
「繰入と戻入の違いや意味がいまいちピンとこない」「貸倒引当金の繰入や戻入の仕訳をするときに毎回迷ってしまう」「繰入とは増やすことなのか、戻入とは減らすことなのか、会計処理のイメージをスッキリ整理したい」....そんなお悩みを持つ方は多いのではないでしょうか。
とくに簿記や会計、決算実務に携わっていると、「貸倒引当金繰入」「貸倒引当金戻入」「引当金の繰入と戻入の違い」「洗替法と差額補充法での繰入額や戻入額の扱い」「勘定科目の意味」など、似たような用語が一度に出てきやすく、用語の意味だけでなく実際の使い方や仕訳の方向まで混乱しがちです。
この記事では、繰入と戻入の違いと意味、使い方、仕訳のイメージ、英語表現や類義語・対義語、ビジネスでそのまま使える例文まで、実務で迷わないレベルで整理していきます。
繰入と戻入の違いや意味をしっかり押さえておくと、貸倒引当金だけでなく、さまざまな引当金や会計処理の理解も一気に進みます。最後まで読めば、決算整理仕訳の場面で「どっちだっけ?」と手が止まる回数がぐっと減るはずです。
- 繰入と戻入の意味の違いと、会計処理としてのイメージを整理できる
- 貸倒引当金など引当金における繰入と戻入の使い分けがわかる
- 繰入と戻入に対応する英語表現・類義語・対義語・言い換えを押さえられる
- ビジネス文書・メール・試験対策でそのまま使える具体的な例文を身につけられる
繰入と戻入の違い
まずは全体像として、繰入と戻入がどのように違うのかをざっくり把握しておきましょう。ここを押さえておくと、細かな勘定科目の名前が変わっても応用が効くようになります。
結論:繰入と戻入の意味の違い
結論から言うと、繰入と戻入の違いは、次のように整理できます。
| 区分 | 繰入 | 戻入 |
|---|---|---|
| ざっくり意味 | 将来の損失などに備えて、あらかじめ費用や引当金を増やすこと | 過去に積み立てた引当金などを取り崩し、費用や引当金を減らすこと |
| 会計処理の方向 | 費用を増やす/引当金残高を増やす | 収益を増やす/引当金残高を減らす |
| 代表的な例 | 貸倒引当金繰入、賞与引当金繰入など | 貸倒引当金戻入、退職給付引当金戻入など |
| イメージ | 「将来のリスクに備えて、今のうちに積み増す」 | 「思ったより損失が少なかったので、積み立てを戻す」 |
繰入は「積み立てる・増やす側」、戻入は「取り崩す・減らす側」という対になる概念だと覚えておきましょう。
繰入と戻入の使い分けの違い
実務では、繰入と戻入は主に「引当金」に絡んで登場します。
- 将来の貸倒れ・賞与・退職金などに備えて、予想される損失や支出を引当金として積み立てるとき → 繰入
- 実際の結果が予想より良かった、あるいは引当が不要になった部分を取り崩すとき → 戻入
例えば貸倒引当金であれば、期末に保有している売掛金や貸付金の残高などから「将来これくらい貸倒れが起こりそうだ」と見積もります。その見積額まで引当金が足りなければ、その差額を費用として「貸倒引当金繰入」で計上し、逆に過去に積み立てた引当金が多すぎた場合には、その分を「貸倒引当金戻入」として収益に振り替えるイメージです。
洗替法や差額補充法など、引当金の計算方法によって繰入・戻入の金額や仕訳が変わる場合がありますが、「見積額に近づけるために増やすのが繰入、見積額より余った部分を戻すのが戻入」という軸は変わりません。
繰入・戻入の使い分けに迷うときは、「今は引当金を増やしたいのか、減らしたいのか?」という視点で考えると整理しやすくなります。
繰入と戻入の英語表現の違い
英語では、文脈によって表現が変わりますが、代表的には次のような対応がよく使われます。
- 繰入:provision、recognition of allowance、provision for doubtful accounts など
- 戻入:reversal、reversal of allowance、reversal of provision など
