・即時 | 時間を要しない |
| 影響を受ける | 作用が及ぶという意味 | 無関係である | 影響が及ばない |
なお、類義語として「費用がかかる」→「費用を要する」なども挙げられます。
懸かるの意味

懸かるとは何か?
「懸かる」は「かかる」と読む漢字の一つで、主に「高い所にある・宙吊りになる」「重大な結果がそのものに左右される」という意味を持ちます。例えば「月が中天に懸かる」「命が懸かっている」など。
懸かるはどんな時に使用する?
以下のような場面で用いられます。
- 物理的に高所や宙にあるもの → 「雲が山頂に懸かる」
- 重要な決定・結果がその事柄によって左右される → 「優勝が懸かった試合」
- 心に引っかかる・気になる → 「将来のことが気懸かりだ(気懸かるとも)」(やや文語的)
懸かるの語源は?
「懸」という字には「つり下げる」「ひっかける」「かかげる」「(心に)とどめる」といった意味があります。そこから「懸かる」は、文字通り吊り下がる・ぶら下がるという意味から、比喩的に「重大な結果にかかる/運命がかかる」という意味に転じたとされています。
懸かるの類義語と対義語は?
以下に整理します。
| 類義語 | 説明 | 対義語 | 説明 |
|---|---|---|---|
| かかっている | 運命・結果が左右される状況 | 関係ない・無関係 | そのことに左右されない |
| ぶら下がる | 物理的に吊り下がる状況 | 地に着く・安定している | 宙吊り状態でない |
架かるの意味

架かるとは何か?
「架かる」は「かかる」と読む漢字の一つで、「一方から他方へ掛け渡される」「橋・通路などが掛け渡されている」という意味を持ちます。たとえば「峡谷に吊り橋が架かる」など。
架かるはどんな時に使用する?
以下の場面で使われます。
- 橋・ケーブル・通路などがかかっている/渡されている → 「川に橋が架かる」
- 物理的に一方から他方へ渡される構造 → 「ビルとビルの間に連絡通路が架かっている」
架かるの語源は?
「架」という字には「物をのせる平らな台」「室内で衣類などをかけておく道具」の他に、「物がこちら側の高い所から、向こう側の高い所へわたって固定される」という意味があります。そこから「架かる」は、橋などが掛け渡されている状態を指すようになったと考えられています。
架かるの類義語と対義語は?
以下に整理します。
| 類義語 | 説明 | 対義語 | 説明 |
|---|---|---|---|
| かかっている(橋など) | 渡されている状態 | 架かっていない・無架設 | 橋が設置されていない・渡されていない |
| 渡されている | 一方から他方へ掛け渡されている構造 | 孤立している・接続がない | 他方に渡っていない |
係るの意味

係るとは何か?
「係る」は「かかる」と読む漢字の一つで、「関係する」「かかわる」「影響・関連を持つ」という意味を持ちます。特に法律・契約書・公文書などで使われることが多いです。
係るはどんな時に使用する?
以下のような場面で用いられます。
- ある事柄が他の事柄と関係していることを示す → 「当該業務に係る資料」
- 重要な問題が関わる・かかわる場面 → 「人命に係る問題」
- 文章中で、語句の文法上の働きが他の語句と関係を持つ → 「“青い空”の“青い”は“空”に係る」など。
係るの語源は?
「係」という字には「かかわる」「つながる」「関連をもつ」という意味があります。そこから「係る」は、物事が他のものと関係・関連を持つという意味で使われるようになりました。
係るの類義語と対義語は?
以下に整理します。
| 類義語 | 説明 | 対義語 | 説明 |
|---|---|---|---|
| 関係する | 何かとつながりを持つ | 無関係である | その事柄に関係を持たない |
| かかわる | 関与・影響を受ける | 関与しない | 影響・関与がない |
掛かるの正しい使い方・例文

掛かるの例文
「掛かる」を使った、頻度が高く実用的な例文を5つ挙げます。
- このプロジェクトにはかなりの時間が掛かる。
- 壁に新しい絵が掛かっているのを見つけた。
- 電話がようやく掛かってきた。
- 作業中にミスが発覚し、追加の費用が掛かった。
- 彼は海外出張で多くの手間が掛かったと言っていた。
掛かるの言い換え可能なフレーズ
- 時間が必要になる
- コストがかかる
- 手間を要する
- 影響を受ける
- 開始される/動き出す
掛かるの正しい使い方のポイント
使う際の注意点を整理します
- 一般的な「かかる」の意味(時間・コスト・手間)があるときは「掛かる」で表記することが多い。
- 文脈が「ぶら下がる」「作用が及ぶ」「機械が動き始める」といった意味なら「掛かる」が適切。
- ただし、漢字をあてることによる意味の違いが微妙なので、あえてひらがな「かかる」と表記されることも多い。
- 他の「懸かる」「架かる」「係る」と混同しないよう、意味を確認して使う。
掛かるの間違いやすい表現
- 「橋が掛かる」と書いてしまうが、これは「架かる」が正しい。
- 「命が掛かる」という言い回しもあるが、意味は「重大な結果に左右される」であるため「懸かる」の方が正確な場合があります。
- 公式文書で「この件に掛かる〜」と書くと、「係る」を用いるのが適切な場合があります。
- 「時間が掛かる」のように、明確な漢字を定めずにひらがなで「かかる」と記すほうが無難なケースもあります。
懸かるの正しい使い方・例文