例えば貸倒引当金繰入であれば、英語では “provision for doubtful accounts” や “recognition of allowance for doubtful accounts” といった言い方が多く、貸倒引当金戻入は “reversal of allowance for doubtful accounts” のように表現されます。
ここでも、繰入=provision(積み立て)、戻入=reversal(取り崩し・逆仕訳)という対応関係を意識しておくと、英語の決算書や会計基準書を読むときの理解がスムーズになります。
繰入の意味
ここからは、まず「繰入」単体の意味やイメージを深掘りしていきます。どんな場面で使われ、どのようなニュアンスを持つ言葉なのかを整理しておきましょう。
繰入とは?意味や定義
一般的な会計・簿記の文脈で「繰入」といった場合、将来の損失や支出に備えるために、当期の費用として計上し、引当金などの残高を増やすことを指します。
代表的なものとして、次のような勘定科目があります。
- 貸倒引当金繰入
- 賞与引当金繰入
- 退職給付引当金繰入 など
どれも「将来起こりそうな損失や支出」を見積もり、その金額を費用として先に認識しつつ、同額を引当金として負債または資本のマイナス要素に計上する処理です。これによって、ある年度だけ損失や支出がドーンと膨らむのを避け、各年度の業績をより公平に比較できるようにしています。
「繰入」はもともと「別のところから繰り入れる」という日本語の動詞から来ていて、「あるお金を別の枠(引当金など)に移して積み立てる」というイメージを持つと覚えやすくなります。
繰入はどんな時に使用する?
繰入は、次のような場面で使われます。
- 売掛金・貸付金などに将来の貸倒リスクが見込まれる場合(貸倒引当金繰入)
- 翌期以降に支払う予定の賞与を、当期の業績に対応させたい場合(賞与引当金繰入)
- 将来の退職給付見込額を、従業員の勤務期間に応じて配分したい場合(退職給付引当金繰入)
要するに、「将来の支出・損失だけど、今の活動に対するコストとして考えるべきもの」を、会計上のルールに従ってならしていくための調整です。
この考え方は、経過勘定や見越・繰り延べなど、他の会計用語ともつながっています。例えば、会計期間をまたぐ費用や収益を整理する考え方は、見越しと繰り延べの違いを理解しておくと、さらに腑に落ちやすくなります。
繰入の語源は?
語源としての「繰り入れる」は、もともと「別の枠に入れ替える」「繰り替えて入れる」といった意味を持つ日本語です。例えば「預金を別口座に繰り入れる」のように、ある場所から別の場所へお金を移すニュアンスがあります。
会計用語としての繰入も、「将来の損失・支出に備える枠(引当金)へ、お金のイメージを繰り入れる」と考えると、勘定科目名の印象がぐっと具体的になってきます。
実際の仕訳では、現金そのものが動くわけではなく、費用と引当金という形で帳簿の中で数字を動かしているイメージです。
繰入の類義語と対義語は?
繰入の類義語
- 計上(費用計上・損失計上)
- 積み立て(積立金、準備金など)
- 引当(引当金を設定する行為)
これらはいずれも、「将来のリスクや支出を見込んで今のうちに反映させる」という点で、繰入と近いイメージを持っています。
繰入の対義語
- 戻入(引当金を減らす方向の処理)
- 取崩(積立金・引当金などを取り崩すこと)
- 還付(税金や保険料が戻ってくるイメージの言葉)
厳密な会計用語としては「戻入」が一番ストレートな対義語ですが、文脈によっては「取崩」という言葉も対になる概念として使われます。
戻入の意味
次に、「戻入」の意味と使い方を整理します。繰入との対比を意識しながら読んでいただくと、違いがよりクリアになるはずです。
戻入とは何か?
戻入とは、過去に繰り入れていた引当金などが、結果として不要になった分を取り崩し、費用や負債を減らす処理を指します。
代表的なものとして、次のような勘定科目があります。
- 貸倒引当金戻入
- 退職給付引当金戻入
- 賞与引当金戻入 など
例えば、前期までに貸倒れリスクを見込んで多めに貸倒引当金を繰り入れていたところ、実際には思ったほど貸倒れが発生せず、引当金が余ったとします。この余った部分は、当期に「貸倒引当金戻入」として収益に振り替えられます。
戻入を使うシチュエーションは?
戻入は、次のようなシーンでよく登場します。
- 貸倒れが想定より少なく、貸倒引当金が余ったとき
- 退職給付の見積額を見直した結果、過去の引当金が過大だったと判明したとき
- 賞与の支給額が、過去の見積りより少なく決定したとき
いずれも、「将来の損失・支出に備えて積み立てていたものが、結果として余った(あるいは不要になった)ため、元に戻す」という場面です。
繰入はリスクに備えるための積み増し、戻入はリスクが軽くなった結果の取り崩しと覚えておくと、難しい仕訳でも方向感を間違えにくくなります。
戻入の言葉の由来は?
「戻し入れる」という日本語から来ている通り、戻入には「一度別枠に移したものを、もとの状態に戻す」というニュアンスがあります。
会計的には、過去に繰り入れた費用を、今期の収益として「戻し入れる」ことで、予想より好転した部分を利益に反映する役割を持っています。
戻入の類語・同義語や対義語
戻入の類語・同義語
- 取崩(引当金・準備金などを取り崩すこと)
- リバーサル(reversal)(会計英語でよく使われる表現)
- 戻し入れ(日本語としての言い換え表現)
戻入の対義語
- 繰入(引当金を増やす処理)
- 積み立て(将来に備えて費用を計上するイメージ)
「戻入=reversal」というキーワードを頭に入れておくと、英語の決算書や解説書を読む際にも役立ちます。
繰入の正しい使い方を詳しく
ここからは、繰入をビジネス文書や試験答案などで正しく使うためのポイントを、例文を交えながら解説します。
繰入の例文5選
まずは、典型的な使用シーンの例文を見てイメージを固めておきましょう。
- 当期の売掛金残高に対して貸倒リスクを見積もり、貸倒引当金を繰入した。
- 賞与引当金の繰入額は、業績連動型の評価制度に基づいて算定している。
- 長期的な修繕計画に備えて、修繕引当金を毎期一定額繰入している。
- 退職給付債務の増加に対応するため、退職給付引当金の繰入を行った。
- 将来の環境対策費用を見込んで、環境対策引当金の繰入を検討している。
繰入の言い換え可能なフレーズ
文脈によっては、「繰入」という言葉を別の表現に言い換えたほうが読み手に伝わりやすいこともあります。
- 引当金を繰入する → 引当金を計上する/引当金を設定する
- 繰入額 → 計上額/積立額
- 貸倒引当金繰入 → 貸倒引当金の費用計上
ビジネスメールなど、会計に詳しくない相手に説明する場合は、「専門用語+平易な言い換え」のセットで書くと親切です。
例)「当期は貸倒引当金繰入(将来の貸倒リスクに備えた費用計上)を増加させています。」
繰入の正しい使い方のポイント
繰入を使うときのポイントは、次の3つです。
- 「将来の損失・支出に備える」という文脈で使う
- 「費用を前倒しで認識する」というイメージを保つ
- 対象となる引当金や勘定科目を明確にする
例えば、「繰入」という言葉だけが一人歩きしてしまうと、「何を?」「何のために?」が伝わりにくくなってしまいます。「貸倒引当金の繰入」「退職給付引当金の繰入」といった形で、対象をセットで書くことを心がけましょう。
実際の繰入額の算定方法や会計処理は、会計基準や税法、社内規程によって細かく決められている場合があります。ここで紹介している内容はあくまで一般的な考え方であり、具体的な処理を行う際には、正確な情報は公式サイトや公的なガイドラインをご確認いただき、最終的な判断は税理士・公認会計士などの専門家にご相談ください。
繰入の間違いやすい表現
繰入でありがちな誤用・混同として、次のようなパターンがあります。
- 「繰入」と「繰越」を混同してしまう
- 「繰入」と「見越」「繰り延べ」をごちゃまぜにしてしまう
- 「繰入」と「戻入」を逆に使ってしまう
例えば「繰越」は、期末に残った損益や残高を翌期に持ち越すイメージの言葉であり、「将来に備えて引当金を積み立てる」という繰入とは意味が異なります。
また、経過勘定の「見越」「繰り延べ」は、会計期間を正しく区切るための調整であり、引当金とセットで語られる繰入とは性質が違います。両者の違いを整理しておきたい場合は、見越しと繰り延べの違いと意味・使い方を合わせて確認しておくと理解が深まります。
戻入を正しく使うために