懸かるの例文
- 夜空に美しい月が懸かっていた。
- 優勝が懸かった試合で、彼らは全力を尽くした。
- 山頂に雲が懸かって、頂上の景色が見えなくなった。
- このプロジェクトの成否は、若手メンバーに懸かっている。
- 将来のことがどうも気懸かりだ。
懸かるの言い換え可能なフレーズ
- かかっている(運命・結果)
- ぶら下がっている
- 左右される
- 重要な位置にある
- 宙に浮いている
懸かるの正しい使い方のポイント
- 「懸かる」は「架かる/掛かる/係る」と意味が異なるため、特に「重大性」「宙吊り」の意味を含む場面で用いる。
- 「運命が懸かっている」「決定が懸かっている」というような文脈で使うと適切。
- 日常会話ではやや硬い印象のため、書き言葉・報道・フォーマルな場面で多用される傾向。
- 「掛かる」「懸かる」の選択に迷った場合は、「重大/左右される」といった意味が強ければ「懸かる」を検討。
懸かるの間違いやすい表現
- 「時間が懸かる」という表現は、意味としては「時間がかかる」であり、「掛かる」が一般的です。
- 「橋が懸かる」と書くことがありますが、物理的に「かけ渡す」意味なら「架かる」が正しい。
- 「人に懸かる責任」という場合、ニュアンスとして「その人に左右される責任」といった意味なら「懸かる」が使えますが、単に「関係する責任」であれば「係る」の方が適切なケースもあります。
架かるの正しい使い方・例文

架かるの例文
- 渓谷に吊り橋が架かっていた。
- 駅前の川に新しい歩道橋が架かった。
- 電線が道路の上に架かっているのを見た。
- ビルとビルの間に渡る連絡通路が架かっている。
- 橋が架かったことで、交通が便利になった。
架かるの言い換え可能なフレーズ
- 渡されている
- 橋が設置される
- かけ渡される
- 架設される
- 通路がつながる
架かるの正しい使い方のポイント
- 「架かる」は物理的な「掛け渡す」「わたす」という意味合いが強いため、橋・通路・ケーブルなどの構造物に関連する際に使う。
- 「掛かる」「懸かる」「係る」と混同しやすいので、「わたす/またぐ」というニュアンスがあるかどうかを確認。
- 文脈によっては「架かる」でも「掛かる」でも意味は通じる場合があるが、適切な漢字をあてることで文章が精緻になります。
架かるの間違いやすい表現
- 「時間が架かる」と書いてしまうケースがありますが、これは「掛かる」が正しいです。
- 「命が架かっている」という表現を見ることもありますが、「重大な結果が左右される」といった意味なら「懸かる」が適切です。
- 「関係に架かる」という表現は不自然で、関係性を強調する場合は「係る」が正しいことがあります。
係るの正しい使い方・例文

係るの例文
- この申請に係る書類を提出してください。
- 人命に係る重大な決断です。
- 本件に係る費用は会社が負担します。
- 製作に係るスタッフ全員に連絡をしました。
- 契約に係る条項を慎重に確認することが求められる。
係るの言い換え可能なフレーズ
- 関係する
- かかわる
- 関連する
- 〜に関わっている
- 〜の対象となる
係るの正しい使い方のポイント
- 「係る」は「関係する/かかわる」という意味で、動詞「かかる」の別漢字として使われるが、特に正式文書・法律文書で用いられることが多い。
- 文章中で「〜に係る〜」という形で使われることが典型的。「この件に係る〜」「契約に係る〜」など。
- 口語・カジュアルな文脈では平仮名「かかる」でも十分通じるが、正確さを期すなら「係る」が適切な場面があります。
係るの間違いやすい表現
- 「この件に掛かる〜」と書いてしまうが、「関係する」という意味なら「係る」が正しい。
- 「命に係る〜」と書くべきところで「命に掛かる〜」とすると、ニュアンスが「作用が及ぶ・影響を受ける」という意味になり微妙にずれる。
- 「〜に係ること」が多用されているため、文末・修飾語の配置を誤ると読みづらくなります。
まとめ:掛かると懸かると架かると係るの違いと意味・使い方の例文
本記事では、「掛かる」「懸かる」「架かる」「係る」という4つの漢字の読み「かかる」に対して、それぞれの意味・使い方・語源・類義語・対義語・実際の例文まで詳しく解説しました。
ポイントを整理します
- 「掛かる」:ぶら下がる・作用が及ぶ・時間/費用が必要になるなど、最も日常的に使われる「かかる」。
- 「懸かる」:高所や宙吊り、あるいは結果が重大で左右される状況を表す場合に用いる。
- 「架かる」:橋や通路などが「わたされる」「掛け渡される」という構造や状況を表す。
- 「係る」:物事が「関係する」「かかわる」という意味で、特に公文書・法的文書で用いられることが多い。
それぞれの漢字を適切に使い分けることで、文章の意味がより明確になり、誤解を防ぐことができます。例文も多数紹介しましたので、日々の文章作成・校正・学習の際にぜひ参照してください。
参考文献・引用