続いて、「戻入」を正しく使いこなすためのポイントを、例文とともに見ていきましょう。
戻入の例文5選
戻入の代表的な使用例は、次のような形です。
- 当期は貸倒れが想定より少なかったため、貸倒引当金の一部を戻入した。
- 前期までに積み立てていた退職給付引当金の過大部分を、当期に戻入している。
- 賞与支給額が見積額を下回ったため、賞与引当金戻入を特別利益として計上した。
- 与信管理の改善により貸倒リスクが低下した結果、貸倒引当金戻入が発生した。
- 環境対策費用の見積もりを見直したことで、環境対策引当金の一部を戻入することになった。
戻入を言い換えてみると
戻入も、文脈によっては別の言葉で言い換えた方が分かりやすい場合があります。
- 引当金を戻入する → 引当金を取り崩す/引当金を減額する
- 戻入額 → 取崩額/減額分
- 貸倒引当金戻入 → 貸倒引当金の取崩益/取り崩しによる利益
会計に詳しくない相手に説明するときは、「専門用語+平易な日本語」をセットにして伝えるのがおすすめです。
戻入を正しく使う方法
戻入を正しく使うためのポイントは、次の通りです。
- 「過去に積み立てたものを取り崩す」という前提を明確にする
- どの期間に繰り入れたものを、どの期間に戻入しているのかを意識する
- 利益への影響がプラス側に出ることを理解しておく
戻入は、実務上は「利益を押し上げる要因」として働くことが多いため、分析の際には一時的・偶発的な要素として扱われることがあります。特に投資家向けの説明資料などでは、繰入と戻入が業績に与える影響を分けて説明することが、透明性の高い情報開示につながります。
戻入の間違った使い方
戻入に関する誤りで多いのが、次のようなケースです。
- 繰入と戻入の勘定科目を逆に仕訳してしまう
- 戻入すべき金額を誤って過大・過少に計上してしまう
- 一時的な戻入による利益増加を、恒常的な収益力の向上と誤解してしまう
とくに損益分析の観点からは、「戻入による利益の増加は、将来の業績が良くなったというより、過去の見積もりが厳しめだった結果」として捉えることが重要です。
戻入額の算定や会計処理は、各社の会計方針や適用している会計基準によって大きく異なる場合があります。決算書を読む側としても、「戻入による利益増加」をどのように評価するかは慎重な判断が必要です。具体的な取扱いについては、正確な情報は必ず公式な開示資料や専門家が発信する情報源を確認し、最終的な判断は専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:繰入と戻入の違いと意味・使い方の例文
最後に、ここまでの内容を整理しておきます。
- 繰入は、将来の損失や支出に備えるために、当期の費用として計上し、引当金などを増やす処理(provision)
- 戻入は、過去に繰り入れていた引当金などが不要になった部分を取り崩し、費用や負債を減らして利益に戻す処理(reversal)
- 貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金など、多くの引当金で繰入と戻入がセットで登場する
- 英語では、繰入=provision、戻入=reversal という対応関係を意識しておくと理解しやすい
- ビジネス文書や試験では、「繰入=積み立て」「戻入=取り崩し」という軸を押さえつつ、必要に応じて「計上」「取崩」などの言い換えを組み合わせると分かりやすくなる
会計用語は一見むずかしく感じられますが、イメージの軸さえつかめば、一度に覚えるべき情報量はそれほど多くありません。たとえば、「計る・測る・量る・図る」のような紛らわしい言葉も、軸を整理すればすっきり区別できます(詳しくは、「計る」「測る」「量る」「図る」の違いと意味・使い方も参考になります)。
「違いの教科書」では、今後も会計・ビジネス・言葉の違いを丁寧に解説していきます。繰入と戻入がクリアになったら、次は似たような用語のニュアンスの違いにも目を向けてみてください。例えば、ビジネスシーンでよく出てくる言葉の意味や違いを整理したい場合は、「トピック」の意味と使い方・類義語・英語表現などもあわせて読むと、語感の解像度が一段と上がるはずです。

